高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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ベルラム、プルクラ、モルス……実装待ってるよ
まあモルスは厳しそうやがなブへへへへ


カリュドーン・ラッシュ4

 

 データスタンドを勝手にパクっていくクズ共を制裁したカリュドーンの子。

 だが、連中はデータスタンドの番号を消すことによって、このデータスタンドの所有権に関する証拠隠滅を図っていた。

 

 「あれぇー? ほんとになんにも書いてないよ?」

 「このデータスタンドはホロウに落っこちてたものなんだ、誰の物でもないんだ。連盟のルールじゃ拾ったモン勝ちさ!」

 

 狡猾な走り屋が嘲笑う。

 誇り高きカリュドーンの子が、こんな狡いマネで人の物を奪っていくのかと。

 だが、ここにもっと狡い奴がいる。

 

 『それジョークか? 面白いことを言うなぁこの蛆虫は』

 「な……なんだあっ」

 

 ヌ~ッとカリュドーンの子の背後から現れたのは、マネモブ。

 彼は走り屋の卑怯なやり方に憤りを感じていた。能面みたいに無表情のエーテリアスが憤慨している。もちろんめちゃくちゃ怖い。

 

 『今日からお前は蛆虫だ。悪臭を放つ糞にたかりこの世で最も汚く蔑まれる蛆虫だ』

 「お、おいこのやたらと蛆虫推ししてくるエーテリアスを何とかしてくれ! お前らのペットだろ!?」

 『殺すぞ蛆虫』

 「ヒィエエエエ!?」

 

 意外と肝っ玉の小さかったメンバーには、マネモブの脅しはかなり効いていた。

 男のものでも女のものでも関係なく抑揚のない声と、マネキンじみた無表情は単なる走り屋同士の喧嘩では味わえない恐怖を堪能することができる。人間にはない異質な気配が全面に押し出されているのだ。

 

 「そこまでにしておきなさいですわ。どうせ、ほらここ。プレートの表面を削り取ったに違いありませんわ」

 

 ルーシーが指さしたのは、番号プレートの表面。そこには、無理やり削られたような痕跡がある。しかも意外と新しい。

 

 「最初から揉めるのは織り込み済みのはずでしてよ。ま、エーテリアスに脅されてこの有様なら、程度は知れてますわね」

 「ふうん、そういうことか。ライト、ひと思いにやっちまえ」

 「ザコ狩りみたいで気は乗らないが……戦うのはあんたらじゃない。“決闘”をご所望なんだろ? こちとらマネモブとの戦いの興奮がまだ冷めてないんだ、早く連れて来いよ」

 「ククク……俺達は走り屋だ。揉め事ときたら、それで解決するのが公平だわな」

 『ゴングを鳴らせっ、戦闘開始だっ』

 「まだ早ぇよ!? まあ俺の話を聞けって」

 

 決闘。

 それはルール無用の郊外における不可侵の掟。

 チームのチャンピオン同士で殴り合う、漢と漢の真剣勝負。

 

 「聞いたぜライト、あんた、カリュドーンの子のチャンピオンになってからは全戦全勝の負けなしなんだってなあ。だが昔の屈辱を思い出す時がきたみたいだぜぇ」

 『灘の宮沢静虎。誠実な人格者だと聞いています。“忍辱”の衣を纏っていると』『ニンニクをカリカリに焼いてやねぇ、ステーキソースで食うのもええけど塩で食うのもウマいで!』

 「ちょ、ちょっと黙ってろ。今はニンニクの話はいいんだ」

 

 マネモブが邪魔で話が進まない。

 それもそのはず、マネモブは卑怯な走り屋のやり口に反抗し、意図的に邪魔しているのだ。

 

 「ともかく! 俺達のチャンピオンはあの“エンバー・アリーナ”の出なんだぜ」

 『寒い雪の日の朝…!?』

 「なにっ」

 

 ライトの脳に刻まれているのは、あの地下闘技場での忌まわしい記憶。

 

 「しかも、いつも地面に這いつくばってたお前と違って、あの方は20連勝を誇った豪傑だ!」

 『どの世界にも通じることやが…中身のないヤツが数を誇る!』

 「……いや、ちょっと待てよ。そいつはまさか」

 

 ライトはその人物に心当たりがあるようだ。

 名前は思い出せないが顔と実力には心当たりがある。

 

 「クーククク! 震えが止まらんだろ! そうとも! お前の良く知るこのお方だァ!」

 「誰なんだ」

 「ライトォォォォ!!!」

 

 その時、何者かが走り屋達の背後から凄まじい跳躍力でジャンプし、ライトの前へ降ってきた。

 

 「ナメくさりやがって!」

 

 大柄な、オランウータンのシリオン。

 その身体は一見して太っているようにも見えるが、実際は筋肉と脂肪がバランスよくついた力強い肉体であると理解できる。

 

 「オレっちだよ! ベルラムだよ! テメェに20連勝をあと一歩のところで阻止された!」

 

 そのシリオン、ベルラムはサングラスやマスクを投げ捨て、ライトに向かって熱弁している。

 

 「相変わらずゴーマンな野郎だ! イケメンで、強くて、人気で、イケメンだからって……ナメてんじゃねぇぞコラッ!」

 『なんでイケメンを2回も……?』

 

 かなりルサンチマンをこじらせてるようだが、ヤバそうな地下闘技場で20連勝した実力と、自分を負かしたライトと再戦しようという気概はまさに郊外のチャンピオンに相応しいものだ。

 そんな彼に対し、ライトは一歩前に出た。そして、ベルラムを指さして言った。

 

 「ベルラムか……いいぜ、覚えとこう」

 「なにっ」

 

 その言葉に一瞬だけ呆然としたベルラムだったが、すぐにその顔が怒りへと塗り替わる。

 

 「馬鹿にしてんのか!? それ聞いたのもう3回目だぞ!?」

 『……』

 「……」

 

 パエトーンにジト目で見られたライトは、バツが悪そうにグラサンをかけなおした。

 

 「もういいぜ」

 

 ベルラムが、側にいた走り屋から武器を受け取る。

 それは盾、チェーンソー、火炎放射器が一体と化した究極兵器。

 

 「オレっちらの因縁も今日限りだ! 今日がテメェが地面に這いつくばって汚泥を舐める日なんだよぉ!」

 

 漢同士の決闘が始まる――

 

 『ま、マネモブ?』

 「おいおい、どうしたんだ。そいつは俺との決闘をご所望のようだぜ」

 

 マネモブが無言で踏み出した。

 先ほどまでの軽快なセリフもなく、全くの無言。ともすれば緊張しているようにも見える。

 

 「な、なんだよ」

 

 先ほどまで喋っていたのに、一言も発さない不気味なエーテリアスにベルラムは少したじろぐ。

 そして、カリュドーンの子も走り屋達も固唾を飲んでその光景を見守る。

 

 『…』

 

 ベルラムを見つめるマネモブ。

 瞬間、マネモブの脳内に溢れ出した、存在しない記憶……!

 

 

 

 ベルラム『ボケーッ。服にトーン、はっとけ言うたやろうが』

 アシA『おいっ。ジャワティー買ってきてくれ』

 ベルラム『なんじゃあ、この汚い処理は』

 マネモブ『あのう、チンチン見せましょうか?』

 アシC『顔にトーンはりますか?』

 ベルラム『そんな時間あるかあ』

 マネモブ『あのう、肛門見せましょうか?』

 

 〆切数時間前の、スタッフ達との壮絶な会話である。

 

 

 

 『

  猿

  渡

  哲

  也

   』

 「な……なんだあっ」

 

 マネモブが、ベルラムの前で手を合わせている。

 それはまるで、拝んでいるような姿に見えた。

 

 『猿渡先生のパワーには頭が下がります!!』

 「さ、サルワタリセンセイってオレっちのことか!?」

 

 マネモブは、猿渡先生=猿=オランウータン=オランウータンのシリオン=ベルラム、という安直な連想ゲームの果てに、ベルラムを別人と同一視していた。

 これがエーテリアス化するはるか以前から強烈なミームを脳に植え付けられ、エーテリアスになっても正気を失わなかった者のなれの果てである。

 

 『猿渡先生はエライ!! カラオケ大好きの編集者と、裸踊りやSMショーを毎夜仕事場でくりひろげる変態アシスタントに囲まれ、日夜白い原稿用紙と闘い続ける孤高の姿は、見る者の胸を打たずにはおきません。思えば、トランクひとつを抱え姫路から出てきて以来十数年。数々の難局を乗り超え、質の高い作品を描き続けるパワーとエネルギーには、担当編集者として頭が下がります。』

 「何を言ってるんだ?」

 『ベルラムを漫画家の先生と勘違いしてるみたい。そんなに似てたのかなぁ?』

 「イカれた職場ですわね」

 「ふむ……」

 

 凄まじい職場で働く漫画家と勘違いされたベルラムはと言うと、何やら考え込んでいた。

 そして、意を決したように口を開いた。

 

 「なぁ、紙とペンあるか? 誰でもいい、持ってないか?」

 「紙? あるにはあるが……何をするんだ?」

 

 ライトは、バイクの収納スペースから紙を取り出した。

 何の変哲もないA4サイズのコピー用紙である。

 

 「ちょいと時間をくれよ」

 

 紙を受け取ったベルラムは、その辺に捨てられていた机に向かう。そして、軽く塵を払いのけてから何かを書き始めた。

 

 「何を書いてんだ?」

 「わからん」

 

 数分、十数分程度だろうか。

 その異様な光景は時間の経過を忘れさせる。

 

 「ほれ、できたぞ」

 

 やがてベルラムは、何かを書いた紙をマネモブに渡した。

 そこには……

 

 「なぁっ!?」

 「うおっ、すげぇ……」

 「い、意外な才能ですわ」

 「わ~すっごーい! 写真みたーい!」

 「あの漫画家を思い出すぜい」

 

 まるで写真かと見まごうほどの精巧なタッチで描かれたマネモブ。

 筋骨隆々の肉体に刻まれた傷、筋肉に浮き出た血管、マネキンのような顔すら様々な感情を内包している。

 今にも動き出しそうなそれは、今まさにベルラムが描き上げた至高の逸品。

 

 『うまっ』『だけど…』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』『うまっ』

 「落ち着けマネモブ! うおっ」

 

 マネモブは丁寧に紙をライトへ押し付けると、両手両膝を地面について頭を下げた。

 

 『ありがとうございました』

 「い、いや頭を上げてくれ! そこまで感謝されるようなことじゃない!」

 

 ベルラムはかなり焦った。

 気まぐれではない。先生という言葉に心動かされての行動だったが、ここまで感謝し倒されるとは思っていなかったからだ。

 これが人間ならまだ分かるが、マネモブはエーテリアス。何を考えているのか分からなかった。

 

 「意外だな。俺達みたいな郊外の連中は荒事と運転しか能がないと思ってたが」

 「……まあ、昔取った杵柄ってやつさ。郊外じゃ必要ないって思ってたが、まさかここまで喜んでもらえるたぁ思ってなかったが」

 「すげぇ……我らがチャンピオンにこんな特技があったなんて」

 

 カリュドーンの子にも、走り屋達にも賞賛される。

 ベルラムのアートスキルはそれほどまでに高いものだった。

 だが、彼らはここで揉めていた事実を忘れていた。しかし、今更蒸し返すのもアレである。

 

 「……」

 「……」

 

 彼らの間に気まずい空気が流れた。

 呑気に喜んでいるのはマネモブだけである。

 

 「あー……ライト。決着をつけるか」

 「……そうだな」

 

 気を取り直して決闘が始まろうとした時だった。

 

 「あっ」

 『えっ』

 

 ベルラムが、自分の火炎放射器を取ろうとして足をぶつけてしまう。

 それにより、偶然にも引き金を引かれてしまった武器が、勢いよく炎を噴射した。

 その先には……五体投地しているマネモブ。

 

 『ウアアア炎ダーッ助ケテクレーッ』

 『マネモブー!?』

 「うああああ悪ぃ! 悪ぃ!」

 「何してる!? 早く消せっ!」

 

 激しく炎上するマネモブを、その場の全員が協力して消火しようとする。

 しかし、可燃性の液体を多量に浴びたマネモブの炎は中々消えない。

 

 「畜生! 水とか氷があれば!」

 『いたよガブットボンプが!』

 「「「「「「でかした!」」」」」」

 

 運よくその辺を歩いていた野良ボンプのおかげで消火できた。

 ここまで協力したのだ。もう話し合いで解決してもいいだろうと誰もが思っていた時だった。

 

 「見つけたぜ、ターゲット」

 「な、なんだあっ」

 

 ぞろぞろと、多数の人物がやってきた。

 誰も彼もが堅気とは思えない、郊外で鍛え上げられた走り屋達ですらたじろいでしまうほどの危険なオーラ。

 

 「郊外はどんな場所かと思ったが……案外大したことないな」

 

 一番前にいる人物……右腕が、赤いプラスチックのような質感の義手になった男。

 対侵蝕装備を何一つつけていない彼は、その右手で掴んでいたエーテリアスの頭部を握り潰した。

 

 「ククク……しょせんはエーテル技術もない前時代に取り残された原始人達よ。腕っぷしだけしか頼るものがないのよ」

 

 大きな口と小さな目を持つ、半魚人。なんらかの魚のシリオンである人物は、獲物を値踏みするかのように舌なめずりをした。

 

 「何だお前ら!?」

 『ターゲット……まさか!? あんた達はインターノットで』

 「そうさ。キャプテン・マッスルのスレを見てきた」

 

 義手がガシャリと音を立てる。

 

 「“カリュドーン・ラッシュ”。家畜になれなかった害獣退治は俺達がやる」

 「大人しくルーシーとかいう小娘を差し出せば見逃してあげるわ」

 

 現れたのは野蛮人。

 これから真のカリュドーン・ラッシュが始まる。

 

 

 

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