今年もよろしくお願いしますよククク…
「お兄ちゃーん、何食べる?」
「そうだね、何にしようか……」
尊鷹と化した御来光を見届けたパエトーン兄妹は、朝食は何にしようかと考えていた。
チョップ大将の店はまだ開いてない。というか新年なのでどこの店も開いていないだろう。
そう考えていると、店のドアがノックされた。
「あれ? 誰だろう。ニコ達かな?」
「邪兎屋は年明けは稼ぎ時だって仕事に行ったよ。でも本当に誰だろう」
そう思いながらも、アキラが扉を開ける。その先に立っていたのは、驚愕すべき人物だった。
『ジャーン』『ガルシア、食事を持ってきたで』『胚芽パンで作ったブロッコリーと鶏のササミの特製サンドイッチや』『もちろん味付け無しで』
「えっ」
「な……なんだあっ」
高濃度猿侵蝕体マネキン・モブ。
エーテリアスであるはずのマネモブが、さも当然のように六分街を練り歩いていた。
「マネモブ!? どうやってホロウの外に!?」
「と、とにかく中へ入って! 誰かに見られたら不味い!」
『なにっ』
マネモブは兄妹に引っ張られ、半ば強引に店内へ入った。
そして、店が物珍しいのか、並んだビデオを見回している。
「それで、どうやってホロウの外に出たの?」
トントン。
マネモブは、自身が背負っているものを指さした。
「これは……音動機?」
それは音動機だった。
三本のロボティック・アームがせわしなく動いている。
だが、これと何の関係があるのか分からない。
「みたいだけど……Fairy、何か分かる?」
『これは音動機を改造し、逆にエーテルの侵蝕を促す“逆音動機”というべきものでしょう。マネモブは自身の高いエーテル濃度を灘神影流の技によって半固定化し、自らが小規模の共生ホロウとなってここまで来たようです』
「何を言ってるんだ?」
『つまり、短期間ならホロウ外に出られるということです。これもあの尊鷹と化した太陽の影響でしょう。この奇跡は今日の午前までしか持ちません』
「なおさら謎が深まったけど……まあいいか!」
兄妹は深く考えないようにした。
「で、何持ってきてくれたの? サンドイッチとか言ってたけど」
『ジャーン』
「これは……すき焼きの材料じゃないか」
マネモブが持ってきたのは、すき焼きの材料である。
どこで手に入れたのかは分からないが、新鮮で美味しそうだった。
「新年からすき焼き……まあいいか! 早速作ろうよ!」
「マネモブも一緒に食べよう」
『あざーす』
アキラとリン、マネモブはキッチンですき焼きを作り始めた。
兄妹は、マネモブの手際が意外と良いことに驚いていた。普段から料理をしているのだろうか。不摂生な兄妹はエーテリアスに負けてはならないと思い、たまには自炊することを誓った。
「うわぁ、美味しそう!」
「会心の出来ってやつだね」
『ニンニクをカリカリに焼いてやねぇ、ステーキソースで食うのもええけど塩で食うのもウマいで!』
鍋の中では、グツグツと具材が煮えている。
玉子も酒も忘れず用意されており、準備は万端だ。
「いただきます!」
「いただきます」
『いただきますっ』
すき焼きを食べる。
肉をといた玉子に絡めたり、そのままの味を楽しんだり。
3人で協力して作り上げたすき焼きはとても美味しかった。
「美味しいね! たまには手作りも悪くないかも」
「苦労して作ったら、その分美味しさも増すね」
『しかも今日は一家団欒の象徴スキヤキや』『あれっ玉子は?』
「ダメでしょマネモブ、玉子を先に全部食べたら」
『すみませんちょっとやりすぎました』『でも僕はまだ能力の半分も出してないんです』
「僕の玉子をあげよう」
『ありがとうございます』
「あっ、もうお肉がないよ。ちょっとお肉だけ食べ過ぎじゃない?」
「大丈夫。マネモブが持ってきてくれた分がまだたくさんあるから」
『そろそろ肉が喰いたいですね』『…
「お腹壊すからやめなよ」
「野菜も取ってあげよう」
『パパ感謝するよ』
「あっ、このドリンク美味しい。ハチミツの味がするね」
「どれどれ……おっ、寒い季節にはピッタリだね」
『ハチミツをたっぷり入れたスビテンは体の芯まで熱くなる』
3人は談笑しながらよく食べた。
そして、新年なのでお互いに言うべき言葉があったことを思い出した。
「あっ、忘れてた! マネモブ、あけましておめでとう!」
「あけましておめでとう、マネモブ」
『おめでとう!』
なぜか拍手するマネモブだった。
こうして、アキラ、リン、マネモブは笑顔で新年を迎えたのである。
『逆音動機・ミニGKドラゴン・リバース』
・マネモブが廃棄された音動機を使用して作った、逆音動機。
本来はエーテル侵蝕を防ぐ音波を出すのだが、逆に侵蝕を促すリズムを発しているという常人には無用の長物。
しかし、マネモブというエーテリアスが使用することによって、少しでもエーテル濃度が高ければホロウ外に出られる悪夢の機械と化す。
ただし、ジャンク品なのでめちゃくちゃ壊れやすい。ホロウに帰った後はすぐに壊れた。