高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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ほぼ雑談でごめんなあっ


私は憂いています。教団の将来を、始まりの主の未来を 3

 ホロウの外、郊外のとある荒野にて。

 

 「ウ…ウソだろ、こ、こんなことが、こ…こんなことが許されていいのか」

 「そんな……」

 

 邪兎屋は絶望し、六課は息をのんでいた。

 

 「店長ォ!? い、一体何があったってんだよ!?」

 「すまない……守り切れなかった」

 

 ホロウから出てきた雅が抱えていたのは、リン。

 ただし、その肌は蒼白に染まり、血の気が通っていない。呼吸もしておらず、すでに生命活動を停止していることは明らかだ。

 

 「落ち着いてください。一体なにがあったのです?」

 「あれは、ホロウの出口の直前でのことだ」

 「寒い雪の日の朝……!?」

 「アンビー、マネモブのマネはよせ」

 

 

 

 リンが機械を操作していると、マネモブが話しかけてきた。

 

 『なあ春草』

 『どうしたの?』

 『破心掌!!』

 『はうっ』

 『な……なんだあっ』

 

 突如として行われた、マネモブの凶行。

 胸部に掌底を打ち込まれたリンの目から光が失われ、倒れ伏した。

 青白く変色した肌の色、止まった呼吸。間違いなく死んでいる。

 

 『貴様ッ!?』

 

 雅が刀に手をかける。

 神速の抜刀は遅れて斬撃がやってくるほどのスピード、さらにリーチは広範囲に及ぶ。

 絶対に逃さない必殺の間合い。マネモブがピクリと動くと、雅は躊躇いなく刀を抜いた。

 

 『バイバイ』

 『待て――逃したか……』

 

 極寒の冷気をまとった斬撃が放たれた瞬間、マネモブは周囲へ溶け込むように消え去った。

 雅でさえ驚くほど気配が薄まり、やがてマネモブはその場から去ったことが理解できる。逃げられた。雅はそう感じた。

 

 『くっ……』

 

 雅は倒れ伏したリンを抱え、ホロウの出口へと向かった……

 

 

 

 「――ということがあった」

 「ふうん、そういうことか――ってどういうことだよえーっ!? マネモブは人を襲わないんじゃねーのかぁ!?」

 

 ビリーが叫んだ。

 マネモブは自身が襲われない限りは人へ危害を加えたことはなかった。

 それを知っているからこそ、彼らは余計に混乱しているのだ。

 

 「どいて!」

 

 その時、ニコが皆を押しのけ、リンの側までやってくる。

 リンの身体を軽く検分すると、顔はリンへ向けたまま雅に質問を投げかけた。

 

 「マネモブは確かにハシンショウを使ったのね?」

 「あ、ああ」

 「なら問題ないわ!」

 

 ニコがボキボキと指を鳴らした。

 その姿に、全員が嫌な予感を覚える。

 

 「一体何を――」

 「しゃあっ“ナダシンカゲリュウ”!」

 「えっ」

 「なにっ」

 「な……なんだあっ」

 

 ニコがリンを羽交い絞めにすると、思い切り膝で背中を打ち付けた。

 死体蹴りみたいな鬼畜な光景に皆は驚きを隠せなかったが、もっと驚いたのは次である。

 

 「ゲホッ! ゲホッ! な、何がどうなったの……?」

 「店長が生き返ったあっ」

 「恐らくゾンビだと考えられる」

 

 リンが息を吹き返した。

 

 「ううん、どういうことだ」

 「ナダシンカゲリュウ・マジックよ。一時的に仮死状態にする技が()()()()あるわ」

 「……あ! マネモブと最初に会った時のやつか!!!」

 「エーテルの力場から逃れたあの技ね。でもどうしてニコがナダシンカゲリュウを……」

 

 その場の誰もが思っている疑問に対して、ニコは胸を張って答えた。

 

 「知ってるかしら? マネモブはタフ・ホロウに道場を構えてることを」

 「もしかして、親分が最近ちょくちょく出かけてたのって、ま、まさか……」

 「ナダシンカゲリュウ……受講料が高いと聞いてたけど、また借金したの?」

 「ち、違うわよ! 受講料が高いのは街中の道場だけ! タフ・ホロウの方なら自力でたどり着けば受講料はタダになるの!」

 

 そう、マネモブの運営する灘・真・神影流の本部はホロウ内にある。

 自力でそこへたどり着くことができれば、受講料はタダになる。ちなみにエーテル適正が低い者のために、街中の道場でも特定の課題をクリアするとタダになるシステムがある。

 

 「あたしはマネモブ直々にナダシンカゲリュウを教えてもらったの」

 「じゃあ親分アレできんのか!? “ゾウカイ”とか“タマスベリ”とか!」

 「それは……教えてもらえなかったわ。時間もないし危険すぎるからって」

 「そう……じゃあ何を学んだの?」

 「ナダシンカゲリュウの活法よ」

 

 ニコは続けた。

 

 「ナダシンカゲリュウはもともと活殺自在の暗殺拳らしいのよ」

 「暗殺拳が堂々と道場運営していいのかなぁ?」

 「あたしが学んだの活法、つまり人を活かす技術。マネモブは武術の観点から緊急時の応急処置とかを教えてくれたわ。仮死状態からの蘇生法もね」

 

 ニコが学んでいたのは、灘の活法。

 支援の方が向いているニコの気質を見抜いたマネモブは、灘の施術を教え込んだのだ。

 もちろん悪用するとマネモブがキャプテン・マッスルに依頼してニコを標的にしたジェントルハウス・ラッシュを開催する契約になっている。

 

 「つまりはどういうことだ。マネモブはリンを殺す気ではなかったというのか?」

 「そうね。マネモブが殺す気でハシンショウなんか使えば内臓も脳も何もかもグチャグチャになるわよ。ただ心臓を止めるだけでも……こうしてあたしの腕で蘇生できる程度となれば、殺す気はなかったと見ていいわ」

 「だ、だよな。マネモブが何の理由もなくこんなことするとは思えねえ」

 「マネモブなら確実に仕留めるために禁断のハシンショウ二度打ちする」

 

 最初期からマネモブを見てきた邪兎屋だからこそ、マネモブを信頼していた。

 金やその他報酬を欲しがることなく、ただ献身的に人助けと道場運営をするその姿をずっと見てきたのだ。

 

 「それに……」

 「それに?」

 「マネモブのナダシンカゲリュウなら、仮死状態になった人のエーテル侵蝕を抑制する効果があるらしいのよ。だからマネモブは仮死状態にしたんじゃないかしら? ほらビリー、郊外でホロウに入った時、パエトーンは気を失ったんでしょ? その時に知ったんじゃない?」

 「あ! 確かにその時マネモブに話した記憶があるぜ!」

 

 マネモブはリンがホロウに長くいられないことを知っていた。

 だからこそ、マネモブはリンが侵蝕症状にさらされる前に仮死状態にしたのだ。

 

 「そうだったのか……マネモブには悪いことをしてしまった」

 「あいつもわざと憎まれ役を買って出たんじゃない? ま、気にしなくていいと思うわよ」

 

 ニコが手をひらひらと振る。

 その時、リンが疑問の声を上げた。

 

 「あれ? そういえばパールマンは?」

 「ごめーん、連中に攫われちゃった」

 「えっ」

 

 その後、責任を感じた六課がホロウへ急行した。

 そしてバレエ・ツインズらへんの反乱軍は全滅した。

 

 

 

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