猿濃度をより高くするためには仕方ないと考える反面、あまりにも原作沿いすぎてダメだろという思いもあるッ
後半から猿が滲み出ていると思われる
次話はもっと猿があるからゴメンなぁっ
ポート・エルピス付近のホロウにて、ブリンガーが逃亡をはかっていた。
流石は現場からの叩き上げというだけあってかなりの速度とスタミナを有していたが、追跡者にそれは通用しない。
「ハァ……! ハァ……!」
『止マレヤンケブリンガー副総監! オ前ガ変態野郎デアル証拠ハ上ガッテルヤンケ』
時速100キロ以上、疲労という概念の存在しない鋼鉄の戦士。
トダーが六課の面々と共にブリンガーを追い詰める。移動力が高く、ロボットなので治安官ではなく治安局の備品扱いのトダーは色々と便利な存在だった。
さしもの肩幅が広くてガタイの良いブリンガーも、恐るべき人型ロボットからは逃げきれなかった。
「鉄屑如きが……!」
『ジャア、ソノ鉄屑ヨリ遅イオ前ハタダノ屑ヤンケ。良カッタヤンケ、ホモレイパーノレッテルヨリハマシヤンケ』
「私はそんなことはしていない!!! それは無実だ!!!」
勝手にホモレイパーに仕立て上げられたブリンガーには同情するが、今までの所業を考えるとまだ温い。
「止まれ!」
「投降しなさい、ブリンガー副総監……いえ、“容疑者”ですね」
六課の悠真と柳、蒼角、イアスも追いついてきた。
トダーに追従している時点で、彼らはめちゃくちゃ足が速い。
「流石、六課だ足が速い。いいだろう……こちらとしても、その方が好都合だからな」
『ソノ注射デ何スル気ヤンケ? オ、オ前、変ナ薬デモヤッテルヤンケ?』
追い詰められても不敵に笑うブリンガーが取り出したのは、デカい注射器。
大柄なブリンガーの大きな手からはみ出ていることからして、その大きさがうかがえる。
「変なクスリよりももっと
ブリンガーが自らの腕に注射器を突き刺す。その直後、ブリンガーが異様な気配をまとう。
「始まりの主よ……再創を……!!!」
ブリンガーの身体を中心に、謎の紋様のようなものが広がる。
それは六課とトダーの手前で止まるが、周囲のエーテル結晶などは侵蝕され、禍々しい光を帯びていた。
「えっ、なになに?」
『エーテル活性上昇! 気を付けて!』
ブリンガーが、エーテルに包まれ姿を変える。
まるで入れ替わるかのように姿を変えたブリンガーは、手のひらに目玉をつけた巨大な手と化していた。
『前モ大概ダッタケド図体ダケハデカイヤンケ』
その場にいる者達をめがけて、ブリンガーの拳が振るわれる。
大きさ=脅威。質量とは人間、エーテリアス問わず万人に与えられた正義なのである。
『避けて!』
拳を軽々と避ける六課とトダー。
この程度でやられるようでは今頃生きていないし、ブリンガーも殺せたとは思っていないようだ。
手のひらの目玉から、さらにブリンガーが姿を現す。
「ブリンガーの奴……まさかエーテリアスに!?」
右手は異様に肥大化し、左腕は剣のように。
下半身はまるで蛇のごとく。わずかに副総監だった頃の服装らしきものが胸部に存在するのみ。
彼は今や、エーテリアスとも言い難い異形の存在だった。
『随分ト男前ニナッタヤンケ色男。エーテリアスニハキットモテモテヤンケ』
戦いの行方は……!?
『ぐああああ!?』
『弱ッ、弱スギルヤンケ。コイツタダノ見セ筋ヤンケ』
結果はブリンガーの惨敗、ボコボコにされていた。
ブリンガーはデカい手があるくせに(足は無い)手も足も出ずに叩きのめされ、コンテナへと叩きつけられていた。
「しんじゃった?」
「油断はできません」
六課が慎重に近づく。
だが、落下したコンテナの奥ではブリンガーがエーテル容器を握りつぶしていた。
『もう遅い! しゃあっ』
ブリンガーの拳がコンテナを破砕する。
しかし、それはあくまでブラフに過ぎない。真の狙いは、六課の背後から現れた巨大な拳である。
「まずい!」
『う あ あ あ あ』
直撃はしなかったものの、全員が吹き飛ばされる。
その先は人工の崖。つまり、高所から落下していた。
特に丸っこくて空気抵抗の少ないイアスの落下スピードは速かった。悠真が手を伸ばすが届かず、ボンプの身体が爆散すると思われた時だった。
パエトーンはふと、浮遊感を感じる。
同時に感じたのは、何者かの手のぬくもり。
目を開けるとそこにいたのは……
「ご無事で何よりですわ」
パエトーンの知る限り唯一空中浮遊出来る人、リナだった。
そして、彼女がここにいるということはもちろん、他のメンバーもいるということ。
「ご無沙汰しておりました」
ライカンが慇懃に頭を下げる。
その横ではカリンが笑いながら手を振っていた。エレンは相変わらず不愛想だったが、それでも無事だったことにホッとしている様子だった。
そして、パエトーンが無事だったことを喜んでいるのはヴィクトリア家政だけではない。六課とトダーも同じだ。
「面識が? ……いえ、積もる話は後ですね」
ブリンガーの手が追ってきた。
それはブリンガー本体とは違って理性の欠片も感じられない動きであり、さらに周りにはボムスパイダーにも似た、いかにも自爆しそうなエーテリアスが発生した。
多勢に無勢。ブリンガーを追っているのに、この程度のザコに構っていられない。そんな心情を知ってか、ライカンが口を開いた。
「ご心配なく。ヴィクトリア家政がお力添えします!」
Now Loading......
その場をヴィクトリア家政に任せ、六課は進む。
大量の爆裂虫を倒したり、勝手に自爆させたりしながら進んでいると、コンテナが行く手をふさいでいた。
「迂回しますか?」
「そんな時間ある?」
『トダーナラ頑張レバイケルカモシレナイヤンケ』
「その必要はねぇ!」
「なにっ」
中に物資が入っており、かなりの重量をしているだろうコンテナがいともたやすく吹き飛ぶ。
そして現れたのは、一台の知能重機。巨大なチェーンソーを回転させるその姿は、己の雄姿を誇示するのかようだ。
そして、その上には人影が。
「久しぶりだな! 手え貸すか?」
白祇重工の社長、クレタと会計のクマ、ベンだった。
Now Loading......
白祇重工の手助けによって、六課達は高い場所へと上ることができた。
その視線の先では、ブリンガーが大量のエーテルを吸収していた。
「ううん、どーゆ-こと? ゴハン食べてるの?」
大量のエーテル容器が一塊になり、ブリンガーにエネルギーを供給している。
おおよそ生命体の食事とは思えない光景だが、ブリンガーはもはや人間ではない。
「早く止めさせないと」
『ヤレッ、悠真ッ』
「ロボットに命令されるのはちょっと癪なんだけど……ゴホッ、ゴホッ!」
「浅羽隊員、体調が!?」
「平気です!」
矢をつがえる悠真がせき込む。
彼は病弱であり、不健康に青白く線の細い身体からそのことが分かる。
だが、彼は体調を理由に、あるいは仮病で休暇を取ることはあっても、諦めることはしない。
「スゥー……」
悠真の金色の目には見えている。
エーテルに紛れて浮かんでいる火気厳禁の可燃性液体燃料が。
極限まで集中状態に入った悠真が、矢を発射する。電撃をまとった矢は燃料に引火し、ものの見事に爆発炎上した。
火の手はエーテルを伝い、ブリンガーへと到達した。
『う あ あ あ あ』
ブリンガーが情けない声を上げながら落下する。
大型エーテリアスでさえ無事では済まない爆発でも原型をとどめていることからして、そのタフさがうかがえる。
「ハルマサすごーい!」
『ナカナカヤルヤンケ。オ前アーチェリーノ大会出テ金メダルデオセロシロヤンケ』
「なあ、何でこんな人を小馬鹿にするような言語が簡単に出てくるんだ?」
彼らがわちゃちゃしている時。
悪のスナイパーと化したサラがスコープを覗いていた。その先は悠真……ではなく、ダウンしたブリンガーだ。
いや、彼女の中にも、悠真をサクリファイス化させて場をひっかきまわしてやろうという思いが無かったわけではない。ただリスクを考えてやめただけである。
「始まりの主が……汝を再創せん……」
注射器が発射される。
その効果は、ネオ・タチカワ・スペシャルほどでもないにしろ劇的なものだった。
『うおおおお……!!!』
復活したブリンガーの周りには目玉のようなファンネルが3つ浮かび上がり、色もより禍々しい赤味を帯びていた。
そして、大した溜めもなく光線を放ってきたのだ。
「ナギねえ!」
『しゃあっ』
気合いと共に、光線が放たれる。
当たれば即死の破壊力だったが、六課はなんとか下へと落下することで回避した。
「あのしゃあって掛け声流行ってるのか?」
「なんかヘンだよぉ」
『プロキシ! まだ終わってないわ!』
イアスの通信機能が、ニコの声を届ける。
忠告できるということは近くにいるはずだったが、まだ姿は見えない。
『海岸まで走って!』
『ブリンガーモシツコイヤンケ。ガタイノ割ニハ肝ッ玉ガ小サイヤンケ』
「まだ小細工を仕掛けてくるのか……」
六課とトダー、パエトーンはコンテナを伝って海岸まで走る。
巨大な腕や爆裂虫の妨害があったが、何とかそれらをかいくぐる。
「もうちょっとだ!」
『鬱陶シイ奴ヤンケ。ソンナニトダー達ガ怖イヤンケ?』
幾多もの光線の追撃。
それらを避け続けている彼らだったが、人為的ミスは防げない。
『蒼角!』
「トダー!?」
一筋の光が蒼角を貫かんとした時、トダーが身代わりとして彼女を突き飛ばす。
蒼角は無事だったが、その代償としてトダーの右腕が消失していた。
「トダー……腕が!」
『トダーノコトハ単ナル道具ト思エヤンケ。所詮ハ量産型ノ機械ニ過ギナイヤンケ』
「そんなこと言うんじゃない!」
悠真と柳が蒼角とトダーに駆け寄った時だった。
背後に巨大な手が現れ、ブリンガーがその上にを浮遊している。
『遊びは終わりだッ!』
手が、莫大なエネルギーを溜める。
いくら六課とはいえ、当たれば消し飛ばされてしまうだろう。
「くっ……!」
『安心スルヤンケ。ココデ死ンデモゴア博士ニ頼ンデ記憶ダケバックアップシテ機械ノ身体ニ移シ替エテヤルヤンケ』
「何一つ安心できる要素がありませんね……!」
光線が放たれる。
その直前のことだった。
「伏せろォ!」
『なにっ』
一台のバイクが、手の前までやってくる。
バイクから人影が飛び上がると……
ザ ン ッ
『な……なんだあっ』
手についていた巨大な目玉が斬り裂かれ、その機能を停止する。
そんな芸当ができるのは1人しかいない。
「猪突猛進! お届けだぜ!」
「皆、待たせた」
「課長!」
『雅さん!』
『ナイスタイミングヤンケ』
「早かったわね! さっすが覇者!」
カリュドーンの子、邪兎屋、そして雅の到着だ。
多勢に無勢のブリンガーには過剰戦力を超えた過剰戦力。
『星見雅……“幻魔”を振り切ったか』
「お前が元凶だな?」
『だったらどうする?』
「なに、容疑者を確保する……修行だ」
異形と化したブリンガーを前にしても、雅の態度は変わらない。
それどころか、普段よりも冷静さを増しているような気さえもする。
『クーククク! 妖刀の力はすでに私のものだ! それにお前を封じる戦力も用意した!』
「なに?」
ブリンガーが手をかざすと、無数のエーテリアスが現れる。
しかし、単なるエーテリアスではない。まるでトカゲのような特徴を持ったそのエーテリアスは……
『星見雅にコモドドラゴンを放てッ』
「な……なんだあっ」
コモドドラゴン。
大量のコモドドラゴンが皆に向かってくる。
圧倒的物量に怯むことなく迎え撃とうと構えた時だった。
『SHAAッ』
『なにっ』
コモドドラゴンが両断され、消えていく。
「一体誰が……」
『見て! 裂け目から誰か出てくる!』
ホロウの裂け目。
そこから何者かが姿を現す。
まるでマネキンのような頭部、鍛え上げられた屈強な肉体、死人のように生きているクズとも揶揄される最高峰の武人の名は――
『ここがリカルドの家か…?』『ぶち殺してやるぜっ』
「マネモブ!」
「マネモブだぁ!」
『マネモブ!』
「遅かったじゃないのマネモブ!」
高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”
だが、今回やってきたのは彼だけではない。
『紹介しよう』『“犯し屋”スミスだ』
「え、エーテリアスが大量に!?」
『アーマーハティ、ファールバウティ、ゴブリン、デュラハン、タナトス……蛆虫共の大量発生だな、あーっ』
そう、マネモブが引き連れてきたのはエーテリアスだった。
先ほどコモドドラゴンを斬り裂いたのも、デュラハンの斬撃だ。
『多勢に無勢だいっけぇ』
大量のエーテリアスが、コモドドラゴンと激突する。
ティルヴィングやアルペカなど、ザコとすら言われたエーテリアスも頑張っている。
ゴブリンたちが暴れまくり、ニネヴェから貸してもらったホーネット達が飛来する。
「しゃあっ、デケェのはオレ様が……」
「いいや、アレは私の獲物ということになっている」
「えっ」
「すみません、ここまでありがとうございます」
「はぁーっ、もう一残業か」
「終わったらゴハンだー!」
敵意をむき出しにするブリンガーに、対ホロウ六課が立ちはだかる。
「対ホロウ六課」
雅が無尾を抜く。
「いざ参る」
『ゴングを鳴らせっ、戦闘開始だっ』
戦いの火蓋が斬って落とされる――!