高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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クローン・ソルジャーのうた 6

 二体に分身した庭師と、アンビーと11号の戦いは熾烈を極めた。

 剣戟により飛び散る火花、灼熱の火炎、電撃の嵐。互いを狙う刃の全てが、生命を奪うのに十分な威力を秘めている。

 常人には、目で追うことも不可能だろう。だが、一つ分かることは、このままでは埒が明かないということだ。

 

 「はっ!」

 

 11号の剣が、庭師を掠める。

 庭師は、紙一重で二人の攻撃を(かわ)し続けている。

 だからこそ庭師は、拮抗した状況を打破するため、奇策に打って出た。

 

 「しゃあっ」

 「地面を……!?」

 

 庭師が地面を斬り刻み、無数の瓦礫を斬り飛ばす。

 庭師は剣士であり、斬ることにこだわっているが……使えるものは何でも使うタイプだ。最終的に、斬ればいい。そんな考えをしている。

 

 「斬る」

 「くっ……」

 

 驚くべきことに、二人の庭師はその瓦礫を足場にし、縦横無尽の軌道でアンビーと11号に迫った。

 さらに恐ろしいことは、瓦礫に足をついた状態で、さらに地面を斬っているということだ。読めない軌道の中、背中合わせのアンビーと11号は……落ち着いていた。

 

 「対斬殺者……この技が役立つ時が来るなんて」

 「地獄のように叩き込まれた記憶を、身体が覚えている」

 

 アンビーは左手の剣の特殊機構により、右手に持つ剣の切っ先を()()

 万力にも似た機構によって、右手の剣が固定されているのだ。

 

 「……!」

 

 11号は背負った機械を利用し、マチェーテを固定する。

 元々、マチェーテを収める場所があり、そこを利用した。

 

 「……」

 「……」

 

 待つ。

 狙うは、庭師達が()()()に入った瞬間。

 

 (何をするつもりなのか。だが、どんな技でも間合いに入った瞬間に止めてみせよう)

 

 無数の瓦礫を斬り刻み、発生した砂塵を斬り裂き、庭師がついに急襲する。

 自分と同じ大きさの瓦礫が誤認を生み、自分達は二人。まだ()()()()()。ここからさらに布石を重ね、斬る――

 

 み し り

 

 「はっ……」

 

 一瞬の出来事だった。

 みしり、という何かが歪む音がした。

 その瞬間、庭師の右腕は斬り飛ばされていた。

 

 「こ、の技は……」

 

 間合いの外だったはず。

 二人を見ると、剣の柄を指によってギリギリのところで掴んでいた。

 鍛え上げられた握力が、指の力が成せる技である。

 

 「あの虚狩りである星見家に伝わる技、星流れ」

 「お前を討伐するため、かつての星見家当主が我々に伝授したのだ」

 

 その宿願は、達成された。

 庭師の右腕は切断され、接合しようにも、義手を作ろうにも時間がかかる。

 庭師が腕を治すには、闇医者にかかる必要がある。だが、彼女はその闇医者をも治療費と称して斬るという噂が流れていた。

 そんな状況では、誰も直したがらないだろう。

 

 つまり、しばらくは表立って活動できないということだ。

 

 「どうする?」

 

 右腕を失ったということは、今まで拮抗していた状況が崩れたということ。

 天秤は兵士に傾いた。それを理解している庭師が取った行動は――

 

 「逃げる」

 「えっ」

 

 庭師に変化したハンレイから、煙が噴射される。

 単なるスモークであるが、濃く調整されたそれはアンビーと11号から逃げ出すのには十分すぎた。

 煙が晴れると、庭師はすでに姿を消していた。後には、斬り取られた地面が残る。

 

 「任務完了」

 「作戦を終了し帰還する」

 

 どちらにせよ、勝負に勝ったのは兵士達だった。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 「テューポーンか。以前に一度戦ったことがある。侵蝕で暴走し、郊外まで流れてきた機体だ」

 

 ポンペイが、剣一本でテューポーンの猛攻を迎撃する。

 そのパンチのスピードは彼の記憶にあるものとは大違いで、まるでボクシング・チャンピオンがそのまま巨大化したような速度だった。

 つまるところ、ジャブ感覚で岩を砕く殺人パンチを繰り出してくるのだ。

 

 「貴様は何故、金を求める?」

 『私のパーツを維持するには金がかかる。言うなれば……生きるためだ。そのためにお前を倒すッ』

 

 テューポーン・ボロボロの目的はただ一つ。

 自分の信念に反しない限り、生きることである。

 単純明快な答えに、ポンペイはニヤリと笑みを浮かべた。

 

 「その意気や良し! だがガルシアはやらせはせんぞ!」

 

 筋骨隆々の大男であるポンペイが、見た目からは想像もできないほど軽やかに動く。

 脚部、腕部、胸部……あらゆる装甲を斬り裂く。エーテリアスを真っ二つにできる怪力を持つポンペイにとって、この程度は朝飯前である。

 その光景に面食らったボロボロは対応が遅れ、結果的に複数の外装パーツを失うことになった。

 

 『5000万ディニーを我が手に!』

 

 だが、ボロボロとてその程度の損傷は織り込み済みである。

 ノーペイン・ノーゲイン。痛み無くして何も得ず。彼は5000万ディニーを掴むために覚悟してきている。

 

 『デッドエンド・ブッチャーモード発動!』

 「なにっ」

 

 ボロボロの背中から、二本の腕が展開する。

 それはやはりテューポーン・デストロイヤーのものであり……大型エーテリアスさえ失神KOする激しい高圧電流をまとっている。

 

 『消えろッ、エーテリアス!』

 

 ポンペイは、まだ人間体である。

 なぜボロボロが彼をエーテリアスと判断したのか。それは、ボロボロのセンサーがエーテル反応によって相手を判断するタイプだったからである。カメラ・アイは充電が切れ、放置されているのだ。

 つまり、ボロボロからは、ポンペイはエーテリアスに見えていた。

 

 「ぐっ!」

 

 超威力のラッシュを防御したポンペイは、その威力を殺しきれずに後退してしまった。

 暴走を開始する戦闘マシーン、雷撃と打撃の奔流の前に、流石のポンペイも近づけない。

 

 「生きる……か」

 

 分厚いブーツに、ツイッギーが落とした注射器が当たる。

 ポンペイもまた、彼の父親であるガルシアによって生かされている。

 だからこそ。機械だというのに、生きようとするボロボロへ彼は全力を以て応えることにした。

 

 「生きるということは、他者を生かし、他者に生かされるということだ。俺は母親より産まれ、父親より心臓を授かった! それ即ち“愛”!!」

 

 ポンペイが、注射器を自身へと突き刺す。

 その瞬間、ポンペイの心臓は臨界エーテルコアへと変貌する。

 

 『え、エーテル反応増大!? こ、これは零号ホロウ深部のエーテリアスに匹敵するだけの……』

 『俺から目を離していいのか!?』

 

 高濃度のエーテル結晶を砕いて現れたのは、擬似侵蝕体ポンペイ。

 彼の意思に呼応し、同じくエーテリアス化したバイクが駆け付ける。

 

 『俺が貴様に“愛”を教えてやる』

 

 人馬一体、まさにそう表現すべき動きでバイクが動き出す。

 新エリー都、郊外においても匹敵する物のないエンジンを搭載したそれが向かう先は、ホロウに呑み込まれている建物。

 

 『まさか……壁を走っている!?』

 

 重力を無視した高い次元での機動能力。

 ガリガリと壁を削り取りながら、建造物の側面を走る。後には、エーテルの(わだち)が軌跡を残す。

 速度と距離の関係で、ボロボロは手が出せなかった。

 

 『アンカー!』

 『なにっ』

 

 バイクからアンカーが発射され、ボロボロへと引っかかる。

 

 『引きずりまわしてくれるわっ』

 『う あ あ あ あ』

 

 バイクの狂った馬力は、テューポーンさえも引きずることを可能とした。

 

 『ふんっ』

 『あ う っ』

 

 そのまま地面に叩きつけられるボロボロ。

 しかし、まだ終わりではない。

 

 『これでトドメだッ』

 

 ポンペイが、ボロボロの周囲を高速で回る。

 エーテルの(わだち)が、獲物を逃すまいと――炸裂する。

 

 『は う っ』

 

 エーテル・ゲイザーによって爆発した地面に打ち上げられ、空中でボロボロが無防備な姿をさらす。

 電池切れのカメラ・アイが極大のエーテル反応によって機能を復旧する。そこで彼が見たものは、バイクを振りかぶり、己に迫るポンペイの姿だった。

 

 『し ゃ あ っ』

 『う あ あ あ あ』

 

 まるで、列車の正面衝突のような衝撃。

 ボロボロは、必殺の一撃によってその機能を停止する――ことはなく。

 

 『わ、私は何故生きている……?』

 

 パーツは破壊され、腕は取れ、身体からは小さなスパークが生じる。それでも生きていた。

 エンジンを噴かしながら、ポンペイが側にやってくる。ポンペイは、腕を組みながら言う。

 

 『言っただろう。俺が貴様に愛を教えてやると。これも一つの愛のカタチだ』

 『これが、愛……』

 

 そう、ポンペイは戦いを通してボロボロへ愛を教えた。

 ガルシアがポンペイを生かしたように、彼もまたボロボロを生かす道を選んだということだ。

 

 愛を知った機械を最後に、クローン・ラッシュは終わりを迎える。

 

 

 

 

 

 『これは何か愛と違う気がする……』

 『……地獄を見せる愛情もある』

 『わ、私には詭弁に聞こえる……』

 

 終わりを迎える。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 「どわーっ! あ、アンビーがいっぱいいるじゃない!! は、早く仕事と住居を探してきなさい!!」

 「うああああ……あ、アンビーがビデオ屋を練り歩いてる」

 「この展開に一番戸惑ってるのは私なんだよね、怖くない?」

 

 大量のクローン達を連れてきたアンビーによって、邪兎屋もビデオ屋も蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。

 アンビーに聞いても“生き別れの姉妹達が見つかった”と強引に押し通されたので、十中八九クローンだろうなと察することしかできない。

 

 「この映画かっけー」

 「めっちゃクールやん」

 「しゃあっ(転倒)」

 「なにっ」

 「かわいいクッキーの映画だな。うまっ」

 「おいっジャワティー買ってきてくれ」

 「じゃーん、あなたが欲しかったジャワティーはここにはありましぇーん」

 

 ワイワイと騒ぐクローン達を遠巻きに見るツイッギー。

 そんな彼女に、リンが話しかけた。

 

 「何かこの子だけ雰囲気違うね。私リン! あっちはお兄ちゃんのアキラ。あなたは?」

 「私はツイッギーよ」

 「……(ビデオ……神)」

 「こっちでビデオを吟味してるのは……Aよ」

 

 脅威のコミュ力で、早くも仲良くなるリンとツイッギー。

 それをどこか満足そうな様子で見ているのは、半裸のマッチョマン・ガルシアである。

 

 「僕はアキラ。このビデオ屋の店長をやってる」

 「……ガルシア」

 「うん、よろしく」

 

 ガルシアも口数が少なすぎるものの、初めて見た六分街の街並みに興味があるようだ。

 アキラの話を聞き逃すまいと、一生懸命に聞いている。

 

 「うむ」

 「良い光景。小隊時代より和気あいあいとしている」

 

 何より、一番満足だったのはアンビーとポンペイだった。

 そんな風に過ごしていると、ニコが声を上げた。

 

 「確かにウチの従業員のためならいくらでも助けるわよ。でもこんな人数いたら破産するでしょうが、あーっ」

 「いざとなりゃ俺のパーツを売ってもいいぜ!」

 「いや足りないでしょ」

 

 そう、邪兎屋にはこの数のクローン達を養うことはできない。

 何十倍にも増えた人件費によって経済をボコボコに殴られ、犯され……死ぬ。

 流石のイカれたケチっぷりを持つ人面獣心一歩手前のニコでも難しい課題である。

 

 「そこでよ……邪兎屋と業務提携しているところに任せることにしたわ」

 「なにっ」

 

 ニコは携帯を取り出す。

 新エリー都では珍しいガラケーと呼ばれるものだが、中には携帯すら持ち歩いていない者もいるらしい。

 数度のコールの後、電話がつながる。

 

 「もしもし、あたしだけど……ちょっといいかしら?」

 

 ニコが話すその先とは……?

 

 

 

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 『何でもいいですよ』

 「よしっ解決した。これで邪兎屋の経済は救われたわ」

 

 マネモブの経営する灘・真・神影流道場。

 何と、邪兎屋はこの道場と業務提携していた。

 経理からマネジメント、セールス、最近のニーズまで幅広く対応できる邪兎屋との提携は、道場を経営したいマネモブにとって渡りに船だった。

 流石のマネモブも、エーテル資源の採掘(盗掘)だけでは限界があると考えていた。

 

 「それで、預かってほしいのはこの子達なんだけど……」

 『な…なんだあっ』

 

 クローン達がゾロゾロと、和室に入ってくる。

 初めて和室を見るのだろうか、興味津々に畳を触ったり襖に穴をあけたりしている。

 

 『うぁぁぁぁ』『き…鬼龍が廊下を練り歩いてる』

 「練り歩くの正しい使い方ね!」

 

 マネキンのように無表情の少女達。

 まさにマネキン・モブ。マネモブは、彼女達こそ次世代のマネモブだと満足そうに頷いた。

 

 『見事やな…』

 「マネモブが何を想像してるか知らないけど、まあいいわ。大量の人材を紹介する代わり、あの子達の待遇は保証してもらうわよ」

 『何でもいいですよ』

 

 マネモブは常に人材を求めている。

 エーテル濃度の極端に低いとはいえ、タフ・ホロウで活動できる者は何人いても良い。

 

 「この子達の得意なこととか問題とか全部リストアップもしてきたから見といてね」

 『見事やな…』

 「いきなりこの数のお給料払うのは大変でしょ? いいビジネスがあるんだけどどうかしら? うまくいけば黒字よ」

 『見事やな…』

 「あ。後、この子達はアンビーの姉妹よ。アンビーの姉妹ってことは……あたしの妹みたいなものよ。何かあったら呼んでちょうだい、力になるわ」

 

 ニコは、マネモブがクローン達に変なことをやらかすとは思っていない。変な言葉を教えるくらいだろう。

 彼女はマネモブを信頼していた。同時に、マネモブもニコを信頼し、その愛を尊敬していた。守銭奴の部分もある意味尊敬している。

 

 『見事やな…(ニコッ』

 「……えっ? 今あたしの名前言った?」

 『よっしゃあここが勝負や』『一気に畳みかけるんや』

 「ねえちょっと! あたしの名前言ったわよね!」

 『なんじゃあお前目が見えんのか』

 「聞き間違いじゃないわ! 絶対言ったでしょ!」

 『あっ私は全盲だから…それは見えないでやんス』

 「ちょっと! マネモブー!」

 

 事件も解決し、平和が訪れる。

 今日も新エリー都は騒がしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺はキャプテン・マッスルだぁっ

 まだガルシアを倒してないなんてお前達には安心したよ

 5000万ディニーなんてはした金と大切な命で釣り合うと思うなよ

 せめて命ぐらい大事にしてくれよ

 そんな勇気と無謀を履き違えた君たちにいい知らせがある

 “クローン・ラッシュ”という依頼は撤回された

 今回かかった費用

 医療費・抗侵蝕薬・装備の修理…とにかく何でも補填だ

 お前達とガルシアの命さえ無事なら言うことはない

 ただし負傷したなら必ず一報を入れろ

 もたもたしてると超危険エーテリアス“死神医療チーム”が現場に急行するからな」

 

 

 




これでも私は慎重派でね、クローンの数を数えさせてもらったよ
その結果、最低でも32人以上いることが分かった


ちなみに哀しみのレイベンはRuninのキャラだよ
御目ン子は鬼若丸のキャラだよ
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