「こいつがトリガーか…?(11号)」
ストーリー良かったしまあええやろ
炎強攻持ってないしまあええやろ
電気撃破はお青衣がいるしまあええやろ
0号アンビー持ってるしまあええやろ
エージェント指名で心置きなくライカン選べるからまあええやろ
マネモブがホロウの闇をさまよう。
彼が行っているのは日課のパトロール。ホロウレイダーやエーテリアスに襲われている人がいないか、たまに見回りを行っているのだ。
『なにっ』
高台から周囲を見渡すマネモブは、あるものを目撃した。
それは、瀟洒なオオカミシリオンの執事、ライカンが荒々しく何者かと戦っている場面だった。
『ヒャハハハ』『こいつらの試合メチャクチャおもろいでエ』
新エリー都では珍しい徒手空拳のバトラーとして、マネモブはライカンの実力をかなり買っている。
どうせイカれたホロウレイダー紛いの連中をしばきあげているのだろうと高をくくっていたマネモブだったが、ある人物を見て硬直してしまう。
『うぁぁぁぁ』『き…鬼龍が廊下を練り歩いてる』
ライカンの後ろの方にいたのは、エーテル適性が低くてホロウでは長く活動できないパエトーンのリンだった。
――マネモブは知る由もないことだったが、この時のリンはHDDのアップデートによって適性が本来の数値に戻っている。つまり、ホロウでも活動できる状態にあった。
『息の根を止めるべきです』
またホロウに入ってしまったので、ライカンが救出しに来たのだろう。そこを、謎の襲撃者によって足止めを食らっている。マネモブはそう考えた。
マネモブは建物の上を伝い、リン達がいる場所へと降りたった。
ちょうどリンが、激しく火花を散らす2人の間へ割って入ろうとしている。
「2人共、もうやめてっ!」
『その技はやめろ――っ』
「マネモブ様!?」
「な……なんだあっ」
マネモブはリンを突き飛ばすついでに破心掌を打ち込もうとしたが、どうにも位置が悪い。
しかし、2人がピタリと止まったので、ひとまずマネモブも様子を見ることにした。
崩れ落ちるリンを、ライカンが受け止める。
「プロキシ様、ご無事ですか? お怪我は?」
『苦しそうだね』『心臓抜いて楽にしてあげようか?』
「大丈夫!!! 心臓抜くほどじゃないから! というか怪我ないから!」
リンが一息つく。
「イアスの中にいるつもりで間に入っちゃったよ。あの子の身長なら届きっこないし、とか思って……」
『ふうん』『そういうことか』
「安心したまえ店長くん。君が何度飛び込んで来ようと、俺はその度にすぐ刃を収めよう」
『見事やな…』
「お褒めに預かり光栄だ。しかし、君は……」
『…』
マネモブと優男が顔を見合わせる。
そして、マネモブが彼に指をさして疑問を口にした。
『
誰
な
ん
だ
』
「俺はヒューゴ。そのマネキンのような頭部、鍛え上げられた肉体、そして喋るエーテリアス。君はマネキン・モブでよろしいかな?」
『ご名答』『よくわかったね』
謎の上から目線でマネモブが拍手をする。
ちょうどその時、ホロウレイダーが乱入してきたが、実力者が3人もいるので軽く邪魔だクソゴミされた。
その時、マネモブはライカンとヒューゴの折り合いが悪すぎることを知ったが、2人の関係なのであまり口出ししないことにした。
何より、彼には成さねばならない目的がある。
マネモブは、拳をボキボキと鳴らしながらリンへ近づいた。
『クククク待ってろよ』『すぐに殺してやるから』
「えっ」
「なにっ」
「な……なんだあっ」
突如として行われるマネモブの凶行。
マネモブは、リンをエーテル侵蝕から守るため、破心掌によって仮死状態にするつもりなのだ。
「気でも狂ったのですかマネモブ様!?」
『どけハウエル』『俺が最初にいただく』
「ハウエルとは誰だい!?」
「マネモブ様の固有名詞に意味を見出すな! ペースに巻き込まれるぞ!」
ライカンとヒューゴは、なし崩しにリンを守るため、マネモブの前へと立ちはだかる。
マネモブは、彼らがパエトーンのエーテル適正の低さを知らないのだと思った。こうなる前に不意打ちでもすればよかったと考えながら、やむを得ず2人へ拳を向けた。
なお、ライカンとヒューゴからすれば突然マネモブが乱心したようにしか見えない。
『さあ楽しもうぜっ』『リンゴのように皮をむいて一口サイズに肉をカットしてやるよ』
「カットする道具、どこへ!」
「意味を見出すなと言ってるお前もツッコんでいるじゃないかえーっ」
二人の折り合いは悪いが、コンビネーションはそうではない。
出だしから見事な連携でマネモブへと迫る。
「先に言っておくが、この戦いでは冷気は絶対に使ってはならない」
「何故だ?」
「それは……」
『冷気の靄を利用し映像を送り左右の目の視差によって発生する立体感覚』
マネモブが、わずかに残存した冷気を利用して消える。
長くは続かないだろうが、それでも十分なほどのアドバンテージだった。
「消えるからだ」
「厄介極まりないな」
二人が身構える。
姿を消しているのに加え、高速で移動しているのだろう。
ただ気配のみが動く。その気配すらも、まやかしかもしれない。
エーテリアスでありながら武の極致に至った武人のプレッシャーをその身に受けながらも、二人はチャンスを待った。
『しゃあっ』『“幻魔拳”』
「幻魔拳……マネモブ様、この“超執事フォン・ライカン”めを相手に、まさか手加減などなさりますまいな?」
虚空から伸びる魔の手が、ライカンとヒューゴを狙う。
だが、繰り出した技は幻魔拳。その技が、相手を傷つけずして勝つための技であることを知っているライカンは、少し複雑な心境だった。
まるで自分を無傷で無力化してやるという意思表示とも捉えられるからだ。
『長生きは不幸だよなあ陳ジイ!』
「お言葉ですが、新エリー都では老若男女問わず様々な過去を抱えているんですよッ」
「ライカン! 癪だが……合わせるぞ!」
確かに二人はいがみ合っている。
しかし、コンビネーションはまさに阿吽の呼吸。
その連携を前に、マネモブは攻めあぐねていた。
だからこそ、禁じ手に近い技を使うことにした。
『“
「えっ」
「なにっ」
「な……なんだあっ」
マネモブが四人に増える。
これこそ人外たる幽玄の御業、四人霞である。
『死ぬアルヨ!!』
『殺せマーク!! ぶち殺すんだ!! 親父を殴り倒したように!!』
『焦るなよ』『今殺してやっから』
『その前にお前を殺してやるよっゴアッ』
四人が二人へと襲いかかる。
多勢に無勢。増えたからと言って弱体化しているわけでもない。
「しゃあっ」
ライカンの義足は、冷却機能をあえて封印しているせいで本来の性能が出せていない。仕方のないことだろう。誰が冷気によって消える武術を想定して義肢を作るのか。
鋼の脚が空を切る。すかさずマネモブのローキックが飛んでくるが、ライカンは義足でガードする。
執事たるもの、ローキックへの対処法を身に着けておかねばならないのだ。
「はっ!」
ヒューゴも、自身の得物である鎌の性能を引き出せずにいる。
冷気によって消える技を想定して作られた武器などこの世に存在しない。
彼の鎌がマネモブを斬り裂かんと迫る。冷却機能が使えないとしても、殺傷能力はそこらの刃物とは一線を画す。
しかし、マネモブ達は跳躍するか、超低姿勢になることでそれを回避した。
『アソビハオワリダッ』
「良く言いますね、遊んでいるつもりなど無いでしょうに!」
「君の焦燥が手に取るように分かるぞ!」
強がってはいるものの、ローテーションで迫りくるマネモブは脅威的の一言。
マネモブの体力が尽きる前に、二人の体力は尽き、エーテル侵蝕率は危険域に達するかもしれない。
同一人物による連携、あるいはゴリ押しとも言える戦法に、ライカンとヒューゴは追い込まれた。
「ハッ……! ハッ……!」
「どうした、息が上がっているぞ」
「そちらも、玉のような汗が額に浮かんでいるじゃないか」
ホロウでマネモブと持久戦をするということは、マネモブの判定勝ちを意味する。
勝利を確信したマネモブ達が、それぞれ技の体勢に入った。
『覚悟してください』『炎を打ち込みますッ』
「幻覚か? 炎が見える……」
ヒューゴには、マネモブを取り巻く地獄の炎が見えていた。
それは幻魔拳によって引き起こされた幻覚にすぎないが、確かな熱を以て人を襲う。
「どうすべきか――おい、ライカン?」
奥義を目の前にして、リンとヒューゴを庇うようにライカンが前に出る。
「幸いにして私はシリオンです。“タフ”さには自信があります」
『タフ!』
『タフだぁ!』
その覚悟を目にしたマネモブが歓喜する。
どうやら最高峰の技で戦士を葬る腹積もりのようだ。
『覚悟してください』『炎を打ち込みますッ』『灘神影流 秘技…幻魔拳其の二“飛炎地獄”』
「来なさいっ」
うねる炎はライカンへと迫り――
『なにっ』
『えっ』
『ウアアア炎ダーッ助ケテクレーッ』
「えっ」
「なにっ」
マネモブへと命中する。
――タイミングが悪かった。二人のマネモブが、同時に技を繰り出そうとしてしまったのだ。
前に出たマネモブに飛炎地獄が打ち込まれ、幻影の炎にもがいている。
『お…おいスヌーカはどうした? 出てこないよ。焼け死んだのか? だとしたらまずいよ、ドローン飛ばしてる場合じゃないよ。お…俺は放火殺人犯になっちゃうよ』
マネモブ達は流石に焦ると思われたが……
『おめでとう! お前は立派な“殺人者”になった…“殺人”を目的とする灘神影流継承者にふさわしい男になった…』
『ウ…ウソやろ』『こ…こんなことが』『こ…こんなことが許されていいのか』
『ヒャハハハ』『こいつらの試合メチャクチャおもろいでエ』
『何とか言わんかい』『お――っ?』
『お前の母親は淫売のクソ女!!』
『今なにか言ったか龍星』
『人面獣心のクソ野郎と言ったんですよ本山先生』
『てめえに言ってんだよゲス野郎』
『あなたはクソだ』
『無様すぎて哀れだろ…殺してやれ』
『そうか! 君は頭が悪くて他にとりえがないから闘うことでしか自尊心を満たすことができないんだね』『かわいそ…』
『それを言ったら殺されても文句は言えねぇぞ』
『はいっクズ確定ぶっ殺します』
なんと、ライカンとヒューゴ、リンそっちのけでマネモブ同士の醜い争いが始まった。
武の頂とも言える技が飛び交う中、聞くに堪えない罵詈雑言の嵐も飛び交う。
「今の内です!」
「なんという醜さだ……先ほどの戦いぶり、どこへ!」
「まあ見てる分にはいいよね、見てる分には。私達もさっさとここから退場ッ」
三人はその隙に逃げ出したが、マネモブは喧嘩に夢中で全く気が付いていなかった。
苦戦が嘘のように離脱した彼らは、その先で一息ついたのだった。
レイブンロック家に腹を立てたヒューゴはオークションを破壊し、サクリファイス・コアを持って逃走する。