高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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力王既読済みの、“青の騎士は力王でも二つだけセリフがあるので喋らせようとしたら、何か解釈違いになったのでセリフは無しにすル”と申します


涙と哀しき過去…を埋めて――墓から甦る!! 3

 ハルトマンがホロウ内で怪しげな取引をしているという情報を掴んだリン、ビビアン、青の騎士は、件のホロウまで来ていた。

 階段の陰からこっそりと覗き見ると、そこには確かにハルトマンと讃頌会の人間、カミエルが何かを話しているようだった。

 どうやら、ハルトマンがカミエルをサクリファイス・コアの隠し場所に案内するらしい。

 

 「パエトーン様、青の騎士さん、出発しましょう。人面獣心のクソボケジャワティーハルトマンより先にコアの隠し場所に到達しなければいけません」

 「ちょっと言い過ぎじゃない? ま、やってることを考えたらバランスは取れてるんだけどね……あれ? 取れてるのかな。罵倒で済むなら御の字じゃない? ……あ、そうだね青の騎士。ルートは策定済みだよ。でも途中でエーテリアスが出るからその時は二人に任せたよ!」

 「お任せしてほしいのです。パエトーン様のご安全は、わたしと青の騎士さんが守ってみせます」

 

 ビビアンと青の騎士がいれば、リン一人を守ることなど容易い。

 迫りくるエーテリアスやハルトマンの部下をぶちのめしつつ、三人は屋上へと上がった。

 

 「な…なんだあっ」

 「侵入者だ! 箱を守れ!」

 「おい、新入り! 突っ立ってないで早くい行け!」

 「多勢に無勢だいっけぇ」

 「御来光だあッ」

 

 そこにはハルトマンの部下がいたものの、ビビアンと青の騎士の前では鎧袖一触のもとに意識を刈り取られた。

 

 「何だよこのクソ展開。俺たちはヒャッハーって突っ込んですぐやられるザコキャラかあッ、なめてんじゃねぇぞこらあッ」

 

 ヒュンッ

 

 「はうっ」

 

 最後の一人も、青の騎士のボウガンによって心臓を貫かれた。

 いや、出血がそこまでではない。胸に何か仕込んであったのだろう、まだ生きているようだ。

 死の化身、青の騎士だからこそ、いたずらに死を振りまくことをしないのだろう。

 

 「あ、あの箱」

 

 部下達が守っていた箱。

 悪目立ちしない程度に良いデザインと、頑丈そうな作りからしてコアの保管場所にはピッタリだ。

 

 「きっとこの箱の中なのです」

 「待て、あの咎人のことだ。罠が仕掛けてあるやもしれん」

 「罠……確かに」

 

 罠の可能性も考慮し、乗り物をビビアンとリンの盾にしつつ、青の騎士が慎重に箱を開ける。

 そこには……

 

 「……」

 「……箱の中は空っぽなのです!」

 「中身、どこへ!」

 

 まさかここではなかったのかと思われたその時。

 

 「――お前達、どうやってここを嗅ぎつけた!?」

 「ゲッ、ハルトマンじゃん……」

 

 ハルトマンがやってきた。

 だが、彼も何だか焦っているようだ。

 

 「箱の中のコアをどこへやった!? お前達がどこかへやったんじゃないのか!?」

 「はぁ? それおかしいでしょハルトマン。そっちこそまだ隠してるんじゃないの?」

 

 双方、事態が呑み込めていない様子である。

 そこへ、ツカツカと足音を鳴らしカミエルがやってきた。

 

 「ハルトマン様、これがあなたの言っていた“安全な隠し場所”なのですか?」

 「なんにも安全じゃないでしょうが、えーっ」

 

 皆が言い争っていると、背後から声が聞こえてきた。

 

 「――元気そうで何よりね、ビビアン」

 「ディナ!?」

 「寒い雪の日の朝…!?」

 

 ビビアンが驚愕する。

 この場に現れた、所々をベルトでガチガチに巻いた中々にパンクなゴシック・ロリータの少女。

 

 「うふふ……! 嬉しい、私のことを覚えていてくれて……」

 

 嬉しそうな声色の反面、内に秘めたる感情は憎悪そのもの。

 

 「あなたがあんまり元気そうだから、もう昔のことなんてキレイさっぱり忘れちゃったのかと思ってたわ!」

 

 嫌味たらしくディナが続けた。

 

 「どうして病院に行かずにこんなところへ来たの? あなたのせいで死んだ人の悪霊たちが、毎晩夢枕に立って眠れないんじゃなかったの?」

 「あ、あの時のわたしは、本当に何も知らな――」

 「知らなかった? なら、お父様の愛と感心、哀しき過去……そして皆からの賞賛を一身に受けていたあの時……どうしてそう言わなかったの? 本当に何故……?」

 「ち、ちが――」

 「ディナ様、ビビアンお嬢様はあの時……」

 

 もはや泣き出す寸前のビビアンを見かねてか、カミエルが仲裁に入るがディナの怒りは収まらないようだ。

 しかも、途中でコアが偽物だったとハルトマンに飛び火した。突然の内輪揉めに、リン達は困惑していた。

 

 「このコア、偽物だもの」

 「なにっ!? そんなはずはない! このコアは、俺がヒューゴから奪ったものだ! ヒューゴのもの=本物。奴の審美眼は本物なんだ。何の証拠もなく偽物などと……言いがかりもいいところだろうが、あーっ」

 「うふふ……おバカさん」

 

 激昂するハルトマンをよそに、ディナは倒れ伏した部下に歩み寄る。

 あの胸を貫かれた部下だった。ディナは、その哀れな犠牲者の傷口にコアを突っ込んだ。

 

 「あ あ あ あ」

 

 部下がお手本のような絶叫を上げる中、ディナは不快そうな顔をして手を拭った。

 

 「サクリファイスのコアはね、体内のエーテル粒子を短時間で極限まで増幅させるの。つまりエーテリアスになるの」

 「オカルトですね」

 「エリー都K大卒でエーテル力学の博士号を持つあなたでも荒唐無稽すぎた話よね」

 

 部下には何の変化も起こらない。

 つまり、コアは偽物だったということだ。

 

 「では、本物のコアは……?」

 「あなたはどう思う? ビビアン。本物のコアはどこにあるの?」

 

 急に話を振られたビビアンだったが、先ほどの様子とは打って変わって、彼女は毅然とした態度で答えた。

 

 「知りません。本物のコアを持ていたとして、真っ先に砕いていたでしょうけど」

 

 そして、ビビアンはディナを説得しようとする。

 かつて讃頌会に身を寄せていたビビアンは、彼らの“祝福”と呼ばれる恐ろしい儀式に加担していた。

 しかし、それを聞いたディナが激高する。もはや、説得は不可能なほどに。

 

 「最後通牒よ。あなたがコアを渡さないというなら、エーテリアスの餌になってもらうまでよ!」

 「何度も言いますが、コアが手元にあれば真っ先に砕いていたでしょう」

 「――もう殺すしかない……」

 

 ディナが手を上げようとした、その時だった。

 

 「待ってください!」

 「何だ、どうした?」

 「何かしら?」

 

 ハルトマンの部下が、いきなり声を上げる。

 コアの場所を聞き出す、あるいは知る冴えた方法でも思いついたのかと、ハルトマンとディナが聞き返す。

 だが、その答えはいまいち要領を得ない。

 

 「“M”だ、“M”が正体を現すぞ」

 

 部下が指すのは、偽物のコアを埋め込まれて倒れ伏す部下。

 うずくまるように震えているその部下が、“M”であるという。

 

 「あの倒れ伏した部下が“M”……?」

 

 まさか、被虐趣味のことを言っているのだろうか。

 ハルトマンはそういった知識にも精通しているが、今この状況と結びつかない。

 何のことか分からず数秒、その部下を見つめていると、変化が起こった。

 

 バキッ バキッ バキッ……

 

 部下の服が破れる。

 バキバキと音を立てているのは、スマホや銃が潰れている音。

 サングラスとマスクを破壊し、顔に塗られた塗料を拭い去り、それは宣言した。

 

 『我が名は尊鷹』

 「う あ あ あ あ」

 「うああああ……ま、マネモブが練り変装している」

 

 部下の正体はマネモブだった。

 マネモブの体格は人間と同等。スーツを着てしまえば、屈強な人間に見えなくもない。

 さらに手袋で手の色を隠し、顔に肌色の塗料を塗り、サングラスをすれば人間にしか見えないのだ。

 

 そうやって変装したマネモブは、リンを待ち構えるために部下達の中に潜り込んだ。

 全てはリンを仮死状態にし、エーテルの侵蝕から守るために……

 

 『生殺与奪権は我にあり』

 「ヒィィィィ!? に、逃げろ!」

 「えっ」

 「なにっ」

 

 ハルトマンはディナとカミエルを引っ掴んで、車に乗って逃走する。

 

 『それ以来、彼は“救わなくてとも良い命がある”という考えを持つようになる』

 「何の話!?」

 『頭からサクッと喰ってやりますよ』『しゃあっ』

 「パエトーン様!」

 

 マネモブのラッシュがビビアンを襲う。

 それは一発一発に“幻魔”が込められた拳……

 

 『“幻魔拳”』

 「くっ!」

 

 武術の達人であるマネモブだが、必要以上に相手を傷つけることはしない。

 相手が知り合いの味方であるというのならなおのこと、幻魔拳によって無力化を試みるのがマネモブだ。

 しかし、ビビアンとて怪盗集団モッキンバードの一員。その傘から放たれるエーテルによって戦う。

 

 だが、超高速で動き回るマネモブは、彼女にとって相性の悪い相手であることも事実。

 

 ヒュンッ

 

 しかし、忘れてはならないのが青の騎士。

 ボウガンによってマネモブを突け狙う。

 

 『灘神影流“弾丸すべり”』

 「……矢が!?」

 

 ビビアンが驚愕する。

 マネモブの体表を、矢がすべるように逸れていったのだから。

 どういう原理なのかは全く不明。しかし、これで戦力がビビアンだけになった……わけではない。

 

 ヒュンッ

 

 『なにっ』

 

 青の騎士は、ボウガンが効かないと分かるや否や、ビビアンのサポートに専念した。

 矢は弾丸すべりによって防がれてしまうだろうが、それは命中すればの話である。

 

 そこで青の騎士は、あえて当てないように、マネモブの足元を狙った。

 コンクリートに深々と突き刺さる矢は心理的なプレッシャーとなる。しかも、矢そのものが足の踏み場もない状況を生み出し、マネモブは思うように動けない。

 その点、ビビアンはミドルレンジから攻撃できる上、日傘によって浮かぶことができるので何も問題がない。

 

 マネモブには怪我のリスクがある風当身や幻突を放つ選択肢は存在せず、はっきり言って不利な状況である。

 

 『ふうん』『そういうことか』

 「ふふん、そういうことだよ。だからちょーっとお話を聞いてもらいたいなーって――」

 『丁重に連行しろ』

 「えっ」

 「なにっ」

 

 屋上の四隅に、新たなエーテリアスが現れる。

 それは四体のタナトスだった。タナトスのボウガンが三人を狙う。

 彼らはマネモブの招集に応じた比較的温厚な性格のエーテリアスであり、対象を殺さないことに比較的応じてくれた。

 交差するエーテルの矢が、三人を狙う。

 

 「タナトスはダメでしょ」

 「流石にこの数は……!」

 「……」

 

 殺意は感じない。しかし、死ぬほど眠ってもらうという意思は感じる。

 死なないなら最悪やられても構わないかもしれない……諦めかけたその時だった。

 

 『NANIッ』

 『NA……NANDAAッ』

 

 高速で飛行する何かがタナトス達に激突し、黒い液体が飛び散る。

 

 「墨汁……?」

 『犬…?』

 

 墨汁をまとい、飛び去って行くのは一羽のカラス。

 そのカラスが向かう先には、謎の人物が。

 

 「巽宮は吉、杜門に活」

 

 その人物が謎の力によって、まるで階段を降りるように、空中を移動してきた。

 

 『NANDAA KONNA KOUSATEN DE EIGA NO SATUEIKAA』

 『YouTube DARO』

 

 エーテリアスすらも事態が飲み込めない。

 

 「そこは邪気がやばい……やばさの次元が違う。人界の範疇におさまらない、まるで地獄だ」

 『ククク…ひどい言われようだな』『まあ事実だからしょうがないけど』

 

 その人物の言う通り、周囲には邪気……色濃く残るマネモブの“残気”であふれていた。

 彼等との戦闘で行われた挙動の一手一手が、残気として残っているのだ。

 

 「邪気の発生源はお前だな。こんな“残気”を残して……やはり、しょせんはエーテリアスに過ぎなかったか? 灘神影流当主」

 『ほいだらおどれはあの世に送ったろかあ――ん?』

 『Uーッ YARASERO ANIKI OKASIKUNARISOUDA』

 『OCHITUKE KENGO!』

 

 いきり立つエーテリアス共。

 理性のない獣のようだが、しかし知性を持つかのように待っていた。

 

 「お前達も厄が嫌なら、東南へ行け」

 『寒い雪の日の朝…!?』

 「行けって」

 「ど、どうも~?」

 

 リン達が避難する。

 それを見計らったようにマネモブが走り出した。

 

 『多勢に無勢だいっけぇ』

 

 エーテリアス共が一斉に襲いかかる。

 危険度の高いタナトスが四体にプラスし、マネモブもいる。

 ひとかどの実力者さえ己の不幸を嘆く悪夢のような光景。しかし、女はなおも冷静だった。

 

 『SHAAッ』

 「ふっ」

 『NANIッ』

 

 タナトスが先手を取り、女へと迫る。

 しかし、女は紙一重でその攻撃を躱し、蹴りによって反撃までしてみせた。

 明らかな武術の動きに、マネモブが反応する。

 

 『ほう』『風使いか…』

 「風ではないが」

 

 タナトス達の動きは、高い身体能力と反応速度に任せた、見た目とは裏腹に獣のような戦法である。

 それでは高いレベルで武術も使えるであろう女には通用しない。だからこそマネモブが出たのだが……

 

 『しゃあっ』

 「ふん」

 『なにっ』

 

 女から何かが放たれたかと思われた瞬間、マネモブが周囲を取り囲むタナトスごと停止する。

 全員が必死に身をよじるものの、まるで固定されたかのように動けないようだ。女の手には、いつの間にか謎の球体が。

 それに何かされれば、自分達がどうなるかなど容易に想像がついた。

 

 『やめろ』『やめてくれハイド』『やめろッ』

 『UAAAA YAMERO――ッ YAMETEKURE――ッ』

 「……」

 『う あ あ あ あ』

 『U A A A A』

 

 エーテリアス共の必死の命乞いも空しく、女が無言で球体を消し去る。

 すると、周囲の墨汁らしき液体が、宙を漂う符のようなものを取り込みながら収束し……爆散した。

 

 「やっと清々した」

 

 後には何も残っていない。

 その女は、エーテリアスが消滅したことを確認するとリン達の方へと振り向いた。

 

 「お前さんがリンだろ?」

 「そうだけど……」

 「メイフラワーに言われたもんでね。特別な“協力者”が私の助けを必要としていると」

 

 どうやら、この女性は市長の頼みを聞いてやってきた協力者であるらしい。

 

 「あなたは……?」

 

 たった今消滅したマネモブなら『あなたは悪魔王子ですか』と聞きそうだな、などと考えながらリンは名前を聞いた。

 

 「私こそは“雲嶽山第十三代宗主”……儀玄(イーシェン)と呼んでくれ」

 「儀玄?」

 

 何かの組織のトップだろう女性、儀玄は助けに来た理由を語る。

 リンの“気”が良い気であること、指導してくれと市長から頼まれたことを。

 

 「そうだったんだ……」

 「気落ちしているようだな」

 「うん……マネモブが死んじゃったし」

 

 マネモブはエーテリアスである。

 いつかこうなる日がやってくるだろうとは覚悟していた。だが、やはり知り合いの死とは耐えがたいものである。

 

 マネモブが消滅した場所を見る。

 悲し気なリンだったが、儀玄は目を細めて言った。

 

 「手加減できる相手ではなかった……というのはダサい言い分けに過ぎないな」

 「ううん、マネモブは強かったし――」

 「だが私も奴も本気ではなかった。あそこを見ろ」

 「えっ」

 

 リンが、儀玄が指す場所を見る。

 目を凝らしてよく見ると、そこには“気”でできたサークルのようなものが。

 さらにその中心部から、エーテリアスであるブラストスパイダーが湧き出ては爆散している。

 

 「マネモブの“気”が“念”となり、それが結界となっている。エーテリアスすら湧き出るほどに……」

 「じ、じゃあマネモブは……?」

 「あの残気を見ろ」

 

 残気をたどると、何らかの方法で爆発から逃れたマネモブがビルの下へ逃げ去って行く。

 つまり、マネモブは死んでいなかったのだ。

 

 「よかったぁ……」

 「エーテリアスが生きていて安心するのもおかしな話だな。さあ、ホロウを出よう」

 

 皆は、青の騎士の愛馬であるマシンに乗せてもらい、ホロウを去った。

 

 

 




>>それ以来、彼は“救わなくてとも良い命がある”という考えを持つようになる

『救わなくてとも』の部分は恐らく『なくても』あるいは『なくとも』の誤植だと思われるが…
普通にこれで合ってたらゴメンなあっ
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