高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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お変ク展開注意


涙と哀しき過去…を埋めて――墓から甦る!! 4

 色々あってレイヴンロック家が失墜した後。

 リン、ビビアン、ヒューゴ、ライカン、青の騎士は、ディナの恐るべき企てを止めるべくホロウへやってきた。

 

 ディナの目的は人を確率でサクリファイスへと変える薬、精神を支配する薬の合わせ技によって私兵を増やすこと。そのために、何人かの人々が捕らえられていた。

 捕まっていた彼らを救出し、ライカンとヒューゴがホロウ外へ連れて行った後のことである。

 

 リン達の前に現れたディナへ説得を試みる彼女達だったが、それはディナの心のどこかには響いたが意味を成さずに決裂した。

 だが、ディナの実力行使をカミエルが止める――己の身と引き換えに、ディナは無実となる。

 

 「私、カミエルは長期間に渡ってランドンの一人娘、ディナを脅迫。サクリファイスの研究および製造を手伝わせていた。そして、サクリファイスを利用し自らの利益のため、レイヴンロック家と結託していた……つまりディナの行いは全て彼女自身の意思によるものではない」

 「何を……」

 「また、ディナは長期間にわたってカミエルに監禁され、社会で自立して生きる能力がない。よって、彼女の世話をする後見人こそが――」

 「何を言っているのカミエル――」

 「マネキン・モブ」

 『俺ならここにいるぜ』

 「――えっ」

 

 ヌッと現れた屈強なエーテリアス。

 マネキンをそのまま流用したような頭部、鍛えられた肉体。そいつこそ、現状エーテリアス界唯一の武術家、マネモブである。

 

 「こ、後見人って、ま……まさか」

 「はい。ディナ、あなたはこれから灘・真・神影流に入門し、その根性を叩きなおしてもらってください」

 「!?」

 

 灘・真・神影流。

 エーテリアスが興したと話題の流派である。

 主婦に人気のエクササイズから、武の極致を目指すための狂ったシゴキに至るまで幅広く展開している。

 

 門弟には特にホロウレイダー崩れや反乱軍崩れなどの、脛にきずを持つ者が多く在籍しており、中には殺人を犯した者すら存在する。ただしレイパーは確実に殺される。

 だからこそ、今まで人をエーテリアスに変えてきたディナであっても、受け入れを快諾してくれた。

 

 「ま、マネモブ!?」

 『苦しそうだね』『心臓抜いて楽にしてあげようか?』

 「い、いやぁ、遠慮しとくよハハハ……」

 『クククク待ってろよ』『すぐに殺してやるから』

 「ヒェ~怖~……」

 

 口では怖いと言っているが、そこまで怖くはない。

 何故なら後で蘇生されるのは分かっているし、痛みがあるわけでもないのだから。

 ただ、無駄に仮死状態にされるのはごめん被るというだけである。それに、いつまでも誤解したままでは後々面倒だろう。

 

 「では私は失敗作を処理してきます」

 「えっ」

 「マネモブ……ディナをよろしくお願いします」

 『えっ』

 

 カミエルが裂け目へと消える。

 その先には、無数の強力なエーテリアスがひしめいている。

 どうあがいても死、良くても相打ちだろう。

 

 『何やってんだてめぇら!! さっさと()れよ!!』

 「あ、マネモブ! どこ行くの!」

 

 マネモブは裂け目へと飛び込んだ。

 その思考は、自分が介入しなくても助かる者と、100%死地に行く者なら後者を助けようとするという理論的な思考に基づいている。

 リン達も慌てて裂け目に飛び込むと、そこには無数のエーテリアスを相手に一撃で倒していくマネモブの姿が。

 

 「何故、私を助けるのですか? これでも私は讃頌会の人間として様々な悪事に加担してきました。救う価値など……」

 『“愛”って知ってるかこの野郎―――っ』

 「!」

 

 その言葉と共に、エーテリアスのコアが粉砕される。

 カミエルがディナを救おうとするのは後悔……そして、愛。

 マネモブはそれを見抜いていた。

 

 「私に、生きろと言うのですか?」

 『地獄を見せる愛情もある』

 「そう……ですね――はうっ」

 『なにっ』

 

 カミエルに、高濃度エーテルが降りかかる。

 それを成したのは一体のエーテリアス。薬で変異した影響によって妙な化学反応を引き起こし、本来持ちえない特性を持った変異種。

 だが、一瞬でマネモブによってこの世を去った。

 

 「はっ……はっ……」

 『あかんやん』

 

 カミエルがエーテルに浸食されている。

 このままでは死ぬか、エーテリアスになるか。

 それを良しとしないマネモブは周囲のエーテリアスを急いで殲滅すると、彼女へと技を放った。

 

 『破心掌!!』

 「はうっ」

 

 マネモブは、カミエルを仮死状態にした。

 破心掌を使うのは、心臓を止めるには一番手っ取り早いからである。

 これで一件落着――とはいかなかった。

 

 「何を、しているの……?」

 『えっ』

 

 マネモブの背後。そこにはディナが。

 

 「まさか……カミエルを殺したの?」

『お…おいスヌーカはどうした? 出てこないよ。焼け死んだのか? だとしたらまずいよ』『ドローン飛ばしてる場合じゃないよ』『お…俺は放火殺人犯になっちゃうよ』

 「待ってディナ! カミエルさんはまだ――」

 

 マネモブやリンが弁明しようとするが、ディナの目は怒りに燃えている。

 

 「カミエルから、灘・真・神影流に行けと言われた時には驚いたけど……あなたはカミエルを助けるために裂け目へ飛び込んだわよね? だから、その道場へ行くのも悪くはない、なんて考えもしたわ」

 『ありがとうございます』

 「でも、カミエルを殺した奴のところになんて行きたくないわ!」

 『まあそうだろうな』『だけど…』『その技はやめろ――っ』

 

 ディナが注射器を取り出し、自らの首筋に注入する。

 それは先ほど、リン達が壊して回った人をエーテリアス、あるいはサクリファイスへと変える悪魔の薬品。

 効果は劇的であり、ディナは瞬く間にエーテリアスへと変貌を――

 

 「……あれ?」

 「ううん、どういうことでしょうか」

 「ど、どういうことよ」

 

 ディナの身体に変化は起きなかった。

 彼女が訝し気に自身の身体を確認していく。そして、試しに力を込めてみると――

 

 パァン!

 

 「えっ」

 「なにっ」

 『な…なんだあっ』

 

 突然の破裂音。

 その発生源は……ディナの右腕。

 

 「な、なんなのこれ!?」

 

 筋肉によって肥大化した右腕が、腕を縛り付けるベルトを爆発四散させた音だった。

 

 「エーテリアス化じゃない!? 一体どういうこと!?」

 「分かりません……ですが、あの薬は一体……」

 

 ビビアンが注射器を拾う。 

 そこに書いてあった文字こそ……

 

 「“ネオ・タチカワ・スペシャル”……?」

 

 ある博士の作り出した、悪魔の薬。

 ネオ・タチカワ・スペシャルであった。

 

 「もう何でもいいわ! あなた達をぶちのめすことができるなら!」

 

 ディナが、リン達やマネモブに向かって走り出す。

 ヤケクソになったディナは、筋肉ダルマになろうと暴走を止めることはない。

 

 「マネモブは……動く気はなさそう」

 

 マネモブは負い目からディナに抵抗しないことを選んだようだ。

 ならば自分が相手になろうと青の騎士がマシンごと前に出ようとした時だった。

 

 「いえ、わたしが決着をつけるのです!」

 「ビビアン!?」

 「そんなヒョロヒョロでガリガリの身体でこのハイパー・ディナに対抗する気かしら!?」

 

 確かに、ハイパー・ディナにはエーテルも武器もほぼ効かないだろう。

 しかし、ビビアンは懐からあるものを取り出した。

 

 「それは!?」

 「ネオ・タチカワ・スペシャルなのです!」

 

 そう、ビビアンは壊し回った薬から一つだけ薬を拝借していた。

 まさか中身がネオ・タチカワ・スペシャルだとは思わなかったが、ディナに真っ向から対抗するためにそれを使用した。

 

 「ビビアン大丈夫? 筋肉ムキムキになるけど」

 「問題ないのです。今のディナを止められるなら……?」

 

 ビビアンが力を込める……が、何も起こらない。

 力が湧いてくる感覚はあるものの、筋肉の肥大化は全く起こらない。

 

 「あ、それネオ・タチカワ・スペシャルじゃなくて普通にあの薬よ」

 「えっ」

 「なにっ」

 

 ビビアンの使用した薬はネオ・タチカワ・スペシャルなどではなく、普通に人間をエーテリアス化させる薬だった。

 

 「ま、まずいよ……このままじゃビビアンが死んじゃうよ……」

 「その前にディナを倒せば解決するのです!」

 

 エーテルの奔流がディナへと向かう。

 凡百のエーテリアス、いや、強力なエーテリアスでさえも痛手を負うこと間違いない強烈な力。

 

 「そんなチンケな攻撃で神の領域に手をかけたこのハイパー・ディナを倒せると思っているのかしら!?」

 「まだです!」

 

 だが、ディナはそれをただのパンチでかき消してみせた。

 圧倒的な力の差を前にしてもなお、ビビアンは諦めない。エーテルでの攻撃、爆発、衝撃波。

 しかし、あらゆる手を使うも、ディナに手傷を負わせることはできなかった。

 

 「今度はこっちの番ね!」

 「なにを……!?」

 

 ディナが地面を殴りつける。

 それだけで小さな地響きが起き、ビビアンは思わず体勢を崩してしまう。

 だが、それだけではなかった。

 

 「ビビアン避けて!」

 「あ あ あ あ」

 

 ディナの脚が肥大化し、超人的な跳躍力を見せ……ビビアンを踏みつけた。

 

 『キクタの体重は80キロ!! (ネオ)(タチカワ)(スペシャル)の筋肉量は瞬時に50キロは増加する!! つまり130キロの力士がエア・ジョーダンのように高く飛び全体重を乗せて踏みつけているようなもの!!』

 「どうするのマネモブ!! ビビアンが潰れちゃうよ!!」

 『悔しいが…これが最先端科学のチカラだ』

 

 彼らには見守ることしかできない。

 その事実が歯がゆく思えた。しかし――

 

 「まだです……!」

 「まだ立てるのね」

 

 ビビアンは立つ。

 負けられない闘いに勝つために。

 

 「はぁぁぁぁ……!」

 「今度は何をする気?」

 「これは……!?」

 

 ビビアンがポージングを決めると、濃厚なエーテルが彼女を取り巻く。

 そのエーテルが徐々におぼろ気な人の形を取り、ビビアンの背後に立つ。

 

 「あ……あれは!?」

 

 先ほどのビビアンとは何もかも違う。

 姿形は変わっていないのに、まるで磨き抜かれた筋肉が輝いているようにも見える。

 リンはその姿に見覚えがあった。

 

 「わたしはビビアン・マッスル」

 『な…なんだあっ』

 「キャプテン・マッスルだっ、キャプテン・マッスルがビビアンに憑依してるっ」

 

 この勝負の行方は……?

 

 

 

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