高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

52 / 109
うああああ…適当観でも変なクスリの製造・販売をしてる

異性体抗凝固軟膏
目覚回復剤
経脈静穏薬
百露スプレー
邪気払いの粉薬
精神清浄袋

まあ法的に効力の認められたものだったり漢方薬するだろうからバランスはとれてるんだけどね


雲嶽山VS灘・真・神影流 3

 ロアを捕らえた後。目的を聞こうにも頑なに口を割らない彼に対し、マネモブの脅しによって得られたのは活動拠点の位置と、労働者互助会に入り込んだ讃頌会のスパイの情報だけだった。

 それに、彼が製造した薬の影響が消えるわけではない。澄輝坪の人々の侵蝕症状、労働者互助会の暴走が重なったのだ。

 

 「ポーセルメックスをブチ壊せぇッ」

 「労働者を搾取する大企業は打ち壊しだァッ」

 

 物々しい労働者風の人々がうろつき、デモ行進の仲間を集めている。

 しかし、彼らはロアの手引きによって互助会に入り込んだ讃頌会の信者である。

 ロアという司令塔を失った今、彼らは無差別に生贄となる人々を集めて回る単なるカルト野郎共だった。

 

 「なんだぁ、こんな道の真ん中でデモ行進か?」

 「讃頌会だろ」

 

 事実、ロアが作った“解悩水”のエビデンスを提示したネガキャンと、灘・真・神影流門下生の奮闘によって、デモに参加する人々は皆無だった。

 マネモブから灘・真・神影流経由で解悩水の危険性を知ったダミアンによって、新たに大量の緩和剤が無料で配布されたのも大きいだろう。

 

 「ああーっ緩和剤をくれェ、なんでもするから、侵蝕症状に耐えきれないんだあっ」

 「ほらよっしっかり受け止めろよっ」

 「あざーす」

 

 適当観、ポーセルメックス、灘・真・神影流、そして澄輝坪の人々は一致団結し、その全てを解決して見せた。

 讃頌会の思惑はものの見事に潰えたのだ。

 

 「いやぁ、一時はどうなるかと思ったけど、無事に解決したね」

 「ですねぇ、街に平和が戻ってよかったですっ!」

 

 翌日、適当観の縁側に座って一息をついているのも束の間。新たな来訪者がやってきた。

 

 「リンさんに福福さん。ご無沙汰してます」

 「あ、清丸君じゃん。どうしたの?」

 「まさか……道場破りですかぁ~!? 適当観の看板は渡しませんよぉ~!」

 

 アチョー! と何もない空間へ拳を繰り出す福福だが、その淀みない動きは紛れもなく達人のものだった。

 そんな彼女を見て、清丸は首を横に振った。

 

 「ち、違いますよ。うちの宗主が皆さんを呼んでいたので伝えに来ただけです」

 「なぁんだ、そういうことだったんですね! これは失礼、ちょっとお茶を淹れてきますねっ!」

 

 騒がしい福福は、茶を淹れるために奥へと向かった。

 

 「福福さんは、なんというか、その、賑やかな方ですね」

 「声が大きいのは自覚してるらしいよ。清丸君は虎のシリオンは初めて見た?」

 「はい。虎のシリオンは珍しいと聞きますから。そういえば知り合いに虎……みたいな人がいるんですが、その人はとても静かな方でしたよ。福福さんとは違って、大柄な男性でしたが」

 「へぇ、対照的だね。でも大柄で、虎、静かな男の人……うーん、どっかで聞いたことあるような……」

 

 清丸とそんな話をしていると、茶を淹れた福福が帰ってきた。

 

 「お待たせいたしました! ジャワティーしかなかったんですが大丈夫ですか?」

 「ありがとう!」

 「ありがとうございます(ま……またジャワティーか……)」

 

 清丸は適当観にまでジャワティーの侵蝕が進んでいることに戦慄したものの、それを表には出さずに茶を飲んだ。

 その味は、灘・真・神影流の道場で飲んだものよりも美味しかった。

 

 「そういえば、宗主さん……マネモブさんは何と言っていたのですか?」

 「そうでした。宗主によると『これらの写真と賞状を見なさい』『ここはスピリチュアル・サンクチュアリ』とのことです。どうやら、ロア氏の活動拠点を見つけたようです。これがそのデータです」

 

 清丸の取り出したスマホの画面には、讃頌会の研究データなどが写っていた。

 スクロールしていくと、中にはマネモブの自撮りや、何かを吊るす目的であろう謎のフックの写真もある。

 だが、データの中には讃頌会の儀式についてや、司教が来るなどというものも存在した。

 

 「早っ! ホロウでの活動じゃ右に出る人はいないねマネモブは」

 「エーテリアスですからね」

 

 エーテルに侵蝕されない身体と、圧倒的な身体能力でのゴリ押しによって、マネモブはロアの活動していた拠点を見つけ出していた。

 そして、彼らはロアの活動拠点への襲撃によって得たデータをもとに、讃頌会の儀式の邪魔をすることにした。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 一行がデータにあった地点に赴く。

 そこでは、禍々しいミアズマが泥のように蠢き、宙に浮いていた。

 邪悪なるミアズマの中心には、とある人物が。

 

 「よいところに……」

 

 まるでデスマスクのような怪しい仮面。

 自身を神の使徒であると信じて疑っていない白装束。

 背中から生えた謎の赤い翼。

 

 彼らは初めてであるが、その異様な風貌からは、目の前の人物が讃頌会の司教であるということが分かる。

 

 「儀式は始まったばかり」

 『な…なんだあっ』

 

 宙に浮いていたミアズマが、地面を這いずり司教を包む。

 赤いミアズマの電流が迸ると、現れたのはさらに禍々しさを増した司教だった。

 手のようなものが剣を包む。司教はその剣を誇らしく天に掲げた。

 

 「主よ……ご照覧あれっ!」

 

 適当観の面々はすでに構えている。

 いざ戦闘が始まる……というところで、司教が声をかけたのはマネモブだった。 

 

 「マネキン・モブよ。お前にはおあつらえ向きの相手を用意してある」

 『なにっ』

 「マネモブにおあつらえ向きの相手!?」

 

 まさか自分専用の相手を用意されるとは思わなかったマネモブ。

 どんな相手であるかと内心ワクワクしていたのだが、その喜びは急激に冷えて怒りに変わる。

 

 「信徒の一人がホロウからとある旧時代のコミックを発掘した」

 『なにっ』

 「そのコミックには、驚くべきことに灘神影流という流派が登場したのだ」

 

 司教がミアズマの塊を操り、自身の前に配置した。

 そのミアズマが徐々に脈動する。

 

 「そう、お前の灘・真・神影流と酷似した流派だ。私はこのコミックをもとにミアズマへと溶かし……」

 

 脈動したミアズマが人型へと変わる。

 気色の悪いミアズマをそのまま人型に押し込めたような、人型の異形だった。

 マネモブよりも少し小さく、しかしシルエットからは鍛えられていることが分かる。

 

 「新たなるファイターを創り上げた。それがこのミアズマの使徒――」

 

 ミアズマの使徒が、拳を振り上げる。

 そして、高らかに宣言した。

 

 『ワシがホロウ神影流十五代当主のミアズマキイチやっ』

 『な…なんだあっ』

 「喋った!?」

 「面妖な……」

 

 ミアズマキイチと名乗った人型は、マネモブの前へと出る。

 

 『……』

 『…』

 「な、何かバチバチにメンチ切り合ってる……何だかヤバい雰囲気かも!」

 

 マネモブの生気のない頭部と、ミアズマを無理やり固めたような頭部が睨み合う。

 

 『()()()になりたいのォ』

 『しょうがねぇなプライベートで飲んでる時に………』

 

 ガシッ

 二人のファイターが握手をする。

 ミシミシと肉骨が軋みを上げている。まさに、互いの力量を知るための力比べだった。

 

 『やるな熹一…』『まぁ怪力は認めるけど“強さ”とは何の関係もあらへんからな』

 

 だがマネモブは涼しい顔である。

 ホロウで研鑽を続けたマネモブが、今生まれたばかりの怪物に負けるはずがなかった。

 しかし、ミアズマキイチは予想外の手を使った。

 

 『しゃあっ』

 『なにっ』

 「えっ」

 「な……なんだあっ」

 

 握手の途中で、いきなり顔面への攻撃。

 ピシッ、という何かが割れる音。それは、マネモブのマネキン・フェイスが割れる音だった。

 

 「う、嘘でしょう……このようなことが、始まりの主の使徒としてこのようなことが許されていいのか」

 「何でお前も驚いてんだよえーっ」

 

 司教すらもドン引きする卑怯な手。

 あまりのダメージにマネモブは膝から崩れ落ちる――

 

 『悪魔は死なないんだぜ』

 『アハハ……キミ、ごっつぅタフやね』

 

 ことなどなかった。

 マネキン・フェイスは砕け散り、エーテリアス特有のエーテルコアが露出する。

 それによって一般的なエーテリアスと見分けがつかなくなったマネモブだったが、怒りの感情は嫌というほど伝わった。

 

 『お前なんか認めない』『殺す…』

 『やってみろやエーテリアス野郎! ワシの方が強いんじゃあっ』

 

 ホロウにおいて、灘神影流VS灘神影流という壮絶なるタイトルマッチが成立した。

 この戦いの行方は……!?

 

 

 




 【マネキン・フェイス】
 ・マネモブのエーテルコアを覆う外殻のようなもの。
 それなりに脆く、ある程度の衝撃が加われば砕け散る。
 これがなくなってしまうと他のエーテリアスと見分けがつかなくなってしまう。
 その他、小物を入れる収納スペースとしても便利。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。