高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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雲嶽山VS灘・真・神影流 4

 『てめえがアオコーのキー坊か?』『しばきあげたらあっ』

 『おうっ』

 

 まるで策も技も無いような勢いに身を任せた突撃。

 マネモブの、怒りのあまり気がおかしくなったのかと疑うほどの無策を前に、ミアズマキイチは冷静だった。

 

 『しばきあげたらあっ』

 『なんやお得意のナダシンなんとかいう武術は捨てたんか? 好都合やわっ』

 

 力任せの大振りな右手での攻撃を、ミアズマキイチが受け止める。

 小さいとはいえ、ミアズマの塊。その気になればマネモブの剛腕をも受け止めることができる。

 

 『だったら格の違いってものを見せたるわっ』

 『あぐっ』

 

 情け容赦のない金的。

 マネモブに金的が効くかどうかは不明だが、少なくともダメージを与えることには成功した。

 強い威力を持つからこそ、金的関係なしに衝撃が浸透したのだ。

 

 しかし――

 

 『しばきあげたらあっ』

 『えっ』

 

 左手はまだ空いている。

 ミアズマキイチはそれを咄嗟にガードするが、今度はマネモブの両手が空く。

 

 『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』『しばきあげたらあっ』

 『ちょお待てや! 殴りすぎやろうがあーっ』

 

 ガードの上から強烈なデンプシーロールが襲いかかる。

 ただの殴り屋が行うだけでも脅威だが、マネモブは殴り屋を超える格闘のエキスパート。

 腰の入り方から当てる位置、タイミング、腕を引き戻す速度など、全てが神がかっていた。

 

 だが、ミアズマキイチは並みの相手ではない。

 その名が示す通り、ミアズマの塊なのだから。

 

 『なにっ』

 

 とっくにガードは崩している。

 だというのに、まるで堪えた様子のないミアズマキイチを、マネモブが訝し気に見る。

 大型エーテリアスでさえ死に至らしめる拳の連撃を浴びてなお、ミアズマキイチはピンピンしているのだから。

 

 マネモブの顔を見たミアズマキイチは、不浄なるミアズに相応しく邪悪に嗤う。

 そして、得意気に赤黒いモヤを見せつけた。

 

 『じゃーん、ミアズマ・シールドやで。このシールドがあればお前みたいなチンカスの攻撃なんか効かんわっ』

 『殺す…』

 『お前には無理やっ』

 

 ミアズマ・シールド。

 それは、不浄なるミアズマによって身を守る盾である。

 通常のシールドとは違って削り切らずともわずかにダメージは入るが、削り切るまでは大したダメージは与えられない。

 しかし致命的な弱点が存在するそれは、シールドが破られると同時に大ダメージになってしまうということだ。

 

 『破心掌!!』

 

 そんな弱点がある上、マネモブはシールドを貫通する技を複数持っている。

 破心掌もその一つだ。シールドは、内部にまで浸透する気の衝撃波を防いではくれないのだから。

 

 『ばあっ』

 『なにっ』

 「ミアズマキイチが消えた!?」

 

 破心掌は、その名の通り胸部を狙った掌底である。

 だが、その掌打が当たる直前にミアズマキイチの姿が消える。

 

 『しゃあっ』

 『う あ あ あ あ』

 「ま、マネモブーっ!?」

 

 そして、突然現れたミアズマキイチのかかと蹴りが、マネモブのエーテルコアを強烈に打ち付ける。

 

 『お っ し ゃ あ』

 「い、今の技ってまさか……」

 『灘神影流“斧旋脚”やっ』

 

 何のことはない。

 ミアズマキイチが行ったのは、破心掌が当たる直前で身をかがめ、その勢いのまま片手を軸に回転し、下からかかと蹴りを繰り出しただけである。

 今のマネモブは冷静ではない。怒りのあまり、我を失っているのだ。

 

 『うりゃああ』

 「マネモブ! 一旦落ち着いて!」

 

 リンの言葉も届かず、痛みを無視してマネモブが拳を振るう。

 怒りに染まっていたとしても、技のキレが失われることはない。

 むしろ、威力や速度は向上する……しかし、失われるのは判断力……

 

 『捕まえたで!』

 『なにっ!?』

 「スタンディング・サブミッション!? 右ヒジと首がガッチリ極まってる!」

 

 ミアズマキイチがマネモブの右ヒジを絡め取り、首にも手を回す。

 

 立った状態での関節技……スタンディング・サブミッション。

 ミアズマキイチは、マネモブの首と右ヒジをガッチリと極めたのだ。

 繰り出されるのは、その状態からのジャーマンスープレックス――

 

 『うりゃあっ灘神影流“竜斬首落”!!』

 『あ あ あ あ』

 

 ゴ オ ン

 マネモブのエーテルコアが地面へと激突する。

 この時、ミアズマキイチは地面をミアズマ・シールドを張った上で侵蝕することによって、硬度をかさ増ししていた。

 

 

 マネモブの、極小のホロウにも見えるエーテルコアが揺らめく。人間のように血こそ出てはいないが、確かなダメージを負った証拠だ。

 だが、そこはマネモブ。コア一つ取っても、他のエーテリアスとは鍛え方が違う。

 

 『なめんな―――っ』

 『まだ立ってくるんかい。タフやのぉ。でもこれで終いやっ』

 『なにっ』

 「あの技は……!?」

 

 立とうとするマネモブに仕掛けられたのは、まるで巨大なタコのように絡みつく関節技……

 

 『灘神影流“巨蛸固め”』

 『あがっ』『あがっ』

 「マネモブーっ!!」 

 

 締め技が効くかも分からないエーテリアスであるマネモブだが、確かにダメージを受けていた。

 このまま意識が暗転し、訳も分からない謎の卑怯者に殺されてしまうのだろうか。そう思ったマネモブだが、あることに気づいた。

 

 「……あれ? 完全に極まってない?」

 

 技が完全に極まっていない。

 先ほどのデンプシーロールによって、わずかに蓄積したダメージが技を鈍らせたのだ。

 そもそも、ミアズマキイチはダメージを負った状態での格闘戦に慣れていない――それ以前に生まれたてであることも原因の一つかもしれない。

 だからこそ、マネモブはそこに勝機を見出し、腕を伸ばした。

 

 『しゃあっ』

 『あうっ』

 

 マネモブの手が、ミアズマキイチの顔面をクラッチする。

 それは奇しくも、かつてライカンと一戦を交えた際にマネモブが受けた反撃と同一のものだった。

 

 『離せやボケナスッ』

 『あががっ』

 

 ミアズマキイチが強引に技を解除し、マネモブを引き剥がす。

 これ幸いと、マネモブは距離を取るミアズマキイチへと迫った。

 

 『“霞連弾(かれんだん)”!!』『ちゅあらっ』

 『貫き手の連撃!?』

 「速い!? 残像が見えるっ!」

 

 人間の肉体ならまるでハチの巣のようにされる貫き手の連撃。

 距離を取るミアズマキイチ対し、間髪入れずにこの技を繰り出した。

 だが、ミアズマキイチの方が一枚上手だったようで……

 

 『なにっ』

 「避けてマネモブ!」

 

 この時、距離があれば避けられただろう。

 しかし、マネモブはすでに距離を詰めきっており、逃げ場などなかった。

 加えて、霞連弾の残像によって下が見えづらくなっていたのだ。

 

 『“地雷殺”!!』

 『う が あ あ あ あ』

 

 地雷殺。

 足の急所である衛陽のツボを突いて固定し、下から両の脚で蹴り上げる灘の技である。

 エーテルコアに強烈な衝撃を受け、マネモブがふらつく。

 

 『いくらタフやからってこれで終いやわっ! 爆丹拳――えっ』

 「密着した!?」

 

 ふらつくマネモブは、それでも諦めてはいない。

 至近距離からの当て身。クソみたいな男が使っていたその技の名を――

 

 『“不知火(しらぬい)”!!』

 

 不知火。

 威力という点においては本物の衝撃は、ミアズマ・シールドを貫通した。

 その衝撃で内部にダメージを受け、ミアズマキイチは口から血の代わりに不浄なミアズマを吐き出す。

 

 『おげェ〜っ』

 「気持ち悪っ」

 『何とでも抜かせやメスブタァッ! しゃあけどこれは不利やわっ、しゃあっ』

 

 ただの一撃であるというのに、不利を悟ったミアズマキイチが繰り出したのは、意外なことに何の変哲もないタックルだった。

 

 『なにっ』

 『ただのタックルやったらいくらでも切れると思ってるやろ。これならどないやっ?』

 「えっ」

 

 タックルから繋げられた技は――

 

 『はうっ』

 「刃物(それ)はだめでしょ」

 『ワシは拳だけやのうてナイフも使えんねんで? 格闘バカと一緒にすんなや』

 

 隠し持ったナイフでの刺突だった。

 大振りのサバイバルナイフが脇腹に突き刺さり、血の代わりにエーテルの粒子が流れる。

 さらに、ミアズマキイチはそれを抉るようにねじ込んだ。

 

 『う が あ あ あ あ』

 『どやっ? 痛いやろ。ワシも痛かってんで。ちったぁ意趣返しさせてくれや』

 

 それでも痛みを堪えて拳を振るうマネモブだったが、ダメージによって動きがかなり鈍い。

 ミアズマキイチはそれを軽々と避け、マネモブの背後に組み付く――まるで、獲物に吸い付く蛭のように。

 

 「こ、この技はまさか……」

 『その技はやめろ――っ』

 

 この技の共通認識は、“ヤバい”である。

 おおよそ人間に使う必要などないだろうその悪魔じみた技が、マネモブを毒牙にかける。

 マネモブの肋骨にかかった手に、一気に力が籠められる。

 

 『“毒蛭観音開き”!!』

 『う が あ あ あ あ』

 

 肋骨がまるでクローゼットのように開き、大量の液体エーテルが飛び散る。並のエーテリアスでなくとも、戦闘不能の惨状を超えた惨状。

 

 『はうっ』

 

 ついにマネモブが膝をつき、力尽きる。

 それを目にしたミアズマキイチは満足そうに頷き、今度はリンの方を向いた。

 

 『今度は嬢ちゃんの番やのぉ』

 「えっ私?」

 『せやっ。ボコボコにしたあとグチャグチャに犯して殺したるわっ』

 

 リンの背筋に冷たい物が走る。

 儀玄達は司祭と戦っている最中だ。当のマネモブはすでに力尽きている。

 そして、ミアズマキイチの言葉も冗談には聞こえなかった。

 

 「れ、レイプはちょーっと勘弁してほしいかなーって……」

 『つれんこと言うなぁ。ワシと一緒にエロスの泉に溺れようやっ』

 

 ミアズマキイチが一歩を踏み出す。

 リンの脚では逃げることはできないだろう。

 だが、その時だった。

 

 ガ シ ッ

 

 『なにっ』

 「えっ」

 

 ミアズマキイチの胴体が、何者かにクラッチされた。

 

 「マネモブッ!?」

 『ぬおおっこの死にぞこないがあっ』

 

 マネモブのエーテルコアを何度も肘打ちするミアズマキイチだったが、マネモブはまるで意に介していない。まるで意識を失っているかのように。

 

 「マネモブは執念だけで動いてるんだ! でも、何のために――」

 『だからオレたちがいるんだろっ』

 「!!」

 

 無意識の中、マネモブが放った言葉。

 リンはそれを、自分を助けるために立ち上がったのだと魂で理解できた。

 

 『離せっ――ぬおっ!?』

 

 バキバキッ、と嫌な音がする。

 それは、万力のような力によってミアズマ・シールドが貫通し、ミアズマキイチの肋骨をへし折った音だ。

 

 「ジャーマンだ、マネモブはジャーマン・スープレックスを狙ってる!」

 『や……や め ろ お お お お』

 

 ひたすらにもがくミアズマキイチだが、もう遅い。

 マネモブに捕らわれた時点で、逃れる術などない。

 

 「反り返った―――っ!!」

 

 凄まじいスピードで放物線を描くその技は、強引なジャーマン・スープレックスだった。

 

 『あ あ あ あ』

 

 もし、ミアズマキイチに生き残る道があるとするならば、それは“地面が柔らかい”ことである。

 だが哀しいことに、ミアズマキイチは竜斬首落の威力を上げるために、地面にミアズマ・シールドを張り、さらに侵蝕させて硬度を増していた。

 

 だからこそ、死ぬ。

 

 ド コ ッ

 

 「ミアズマキイチが消えていく……」

 

 アイアン木場式ジャーマン・スープレックスと、ミアズマ・シールドの消滅に伴う大ダメージによって、ミアズマキイチはその歪な生を終えた。

 その消滅を見届けたリンは、仁王立ちで静止するマネモブに近づく。

 

 「マネモブ、大丈夫……?」

 

 マネモブからの返事はない。

 いつもなら軽妙な語録で返す所が、黙ったまま動かない。

 

 「ま、まさか死んじゃったなんてことはないよね……?」

 

 返事はない。

 しかし、代わりに激しい戦闘音が響き渡る。

 ちょうど、司祭と雲嶽山の闘いは佳境に入ったようだ。

 

 ミアズマキイチの消滅を見届けた司祭が驚愕を見せる。

 

 「まさかミアズマキイチがやられるとは……では、これで終わりにしましょう!!」

 

 ミアズマの奔流が雲嶽山を包み込む。

 そして、その邪悪な渦は離れた場所にいるリンとマネモブをも呑み込もうとしていた。

 

 「リン……!」

 

 儀玄は符によって背後の弟子ごと身を守ることができる。

 しかし、動けないマネモブとリンは距離が離れていて防ぐことができない。

 わずかに思考を巡らせる間にも、ミアズマが二人を包み込んでしまう。

 

 「……あれ? 何ともない?」

 

 しかし、リンの身には何もなかった。

 それどころか活力さえ湧いて出るような気さえする。

 

 「わ、私とマネモブの周りだけミアズマが届かないの!?」

 

 二人の周りには、ミアズマが入ることが許されなかった。

 まるで儀玄の技のように、見えない壁が存在するかのようだった。

 

 「マネモブの身体から光が……いや、これは、気?」

 

 その発生源は、マネモブ。

 マネモブを中心として、気の膜が張られていたのだ。

 

 「……ありがとうマネモブ」

 

 例え意識がないとしても、その技は友を守るためにある。

 気の膜が、マネモブの残気が、離れた儀玄達の元へと道を作る。

 ミアズマを消し飛ばし、叩きのめす。気で構成されたマネモブ達がリンのために道を切り開いた。

 

 “キー坊は光のある所へ行けっお前はもっと広い世界で生きていく人間なんだ!”

 「! うん!」

 

 リンが走る。

 光り輝く気で構成された、大量のマネモブを引き連れて。

 

 「多勢に無勢だいっけぇ!」

 「な……なんだあっ」

 

 儀玄の元へついたリンが、儀玄へそっと手を添える。

 

 「師匠、私は戦えないけど……こうやって友達を連れてくることくらいはできるんだ!」

 「……見事だな」

 

 リンの言葉に、ニコッとほほ笑む儀玄。

 その言葉を皮切りに、マネモブ達が儀玄へと溶け込むように消えた。

 ――ミアズマがついに彼らの周りを覆い尽くす。

 

 「ククク……」

 

 それを見た司祭はほくそ笑む。

 だが、直後にその笑みは驚愕へと変わる。

 

 「なにっ」

 

 ミアズマの渦から、光が漏れ出た。

 その光は徐々にミアズマさえも巻き込みながら広がり……ついに弾けた。

 

 「ばかな……!?」

 

 確定だった勝利。

 だがそれは覆された。

 

 「姉様……こんな形であなたを識り、あなたに成るとは」

 

 儀玄は夢を見た。

 ミアズマが見せた幻想か、夢を見た。

 確かな過去の記憶を、夢を見た。

 大切な家族との、夢を見た。

 未来への、夢を見た。

 

 「わたしこそは雲嶽山第十三代目宗主――」

 

 輝きを纏い、墨の鳥が飛ぶ。

 その鳥が形を変え、人の姿を取る。

 

 「――儀玄!」

 

 背に現れるは翼。

 その背後にはまた、歴代雲嶽山宗主。そして……異なる流派である灘神影流の宗主達。

 

 「世の諸悪を……灰燼に帰す!」

 

 儀玄、雲嶽山第十三目当主としての覚醒だった。

 

 「世迷言を――っ!」

 

 司祭が果敢に切りかかる。

 狂信が成せる行動なのか、勝利を微塵も疑ってはいない。

 自分は神の加護を受けていると本気で信じ込んでいる野蛮人の一撃。

 

 しかし――

 

 「無駄だ」

 「なにっ」

 

 あっけなく翼で防がれる。

 しかもそれだけでは終わらない。

 

 「はうっ」

 

 雲嶽山と灘の当主達から激しい追撃を受けるのだ。

 さらに儀玄も符を操ったり、灘の当主の動きをなぞることで技を模倣している。

 ただその一瞬の連撃によって、司祭のミアズマ・シールドは完全に消失した。

 

 「がはっ」

 

 後ろに吹き飛ばされながら膝をつく司祭。

 もちろんのこと、その隙を逃す儀玄ではなかった。

 

 「邪崇滅殺!」

 

 儀玄が、邪悪なる崇拝を滅ぼさんと光の鳥になる。

 身をよじろうと、回避しようとする司祭だが、それすらも許されない。当主達によって防がれるのだ。

 

 「破ぁ!!」

 「あ あ あ あ」

 

 司祭は光の鳥によって吹き飛ばされ……硬い壁――またしてもミアズマキイチの置き土産である――に激突した。

 

 「ぐっ……ぐはっ……」

 

 ついに、司祭が崩れ落ちる。

 大部分がミアズマで構成されているであろう身体が、形を保てなくなった。

 決着はついた

 

 

 

 

 

 ――はずだった。

 

 ピィーポォー! ピィーポォー!

 突如として響き渡るけたたましいサイレン。

 現れたのは、一台の異形の救急車。

 

 「あれは……」

 「死神医療チーム……!」

 

 エーテリアス・奪命車の窓から顔を覗かせるのは、死神医療チーム。

 それが真っ直ぐに……司祭の元へ駆けつけた。

 

 『MIAZUMA ENNMEI!』

 「えっ」

 

 二体の内一体が、バケツに入ったミアズマを司祭にぶっかける。

 それによって、消え去ろうとしていた司祭がわずかに延命された。

 

 『SHINNZOU YOKOSE』

 「はぐっ……い や あ あ あ あ」

 

 延命したからには、超侵蝕エーテル無麻酔メスによる解体ショーが待っている。

 巨大な宗教団体ではかなり有力な人物であろうとも、死神には何一つ関係ない。

 彼らにとっては、心臓が格納された、汚いミアズマで構成された肉袋くらいの認識なのかもしれない。

 

 最初は切り刻みながら心臓を抜こうとしていた死神医療チームだったが、途端にその手が鈍った。

 

 『UUN DOUIUKOTODA』

 

 心臓がない。

 それどころか、上半身と下半身へと真っ二つに斬り裂いてしまったところ、何か二人に増えた。

 いや、増えたというのは語弊がある。正確には、上半身の方はそのまま消滅した。

 

 死神医療チームは慎重だった、

 片方が聴診器で、下半身司祭の心音を聞くと……

 

 『SHINNZOU NASHI E-TERUKOA NASHI』

 『UUN DOUIUKOTODA』

 『……』

 

 死神達は顔を見合わせる。

 そして――

 

 『TESSYUUDA TESSYUUSIROッ』

 『ISOGEッ』

 

 速攻で奪命車に乗り、逃走していった。

 

 「何だったんだあいつら」

 「どこでも駆け付けて心臓を取りに来るってガチだったんですねぇ。ザコ狩り専門だと思って舐めてました。明日は我が身ですね」

 「しかし……あの司祭はもう満身創痍だっただろ」

 

 戦いが終わり、見なが集合する。

 そして、足元に転がるのは下半身司祭。

 

 「で、どうするの?」

 『まあええやろ』

 「そんな適当な……ってマネモブ!?」

 「うぁぁぁぁ……エーテルコアが歪に変形してナイフが刺さって肋骨が飛び出てる」

 「良く生きてたな!?」

 『灘神影流マジックよ』『一時的に仮死状態にする技が()()()()ある』

 「絶対やせ我慢でしょうがえーっ」

 

 彼らは取り合えずマネモブの治療をしたが、エーテリアスの治療など未経験なので、人間の応急処置にとどまってしまった。

 マネモブによれば大丈夫らしいが……それはさておき。

 

 彼らは寝転がった下半身司祭をホロウの外へと運んだ。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 「で、本体から善の心だけ分離したのが私! 悪名高き讃頌会の司祭です」

 「ふうん、そういうことか……ううん、どういうことだ」

 

 下半身司祭から話を聞いたところ、本体の記憶はほぼ存在せず、ミアズマを操ったりもできない。

 雲嶽山と司祭の推測によると、死神医療チームの超侵蝕エーテル無麻酔メスの痛みから逃れるため、本体司祭がトカゲの尻尾切りのように善の心を置き去りにしたのではないかということだ。

 

 「善の心、何!」

 「卑怯な行いを見るとドン引きする善性……ですかね」

 

 本体より大分小さい司祭の言葉に皆が思った。

 その程度で善の心を名乗るのか、と。

 

 明らかに表に出してはいけないので、取りあえず司祭はマネモブ預かりとなった。

 

 『俺も嬉しいぜ!』

 

 マネモブはいつものように能天気だった。

 

 

 




「◆エーテリアスなどまとめ」に追加しています



 【光の司祭】
 ・司教から善の心が分離してミアズマにぶち込まれた存在。身長は小さくなってる。
 実力はオリジナルとは程遠い上、讃頌会の知識もほとんど受け継いでいないが場に出ただけでミアズマシールドを張ってくれる。
 ただシールドが破られると大ダメージを受ける仕様は据え置きなので、高い攻撃力を持つ相手がいる時はぶっちゃけありがた迷惑。



 【ミアズマキイチ】
 ・口調や体格は鉄拳伝時代のキー坊そのものだが、中身は卑怯を超えた卑怯な蛆虫。
 挨拶中の攻撃は当たり前、騙し討ち、金的や目潰しなどの反則行為、ヤクザなどルール無用のバーリトゥードを得意とする。また、格闘戦に全くといっていいほどこだわりがなく、ナイフや銃などを平気で使用してくる。相手を挑発し、冷静さを奪う戦法を得意とする。
 しかし、侮ってはならない。ミアズマキイチは格闘戦でもめちゃくちゃ強いのだから。




 『ゴングを鳴らせっ戦闘開始だっ』
 『長生きは不幸だよなあ陳ジイ!』
 『焦るなよ今殺してやっから』
 『アソビハオワリダッ』
 このセリフ、ゼンゼロの戦闘中の敵キャラのセリフみたいで好きなんだよね
 殴り屋あたりが言ってそうなんだ



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