自分でもそこそこの猿展開、猿キャラだと思ってんだ。許してくれよ
「この澄輝坪では4つのグループが勢力争いをしているんだ。ひとつは俺達“灘・真・神影流”、あんたら“適当観”、“ポーセルメックス”、後は死人のように生きてるクズ共」
司教との戦いが終わった後。
適当観にて、灘・真・神影流との会談が行われていた。
この適当観にやってきたのは、灘・真・神影流道場澄輝坪支部を任された免許皆伝の道場長。
姉妹の中でもいち早く技を覚えた、シルバー小隊クローンの一人である。付き添いとして、側には清丸の姿もあった。
なお、お互いの弟子達からはどことなく似てるなぁと思われていた。
「そう、これは俺達灘・真・神影流と、あんたら雲嶽山の戦争とも言える。ある意味、な」
「ふうん、雲嶽山VS灘・真・神影流、ということか」
クローンの少女……ポイズン・リーチはジャワティーをガブガブと飲み干す。
その飲み方はまともな礼節を身に着けているとは言い難く……元は孤児だった儀玄からしても汚いと呼べるものだった。
皆が良く思っていないことを感じた清丸が、すかさずフォローに入る。
「道場長がすみません。彼女、事情があって中身が3歳くらいなんです。礼節はこれから本格的に学ぶ予定なので多めに見てあげてくれませんか?」
「師匠、先輩。僕達からもお願いだ。やむにやまれぬ事情があるんだ」
清丸のフォローに加え、アキラの何とも言えない顔の頼み。
適当観の面々は、踏み入ってはならない事情があるのだと感じた。
だが、これに怒ったのはポイズン・リーチである。
「おいコラ清丸。誰に口聞いてんだあーん? 俺の中身が3歳くらいだと? そのエビデンスは?」
「覚えたての難しい言葉を使おうとするところですね」
「そのエビデンスは?」
「そういうところですよ」
「そのエビデンスは?」
「ほらね?」
子供の口喧嘩としか思えないやり取りだった。
彼女の感覚としては、何時何分何秒、地球が何回まわった時? に近いだろうか。
「道場長、話が脱線してますよ。軌道修正しないと」
「キドウシュウセイってなんだ?」
「話を戻すんですよ」
「ああそうだった……話を戻すが、世間じゃ俺達はポーセルメックスの犬だとかビジネスパートナーだとか言われてるがな、それは違う。お互いに邪魔になれば喰い殺し合う。ライバル同士でしかないんだよ。仲良しこよしのお友達じゃないんだよ」
「ダミアンさんかわいそ……」
ダミアンとしても、マネモブや黒田としてもビジネスパートナーなのだが……ポイズン・リーチはいささか狂犬に過ぎた。
「つまり何が言いたいのかって言うと……お互いに門弟鍛え上げて全面戦争しようぜってことだよ。あんたらも受けてくれるよな? この勝負」
「ちょっと狂犬過ぎないか?」
「何か任侠映画の悪役みたいなこと言ってますよ! 少なくとも道場長の言うことじゃありませんよぉ!」
「流石にこれを受けることは……そうでしょう、師匠?」
リーチは名だたる雲嶽山の噂を聞き、灘・真・神影流とどちらが優れているのかを知りたくなった。
マネモブとしては雲嶽山は術法に重きを置いているので、一概にどちらが優れているとは言い難いと思っているのでそこらへんはノータッチなのだが……
「いいだろう」
「えっ」
「なにっ」
「な……なんだあっ」
「え、いいんですか?」
何と、儀玄はこの申し出を快諾。
「吐いた唾は飲めねぇぜお師匠さんよ」
「心行くまで勝負してやろうと言っておろうが」
リーチは満足そうに頷くと、立ち上がって部屋を後にした。
「そうと決まれば早速弟子の育成だ! 行くぞ清丸!」
「あ、僕は適当観に用事があるんで……先に帰っててください」
「? 分かった」
リーチは襖を開けて出て行った。
気配が遠のくと、清丸はため息をついて言った。
「本当に申し訳ありません……皆さんには迷惑をかけてしまいます」
「いいさ、我々と灘の仲だ。それに――」
儀玄がジャワティーを口に含む。
その作法はしっかりとしていて、洗練されたものだった。
「どちらが上か、というのは気になるだろう?」
「――そうですね、僕もそう思います」
儀玄も、雲嶽山という流派の宗主。そんな思いは少なからずあったのだ。
その答えに清丸も不敵な笑みを浮かべるが、しかし……
「ただ、一つの地域に多大な影響を持つ異なる流派同士で、いつかは衝突は避けられなかっただろう。最悪な形で衝突するよりは、禍根がないようにルールを決めて勝負した方がいい」
「ですよね……」
上の者同士が非常に仲が良くても、多数いるであろう門弟の全てがそうであるとは限らない。
中には血の気の多い者もいるだろう。灘・真・神影流など、ホロウレイダー崩れ、反乱軍崩れの荒くれ者達が足を洗うたための場所、という側面も存在する。
末端同士が勝手に始めるよりは、最初からまっとうな勝負とした方が好都合だった。
「恐らく灘側の実質的なかじ取りは僕がすると思います。こんな大役を任されて……嬉しいやら泣けばいいやら」
「ではルールを決めておこうか」
澄輝坪支部でも屈指の頭脳派が清丸だ。
だからこそ、彼はここに残っていた。
「まずは勝負の方法からですね。まずは戦う人を少人数に絞って、試合という形というのはどうでしょう」
「悪くないな。ではまずその方針で考えようか。何、ダメなら最初から考え直せばいい」
彼らの会談は夜遅くまで続いた。
流石にその頃になると話はまとまり、清丸は帰って行った。
この勝負がどう転ぶのか。それは誰にも分からない。
「清丸……待ってるぞ」
ちなみにリーチは道に迷っていた。
死人のように生きてるクズ共=ほぼ最大勢力
小競り合いしてるグループよりもはるかに数が多いんや
【ポイズン・リーチ】
・毒蛭の名を冠するクローン。愛称はリーチ。
名前の由来は姉妹の中で一番“毒蛭”が上手いから。反面、“観音開き”はそうでもなく、肋骨が再生不能なまでにめちゃくちゃになってしまう。
例によって人生経験が不足しているものの、それを補うために灘・真・神影流道場澄輝坪支部の道場長に抜擢された。
ただし性格は狂犬を超えた狂犬で、姉妹の中でもひときわ凶暴とされている。恐らく臓器を失ったことでホルモンバランスやら何やらが狂った生だと思われる。
俺っ子。
【我龍院清丸】
・実は脳筋な道場長を補佐するために派遣されていた。
実力だけは確かなリーチが修行相手になることで実力を伸ばし、道場運営に関わることでそちらの経験も積む、というのが黒田の狙いだった。
直接教えるだけではなく、時には遠くで知見を得ることも大切なのだ。