高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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この澄輝坪では4つのグループが勢力争いをしているんだ 2

 一つ、助っ人あり

 

 二つ、卑怯な行為なし

 

 三つ、末端同士および長同士の戦いなし

 

 四つ、四番勝負

 

 五つ、試合のルールを守らない者は確実に殺される

 

 以上が、適当観と灘・真・神影流の闘いにおけるルールだった。

 それ以外に特にルールはない。ただし試合のルールを守らない者は確実に殺される。

 

 「最後のルールは禁止スよね?」

 「適当観もナダ・シン・シンカゲリュウもルール無用でしょ」

 「やっぱ怖いスね武術家は」

 

 リンと話すのは、たまたま適当観に来ていた真斗だった。

 彼の言う通り、五つ目のルールは常人には理解しがたいものである。

 

 「ま、最後のルールがないと血の気の荒い人が勝手に喧嘩するかもしれないからバランスは取れてるんだけどね」

 「血の気の荒い……」

 

 内心で「ひょっとして自分のことじゃないスか?」とも思った真斗だが、それを口に出すことはなかった。

 どちらかと言えば荒い性格なのは、自分が一番理解しているからだ。口にすれば、当たり前のことを抜かすなと言われそうでちょっと怖かったのもある。

 まあ、今の真斗は助っ人でもないので、あまり関係ない話なのだが。

 

 「狛野君も助っ人になる?」

 「いやあ絶対に遠慮しとくっスよナダも適当観も凄い連中が出てくるって噂で持ち切りっスから」

 

 助っ人になるか否かという質問に対し、かなり食い気味に断る真斗。

 彼の言う通り、澄輝坪では二大流派の争いに関する話題が広まっている。

 どちらが強いのか、どちらが勝つのか、試合には誰が出るのか。ポーセルメックスと死人のように生きているクズどもはカヤの外である。

 

 「そうだよね……今回出るのは藩さんと福福先輩だから、あと三人助っ人が欲しいんだよね」

 「あれ? 葉さんは?」

 「万が一二人が大怪我した時、適当観の運営に支障が出ちゃ困るから待機してるらしいよ」

 

 葉は、藩と福福が重症を負った時のために、試合に出ないことにした。

 本人的には無いとは思っているが、灘・真・神影流がどのような者を出してくるのか不明なので、万が一に備えることにしたのだ。

 

 灘・真・神影流には他者の人体を破壊することに何の躊躇いもない者も多い。

 また、あくまで噂の域を出ないが、そんな連中が束になっても敵わない、四天王とも呼ばれる集団がいるとされている。

 清丸は「そんな人たちいませんよ」と笑っていたが。

 

 「兎にも角にも、助っ人を探さなきゃ」

 「俺も一緒に探すっスよ」

 「ありがとう!」

 

 二人は手分けして協力者を探すことにした。

 

 

 

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 『デ、トダーニ助ッ人ヲシテホシイヤンケ?』

 「うん」

 

 リンは澄輝坪を散策していると、ボーっと看板を眺めているトダーを発見した。

 

 「あ、仕事中とかだったら全然大丈夫だよ」

 『トダーハ休暇ヤンケ。試合デモ何デモ出テヤルヤンケ』

 「ありがとう! でも、休暇?」

 

 トダーに試合のことを伝えたところ、喜んで快諾してくれた。

 だが、リンは機械人ではなくロボットであるはずのトダーが何故休暇中なのか気になった。

 

 『トダーハ機械人ジャナクテマジデロボットヤンケ。ソレヲメンテナンスノ名目デ休暇出ストカ正気ジャナイヤンケシバクヤンケ』

 「名目上はメンテナンス中なんだ」

 『ソレモゴア博士ノオカゲデメチャクチャ早ク終ワッタヤンケ。ダカラ残リノ期間ハ好キニシテ、最後ノ最後デモウ一回メンテナンスヲスルヤンケ』

 

 トダーの休暇については、同じく機械である青衣が気を回してくれた結果なのだが、精神的にも肉体的にも疲れという概念を持たないトダーにとっては休暇は不要なものと考えていた。

 本当は休暇を通してトダーが新たな体験をしたり、知識を得てほしいというのが本当の狙いなのだが。

 

 『トダーニ任セトクヤンケ。トダーニカカレバドンナ相手モ恐ルルニ足ランヤンケ。トダーメッチャタフヤンケ』

 「ありがとうトダー! 凄く頼もしいよ!」

 『試合ガ始マルマデ時間アルヤンケ? トダーハドコデ待機シテオケバイイヤンケ?』

 「適当観で待っててよ! 充電設備も好きに使っていいよ」

 『アリガタク使ワセテモラウヤンケ』

 

 適当観側でトダー参戦!

 

 

 

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 「俺に、その試合に参加して欲しいと?」

 「そうっス」

 

 真斗は、目の前の人物を見る。

 ――大きい。いや、身長の話ではない。

 存在が、鍛え上げられたものが違う。練られた武が違う。

 

 「あんたが出ればいい話じゃないか? 俺よりも体格は大きい。筋肉量もあるだろう。シリオンだからタフでもある」

 「確かにそうなんスが……すみません、自分にはどっちの立場でも出られない理由があるんス」

 

 真斗は、適当観にも灘・真・神影流にも恩がある。

 友人であるパロのエーテル症状を抑えてくれたマネモブ、そして適当観の面々がその場に現れなければ、死神医療チームによって隙を突かれ、誰かしらの命は奪われてしまったことだろう。

 その誰かというのは、もしかしたら知り合いかもしれない。作業員に知り合いの多い真斗にとって、どちらかの立場で参加するということはできなかった。

 

 「なるほどな……試合か」

 「ぶっちゃけた話、ただのポーズっス。この試合を通して、両者が仲良くなったことを示すだけの茶番っスよ」

 「ぶっちゃけるな、あんた……」

 

 その人物はサングラスを直しながら、呆れたように言った。

 

 「でも、傍から見れば茶番だろうと、参加するファイターにとっては神聖な決闘なんスよ。半端な奴を招くわけにはいかないんス」

 「俺が、その“半端な奴”じゃないと?」

 

 サングラスに隠された、鋭い眼光が真斗を睨む。

 その眼光に怯みそうになるが、真斗はそれを堪えて言った。

 

 「誰があんたを半端なんて言うんスか。そんな奴がいたら喧嘩上等っスよ」

 「……ふん。相当、腕を買ってくれているようだな」

 「それに……」

 

 真斗は不適に笑みを浮かべた。

 

 「あんたも、“闘いの気配”を感じて澄輝坪まで来たんじゃないスか? 分かるっスよ、隠しきれない闘気が」

 「――バレたか」

 

 彼もまた、闘いの気配に導かれて澄輝坪までやってきたファイターだった。

 

 「自分は狛野真斗っス。あんたは?」

 「俺はライト……カリュドーンの子のチャンピオン、“赤いマフラー”だ」

 

 適当観側で、ライト参戦!

 

 

 

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 「結局集まったのはトダーとライトさんだけか……」

 「一人足りないスね……」

 

 一日中澄輝坪を駆け回ったが、協力してくれたのはトダーとライトだけだった。

 試合まではまだ時間はある。しかし、その前にミーティングなどを終わらせておかなければならなかった。

 

 「どうしようかな……ん?」

 「どうしたんスか……お?」

 

 リンは、何かに気づいたようだった。

 真斗もその方向を見る。そこにいたのは……

 

 「これでよし……と」

 

 鍛えられた筋骨隆々の屈強な肉体、土や油で汚れてなお純白に染まった作業着、今日は腕につけられてないドリル。

 白祇重工の広報担当である彼の名は――

 

 「アンドーさん!」

 「ん? おう、プロキシか。どうしたんだ?」

 

 適当観の復興という仕事をしていたアンドーだった。

 今日の仕事がひと段落したので、休憩に入ろうとしていた所らしい。

 あのワーカーホリックなアンドーが休憩なんて珍しいと思いつつも、リンは彼に話をした。

 

 「いやぁ、それがさぁ」

 

 話したのは試合のこと。あと一人足りず、協力者を探しているということ。

 アンドーはその話を神妙な顔で聞いていた。

 

 「ふうん、そういうことか。だったら俺が出てやろうか?」

 「え? いいの!?」

 「ああ! その日なら作業はねぇし俺も休暇だからな! まさに運命ってやつだ!」

 

 運命……そういえば前にアンドーさん共々ニコの占い騙されたことがあるな、と思ったリンだった。

 何はともあれ、これでファイター達はそろった。後は試合を待つだけである。

 

 適当観側で、アンドー・イワノフ参戦!

 

 

 

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 試合当日。

 場所は広ければ広い方がいいとのことで、澄輝坪の超大きい広場を借りて試合は行われることになった。

 ファイター達は、試合前に交流を深めているようだ。

 

 「改めてよろしくお願いしますね!」

 「よろしくな! 俺は単なる土建屋にすぎねぇが、適当観の名に恥じねぇように全力全開で行くぜ!!」

 「気合十分ですねぇ! あたしも負けてられませんよ!」

 

 福福とアンドーは声のデカい者同士で、気質もどことなく似ていた。

 二人の相性は意外と良いのかもしれない。

 

 「よろしくなトダーさん」

 『ヨロシクヤンケ、藩。ソレニシテモ、オ前メチャクチャ鍛エテルヤンケ。普段何食ッテルヤンケ?』

 「雲嶽山の台所を預かるのは俺だからな! もちろん完全に栄養バランスが考えられた特製の料理さ」

 『フーンヤンケ。老人向ケノ料理モ作レルヤンケ?』

 「ああ、もちろん。知り合いに老人がいるのかい?」

 『ソウヤンケ。青衣ッテイウ名前デ――』

 

 藩とトダーも、中々相性が良かった。

 話は老人向けの食事の話題に移行しているようだ。

 

 「錚々たる面子がそろったようだな。お前さんもそう思わないか?」

 

 腕を組みながらその光景を見るのは、儀玄とライトだった。

 

 「ああ、役不足にならないか不安だね」

 「どっちの意味だ?」

 「どっちの意味でもだ」

 

 そう言いながらも、ライトの態度は自信に満ち溢れたものだった。

 自分が負けるなど微塵も考えていない、まさにチャンピオンに相応しいものだ。

 

 「そうか。なら“赤いマフラー”の実力を見られるのを、期待しておこう」

 「期待ってのは超えるためにあるんだぜ」

 

 ライトはサングラスをかけ直す。

 そうこうしている内に、灘・真・神影流側のファイター達がやってきた。動きやすい格好をした清丸の姿もあり、彼も出るようだ。

 

 「あれ、皆さん早いですね。お待たせしてしまいましたか?」

 「いやなに。まだ時間の大分前だろう」

 

 まだ試合まで時間はある。

 そこで、両者は簡単な自己紹介をすることにした。

 

 「初めましての方もいますね。僕は灘心陽流の我龍院清丸です。こちらは灘・真・神影流澄輝坪支部の道場長、ポイズン・リーチさんです。彼女は今回、儀玄さんと一緒に見学となります」

 「よろぴこ」

 

 清丸は深々と、リーチは軽く頭を下げた。

 

 「で、この方は僕の師匠の……」

 「灘心陽流当主の、黒田光秀と申します。今回はよろしくお願いします」

 

 黒いライダースジャケットを身に着けた、美形の男性。

 彼は、灘心陽流当主である黒田光秀その人だった。

 

 「そしてこちらの方が、エドガード・C・ガルシア28号さんです」

 「……」

 

 禿頭かつ半裸、左眉の上にバーコードが、同じく左胸に28という刻印がなされた筋骨隆々の男。

 彼こそは冷徹非情の殺人マシーンと恐れられたガルシアシリーズの生き残り、ガルシア28号である。

 

 「次にこの方が外部からの助っ人である……」

 「アンビー・デマラよ」

 

 超然とした、銀髪の少女。

 彼女は、邪兎屋からの協力者にして10万ディニーで雇われた傭兵ことアンビーである。

 

 「最後に同じく外部協力者の……」

 「ポンペイだ。誇り高き決闘になることを祈っている」

 

 筋骨隆々の、壮年の男性。

 彼こそは郊外で長らく覇者として名を知らしめた、ポンペイである。

 

 「以上が灘・真・神影流のファイターとなっております」

 「これは……凄い闘いになりそうだね」

 

 かくして、澄輝坪において雲嶽山と灘・真・神影流の闘いが始まる――!

 

 

 

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