高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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この澄輝坪では4つのグループが勢力争いをしているんだ 6

 「続きまして、副将戦となります。灘、アンビー・デマラさん!」

 「5000万ディニーをこの手に」

 

 アンビーが、マチェーテを引き抜くと電撃が(ほとばし)る。

 違法改造された電気エンジンと、特注品のマチェーテはエーテリアスをも斬り裂くのに十分すぎる威力を持つ。

 装備が万全なことを確認すると、アンビーはマチェーテを納めた。

 

 「刃物はルールで禁止スよね?」

 「刃物禁止なんて言われてないでしょ?」

 

 その通り、この試合では刃物含む武器の使用は禁止されていない。

 たまたま、素手で戦うファイターがかち合っただけなのだ。

 

 「雲嶽山、アンドー・イワノフさん!」

 「オレらの出番だ、兄弟!」

 

 左腕のドリルが、アンドーの声に呼応するかのように唸りを上げた。

 このドリルは掘削用だが、あまりにも頑丈な作りのため、エーテリアスをも掘削してなお有り余る威力を持つ。

 アンドーは拳をボキボキと鳴らしながら、アンビーと向き合った。

 

 「うむ、今だ。鳴らすと良い」

 「ゴングを鳴ら――」

 「「ゴングを鳴らせっ戦闘開始だっ」」

 「な……なんだあっ」

 

 儀玄の指示でリーチがゴングを鳴らすよりも早く、二人が激突した。

 二人の勘が、最高のタイミングを導き出し、それを実行したのだ。

 

 「しゃあっ」

 

 激しい電撃と共にマチェーテが引き抜かれる。

 殺す気など無いが、数か月は流動食で我慢してもらうつもりの、神速と言っても過言ではない一撃。

 それがアンドーへと向かう。

 

 「行くぜ兄弟!」

 

 最大出力で回転するドリルが、マチェーテと激突する。

 激しい火花と電撃を飛ばしながら、金属と金属が鎬を削る。

 アンドーは、持ち前の勘と兄弟の声によって、神速の一撃を防ぐことができた。

 

 (この男、かなり場慣れしてる……筋力は私を凌駕、体力もそれ相応なはず。長期戦は不利ね)

 (流石本場の傭兵だ! 今のは勘と兄弟のおかげで何とかできたが、長くは続かねぇなこりゃ)

 

 アンビーは鍛え上げた兵士だが、アンドーはクソ強いだけの土建屋である。

 それぞれの強みがあるが、お互いの強みをぶつけるだけでは容易に勝てる相手ではないだろう。

 だが、共通することはある。それは、心身共にタフであることだ。

 

 「勝負に出る」

 「なにっ」

 

 アンビーは、刀身をひねることによりドリルを逸らす。

 重心を崩され、バランスが取れなくなったアンドーを狙うのは、彼女の電撃をまとった踵落とし。

 その名も“落雷”である。落雷の名を冠する攻撃が、アンドーの頭へ落下する。

 

 「うがあっ」

 「ッ!」

 

 まともに受ければまずい。

 己の直観を信じたアンドーは兄弟であるドリルを差し込み、踵落としを防いだ。

 電撃のスパークが放たれるが、二人は電気を普段から扱う者達、その程度で怯むことはない。

 

 「オラァッ!」

 「くっ!」

 

 踵落としを受け、頭を防御しているという無茶苦茶な体勢のアンドーが繰り出したのは、ヤクザキックである。

 ただのヤクザキックと侮ることなかれ。アンドーの筋力から放たれたそれは狂った威力を持つ。

 

 「凄い威力。腕が痺れたわ」

 「防いだのに頭がガンガンしやがるぜ」

 

 アンビーは、手にしたマチェーテで蹴りを防いだが、その上からでも凄まじい衝撃を受けた。

 対するアンドーも、貫通した衝撃が頭部に響いている。

 

 そんな二人が導き出した答えは、短期決戦に持ち込むことである。

 

 「この一撃で決める」

 「勝つのはオレ達だ!」

 

 バッテリー最大出力、雷にも匹敵するエネルギーが、マチェーテを覆う。

 ドリルの出力最大回転、全てを掘削する回転エネルギーが唸りを上げる。

 

 「ターゲットを排除する!」

 「地心まで響かせてやらああああ!!!」

 

 電撃、雷撃、稲光。

 地上に現れた雷が、会場を照らす。

 エネルギーの奔流によって巻き上げられた土煙が晴れる。勝者はただ一人。それは――

 

 「ん? あ、あれ!?」

 「これは……」

 

 輝きを失ったマチェーテ。

 動かなくなったドリル。

 全ての電気エネルギーは離散し、後には静粛が残るのみ。

 

 「……引き分けね」

 「……分け、だな」

 

 二人は自然と武器を下ろした。

 お互いに分かっているのだ、エネルギーの無くなった武器を受けて()を上げるヤワな奴ではないと。

 

 「あなた、グッドファイターね」

 「そりゃこっちのセリフだぜ!」

 

 これは命の取り合いではない。

 ガシッと固い握手を交わすと、晴れて試合終了となった。

 

 「あーびっくりした。まさかお世話になってる人同士が闘うなんて」

 「アンビーもアンドーさんも無事でよかった。これ以上は怪我じゃすまなかったかもしれないしね」

 「アキラの言う通り。引き分けだったから、逆に良かったわ」

 

 パエトーン兄妹はホッと胸をなでおろす。

 彼らは二人にかなり世話になったり、頼みを聞いたりしているので、気が気でなかったのだ。

 

 「やるな……アンドー。プロの傭兵にあそこまで持つとは。並の奴じゃ十秒と持たず失神KOされてるぜ」

 「ありがとよ、ライト! そんだけオレがタフってことだ!」

 

 ライトとアンドーは、ブリンガー事件後に意気投合した仲だ。

 拳で語る者同士、惹かれ合うのは当然のこと。

 

 「いよいよ最終決戦だ、頼むぞポンペイ」

 「叔母の頼みとあらば、負ける訳にはいかんな」

 「せめて妹って呼んでくれよ」

 

 ポンペイが立ち上がる。

 彼が生物学上の血のつながりにこだわるのは、一気に家族が増えて嬉しいからかもしれない。

 

 「福福、奴には気をつけろ……妙な気配を感じる。何故なら――」

 「すんごい強そうだからですね!」

 

 メリケンサックを打ち鳴らす福福が、意気揚々と前に出る。

 雲嶽山の代表として、恥じない闘いをしなければならないのだ。

 

 二人がウォーミングアップを始める中、リーチがアンビーに聞いた。

 

 「なあ、何で姉貴はシルバー小隊バージョンで来なかったんだ?」

 「……」

 「なあ、あっちの装備なら勝てたんじゃないか?」

 「それを決めるのは己自身よ」

 

 色々思惑があるのだろう。

 リーチはちょっと釈然としなかった。

 

 

 




これがワシのアンドーやっ

攻撃力   :2541
会心率   :49
会心ダメージ:219
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