「いやーついに来たねぇ、
「だなぁ」
大量のセキュリティメカを切り抜けた先。
泅瓏囲と呼ばれる街並みは、まるで無数のコンテナを繋ぎ合わせたスラム街。
しかし、街並みは綺麗で整備の手が行き届いているようで、日の光が射す海が近いことも相まってアングラな雰囲気とは無縁である。
むしろ、あふれた活気が新エリー都で生きる者達の強さを表していた。
「ここが泅瓏囲……素敵な眺めなのだわ」
「山道長すぎぃ~~っ!」
柚葉と真斗は通ったことがあるのか、さほど疲れた様子はない。いや、アリスもシリオンだからか、あまり疲労していないようだ。それにガルシアも特殊な訓練の賜物か、平気な顔である。
この中で山道に慣れていないリンは、めちゃくちゃ疲れていた。
しかし、しばらく座り込んだり、気を遣ったガルシアがスポーツドリンクを持ってきてくれたおかげで、疲労の回復はわずか数分で済んだようだ。
「リン、大丈夫かしら? とっても疲れてるようだけど」
「私を起こさないでくれ、死ぬほど疲れてる……というのは撤回された。ありがとうガルシア、アリス! おかげで完全復活だ」
「が、ガルシア? スポーツドリンクに変なクスリでも入ってたのかしら?」
「………………………」
ガルシアが一生懸命ドリンクの成分表を見たり、毒見したりしているが薬は検出されなかった。
しかしこのドリンクはガルシアの持っているリュック共々、光の司祭が準備したもの。わずかにミアズマが付着していたのかもしれない。
などと考えていると、すぐに元に戻った。なんとも味わい深い表情のリンは、中身が半分ほどになったペットボトルを指して言った。
「何か頭の中に変な人達の記憶が流れてきた気がするんだけど……そのスポーツドリンク捨てた方がいいんじゃないの?」
「……」
ガルシアは無言でペットボトルの中身を捨て、容器は丸めて圧縮してからゴミ箱に捨てた。
「ま、まあこれで一安心なのだわ。リン、ガルシア、向こうで浮波さん達が情報を集めているから、行ってみるのだわ」
「よし行こう!」
柚葉が話している少年、月によれば、オブスキュラの破片。
その出所は、別の人物が知っているかもしれないという。
一人は
彼らは手分けして情報収集をすることになった。ガルシアはリンとアリスに同行し、メローという少年を訪ねるのだが……リンとアリスからは『後ろの方で見つからないように見守っていて』と言われ、頭に疑問符を浮かべながらもそれに従うことにした。
リン達がメローの元に赴くと、そこではラジコンを前にうなる少年の姿が。
どうやら友達との喧嘩で壊れてしまったらしい。しかし、これ幸いとリンはラジコンを修理し、対価として輝磁の情報を得ようとした。
「お姉ちゃん、ラジコン直せるて本当だったんだ」
「ガチだよ」
「それじゃ坊や。この輝磁の欠片について……お姉さん達に教えてくれるかしら?」
アリスが、優し気な声で語り掛ける。
実際彼女はとてもやさしい。見た目と雰囲気も相まって、安心感を与えることができる。
少年、メローの答えは……
「うーんと……やだ」
「えっ」
「なにっ」
二人は目を丸くした。
ラジコンを直せば情報をくれるという約束の対価は、拒否だったからだ。
「ぼ、坊や? 約束を守るということはとても大事なこと。あなたもそれを分かってるはずなのだわ」
「でも母さんが言ってたよ? 最近はポーセルメックスがよそ者をシャットアウトしてるって。なのにお姉ちゃん達のことは見たことないし……怪しい人と喋っちゃダメって母さんが言ってた」
少年は訝しんだ。
よほどポーセルメックスに対して懐疑的なのだろう。しかし、アリスは調査監督チームだが、仕事で来ているわけではない。
リンは弁解することにした。
「ほら見て! こんな優雅なアトモスフィアを出してるお姉ちゃんなんだよ、悪い人なわけないでしょ」
「コホン……褒めてくれるのは嬉しいけれど! それじゃ誰も信じてくれないのだわ」
リンが必死にアリスをダシにした弁解をするが、少年の懐疑的な視線はますます増すばかりだ。
次はアリスが話すことにしたようだ。
「いい? 坊や……実は私達、奇々解々の店主である浮波
完璧な作戦だ。
柚葉の父親である宝栄の名を出しつつ、柚葉との関係性を伝える……これ以上ない信用を勝ち取れる手だ。アリスはそう確信した。
だが、メローの反応は……
「ぷっ……あははは! それで信じろっていうのは無理があるんだよね」
「えっ」
「なにっ」
「宝栄おじさんの苗字は“
なんというミスだろうか、柚葉は養子だったのだ!
それを知らない彼女達は、苗字を間違えてしまったことでますます怪しまれることになってしまった。
(ふうん、そういうことか。柚葉って養子だったのかぁ。宝栄おじさんと名前の雰囲気が違う理由ってこれだったのか。てっきりお母さんの方に寄せたのかなって思ってたけど……)
合点はいったが、情報からは遠くなってしまった。
リンがどうしようかと考えていた時、見かねた様子のガルシアがやってきた。
「あ、ガルシア」
「……」
「……」
美少女二人の背後から、ヌッと顔を出す無表情の大男。
それとバッチリ目が合ってしまったメロー。
「うえ――! こ……怖いよ――っ!」
「……」
「泣いちゃった!!!」
もし、いきなり無表情の大男が無言で自分を見つめてきたらどうだろうか。
答えは、泣くである。メローが悪いのではない。ただ、精悍な顔立ちに左眉上のバーコードという異様さ、少し陰のある雰囲気のガルシアは、少年にとってキャパシティを超える毒になり得た。
「ちょっとメロー、なに泣いてるの」
「柚葉姉ちゃん、この人怖いよーっ」
「大丈夫だってメロー。この人……ガルシアは素手で人体をバラバラにできるくらい強いだけだから怖くないって」
「余計怖いよーっ」
柚葉のおかげもあり、メローはすぐに泣き止み、輝磁の情報も得ることができた。
そして、一行は輝磁の話をめぐって喧嘩になったというダンテという少年を訪ねることになった。
Now Loading......
「ところでイゾルデさん、このディニーガンってまだ直せるの?」
「ああ、もちろん」
一行がダンテのもとへたどりつく直前。
イゾルデは、メローに壊されたダンテのディニーガンを修理していた。
「お姉さんは軍にいたんだ。もっと複雑な銃も機械も直せる……この玩具は、トリガーに繋がるロッドが外れているだけだな。だからこうして分解して……」
手際よくディニーガンを分解するイゾルデ。
一見、将校らしき軍服を着ているので文官タイプだと思われがちだが、防衛軍に属する以上はこういったスキルは身についているらしい。
「これでよし。さあ、ダンテ君。弾を……ディニーを一発くれないか? 早速試し撃ちをしてみよう」
「うん!」
ディニーガンから放たれた硬貨の弾丸は、リン達が隠れている場所の壁へと着弾し、地面に落ちた。
それを見た彼らの背には冷たい汗が浮かぶも、誰一人として声を上げなかった。
「
「……!」
実弾。その単語を耳にした瞬間、ガルシアは地に落ちたディニーを拾いイゾルデに向かった。
ディニーを、イゾルデに向かって指で弾こうとするような体勢。ただの指弾と思うなかれ。ガルシアにかかれば弾丸より速く人を殺すことができる必殺技と化すのだから。
「おっと……まさか君までいるとは。そうだな、君には冗談は通じないよな、ガルシア……」
「う、撃たないでイゾルデさん! ガルシアも!」
一触即発の状況へ、リンが割って入る。
「防衛軍を代表して来てるあなたが、ポーセルメックスの言いつけを破ってこんなところにいるなんて思わなかったんだ」
「君は交渉が上手いな、リン君。こちらが先手を取ったつもりが潰され、瞬く間に逆転されてしまったというのに……それでも話し合いに持ち込むとはな」
イゾルデもそれなりの強さは持っている。
しかし、ガルシアが相手となれば別だ。実際はどうなるかは不明であるが、ガルシアを相手に生き延びられる自信は、少なくともイゾルデにはなかった。
「いかにも……私も諸君と同じく秘密裏にここを訪れた。今や互いに弱みを握り合う仲というわけだ。だが、まずは私から誠意を示そう――」
イゾルデは、ダンテとの関係などを話す。
それからダンテの母親や、ダンテ自身の思いなどを聞き……彼女の協力もあり、ついに輝磁の出所だというホロウの入り口を見つけることができた。
しかし、そこでもひと悶着あるのだが……
展開が遅いワシを許してくれガルシア…
ホロウに入りさえすれば一気に猿濃度が上昇するから許してくれガルシア…