高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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モンキー・ボンプ

 アキラがルミナスクエアで用事を済ませた後だった。

 

 「ん? ボンプ?」

 

 物陰に、ボンプが座り込んでいた。

 野良ボンプにはよくあることだ。論理コアや配線に異常をきたしても、まともに修理を受けられずに一生を終える。いや、野良じゃなくても外出中に故障して機能停止に陥っていることもある。

 だがアキラはそんなボンプを見捨てない。なぜなら彼らを治療する技術があるからだ。

 

 「大丈夫、今助けるよ」

 

 アキラは目の前のボンプを見る。

 猿のような装飾と、『灘・真・神影流』と書かれた道着を着たボンプだった。

 砂や泥で汚れており、所々に激しい殴打痕と見られる傷もある。

 

 ボンプには人権がない。主人や、周りの人間から虐待を受けたのかもしれない。

 あるいは、この道着を着ている通り、何らかの武術を習っていたのかもしれない。

 とにかく、アキラはボンプと接続して故障の原因を探った。

 

 「うわ……めちゃくちゃだな。このコードは……“GENMA”? これが悪さしているのか。えいっ」

 

 意味不明なバグなどによって、ボンプは機能を停止していたのだ。

 その直接的な原因となっているコードを抜き取り、他の部分も修正した。

 

 「よし、これで動けるはずだ」

 

 修理を終えるとボンプは勢いよく立ち上がり……

 

 『パパ感謝するよ、“幻魔”を取り除いて完全復活だ』

 「パパではないかな」

 

 ちょっとおかしなことになっていたが、動きに支障はないようだ。

 

 「無事なようで良かった。ところで、どうしてこんなところで壊れてたんだい?」

 『あの、自分武術習ってるんスよ。師匠が厳しすぎを超えた厳しすぎなんスよ。最初は走り込みとか型の練習とか基礎的な部分から始めてたのに、今や変な精神攻撃技撃ち込まれるまでになったんだよね、酷くない? まあ自分の実力が上がってることを実感できてるからバランスは取れてるんだけどね』

 

 何だか奇妙な言葉遣いだった。

 マネモブみたいだな、とアキラは思ったが口にはしなかった。

 

 「へぇ、どんな師匠なんだい?」

 『師匠スか? うーん……めちゃくちゃムキムキで』

 「うん」

 『めちゃくちゃ強くて』

 「うん」

 『会う度に久しぶりとか自分のことをゴアだとか言ってて』

 「うん?」

 『マネキンみたいな生気の無い顔してて』

 「うん???」

 『あとエーテリアスっス』

 「マネモブだね」

 

 このボンプの師匠とは、マネモブだった。

 かのエーテリアスは、ボンプにも武術を教えていたのだ。

 

 「そんなに厳しいのかい?」

 『超実践的武術っスからね、もう何人か兄弟弟子がいるっスけど、いつもボロボロっス。新エリー都でやったら一発で退場ッされるっス。でも流石に手を縛られた状態でエーテリアスとタイイチで戦わされたり、師匠と寸止め無しの組手はルールで禁止スよね?』

 「エーテリアスはルール無用だと思うけど……」

 

 しかし、そもそも人型生物の扱う武術を、ボンプが使えるのかというのが疑問だった。

 確かにボンプは戦闘においても思いもよらない力を発揮することもあるし、相撲を取るボンプもいた。

 だが、それは相撲がボンプの体型に適しているからだ。

 

 「修行の成果は出てるのかい?」

 『もちろんっス。自分が日に日にタフになってるのが分かるっスよ。今やトラックを破壊できるエーテリアスの攻撃も痛くも痒くもないっス』

 「それは凄いね」

 

 アキラは、知り合いが立派に武術を教える立場になっていることに、何だか誇らしく感じた。

 しかし、マネモブはエーテリアス。共にデッドエンドホロウを攻略したこともあるが、少し不安を感じる。いつか、自分やリンがホロウに入ってしまった時、改めて間近で話をしてみたいとも思う。

 そう考えていると、ボンプの背後にホロウの裂け目が現れた。

 

 『あ、裂け目だ。この先に師匠が待ってるっス』

 「分かるのかい?」

 『自分、ボンプなんでキャロット積んでるっス』

 「ああ、そうだったね……」

 

 武術家とはいえ、ボンプ。しっかりとキャロットを持っていた。

 

 『自分はもう行くっス。少ないけど、これは助けてくれたお礼っス』

 

 モンキー・ボンプは懐からディニーの詰まった袋を取り出した。

 少し汚れた見た目の袋とディニー。モンキー・ボンプが頑張って集めたのだろう。見た目は汚れていても、綺麗な金だ。

 

 「いや、もらえないよ。その代わりと言ってはなんだけど、君の師匠……マネモブによろしく言っておいてほしい」

 『えっ、そ、そんなことでいいんスか?』

 「うん。パエトーンが、『いつかホロウで会えたらいいな』と言っていたと伝えてくれ」

 『分かったっス! 絶対伝えるっスよ!』

 

 てくてくと可愛らしいあゆみで裂け目へと向かうモンキー・ボンプ。

 しかし、その歩法は素人目にも分かるほど、明らかに武術を学んだそれだった。

 

 『ありがとうっス! この御恩は忘れないっスよ!』

 「ああ、君も無事で」

 

 モンキー・ボンプは裂け目へと消えた。

 これからも、彼は師匠のもとで修業に明け暮れるのだろう。

 

 「……うん、帰ろう」

 

 そしてアキラは我が家へと帰った。

 

 

 




魚の肝さんから素敵なイラストを頂いたんだァ
https://img.syosetu.org/img/user/v2/439/802/207200.jpeg

ちなみにこっちは改良版らしいよ
https://img.syosetu.org/img/user/v2/7049/517/207206.jpeg
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