高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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陸老師…あなたに一つ言いたいことがあります

あなたはやったことはクソだけどその気持ちは分かるしなんなら自分が青溟剣に選ばれていたなら喜んで命を差し出して力を振るいそうだから一概にクソとは言えないから普通の刑務所で反省しててほしい
雲嶽山に泥を塗ったり孤児集めて青溟剣の剣主にしてたのはクソだけどマジで結果的に見たら始まりの主を撃退できたからその点と無力感に苛まれてたとこだけは擁護したい



おーっ怖ィイ
こんな闇だらけの新エリー都はもしかして住むには適してない町?


(この身に「希望」を)灯せ――っ 1

 クランプスの黒枝に所属する(ザオ)は、自身を“常勝不敗”であると自負していた。

 恵まれない過去から努力によってエリート中のエリートにのし上がった彼女は、上司からの命――青溟剣の奪取等――を受け、様々な思惑の中でラマニアンホロウの未知のエリアを探索していた。

 

 今まで一度も任務に失敗したことのない照は今回の任務も、パエトーンや青溟剣の主である葉瞬光の協力もあることから楽勝を超えた楽勝だろうと思っていた。

 もちろん油断などしていない。これで油断しているならクランプスの黒枝で恐れられていない。ただ、彼女の実力ならすぐ終わるだろうというのも事実。しかし……

 

 「やばっ、任務失敗しそうだよ……多分」

 

 照は危機的状況に置かれていた。

 エーテリアスに追いかけられたのはまだいい。それは問題なく対処できたからである。

 問題は、今まさに目の前にいる者達のことだった。

 

 「ウォォォォ!!」

 「SYAAッ」

 

 まるで防衛軍の兵士にも見える、右腕が肥大化した巨体のエーテリアス。

 長い銀髪を揺らし、巨大な双剣を操る女性のようなエーテリアス。

 

 照の目から見ても、非常に強力極まりないエーテリアス二体が暴れているのだ。

 兵士らしき方は、右腕からガトリングガンのようにミアズマを飛ばし、女性型は巨大な双剣によって斬り裂く。

 この二体は、いずれもホロウに咲く白い花……今や黒い花と化したそれを標的に暴れ回り、破壊活動を続けていた。

 

 「ちぇっ、何だってこんなエーテリアスが二体もいるんだよぅ」

 

 驚くべきことに、この二体は敵対しておらず連携しているようだった。

 身長を生かして隠れている照には気づいていないのか、粗方花を刈り取ると何やら相談……のようなものを始めた。

 

 「OWATTANA」

 「ウオ」

 「TYOUSHI HA DOUDA?」

 「オオ」

 「Hmm SOUIU KOTOKA」

 「ウォ」

 「SOUDANA。DEHA TUGINO TITENN NI IKUKA」

 

 人間には何一つ理解できない会話だったが、どうやら当事者同士は完全に理解しているらしい。

 

 「もしかして会話してる? エーテリアスが? そんなバカな……って言いきれるなら良かったんだけどねぇ」

 

 照は出会ったことはないが、マネモブや半人半エーテリアスのポンペイは対話及び意思疎通が可能なエーテリアスである。

 その希少性からTOPSもH.A.N.Dもホワイトスター学会も彼らの身柄を狙っているのだが、人々からの多大な支持や新エリー都における有力者とのコネクション。そして、驚異的な戦闘力が、彼らへの手出しを許さなかった。

 

 そんなマネモブ達の関係者かもしれない。

 照はその可能性を視野に入れつつ、確証がないのでその場に隠れてやり過ごそうとする。

 しかし……

 

 「シュー……」

 「……」

 

 運悪く、照が隠れている場所にブラストスパイダーがやってきた。

 低危険度エーテリアスに分類されるそれは、照なら爆発されても問題なく対処できる。

 だが、今は状況が悪い。

 

 「シュワーッ」

 「あ、ちょ――」

 

 チュドン!

 照が止める間もなく、小さな爆発が起きた。照は大剣を盾にして全くの無傷だったが、問題はそこではない。

 

 「ウオッ」

 「NA……NANDAAッ」

 

 爆発を聞きつけたエーテリアス達が駆け寄ってきて、照の隠れていた廃材を軽くどかしてしまった。

 照とエーテリアスの目がバッチリと合う。しばらくの沈黙の後、口を開いたのは女性型のエーテリアスだった。

 

 「INU……?」

 「照ちゃんはウサギなんですけど」

 

 気まずい空気が流れる。

 その空気を何とか換えようとしたのは、兵士型だった。

 

 「ウォウォ!」

 「USAGI……?」

 

 見間違えた女性型は訂正した。

 しかし、その身長差は本当に人間とウサギほどもあるかもしれない。

 照が内心、高身長自慢のエーテリアス達を妬みつつどう切り抜けるか考えていると、新たな乱入者が現れた。

 

 「ざ、照さんがエーテリアスに襲われてる!?」

 「待って瞬光! あの人達は――」

 

 リンと瞬光だった。

 今にも剣を抜きそうな瞬光を制止し、リンが手を上げながら駆け寄る。

 

 「おーい、フィーンドさん、ハンターさん!」

 「オオ」

 「RINN……」

 

 二体は照から目を離し、リンの方へ顔を向けた。

 そして、彼らも友好的な雰囲気でリンを歓迎した。

 

 「HISASHIBURI……コホン。久シブリダナ、リン」

 「フィーンドさんもね。あれ? なんか喋り方流暢になった?」

 「コレガ共通語教室ニ通ウボンプトノ、友情トレーニングノ成果ダ」

 「なるほど」

 

 エーテリアス達はリンの知り合いのようで、しかも非常に社交的だった。

 その異形から繰り出される人間臭いギャップに、瞬光も照も毒気を抜かれたようで警戒を解いた。

 

 「あ、紹介するね。ミアズマ・フィーンドさんとワンダリングハンターさんだよ」

 「コンゴトモヨトシク……」

 「ウォォォォ」

 「え、えーっとぉ……よろしく? 照だよ」

 「またエーテリアスの知り合いができたわ! 葉瞬光よ、よろしく」

 「ところで……二人はどうしてこんな所に?」

 

 挨拶を交わした後、リンはそんな疑問を投げかけた。

 

 「コノ花ヲ駆除シニ来タ」

 「この白い花を? どうして?」

 「ソレガナ、光ト闇ノ司祭ガ『これは滅ぼすべきです!!』ト強ク主張シタカラダ。私モソレニ賛同シタ。マネモブモ……イヤ、マネモブト関ワリノアルエーテリアスデ戦エル者ハ全員駆リ出サレテイル」

 「もしかしてフィーンドさん達から見てもこの花ってヤバいタイプ?」

 「恐ラクハ」

 

 強力なエーテリアスや、ミアズマの知識が豊富な司祭からも危険視されるこの花。

 ミアズマ・フィーンドとワンダリングハンターは、この花を自主的に刈り取っていたという。なんというボランティア精神か。

 しかし、道場経営で忙しいマネモブが例外なのであって、本来ならエーテリアスとはこれくらい暇で自由気ままなのかもしれない。

 

 「トニカク気ヲツケロ、嫌ナ予感ガスル。大事件ノ予感ダ……具体的ニ、何ガ起コルカハ分カランガ」

 「う、うん。気を付けるよ」

 「備エアレバ患イナシダ……時ニ、ソコノ剣士ヨ」

 「あ、ワタシ?」

 「アア。ソレハ青溟剣ダナ?」

 「青溟剣を知ってるの!?」

 「昔……イヤ、違ウナ。トニカク、因縁ガアッテナ」

 

 ミアズマ・フィーンドは、先代の青溟剣の剣主、儀玄の姉である儀降(イーシャン)の記憶を持っている。

 彼女が青溟剣の影響で忘れてしまったような記憶さえも保持しているのだ。

 

 「マア、何ダ。先達カラノオ節介トデモ思ッテホシイ……青溟剣(ソレ)ヲ使ウカドウカハ、他デモナイ。自分デ選ベ」

 「自分で?」

 「アア。ソノ剣ニ選バレタカラ、ナドト言ウツモリハナイ。オ前自身ノ人生ナノダ。例エ、偉ソウナ連中ダロウガ、力ヲ利用シヨウト企ム連中ダロウガ、肉親ダロウガ……後悔ノ無イヨウニ、自分自身デ選ブンダ。先達トシテ、ドノヨウナ結果デアロウト、私ハオ前ノ選択ヲ尊重スル」

 

 ミアズマ・フィーンドはそう言った。

 それが、先代である儀降の記憶だったのか、あるいはフィーンド自身の言葉だったのかは分からない。

 だが、それでも彼女は、瞬光を尊重するという。

 

 「ワタシに……できるかしら……」

 「デキルサ。ダッテ、思イ出ハ死ナナイカラナ」

 「思い出は、死なない……」

 「無クナルコトナンテナイ、不滅ノモノダ。イツカ、思イ出ス時ガ来ル」

 「……」

 

 瞬光は、フィーンドの言葉を噛みしめていた。

 なぜか、青溟剣が反応しているこのエーテリアス。青溟剣の話にも、妙に説得力があった。

 そんな様子の瞬光を見て、フィーンドは踵を返した。

 

 「話ガ過ギタナ。マア、オ節介ダト聞キ流セ」

 「待って!」

 

 風に銀髪をなびかせ、その場を去ろうとした背中を瞬光が呼び止める。

 瞬光には確信があった。このエーテリアスは、青溟剣を握ったことがあると……

 

 「もしかして、アナタは青溟剣の――」

 「――サアナ。今ノ私ハ、単ナルエーテリアスサ」

 

 フィーンドは、その場を去った。

 あとに残されたのはリン一行と、ワンダリングハンター。

 

 「オオ」

 「『おお』じゃないでしょ。ほらフィーンドさん行っちゃったよ」

 

 ハンターは、気まずそうに頭をポリポリとかいている。

 同僚が格好をつけて去った手前、追いかけるのを躊躇っているのだ。

 

 「オォ」

 「そういえば、リュシアちゃんはいないの?」

 「ムウ」

 「お留守番?」

 「ウム」

 

 一行は、残されてしまったハンターと情報を交換し、やがて帰路についた。

 喋るのが難しい相手との意思疎通がやたら上手くなったと実感するリンだった。

 

 

 




作中では黒い花は容易に壊せなさそうな描写はあるが、マネモブ陣営のエーテリアス達は有り余る破壊力で強引に壊してるんだ
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