高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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あー、猿展開を書かせてくれェ
俺は猿展開を書くかホロウ内でなきゃ生存できないんだァ


(この身に「希望」を)灯せ――っ 2

 澄輝坪に、黒い花が現れた。

 泅瓏囲でも白い花が確認されたことからその兆候はあったのだが、ついに町中まで出現したのだ。

 

 「(きったな)いミアズマですねぇ」

 「俺にはその良し悪しは分からん。むしろミアズマ自体が不浄なものだと思っているが……お前が言うならそうなのだろうな、司祭よ」

 「いや、はい。ミアズマはめちゃくちゃ汚いですよ」

 

 その花を無謀にも素手で検分するのは、ミアズマの専門家である光と闇の司祭、そして彼女に呼ばれて来たポンペイである。

 この明らかにエーテルが関わった事件に、二人のエーテリアスに近い人間は動かざるを得なかった。

 

 「どうやらこの特別汚いミアズマが街をホロウに近い環境に作り替えようとしているみたいですね。下手したらエーテリアスも活動できるかもしれませんよ」

 「お前達の言っていた花とはこれのことだったか。確かに、ラマニアンホロウ内で見たことがあるな」

 

 ポンペイは、バイクでラマニアンホロウを走り回っていた時、この花を目撃したことがあると言う。

 ただ、彼は非ミアズマ製でしかも半エーテリアス人間のため、花の危険性を感じ取ることができなかった。

 

 ただ、この花の危険性を感じ取れるのは、青溟剣が関わったミアズマ・フィーンドと、始まりの主が関わった光と闇の司祭、イゾルデである。

 他のエーテリアスは花を見ても『おー、オシャレやのう』程度の認識だ。

 

 「あれ? ポンペイさんと司祭ちゃん?」

 「む? リンか」

 「お久しぶりですね。そちらの方は?」

 

 二人を見つけてやってきたのは、リンと瞬光だった。

 

 「雲嶽山の葉瞬光よ、よろしくね」

 「俺はポンペイ。今は放浪の身だ」

 「私は光と闇の司祭です。司祭でいいですよ」

 「ポンペイさんと……し、司祭ちゃん? 変わったお名前なのね……」

 「まあワケありですねぇ」

 「ワケが服を着て歩いているようなものだろう」

 

 新エリー都の住民が喉から手が出るほど欲しがる、ホロウでの無制限活動能力。

 半エーテリアスと化したポンペイと、大体ミアズマで構成された司祭はそれを有していた。

 

 「お二方もこの花が気になりますか?」

 「気になる、というか対処しにきたんだよ」

 「浄化の仕方にコツがあるのよ」

 「えっ、浄化とかできるんですか?」

 

 仮面ともベールともつかない被り物の奥で、司祭の目が見開かれたような気がした。

 

 「ええ。ただ壊そうとしてもダメなの。自分自身のエネルギーで、この花の中にある一番混沌とした、穢れたコアを探すの。そして、自分の力を針みたいにコアに突き刺し、内側から浄化するの。澄んだ水に落ちた一滴の墨汁を想像してみて。やるべきことは墨汁を全部散らすことじゃなくて、それを澄んだ水に戻すことなの!」

 「な、長っ……何て言ったんですか?」

 「要約すると『自分のエネルギーを流し込んでコアを探し当てて浄化しろ』ということだ」

 「ふうん、そういうことですか」

 

 しかし、司祭はそれを渋っている様子だ。

 それもそのはず。司祭の使うエネルギーはミアズマが主体なので、浄化には向いていない。むしろより穢れてしまう可能性が高い。

 

 「エネルギー、と言っても私のはミアズマですからね。ポンペイさんお願いします」

 「任された」

 「へぇ、ポンペイさんが浄化かぁ。どんな風に――えっ」

 

 ポンペイの目が怪しく光る。

 その瞬間、黒い花は爆散し跡形もなく消滅した。

 

 「こ、これは“ガルシア・アイ”!!」

 「ガルシア・アイ?」

 「ほう、知っていたか」

 「ガルシアのやつを見たことあるから……」

 

 “ガルシア・アイ”

 ガルシアの突然変異の心臓を持つ者に可能な超能力じみた力。

 ポンペイはアーマード・シマキンとの闘いの際にガルシアの心臓を移植されており、この力が使えるようになったのだ。

 そもそも、ポンペイの父親からしてガルシア・シリーズ(母親はシルバー小隊クローン)なので、素質があってもおかしくはなかった。

 

 「そんな超能力があるのなら安心ね!」

 「あまり多用できるものではないが、花の浄化くらいなら問題ない」

 

 ポンペイは黒い花を爆破し続ける。

 そうしてしばらくして、適当観の門下生や陸老師とも合流した。

 陸老師は瞬光をホロウに行かせる気満々だが、福福や藩を始めとした門下生達は乗り気ではなかった。

 

 雲嶽山の人手は黒い花の浄化や避難誘導に裂かれ、ホロウに入る人員は残っていない。

 だからと言って瞬光とリンだけで行かせるのも危険極まりない。そこで名乗りを上げたのが照と、未知のエリアで出会ったロックスプリング。そして――

 

 「ホロウ探索ならコイツを連れていけ」

 

 ポンペイに連れられ、ある人物がやってくる。

 丸々とした見た目、猿のような耳、灘・真・神影流の道着を着た彼は――

 

 「紹介しよう、“モンキー・ボンプ”だ」

 『ご紹介あざーす』

 

 モンキー・ボンプ。

 マネモブによって猿を植えつけられた……否、自ら猿を植えつけた一番弟子。

 

 「あら、かわいいボンプね。ワタシは葉瞬光よ」

 『お褒めいただきあざーす。自分はモンキー・ボンプっス。戦闘ならお役に立てるっスよ。そっちは……お、戦闘用ボンプじゃないスか。珍しいを超えた珍しいっスね、忌憚のない意見ってやつっス』

 『こんにちは、僕はロックスプリングだよ。君は……大分改造されてるみたいだね。見た目からは分からないや』

 『まあ過去なんては気にしないで。どっちみちバラバラにしても石の下からミミズのようにはい出てくるっスから』

 『そうだね……』

 『澄輝坪の危機みたいですけど、まっ自分が来たからには安心してくださいよ』

 

 妙に馴れ馴れしいのはマネモブ譲りか。

 しかし、正直あまり強そうでないボンプの出現に、陸老師が苦言を呈した。

 

 「よほど自信があるようだが……ボンプが増えたところで何が変わる」

 『あっ、どうやって戦うんだって思ったでしょ。ちょっと待ってね今準備するから……』

 

 しかし、あくまで冷静にモンキー・ボンプは懐をまさぐる。

 そして取り出したのは、小太刀だった。

 

 「刀……?」

 『じゃーん、灘神影流に代々伝わる四方詰めの銘刀“桜政宗”っス』

 「なるほど、それで戦うんだね!」

 『いや、違うっス』

 「え?」

 

 モンキー・ボンプは桜政宗を鞘から出すと、自分の胴体……腹に当てて言った。

 

 『もし我々が黒い花の浄化に失敗した場合はモンキー・ボンプ及び――マネキン・モブとツイッギーが腹を切ってお詫び致します』

 「な……なんだあっ」

 

 そう、この桜政宗は戦闘用ではない。切腹用なのだ。

 モンキー・ボンプは自身の命と、灘・真・神影流の権力者二名の命を懸けたのだ。

 

 「むぅ……そうであれば仕方あるまい」

 

 これには流石の陸老師も引き下がらざるを得なかった。

 ただ内心、マネモブはともかくツイッギーとは誰だと思っていたが。

 

 「ねぇちょっと大丈夫なのモンキー・ボンプ!? 勝手に連帯保証人にして!」

 

 リンは小声でモンキー・ボンプに聞いた。

 それに対し、彼も小声で答える。

 

 『大丈夫(マイペンライ)! ツイッギー姐さんは機械化してるから切腹しても死なないっス。師匠は……まあええやろ』

 「大丈夫かなぁ……」

 『そもそも腹を切った後に介錯するとか一言も言ってないっス』

 

 ツイッギーは生身じゃない部分も多いので、切腹しても痛いだけで大丈夫なのだ。

 ちなみにマネモブは分身に腹を切らせるつもりでいる。

 

 『汗血馬、ウサギ、猿、人間、ボンプがホロウ探索を支える……ある意味“最強”だ』

 「あ、自認猿なんだ……」

 

 こうしてホロウ探索が始まった。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 カローレ・アルナの幻影を追いかけながら一行が進む。

 青溟剣の代償を緩和する方法などあるのだろうか。戒具……青溟剣や無尾のことだろうか。先生は何を考えていたのだろうか。

 リンは動揺を隠せない。それは二体のボンプにも気づかれていた。

 

 『大丈夫かい?』

 『少し休むっスか? 自分マッサージは得意っスよ。ロックスプリングもどうスか?』

 『今はいいかな。ここを出たら是非』

 「わ、私も大丈夫かな。うん、ありがとう。取りあえず進もう」

 

 リンが扉を開ける。

 そこには毒々しい、黒い花が咲き乱れていた。

 

 「黒い花がこんなに……」

 

 寒気を感じるリン。そんな彼女を、背後から狙う不届き者がいた。

 

 『……!? 危ない!』

 

 リンを背後から襲いかかる巨大なエーテリアス。

 甲虫のようなそのエーテリアスは、ミアズマの歩者『ムクロサソリ』である。

 

 『しゃあっ』

 『ギシャアアアアッ!!』

 

 モンキー・ボンプの蹴りが、ムクロサソリの顔面を強打する。

 たかがボンプと思うなかれ。モンキー・ボンプは度重なる改造と鍛錬の果て、ほぼ全ての技を習得しマネモブから皆伝の許しを得ている。

 無論、幽玄の象塊ですら使うことができる。そんな重量の塊がぶつかればどうなるか、応えは一つ。

 

 『ギィッ!?』

 『あの巨体を一撃で……!』

 

 ムクロサソリがよろめく。

 実を言うとこのムクロサソリ、飛行能力があるため見た目ほど重くはない。

 同じ虫のようなミアズマラヴェンジャー・アヴァルスの方がよほど重い。

 

 『ギシャッ!!』

 『なにっ』

 『モンキー!!』

 

 だが流石はエーテリアスと言ったところか、怯んだだけで大したダメージではないようだ。

 すぐさま巨大な腕でモンキー・ボンプを弾き飛ばし、獲物であるリンを狙う。

 

 「う あ あ あ あ」

 『ギシャ――』

 

 強靭な顎が、リンを喰い破らんとした時だった。

 

 「あ! 瞬光!」

 

 瞬光が、ムクロサソリを剣で受け止めていた。

 鍔迫り合いと表現するのが正しいのだろうか、瞬光はそれを制し、ムクロサソリを押し返した。

 

 「ハア……ハア……」

 

 歪む視界で瞬光は覚悟を決めた。

 すぐにこの戦いを終わらせると。

 

 「大丈夫……すぐ、終わらせるから……!」

 『ギシェアアアアッ!!』

 

 興奮したムクロサソリが突進する。

 空中で回転し、全てを破壊せんとする体当たりだ。

 しかし、この場にそれを受ける者はいない。

 

 『しゃあっ、シン・コブラッ!!』

 『ギェェェェ!!』

 

 ムクロサソリよりも高く跳躍したモンキー・ボンプが、羽根の付け根を狙った。

 肉と金属がぶつかり合う凄まじい音が鳴る。しかし、その程度で飛行能力を失うほどムクロサソリはヤワではなかった。

 剛腕を振りまわし、モンキー・ボンプを振り払おうとする。

 

 「ここはザオちゃんが!」

 「はっ!」

 

 照が大暴れするムクロサソリを止めた。

 大剣を盾にする照とムクロサソリが拮抗し、その間に瞬光が斬り裂く。

 しばらく、そんなやり取りが繰り返される。ムクロサソリは動物的な本能が強いのか、駆け引きがなくパターンが単調なのだ。

 

 『ギシャアアアア!!』

 『ミアズマ・シールドが来たっス!』

 

 しかし、それでも高危険度のエーテリアスだ。

 ムクロサソリはミアズマ・シールドを展開する。だが、それだけにとどまらなかった。

 

 『ギシャッ』

 『ギシャッ』

 『ギシャッ』

 『ギシャッ』

 『な……なんだあっ』

 「うぁぁぁぁ・・・・え、エーテリアスが分身してる」

 

 ムクロサソリが四体に増えた。

 そう、このムクロサソリもマネモブと同様、四人霞の使い手。

 野性的なエーテリアスの技と、武の研鑽の極致にある技は奇しくも同じだったのだ。

 

 『あ、あの……自分“四人霞”は未習得なんスよ。勘弁してもらっていいスか?』

 『ギシャアアアア』

 『う あ あ あ あ』

 

 照、瞬光、モンキー・ボンプは、襲い来る分身たちをはじき返す。

 幸いにも分身は一度パリィされたら消え去るようだ。しかし、全てをはじき返した時、本体が高速で回転してきた。

 

 『自分にお任せを! しゃあっ、塊貫拳』

 『ギィエエエエ!?』

 

 塊貫拳を受けると、ミアズマ・シールドは破壊されて消えた。

 その衝撃でムクロサソリはバランスを崩し、その場で動けなくなる……あまりにも致命的な隙だ。

 

 「しゃあっ」

 

 ザ ク ッ

 瞬光の剣戟がムクロサソリを斬り裂く。

 

 『ギェェェェ……』

 

 ムクロサソリは、粒子となり消えて行った。

 

 「やったあっ」

 「うぅ……」

 「えっ」

 

 瞬光が膝をつく。

 戦闘では大したダメージなど受けていない。

 これは青溟剣の代償だ。

 

 「全部、浄化しなきゃ……」

 「ダメだよ瞬光! 今の瞬光じゃ……!」

 『そうっスよ! 一旦帰るべきっス!』

 

 なおも青溟剣を使おうとする瞬光を引き留める。

 しかし、彼女の意思は変わらなかった。

 

 「皆が、危ないから……!」

 

 瞬光は、青溟剣を抜いた。

 果たして黒い花の浄化には成功した――白い瞬光の犠牲によって。

 そして、当の瞬光は眠りにつき、帰ってくることはなかった。

 

 『た……大変だあっ、瞬光さんが……瞬光さんが死んだあッ』

 「いいや、まだ生きてる。瞬光を、家に帰そう……」

 

 一行は沈痛な面持ちで外への裂け目へと向かう。

 だがその直前に、瞬光はわずかに口を開いた。

 

 「瞬光ちゃん……」

 「大丈夫だよ、絶対なんとかする!」

 

 友の犠牲、哀しみを背負う。

 しかし一行は、かすかな希望を胸にホロウから脱出した。

 

 

 




ムクロサソリが見た目ほど重くないってのは捏造なんだァ
ただ羽があって飛べるからそうかもしれないねってくらいに思っててほしいのん
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