『妹さんの記憶が戻って良かったっスね、忌憚のない意見ってやつっス』
「ありがとう、モンキー・ボンプ君。君達のおかげだ」
『自分は記憶に関して何の貢献もしてないんだよね、酷くない?』
結果的に言うと、瞬光は復活した。
兄妹の愛、そして友の奮闘により、瞬光の記憶と五感が戻ったのである。
その後に照とも仲を深め、釈淵を含めた一行は澄輝坪へと帰ってきた。
だが、釈淵はそれだけで満足しなかった。
今までの……妹を青溟剣の剣主に仕立て上げられたという怒りを、雲嶽山にぶつける気でいた。
「僕は、彼らの偽善を……白日の下に晒す。真実を知りたければついてくるといい」
『ちょ、お兄さん!』
「追いかけよう!」
『めちゃくちゃキレてて怖いんスけど……いいんスかこれ』
釈淵は適当観の方に行ってしまった。
さもありなん。信頼していた雲嶽山の人に裏切られたと言う気持ちが、怒りへと変わったのだろう。
急いで釈淵を追いかける。適当観では、釈淵、そして儀玄と陸老師が対峙していた。
最初は、釈淵も陸老師も比較的冷静だった。
しかしながら、言い争う内にヒートアップする。
お互い我慢がゼンレス限界を超えた。
「アンタガナ!! アンタガスヴェテワリインダヨ!!」
「ナニヲイッテル! オマエニナニガワカル? ワシノクルシミヲ!!」
「フジャケルナ!! モアイ!! トニカクボクノジャマダテハサセナイ!! ボクノジャマヲスルナラカタイプロウンガクシャンデロ!!」
「クサー!!!」
「モンキー、どういう意味だろう?」
『さあ……』
ヒートアップしすぎて何を言っているのか聞き取れない。
しかし、何はともあれ根本的な解決になっていないにせよ、瞬光は帰ってきた。
その安堵を胸に、リンは眠りについた。
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『大変だあっ、黒い花が……黒い花が咲いたあっ』
翌日。澄輝坪では再び混乱の渦が巻き起こる。
黒い花の再来。それに加え、ラマニアンホロウそのものが驚異的な速度で拡大している。今にも澄輝坪を吞み込まんとしているのだ。
いや、澄輝坪だけではない。このままでは零号ホロウの二の舞……今度こそ新エリー都は滅び去り、後に残るのはマネモブ達を始めとした意思のあるエーテリアスだけだろう。
「今、宗主達にエーテリアス連中から連絡が入った。ホロウ内でも黒い花が大量に増殖してるらしい。かたっぱしから刈ってはいるが、焼け石に水だと。今は湧き出たエーテリアスを倒す方向にシフトしとる」
「ホロウ内もか……」
ホロウ内部でも混乱は起きていた。
今はマネモブ達強力なエーテリアスは一か所に集まり、野良エーテリアスを狩りながら待機している。
そんな彼らは何とかホロウ外にいる灘心陽流の黒田を通して状況を伝えていた。
『イゾルデ、再びお前と共に戦えることを嬉しく思う』
「私もだよ、鬼火」
「いやぁ、復讐より健全ですねぇ」
「その復讐対象も見失ったからな……」
イゾルデ、司祭もエーテリアス側ではある。しかしイゾルデに関しては、防衛軍の大佐なので、今は澄輝坪で指揮を執っていた。
ちなみに司祭はサポート要員なので留守番の形で澄輝坪に残されていた。
そして、作戦は実行に移される。
一部のメンバーは澄輝坪に残ってミアズマの駆除と市民の安全の確保。
それ以外のメンバーはラマニアンホロウに突入し、異常な岩をブッ叩く。
あまりにもシンプル、あまりにも単純明快。
策謀を張り巡らせる邪崇に対抗するのは数の暴力と大火力。小賢しいマネをする相手には野蛮人ともなろう。
そのために、儀玄はメンバーに最適な振り分けを行った。
「オボルス小隊、出撃準備完了!」
オボルス小隊に加え、イゾルデ、福福、そして司祭が加わったチーム。
火力に加え、サポートが加わったこのチームにおおよそ死角というものはない。
「それじゃ、ホロウには怪啖屋Withガルシア&お兄さんの“サプライズ”を楽しんでもらおっか」
怪啖屋とガルシア、そしてイドリーの兄ベンジャミン。
シンプルかつ堅実に強いこのメンバーはめちゃくちゃタフで継戦能力が高い。
「皆でこの、広がる闇を断ち切るぞ」
正直なところ、この雅、盤岳、ダイアリンの三人チームはバランスを取ったとしか言いようがない。
しかし、彼女達のチームはホロウ内でエーテリアス達と合流する手筈になっている。
「始まりの主が何を企んでても……絶対に止めて見せる!」
一番重要なチーム。
始まりの主の元へ赴き、邪崇を食い止める。
青溟剣にはその力があった。
「雲嶽山の弟子達よ、灘・真・神影流の武者達よ――私と共に澄輝坪を死守しろ。一歩も引くな!」
雲嶽山、灘・真・神影流がタッグを組んだ。
武の極致が集まれば、始まりの主ですらものの敵ではない。
「ゴングを鳴らせっ、作戦開始だっ」
「澄輝坪を守れェッ、黒い花は皆殺しだあっ」
こうして、作戦が開始された。
弱き者から狩る。最初で最後のターゲットは……始まりの主!?
Now Loading......
『ロックスプリング、ホントに裏切ったんスか?』
リン、瞬光、照のチームは、ロックスプリングの裏切りに合っていた。
手助けが間に合った釈淵と照のおかげで追いかけることができたが、ロックスプリングの裏切りは衝撃的だった。
『いや、僕は裏切ったりはしていない。君達を救いたいだけなんだ』
『始まりの主の復活が救いとでも言うんスか? 今の状況、師匠達エーテリアスでさえ食い止めようとしてるんスよ』
ロックスプリングは、その哀しき過去から争い合う人類の醜さに心折れ、始まりの主の復活、そして世界の再誕を望んでいる。
しかし、ここにいる皆には分かる。彼が人間の醜い部分しか見ていないこと、光から目を逸らしていることを。
『それでも僕は――あらゆる苦痛を葬り去ることを選ぶ』
『――言っても分かんねぇみたいだな、あーっ』
洞窟内、空中から何かが飛来する。
黒き鋼の巨人、GU‐0001ロックスプリングの本来の姿だ。
サンブリンガー自ら作り出した人類の守護者が、滅亡を食い止めんとする者達に牙を剥く。
『ほぉ、戦闘用ボンプってのはフカしじゃなかったみたいスね。リンちゃん、瞬光ちゃん、ザオさん、ここは自分に任せて先に行って欲しいっス』
「え、で、でもあんなに大きなボンプを――」
その時だった。
何かがここへ迫っている。重厚な足音を立て、岩を破壊しながら迫っている。
「な、何の音!?」
『言い忘れてたんスけど、自分も戦闘用ボンプなんスよ……名前もモンキー・ボンプじゃないっス』
ついに邪魔な障害物を破壊し、それは現れた。
筋骨隆々の機械の身体、太い腕によるナックルウォーク、カメラアイからあふれ出る知性……それらが、この巨神が人類の、霊長の守護者であることを雄弁に物語っていた。
『GR‐0001……自分、ゴリラ・ボンプって言うんスよ』
『ホ ギ ャ ア ア ア ア』
ゴリラ・ボンプ。
銃火器の一切を排し、重装甲、高機動、怪力を得た比類なき機械の霊長。
排気を兼ねた咆哮は大地を揺るがす。
『まさかGRシリーズ……現存していたなんて』
『お互い様っスね。自分も自分以外見たこと無いっスから』
鋼の巨躯が睨み合う。
『さあ腕に自信のある者達は先へ行けッ、始まりの主を失神KOさせろっ! 急げッ乗り遅れるなッ、“始まりの主・ラッシュ”だ』
「ありがとう! モンキー……いや、ゴリラ・ボンプ!」
リン達が先を急ぐ。
それを、ゴリラ・ボンプは満足そうに見ていた。
『止めないんスね?』
『止めさせてもらえるのかい?』
『その前に自分が殺してやるよっ、ロックスプリングッ』
巨大なる魔神が激突する。
鋼の守護者達の目的は人類の守護。しかし、譲り合えぬイデオロギーのために鉄拳を交える。
果たして、勝負の行方は……
瞬光の記憶取り戻すシーンはカットさせていただくのん
流石にあれを書き切る気力は無いんだァ許してくれよ