高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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正直なところマネモブが蚊帳の外すぎて何を書こうか迷っている…周老師だ


ああそうか…また妄想しちまったアンコール 2

 『ジェーン、マタ一人デラーメン食ッテルヤンケ? サッキ一緒ニイタアノ脳ミソスカスカソウナギャルモ誘ッテヤッタライイヤンケ』

 「今日は一人で食べたい気分だったのよ」

 

 ルミナスクエアにある、とある立ち食いラーメン屋で、ジェーンとトダーが話していた。

 いつもならジェーンは錦鯉や神出鬼没のラーメン・ジョーで食べているところだが、ここいらでたまたまプロの立喰師(たちぐいし)の目撃情報があったので張っていたのだ。

 今日は現れなかったようだが、ジェーンはラーメンを食べて満足していた。

 

 「あなたこそ、パトロールかしら」

 『イヤ、トダーハシバラク非番ヤンケ。例ノ知能機械暴走事件ガアッテ、任務中ニトダーガ暴走シタラヤバイカラメンテナンス中ッテコトニナッテルヤンケ』

 

 知能構造体を狙った悪辣な暴走事件。

 暴走したのが一般的な機械人の市民ならいざしらず、ゴア博士によって凶悪なまでにチューンナップされた治安維持ロボットであるトダーが暴走すれば止めることは至難の技だ。

 だからこそ、万が一を恐れた治安局はトダーを休暇に出すことにした。しかし何の間違いか、今やトダーは市街に放逐されている!

 これは悪意を持ったAIの仕業か、治安局のガバか。

 

 「賢明な判断ね。アンタと正面切ってやりあいたくはないわ」

 『オ互イ様ヤンケ……トコロデ、何カ進展ハアッタヤンケ?』

 「正直なところ、何もなかったわ。でも……」

 

 ジェーンはスマホを差し出した。

 そこには、パエトーンから『妄想エンジェル』のライブへの誘い。

 

 「ここに行けば分かるわ」

 『アイドルノライブ? 行ッテ何ニナルヤンケシバクヤンケ』

 

 こうして、トダーとジェーンはライブに行くことになった。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 「まさかトダーも来てくれるなんて!」

 『任務ガ無クテ暇ダッタヤンケ。来テヤッタヤンケ』

 

 トダーはライブ会場404の中を見回していた。

 普段、このような場所に来ることがないトダーにとって、ライブ会場とは珍しいものだった……さっさと内部構造を把握すると、すぐにリン達へ向き直ったが。

 

 「やあ、(ゆう)。リハを見に来たよ。ついでにお客さんも二人連れてきたんだ」

 

 アキラが、羽と呼ばれた少女に話しかける。

 機械の翼と天使のような輪を持った、アイドルらしい衣装の少女だ。

 

 「ハァーイ、アイドルちゃん達。“黄金の日”にライブをするんですって? チケットがまだハケてないといいけど……二人分ね」

 『アイドルノライブヲ見ルノハ始メテヤンケ。ドンナモノカ、オ手並ミ拝見シテヤルヤンケシバクヤンケ』

 

 ネズミのシリオンの癖にめちゃくちゃ猫被っているジェーンと、謎に上から目線のトダー。

 二人はそれぞれお互いの言動に眉をひそめていたが、あえて口出しはしなかった。 

 

 「チケットならまだあるよん。でも……お姉さんと……お兄さん? が初めましてなら、まずリハを見てって! チケットはその後でもいいよ」

 『ホォ、オ試シッテヤツヤンケ?』

 「ずいぶん自信があるようね。期待しちゃうわ」

 

 二人が話していると、そこへTOPSのアイドル、ヴェスポがやってきた。

 機械人(彼女が禁断の果実テストをパスしていることはTOPSによって隠されている)である彼女は妄想エンジェルの知り合いであり、今回のリハーサルに呼ばれてきたのだ。

 彼女はこのためにギチギチに詰められたスケジュールの合間を縫って、404までライブを見に来てくれたのだ。

 

 ヴェスポは羽と親し気に話している。

 それを見たジェーンは、どこか驚いたような表情を浮かべた。

 

 「ヴェスポ? こんなところに……」

 『確カニ、大企業オ抱エノトップアーティストガ来ルヨウナ場所デハナイヤンケ』

 「そうじゃないわ……いや、ある意味そうだけども……」

 「……どなた達?」

 

 自分の姿を見てコソコソと話す見慣れない二人に、ヴェスポは怪訝な声で聞いた。

 それを聞いたジェーンは、()()()()()()()で言った。

 

 「アタイ、あなたのちょっとしたファンなのよ」

 『ソノ連レヤンケシバクヤンケ。ア、トダーハファントカデハナイヤンケ。デモ、コンナカメラミタイナ顔シテルケド、ショウモナイゴシップノ心配ハナイヤンケ』

 「……コホン、このバカはほっといて。点灯式に出演するって聞いてたけど……こんな直前にわざわざアイドルちゃんたちのリハを見に来たのかしら?」

 「アリアは私のだ~いじな友達だから。本番に行ってあげられない分、せめてリハーサルは見たかったの」

 「ふうん、そゆこと」

 『フウン、ソウイウコトヤンケ』

 

 ジェーンは明らかにヴェスポを怪しんでいる。

 リンやトダーはそれをあえて口に出しはしなかった。

 

 ――それからしばらくして、ライブが始まる。

 それに集中するふりをしながら、トダーは小声でジェーンに聞いた。

 

 『アノヴェスポガ今回ノ“ホシ”ヤンケ?』

 「可能性はかなり高いわ」

 『コノ場デ潰スヤンケ?』

 「あくまでまだ疑惑よ。それとも、治安局のロボットが無辜の一般市民を傷つけるのかしら?」

 『暴走事件ニカコツケテイクラデモ言イ訳ガキクヤンケシバクヤンケ。ソレニ、ヴェスポハ表向キハ人権ノナイ備品ヤンケ』

 「――やめなさい。治安官として……新エリー都に生きる者として、それは許されないことだわ」

 『――新エリー都ノ存亡ガ関ワッテイタトシテモヤンケ?』

 「そうよ」

 『フウン……了解シタヤンケ』

 

 機械じみた歪んだ合理性と、自身を無視した効率的な治安維持活動を提案したが、流石に一般人に手を出すことは許されなかった。そんなトダーはそれ以上何も言わなかった。

 トダーは基本的に、近くの治安官の命令を聞くようにプログラムされているのだ。

 

 「お見事っ! 最高のライブだあっ」

 

 そうこうしている内に、ライブが終わる。

 ライブはヴェスポも褒める通り、ジェーンやトダーの素人目から見てもかなりの完成度を誇っていた。

 しかし……どうにも雲行きが怪しい。メンバーの一人であるアリアと、彼女達のマネージャーであるセシリアの様子がおかしいのだ。

 そんな時、突如としてアリアがホログラムを解除し、機械人としての姿を現した。

 

 「なにっ」

 『ナ……ナンダアッ』

 

 割と真面目に蚊帳の外である二人は困惑していたが、その間にアリアは出て行ってしまった。

 

 「ううん、どういうことよ」

 『トダーニモ何ガナンダカ……』

 

 彼女達の事情は良く分からないが、嫌な予感がする。

 ジェーンは何があっても良いように警戒してると、妄想エンジェルの千夏が、スマホを持ってやってきた。

 

 「た、大変やあっ、何かけったいな投稿がされたあっ」

 

 インターノットに流されたクソみたいな投稿。

 それは、機械人に対するネガキャンを超えたネガキャン。

 特に使われている画像は、アリアが千夏を襲っているところだった。

 

 『イツモミタイナ機械排斥主義者ノスパムト無責任ナ傍観者ノレスバヤンケ。マダ零号ホロウノ方ガヨホド存在価値ガアルヤンケシバクヤンケ』

 「それ零号ホロウの被害者の前で行っちゃダメだよ……けど誰がこんな投稿を……」

 

 そんな話をしていた時である。

 アリアがふらりと幕の裏から現れる。一瞬、戻ってきたと喜びをあらわにする一同。

 しかし、そんなアリアの目は……妖怪めいて紫に光っていた。

 

 『暴走ヤンケッ』

 「行くわよ、トダー!」

 『了解ヤンケ』

 

 蚊帳の外なのは事件が起きるまで。それ以降は治安官に変身するのだ。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 

 『マズハトダーニ任セロヤンケ』

 

 トダーが時速100キロを超えるスピードで肉薄し、アリアへ鋼鉄の拳を伸ばした。

 しかし、アリアは音速の拳を軽々と避ける。遊びのない直線的な攻撃は、歴戦の戦闘機械であるアリアにとって避けやすいものだったのだ。

 そう、機体性能の差はともかく、トダーとアリアでは戦闘経験が違った。

 

 「足止めご苦労様」

 

 鋼の巨躯の背後から、ジェーンが急襲する。

 異常な切れ味を誇るカランビットナイフが振るわれるが、アリアのエネルギーブレードによって防がれていた。

 暴走していても的確に振るわれる実体のない兵器は、当たれば大怪我は必至である。

 

 『ジェーンッ』

 

 しかし、脅威のエネルギー兵器での溶断をも恐れず前進するトダーは、攻撃の全てを一身に受け止めていた。

 ゴア博士の開発した最新の装甲は、エネルギー兵器にも一定の効果を発揮し、トダーとその仲間達を防ぎ切るのだ。

 

 「ありがと……」

 『礼ハイラナイヤンケ、トダーハ道具ヤンケ』

 「それでも、よ」

 

 トダーが防ぎ、ジェーンが縦横無尽に襲いかかる。

 抜群のコンビネーションとは言えたが……後の一押しが足りない。

 このまま行けば二人が勝つだろうが……泥仕合を超えた泥仕合になるのは目に見えていた。

 

 「アリアちゃん! 目を覚ましてぇや!!」

 『ナニッ』

 「危険よ! 下がりなさい!」

 「イヤや! アリアちゃんがおるのに――!」

 

 飛び出してきた千夏が、アリアをブッ叩いた。

 

 「ダ、ダメ……千夏、ちゃん……」

 「い、意識が……!」

 

 その瞬間、アリアの動きがぎこちなくなる。

 暴走した動きは健在だが、動きは確実に鈍っていた。

 

 「このまま畳みかけるわよ」

 『取リアエズ止メルヤンケ』

 

 とにもかくにも、暴走を食い止めてから出ないと話は始まらない。

 相変わらずジェーンが攻撃、トダーが防御に徹していたが、ここで均衡が崩れた。

 

 『シャアッ』

 「はうっ」

 

 威力はそのままに、機械人にはできない関節の異常なねじれと伸縮機能を有した拳が、アリアを捉えた。

 ノーマークの部分に、重すぎる拳がヒットしたアリアの動きが止まる。

 

 「アンタに武器は似合わないわ」

 「はうっ」

 

 ジェーンが、抜群のナイフ捌きで武器を落とす。

 基本的にナイフ一筋の彼女にとって、武器をはたき落とすなど造作もない。

 

 「アリアちゃん……ゴメンなあっ」

 「はうっ」

 

 千夏のハンマーがクリーン・ヒットする。

 もちろん手加減を超えた手加減をしていたが……暴走に抗い、身も心もボロボロなアリアはついに倒れ伏した。

 

 トダーは、アリアが意識を失ったのを慎重に確認する。

 

 『クリアヤンケ』

 「今までのケースと一緒ね……」

 

 アリアの暴走は幕を閉じた。

 しかし、課題はまだ山と残っている。

 

 「残念だけど……この子はアタイが連れて行くわ」

 「なにっ」

 「な……なんでやっ」

 『トダーハ聞イテナイヤンケ、シバクヤンケ』

 

 ジカイ、ドウナル……!?

 

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