一番乗りで店のドアを開けたいちご。そして中に入ると同時に、
「お、お姉ちゃん!?」
声をかけられた。
その方向に視線を向けると、そこには弟の姿が。
「らいち!」
いちごは彼の名を呼びながら歩み寄っていく。店内にいる他の客は「星宮いちご……!?」「すげえ!サイン貰いたい……!」とざわめく。
「いちご、どうしたの?ってらいち、久しぶり!」
「おお、らいちじゃないか」
「あおい姐さん!それに蘭さんも!お久しぶりです!」
「霧矢あおいだ……!」「紫吹蘭さんもいるぞ……本物だよな……?」
更に入ってきた2人の姿を見、ざわめきが大きくなる。
「お姉ちゃんどうしたの?もしかして今度のオーディション?」
「うん!わたしデュエルモンスターズやったことないから、ここに行けば色々あるってあおいが」
「そうなんだ〜」
楽しげに会話する2人に、1人の男の子が近づく。
「あのっ、星宮いちごちゃん……ですよね?」
「うん。あ、もしかしてサイン?」
「は、はい!」
そう言って色紙を出す男の子。彼に触発されたのか、次々と彼女達の周りに集まってきた。
「俺にも!いちごちゃんのサインを!」「俺はあおいちゃんのサインが欲しいなぁ」「俺はやっぱり紫吹蘭さん!」
集まってきた人々にサインを書きながら、あおいは呟く。
「この展開、穏やかじゃない」
「ああ……」
「お前等、彼女達が困ってんだろ。落ち着け」
人々の波に彼女達が飲まれそうになったその時、店の入り口側から一人の声が聞こえた。
「あ、クロウ。お帰り」
「お帰りじゃねえよ龍亞。働かずに何してんだ?早く仕事しろ仕事。」
クロウと呼ばれた男は人混みを解散させ、荷物を店のテーブルに置くといちご達に声をかける。
「ウチの客が迷惑かけたな。すまねぇ」
箒の様に尖った茶色の髪の毛を掻きながら彼は謝罪した。
「いえいえ、気にしないでください。あたし達こそお騒がせしてすいません」
「あんたらが謝ることじゃねえよ。俺はクロウ・ホーガン。この店の店長をやってる」
「俺は龍亞。あ、後でサイン頂戴!」
「お前は仕事しろ!」
カウンターから顔を出した緑髪の少年―龍亞目掛けてクロウはカードを投げた。
勢い良く回転するそれは龍亞の顔に当たる。
「〜〜〜〜〜〜!」
声にならない声をあげながら床を転がる龍亞を尻目に、クロウは言った。
「今日はどんな用なんだ?もしかして、スターライト学園のアイドルさんか?」
「はい。わたし達、次のオーディションに合格するためにデッキを組みに来たんです」
「あたしとあおいは一応デュエルモンスターズの経験はあるけど―」
「いちごは全くの初心者なので、とりあえずカードショップに行こうとネットでオススメのお店を探したんです」
「成る程……それでウチに来てくれたと」
頷く3人。
クロウはあおいの言葉に歓喜していた。
「いや〜嬉しいぜ!この間も初心者の女の子3人が来てスターターデッキを買って行ってくれて、今度はオススメの店に選ばれてたなんて……!よし!それならこの"鉄砲玉のクロウ"様がデュエルモンスターズを教えてやるぜ!」
「ありがとうございます!」
頭を下げ、感謝を伝えるいちご達。
クロウは店のエプロンを着け、大きなモニターを引っ張り出しながら言った。
「いいってことよ!それじゃ奥のデュエルスペースで説明するぜ!」