初恋が叶うまでループする話 作:じゃがありこ
初めは一目惚れだった。
初めて彼女を見た時、どうしようもなく惹かれた、目を奪われた。黒字に葡萄色のリボン。スカーフがついたセーラー服。美しい黒の髪、雪の肌、牡丹の唇。
生まれながらに備わった全ての色彩が鮮やかで美しい。髪を彩る紅の紙紐がゆっくりと揺れる様はたおやかで、視線を持っていかれる。 だけどそれだけなら、忘れることができたはずだ。
だけど、あの日、雨の中で先輩を見た時に完璧に壊れた。欲しいと思った。
先輩は泣いていた。すぐにわかった。あー、彼女は人生をやったのだ。心に抱く強いものがあって、表現して、それにより生じた責任を自分自身で受け止める。その一連の流れに、自分は立ち合ったのだろうと理解できた。
彼女が自分の母親と確執があることはわかっていた。きっと、彼女は自分の親と………自分の過去と後悔と呪いとかそういうものから逃げずに向き合ってきたんだ。
ぶつかることから逃げてきた、傷つくことが怖くて避けてきた、転ばないようにそれだけを気をつけてきた俺にとってそのあり方と強さはどうしようもなく眩しかったから………美しくも眩しい彼女に引き寄せられてしまったんだろう。
結果を恐れずに正面から向き合って、真摯に言葉を交わす………そんな強さに憧れてた。彼女は失敗した。逃げるために俺は向き合わなかった。
だけどどうしようもなく、あの人から羨ましく見えた。
そんな玲奈先輩を助けたくて、近づきたくて、その勇気を少しでも分けて欲しくて告白した。
『付き合ってください!』
『私、貴方に興味ないの』
まあ 結果はご覧の有様だけど、諦めきれなかった。
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
冷や汗と共に覚醒する。眩い光が差し込み眼を細めながらも、段々と眼が慣れてくると……広がっていた光景は、机に座り足を揺らす少女だった。
「おお、振られてしまうとは情けない」
「死んでしまうとは情けないみたいに言うなよ」
俺はまたこの春に戻ってきたのだ。目の前の女を見てそう悟った。今年の春は異常気象で、3月というのに東京に雪が降っていた。卒業した高校の屋上に俺は座っていた。目の前には、茶髪の少女が芝居がかった仕草で涙を流している。
「三回目の18歳ですね。気分はどうですか?」
「最悪だ」
いわゆるタイムリープ。諸事情により、俺は目の前の悪魔を名乗る女と契約をし、1年を2回ほど繰り返している。タイムリープから抜けるの条件は初恋の相手を恋人にすること。ループするトリガーは、告白した相手に振られることだ。
つまるところ、俺は初恋の相手に2回ほど振られリープしているのだ。
なんだこれ?地獄か?この春に戻ってくるたびに目の前の女と反省会をして再度やり直しているのだぞ?もう心折れるって!おかしいだろ普通に無理だってば。
「反省会?しますか」
「………反省か。好感度が足りないよな」
「好感度と言いますか、あの方の視界に入れてますかね」
俺の初恋の相手。柊怜奈先輩は人にあまり興味を抱かない人だ。おそらく、大半の人間が彼女の視界には映れていないのである。そこを何とかしないと土俵に上がれないと悪魔は言っているのだ。
「怜奈が固有名で凜さんのことを覚えないとそりゃ振られますって。わかってますよね?」
俺は今までの振られ方を思い出す。
一回目は、『友達から?私余計な友達はいらないの』
二回目は、『好き………好きね。私はよく知らない人は好きじゃないし、誰かを知ろうだなんて思わないの。だから諦めて』
である。よく心折れてないな。
「まあ~、凜さんと同時期に告白したイケメン君も似たような振られ方でしたし、これが彼女の本音ですね」
「えぐい振られ方だよな」
常人なら心が折れているだろう。先輩はモテる。俺以外にも告った奴はいるが、誰もかれも惨敗だった。
「そしてもう一つ根本的に凜さんの恋愛経験値の浅さが足を引っ張っています!」
恋愛経験値の低さ。見事に初恋拗らせた俺は高校で恋愛をしなかったので否定ができない。
「わかっているけど、このループで経験値が稼げるんですかね」
「負けも経験値と思えるならいいですが、私から言わせれば成功体験こそが真の経験値です。なので、玲奈さんではなく、まず他の女の人を落としましょう!」
「は?」
「いいですか?怜奈さんの視界に映るには、玲奈さんの世界に入ること。玲奈さんの世界にいるのは彼女の友人であり、数少ないその友人の恋人になれば認識されるはず。経験値を溜めつつ、彼女の知っている人になる最高の妙手です!」
「た、確かに?」
「今回墜とすのは怜奈さんと同学年で幼馴染の友人雛月鮮花さんです!」
「待て、鮮花先輩に告って恋人になったら玲奈先輩に告れないだろ?」
「何を寝ぼけたことを言っているんですか?恋人になったらタイムリープするんですよ。基本的に稼いだ好感度は据え置きなので」
「初めて聞いたぞ」
「というわけでいざ3度目の大学一年生をどうぞ」
半強制的に意識が遠のく。俺は忘れていた。この作戦には大きな落とし穴がある。普通に振られる可能性があるということである。
リハビリがてらどうしても書いてみたかったラブコメ物です。バトル系しか書いたことがないので実質処女作と思ってますが、お付き合いください。