初恋が叶うまでループする話   作:じゃがありこ

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第2話

はい、見事に2ヶ月が経過しました。

 

進捗はありません!!!!!

 

マジで全然鮮花先輩と距離を縮められていない。前提として、鮮花先輩と玲奈先輩は大学入学時からかなり仲違いをしているようだ。

 

しかしそれでも、鮮花先輩は玲奈先輩と同じサークルに所属している。演劇サークルとテニスサークル、学園祭の実行委員会に入っているようだ。2周目で俺も入ったサークルだが、今回はテニスサークルと演劇サークルにしか所属していない。

 

というか正直3つサークルを掛け持ちして、普通に単位が取れる方がいかれてませんかね。

 

2週目の俺が2つ掛け持ちして、大学生活を回せていたのは1周目の知識があるからだ。少し話題がずれた。鮮花先輩について調べて分かったのは3つ。

 

曰く、先輩は顔がいいため馬鹿みたいにモテるそうだが距離を詰めるのが難しく、拒絶力もすさまじいためビックリするほど手酷く振られるらしい。2学年の男子の1割は撃沈済みだそうだ。

 

鮮花先輩と玲奈先輩は幼馴染。学校も同じ、習い事も同じ、部活動まで同じだったそうだ。大学のサークルも例にもれずだ。

 

最も驚愕すべき点は、昔はよく笑う人だったという噂だ。あの人は、俺の知る限り大体無表情で、ダウナーで無気力が服着て歩いている印象を受ける人だった。

 

基本的な情報としては、俺と同じ学部で学科は環境学科。2年生で顔がいいこと。酒が嫌いで、趣味は絵を描くこと、ネイルアート、音楽鑑賞。

 

ふと気が付いたが、俺って先輩を調べてるだけで全然先輩と接触してないな?1週目の振られ方がトラウマすぎて武器なしで戦う気になれなかったのはあるが、これはいけない。このまま進化したら特急呪物になってしまう。

 

というわけで、俺はひとまず気分を変えるべく飲み会に参加した。一応、鮮花先輩が参加しているやつ。

 

ただし、先輩は女子で固まったテーブルに座っており機会を窺う羽目になった。暇すぎて、俺は2時間飲み放題2000円の店でウーロン茶をあと何杯飲めば元が取れるのか考えていた。

 

3杯目のグラスが空になったので「ウーロン茶をください」と通りかかった店員のお姉さんに声をかける。

 

俺のオーダーに便乗するように、周囲のテーブルからも注文が続いた。

 

店員のお姉さんは笑顔で答えて厨房へ消えていく。待っている間、グラスに残った氷を口の中に入れた。それが気化し終わる頃に店員のお姉さんは大量のクラスとジョッキを器用に持って帰ってきた。

 

「ウーロン茶でーす」

 

テーブルの上にストローの刺さったグラスがとんっと置かれた。それをまずは一口。ほんのり苦いウーロン茶の味である。

 

最近近所のスーパーで売られているのと変わらない味だ。

 

不意に、「ここいい?」と突然声をかけられた。

 

グラスから顔を上げると座敷のテーブルを挟んだ正面に一人の女子学生が座っていた。ウエスト部分をリボン風のベルトで絞ったロングだけのワンピース。控えめに明るくした髪はゆるくまとめたハーフアップのお団子で全体的な印象を甘くなりすぎずカジュアルにまとめている。ただ、体の線は驚くほど華奢だ。微笑んでいるのにどこか困ったような表情、泣きぼくろのせいだろうか。

 

「いいですけど向こうのテーブルの方がさらにいいんじゃないでしょうか」

 

「どうして?」

 

3秒ほど遅れて疑問を口にする。スカートがしわにならないように少し気にしながら、結局俺の正面に座った。中身が半分ほど残ったグラスもテーブルの上に置かれている。大量に入っている氷が溶け出して、だいぶ汗をかいている。新しい取り皿も用意して居座る気満々だ。

 

「向こうのテーブルからの視線が怖いので」

 

彼女が先ほどまで座っていたテーブルは、彼女の友達らしきショートヘアの女子が1人と男子が3人いるはずだ。スマホを出しあって、RINEとかやり取りをしているのか烏龍茶を頼んだ時に見えた。

 

「なんかIDの交換が始まりそうでぇ」

 

だから、テーブルに逃げてきたと言いたいらしい。

 

「嫌なら断ればいいんじゃ」

 

「普通そうなんだけどさー」

 

女性は困った顔をする。

 

「………一応自己紹介しましょうか?」

 

「君のことは知ってるよー。十六夜凜君だよねぇー?」

 

「へー、僕も有名になったもんですね」

 

グラスを持つ手もストローを挟む指も加える唇も仕草の一つ一つが妙に女子っぽい。男子に群がられていたのも理解できる可愛さだ。単純に男子目線でなんか可愛いと思う。

 

しかし、告白したら絶対ろくなことにならないと確信させる匂いがある。

 

「なんか面倒くさい飲み会に来ちゃったなぁ」

 

「一応今日ってそういう会でしょ」

 

俺のテーブルから周りを見ると、お座敷全体がちょっとした個室のようになっている。男子だけのテーブルが二つ、女子だけのテーブルが一つ、混合のテーブルが3つ。座敷で笑い声を上げ手を叩いて、スマホを出してID交換に勤しんでいる大学生。

 

今日は7月の半ば。夏休み前日だ。半年お疲れ様でした会っていう名目で同学年+先輩数人が集まっている。

 

「統計学部1年、水瀬光莉です」

 

「同期なんですね。どうも」

 

「日夏から聞いてるよ?鮮花先輩を狙ってる同級生の話」

 

「………日夏口軽いな」

 

日夏という同じ学科の知り合いに鮮花先輩の情報は聞いたのだ。どうやら仲がいいらしい。水瀬は日夏の友人なのだろう。

 

「いいなあ、恋愛。………楽しいよね」

 

「そう思うんだったら好きなの選んでくればいいんじゃないか?後ろにいっぱいいるぜ」

 

ちらっと 斜め後ろのテーブルを見る。

 

「今はそういうのいいかな」

 

「数秒で矛盾するじゃん」

 

「ちなみに鮮花先輩狙いの君は何で来たのかな」

 

「友達に誘われてきましたね」

 

ちなみにその友達は俺がトイレに行っている間にちゃっかりと女子がいるテーブルに紛れ込んでいた。酒の力ってすごい。まだ騒ぎ声が響く。

 

「鮮花先輩とはどう?」

 

「中々距離が詰められてない。タイミングが合わなくて」

 

「あー、ね。凜君ってー、恋愛経験浅い人?」

 

「ずけっというじゃん」

 

「悩みが童貞のそれなんだよねー。話し方も敬語とため口混ざってるし、もっと自信もとーよ」

 

「ひどい言われようだ」

 

一週目なら心が砕けている言葉である。

 

「ごめんってー。お詫びにフォローしてあげるから許してよ」

 

「フォロー?」

 

徐に水瀬は席を立ち、女子だけのテーブルに歩いていく。しばらくすると、鮮花先輩がこちらに来て入れ替わるように水瀬は鮮花先輩の席に腰を掛けた。

 

思わず、フリーズしている俺を見てウインクを飛ばす水瀬。いや、無理無理無理。いきなりこうなったって何話せばいいかわからないって。

 

「十六夜凜君だよね?光莉ちゃんから来月のサークル合宿の相談に乗ってあげてって言われた」

 

水瀬はそんな建前で鮮花先輩を召喚したらしい。先輩は酒を入れていないのだろうか。まったく肌は赤くないし、持っているジョッキもソフドリだった。

 

「あのー、先輩?ひとまず座りませんか。先輩を断たせているのは後輩として居心地が」

 

「失礼します?」

 

ジョッキをテーブルにおいてから、俺に向かってコテンっと首を傾げて挨拶をしてきた。

 

「何で疑問形?」

 

すでに雰囲気が天然っぽい。金色の髪をふわりと揺らし、小首をかしげる彼女は非常に可愛らしい。身体は細く、四肢の先までスラリと伸びていた。不気味なほどに美しいと思った。御伽噺の精霊のようだ。しかも、鮮花先輩の格好は何というか、割と地雷系よりの服装である。えげつないギャップだ。

 

「来月のテニサーの合宿に来る、んだよね?お酒、飲まされないか心配?」

 

「水瀬からは何て」

 

「激しい飲み会は苦手だって聞いたから。大丈夫、いざとなったらタバコ休憩と嘘つけば帰れる」

 

鮮花先輩タバコ吸うのか。意外だな。

 

「あれ?違った?お酒の心配じゃない?女の子を持ち帰りたいとか?」

 

「いえ、それは」

 

黙っていたら勘違いをさせてしまったようだ。訂正をしようと声を上げると鮮花先輩が親指を立ててサムズアップした。

 

「必殺技を、伝授してあげる。『どうしたん?話聞こうか?それは彼氏が悪いわ』で一発」

 

お茶を噴出さなかった俺を褒めて欲しい。真顔で言うセリフじゃない。それでときめく女子いるのかよ。

 

「流石に無理ですよね?持ち帰る気もないけど」

 

「それは残念」

 

「先輩、中々愉快な人ですね。それ素ですか」

 

「たぶん?」

 

想像を絶して先輩は天然っぽい。

 

「俺そろそろ帰りますね。一次会もそろそろ終わるし、終電早いんで」

 

座敷を最初に抜け出して靴を履く。隣を見るとどういうわけか鮮花先輩もしゃがんでスニーカーの紐を結んでいた。

 

「………先輩、2次会行かないんですか?」

 

「飼い猫が待ってるから………帰ろう?捕まると長い…よ?」

 

座敷を一度振り返った鮮花先輩は誘われると面倒だからと少し 悪戯っぽく笑い店を飛び出した。外に出ると蒸し暑さが肌にまとわりついてきた。セミが愛を求めて鳴いていた。

 

「………もう本格的な夏ですね」

 

正直この流れは予想外だ。会話がしんどい。何を話せばいいのかさっぱりだ。中身のない言葉が飛び出しそうで、会話の糸口を探す。今日が金曜日なのも手伝ってか駅の方からは多くの人が 繁華街へと流れてきていた。

 

これから飲み会があったり、合コンがあったり、デートがあったりする。そう思った。

 

それとは逆に俺と水瀬は、混雑を避けるために川沿いを迂回しながら駅に歩いていた。

 

「ご友人は置いてきてよかったんですか?」

 

「平気………むしろあれ以上いたら良くない、かな?」

 

「あーなるほど。友達の本命が先輩のこと好きなパターンです?」

 

横から見上げてくる鮮花先輩の瞳は、驚きで見開かれていた。

 

「よく…わかったね?童貞っぽいのに」

 

俺は思わず立ち止まった。凄まじい言葉を投げられたような気がした。

 

「今何て?」

 

「間違えた。さくらんぼっぽい」

 

「それ罵倒に変わりないですよ?誰がチェリーだって!?」

 

「話を戻すけどよく気が付いたね」

 

「この流れで話戻すんかい」

 

「よく気が付いたね?」

 

マジでゴリ押す気かよ。

 

「………まあ、実質人生3周目みたいなところあるから」

 

「フフッ、微妙に面白い。30点」

 

駅に着くまでの間、何とか無言の時間を作らずに済んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




登場人物

十六夜 凜 主人公。

玲奈 初恋の人。ラスボス

鮮花 攻略対象のサブヒロイン。玲奈とは幼馴染。

水瀬 凛と同じサークルに所属している女子。男受けがいい。

日夏 名前だけ登場した友人。

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