鉄の棺は冷たくて   作:テムテムLvMAX

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こ、今回はちゃんとプロット組んだぞ……未完にするものか……


ケース01 始まりの前に。

 __日本国 某県 某市

 

 «こちらウイッチ5、ポイント1-4に到着、合図を待つ»

「こちらアルファマン、了解した」

 

 草木も眠る丑三つ時、木が生い茂る山の頂で黒尽くめの男、コードネーム アルファマンが立っていた。暗視ゴーグルを付け全身を暗闇に溶けるような黒く伸縮性と厚みのあるタイツに身を包み、右耳には小型無線機を付けている。

 彼は通信を終えると軽く体をほぐし腰のベルトにマウントしていた腕時計を確認し、元へ戻した。

 

「制限時間まで……1時間、それだけあれば足りるか」

 

 猿のように身軽な体裁きで木々の間を縫うように谷に向かって駆け下りていく、その視線の先には金属製のフェンスで四方を囲われ十数人の小銃で武装した男たちが警備をしていた。その壁の奥には巨大なパラボラアンテナと大型発電機、そして真っ赤な下地に青い星形が中央に配置された旗が掲げられている。武装した集団が何かしらの組織であることは間違いない。

 

「聞いていたより警備が多いな、漏れたか、偶然か」

 

 彼は山を駆け下りそのままのスピードを維持したまま武装した男たちの中へ突撃していく、その動きに恐怖は感じられない。

 

「うわぁぁぁ! 特務機関が来」

「うるさい、というかなんで知ってる、やっぱり漏れているか」

 

 叫ぶ男に飛びかかり首をねじ切った。しかしその声は他の者にも届いていたようで周囲を警戒していた男たちが集まり取り囲む、武装集団が持っていたライトに照らされた彼は眩しそうに顔の前に手をやった。

 

「やっぱりか! なんでよりにもよ」

 

 ヒュン。サクッ。

 集団の中のひとりが怯えた声で叫ぶ、彼は鬱陶しいハエを殺す感覚で腰から素早く抜き取ったナイフを喉元へ投げ、見事に命中させた。

 

「バレてるならいいか、消えろ社会のゴミ、これは国家の命令だ」

 

 彼の一連の動作から武装集団は怯えていたが、まだ数の有利で冷静さを保っている、いち早く思考を取り戻した男が声を出し、それを合図に銃撃の嵐が始まった。

 

「う、撃てっ! 殺せっ!」

 

 常人ならばどのような装備でも一瞬にして通気性の良い体になる所だが、彼は違った。

 身体の柔軟性を活かしすぐさま射線から逃げるように転がり先ほど殺した男の死体を担ぎ上げる、防弾チョッキなどを身に着けていたので貫通はせず盾の役割を果たした。その行為に一瞬怯んだ武装集団の意表を突く形で死体の喉元に刺さったままのナイフを引き抜いて正面の男の首へ投げた。

 

「ひいっ!」

 

 一度見た行動なのが幸いし男は避けたが次の瞬間には死体が持っていた小銃によって頭部を撃ち抜かれた。もちろん死体が裏切ったのではない。

 

「ビビリはすぐ死ぬ、あと蛮勇もな」

「こ、この」

 

 ダンダンダン! 

 

「クソこいつはやば」

 

 ダダダン! 

 彼に引き金を引かれるたびに一人ずつ亡くなっていく、銃を撃っても死体と全身を覆うタイツにはばまれ銃弾が効かない。しかし男たちもここで逃げ出す事が出来ない理由がある。

 

「ここで逃げても“組織”に消されるんだ! 絶対にコイツを殺せ!」

 半ば狂乱した状態で引き金を引く男たちを尻目に彼はただ死体を盾に待っているだけだった。

 

「た、たまぎぐひぇ!?」

 

 引き金を引いても弾が出ない、急いで弾倉を取り替えようとするが彼がその隙を待っていたのは言わずもがな。

 

「はい、弾の切れ目が命の切れ目」

 

 また一人死者が増えた。

 

「野郎! ……こ、降参だ! 情報は全て話す! そ、“組織”のことも話す!」

 

 ついに心が折れた一人が銃を捨て土下座した、それに続いて他の男たちも銃を捨てる。彼は少し迷った、なので上司に指示を仰ぐ。

 

「こちらアルファマン、コマンドレディ判断願う」

 «こちらコマンドレディ、アルファマンに任せる、通信終わる»

 

 上司は彼に判断を任せた。この通信はあえて男たちへも聞こえるように音量を調節されていたので、男たちは彼に慈悲を乞う視線を送る。

 

「オレの裁量に委ねられた君たちの命だが……助けよう、この場で待て、然るべき手段を持って裁かれるようにしておく、罪を償えば太陽の下をまた歩けるだろうな」

 

 男たちはにわかに喜んだ、仲間が次々に殺される中で自分もああなると恐れていた、生きていられないと思っていた、しかしまだ助かる、命だけは助かる希望が持てた、ならば刑期を全うし真人間としていこ行こうと決意したのだった。

 

「ここで待て、オレは先に帰る。これを持っていれば助かる」

 

 と、彼は言この場を去った。渡したのは携帯電話、これが目印なのだろうと男たちは思った。その携帯電話の液晶画面には時間が映し出されている、現在時刻からズレていた。

 そしてその彼というとまた山の上まで登り施設が見える位置に立っていた。目線の先にはいる者たちに約束した事を果たしてやるのだ。

 

「こちらアルファマン、ミッションコンプリート。ウィッチ5へ、“異端は燃やせ”繰り返す“異端は燃やせ”」

 «こちらウィッチ5、了解した。魔女裁判の始まりだ»

 

 この通信を合図に上空から三機の武装ヘリが施設へ向かって飛んでいくと、搭載されたミサイル、グレネード、機銃の一斉掃射により跡形もなく施設を消し飛ばした。あとに残るのは何かの燃えカスと炭化して黒くなった骨だけだった。爆炎と岩を砕く弾丸の雨に晒された彼らは既に肉塊以下のゲロより酷い状態なのは簡単に想像出来るだろう。爆撃を終えたあと武装ヘリは帰っていき入れ替わって彼の迎えに別のヘリが到着した。

 任務帰りのヘリの中で彼の通信機にコマンドレディから通信が入る、内容は労いの言葉と任務中での行動への注意だ。

 

 «アルファマン、目に余る行為は控えるように言ったはずだ。それに組織に通じているかもわからない存在に個人用端末を渡すとは何を狂った? »

「問題の芽は速やかに排除すべき、そう判断したまでです。それと最後の行動は新しい携帯に変えたくて、任務中の事故で無くせば保険で最新機種がタダで手に入るから、ですかね」

 

 通信機の向こうで頭を抱えていそうだ。

 

 «……分かった、この件はこちらの判断ミスとしよう»

 

 そして本題だがと言う入りから彼に対する次なる任務が言い渡された、任務が終わってから任務が始まるのは今に始まったことではないので彼も慣れた様子で次の任務に備えて装備のチェックをし始めた。ついでとばかりり今回の不満点もぶちまけていく。

 

「次の任務は何ですか? 護衛とかやめて欲しいな、あと事前の情報収集はきっちりしてください、今回人数が多くてなおかつバレてましたよ? 良いんですか特務機関がこんな有様で」

 

 通信機の向こうの人物もため息で答えた。前からそうした事が何度かあったためだ。未だにどこから漏れ出ているのか分かっていない為に、この挑発が通信機の向こうの人物の胃を痛めつける。

 

 «……わかっている、言われずとも»

「ならやってくださいよ」

 

 ヘリのパイロットはいつもの上司イジメに心を痛めた、しかし自分を標的にはされたくないのでじっと前だけ見て操縦に集中した。

 

 «第三次世界大戦から25年……もはやどこにどのスパイがいるのか分からない、ある程度の情報漏洩は許容すると言うのが上の判断だ»

 

 第三次世界大戦はとある国家の核ミサイル発射から連鎖して発生した戦争だった、人類全体が危機に脅かされたが現在は何とか復興している状態。その国際情勢の不安定さからどの国もスパイを送り込んでいるため諜報組織が複雑に入り乱れている。

 

「それでオレが死んだら元も子もないんですけど」

 «善処する»

 

 そこで一旦話は終わった。

 

 «それで、次の任務だが……»

 

 もったいぶる言い方をする、彼はじっと内容を待った。

 

 «国家統括省、篠川大臣の娘の護衛だ»

「……は? 国家統括省? 篠川大臣? ……国家転覆でも狙ってる奴がいるんですかそれ、一体どこ情報なんですか?」

 «大臣本人からの情報だ、しかも指名付きだぞ»

 

 彼も一瞬息を呑んだ、相当のビッグネームからの指名付き。自身が所属している組織の特性からしてもそういう事は基本的に許されない、あらゆる権利から切り離され国家にのみ従属する組織であるからだ。しかし

 

 «国家統括省、ひいては篠川大臣はこの特務機関創設者にして後ろ盾、突っぱねる訳には行かない»

「しがらみのない組織だと言うのにめちゃくちゃしがらみがあるじゃないですか」

 «完全な独立は無理だということだ、戦後の日本人が学んだのは内外への強制力、どのような手段を持ってしても未然に防ぐこと、だからこその国統省なんだぞ»

 

 国家統括省は戦後出来た省である、主に国内外の脅威に対する強い権力を持つ。

 

「これもあれも戦争のせいか、任務了解です、いつでもいけます」

 «今回は篠川大臣の依頼に付き、非公認かつ機密性の高い任務になる、具体的には機関からのサポートはほとんど出来ない»

「まぁ仕方ないですよ、そんなのバレたら癒着とかマスコミに叩かれますから」

 «第二に、3年間の期限が設けられている»

「また長い話ですね……オレ長期任務苦手なんですけど」

 «そう言うな、春と夏と冬の3回、長期休暇がある»

「学校? 護衛対象は学生ですか?」

 «そうだ、今年高校生になるそうだ»

 

 彼は額に手を当て天井を仰いだ、人間関係を構築しない彼からすれば年下というだけで気が滅入る、さらに女性だと別の意味で気を使う。

 

「この際何でもいいですよ」

 «あぁ、直々の指名だ、任務遂行に全力を尽くせ»

「了解」

 

 通信は終了した。

 

 彼は汗ばんだ黒髪をかきあげふぅと一息つく、そして足を開いて膝に肘を乗せ下を見た。

 

「あ"ぁ"〜"めんどくさ」

 

 心の底から言葉を吐き出した。

 

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