鉄の棺は冷たくて   作:テムテムLvMAX

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ケース03 特務機関レイス

「大人しいな」

「わたくしは篠川の娘、貴方方のような組織に屈するような女では無くてよ」

 

 バスから一般車両に乗り換え彼女は連れ去られていた。目隠しをされ腕も縛られている上、両隣を固める屈強な武装した男たちが彼女を逃がさないように見張っていた。今どこを走っているか分からない、どこへ連れ去られ何をされるかも分からないが不安に嘆くことはなかった。

 

「お父様がお許しになりませんわよ」

 

 父が助けてくれると心の底から信用していたからだ。左に座った男が笑う、右の男は鼻で笑いながら現実を突きつけた。

 

「分からないな、この状態から助かる見込みがあると思っていることが恐ろしいぜ。GPSは切ってある、携帯端末は破棄した、一体どうやって助けてもらうんだ……? ふへへ」

 

 前から声が聞こえた、おそらく運転手だろう。

 

「やめろ、そうやってべらべらと話す癖は直せと言ったろ」

「へいへい、気ぃつけるよ」

 

 冷静な指摘と右の男の態度から運転手がリーダーだと暫定的に判断した彼女は何か聞き出せないかと話しかけた。

 

「あなたは冷静ですわね、組織には冷静な指導者が必要なのはどこも同じと言うことですのね」

 

 下手に出て相手の出方をみる、執事から教わった情報の引き出し方を試そうとしてみたが

 

「さぁてな、誘拐されても冷静な君も同じだろう。こちらからは何も話すことはない、口を閉じないのは慈悲だと思え」

(これは無理筋ですわね……大人しく待ちましょう、今頃は家の執事たちが警察を呼んでいるはずです)

 

 やはり相手がそれを分かっていれば意味がなかった、それよりも家の執事が警察を呼ぶほうが早く助かる見込みがある。

 それからしばらくの時が流れ、ある所で止まった。

 

「降りろ」

 

 到着し、彼女は車を降ろされた。そこで目隠しが外される。目に飛び込んでくる光で眩み、その光に慣れるとどこにいるかがはっきりとわかった。港だ。目がくらんだのは照明の下にいたからで、それ以外には光源はない。

 

「……港?」

 

 それも貨物船が運ぶ大きなコンテナが無数に積まれている港、おそらくこの男たちが出入りすることがない場所だった。

 

「わたくしを輸出しようなんて可愛いことは言いませんわよね……」

「そんな洒落の為に攫うもんかよ、でもちょっと面白かったぜ、ひっひっひ」

 

 右隣の男は笑った。運転手の男に注意された。

 

「んで、奴さんまだ来ねぇのかよ」

「予定時刻はもうすぐだ、ちょっとは落ち着け」

 

 左隣の男が右隣の男にそう言う、予定時刻とは何か? 彼女は彼らがどこへ連れて行くのか気になった。ここで別の乗り物に乗り換えるわけでもなく何かとの合流を待っているのは、本当にただの誘拐だろうかとも思う、そもそも目的はなんだ? 

 疑問が駆け巡る脳内を整理しつつ、この港に誰かが来ることを祈った。

 

「来たぞ」

 

 穏やかだが暗い海の向こうからボートが近づいてくる、数人乗れるような小さなプレジャーボートだった。運転手の男は到着したボートに近づき降りてきた黒尽くめの男に話しかけた。

 

「時間ドンピシャだったな、篠川の娘は確保した。護衛も居なくて楽勝だったよ、引き渡した後こちらも撤収する、既に警察は気がついているだろうから迂回路を使って戻る」

「……いや、了解はしかねるな。戻って来るな」

「何?」

 

 ボートから降りてきた黒尽くめの男は仲間ではないのだろうか? もしくは協力関係なだけで仲が悪い? 彼女の目の前で運転手の男と黒尽くめの男は一触即発の状態になっていく。

 

「なめんなよ? こっちだって遊びじゃないんだ」

「しらける話だ、遊びでないならなぜアレに気が付かない? では私はこれで失礼するよ、さようなら馬鹿共。組織は君たちを切り捨てる」

 

 運転手の男が止めるまもなくボートに飛び乗り黒尽くめの男がその場を去っていく、怒りを抑えられない運転手の男は耳に付けていた無線機を地面へ力任せに叩きつけ、踏みつけた。

 

「ああっ!? ふざけやがって! あの野郎!」

「お、おいリーダー」

「うるせぇ!」

(どうやら仲間割れ……と言うには特殊な事情がお有りのようですわね)

 

 ますます混乱する彼女を尻目に運転手の男が左右の二人に指を差し唾が飛ぶほどの怒声をぶつける、誰から見てもただの八つ当たりだ。

 

「その女を持って来いって言ったのは奴らだよなぁ!!! テメェら聞いてただろ? なぁ! おい話を聞いてんのかおいっ!」

「聞いてるって! クールになれよ!」

「うるせぇ! こっちだって危ない橋渡ってんだよ! 何が反政府組織バラルだ! チンピラの寄せ集めがイキって武装してるだけの集団がよっ! 俺がどんだけ貢献してやったか分かんねぇのか!」

 

 喉を枯らして全身で怒りを表す運転手の男、あの冷静さはどうやら仮初、本性はコチラのようだ。

 興奮収まらない運転手の男に左の男がおずおずといった様子で刺激しないように口を出す。

 

「なぁ、最後にアレに気が付かないって言ったのは、まさか俺たち付けられてるってことなんじゃないのか?」

 

 ギロリ。

 

「なんだオメェ俺の運転で付けられてたって言いてぇのか?」

 

 怒りが増しただけだった。

 

(どこまでも自尊心の高いお方ですわね、このグループのリーダーにされたというよりなったと言う感じてしょうか? だとしても向いていませんわ、それよりも早く助けが来るといいのですが)

 

 一周回って冷静さが高まった彼女は憤慨し続ける男を眺めていた。

 

「……はァ〜、他の奴ら呼んで直接支部に送り届けるか……ったくなんのための海路だクソが」

 

 あれから十分たちやっとクールダウンした運転手の男は他の仲間を呼ぶために携帯電話を取り出した。

 プルルル……

 

「ん? お前にかけたか?」

「いや鳴ってないぞ」

 

 確かにこの場にいない人間に電話したが、着信音が近くで聞こえる、そして電話にでなかった。自分の物かと思いもしたがそれにしたら音が遠い、かけ直すと別の方向から着信音が聞こえてきたが目的の人物が電話に出る。

 

「おい、遅いぞ、さっさと電話に出ろ……作戦変更だ、陸路で行くぞ、警察を巻くから散らばって戻るぞ」

 «おかけになった電話はァ〜現在使われておりませ〜ん»

「……はぁ?」

 «ボク、メリーさん。今、貴様の頭上にいるの»

 

 電話に出たのは若い男の声、目的の人物ではない。そして何よりふざけた内容の返答。さっきやっと収まった怒りがまた沸々を湧き出し、もう怒りが収まらない。

 

「ふざけ__」

 

 上を向いて叫ぼうとした瞬間。

 何かが運転手の男に覆い被さり、直後にバチンと弾ける音が複数回連続した。男は力なく倒れ、二度と動くのはなかった。

 

「上にいるって言ったよね? 察しが悪くて結構」

 

 のそりと立ち上がる何はよく見てみれば小柄な人間であり、衣服は

 

「うちの制服!?」

 

 秋目川高校の制服だった。そして

 

「テメェ何もんだ! 誰でもいいぶっ飛ばしてやる!」

 

 右隣の男がアサルトライフルを構え引き金に指を掛ける、それを見ていた彼女は気合を込めて体当たりした。

 

「うおっ!?」

「っ!? やるねぇ!」

 

 その隙を見逃さず右の男に駆け寄り腹部へ一発の拳をお見舞いする制服の人物、そしてバチンと音が複数回鳴る、彼女の視点から見ると僅かに閃光が見えた。

 

「く、くそ」

 

 形勢が一気に悪くなり左隣の男は逃げ出そうとするも

 

「ここで逃がしたら二流だろ」

 

 腕を振り上げ制服の袖から銀色のナイフを取り出しそのまま振り下ろして逃げる男のふくらはぎに投げ、突き刺した。

 

「ぎゃぁっ!」

 

 痛みに驚き転倒した男に飛び乗りさらに追い討ちを掛けるため首筋をしっかりと握る。

 

「おい、お前」

「は、はいっ!」

「やっぱなんでもない」

「えっ、ぎぃぃぃ!!!??」

 

 今度は連続して閃光と破裂音が鳴り響き、男は痙攣しながら声を上げて動かなくなった。

 全員が動かなくなった事を確認すると制服の人物はナイフを回収し、男たちを一纏めにし港に置いてあるロープでぐるぐると巻いて拘束した。

 

「文撫さん、怪我してない?」

「あ、やっぱりあなたなのね」

 

 見間違いではなかった、朝知り合ったばかりの男子。それがこんな窮地でもう一度出会うなど思ってもいなかった。

 

「あなた一体?」

 

 彼女を拘束を全て解いた彼は改めて彼女の疑問に答えるべく自己紹介をする。

 姿勢を伸ばし、右手で敬礼。

 

「特務機関レイス所属、コードネームアルファマン、人はオレを死の前触れ(レイス・フィンガー)と言う」

 

 

 




バラすなよ機密を
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