「熱斗~帰ったらインターネットしようぜ~?」
今日も一日ご苦労さん。
解放感溢れる放課後にて、デカオばりにフランクな態度で誘ったら怪訝な顔をされたでござる。今更だけど、インターネットするってなんだよ。
……ダメだ、おちゃらけてないと心の安寧を保てない。シリアス成分なんざWWWの時とかで十分なんだよ……!
「いや失敬。インターネットに誘ってるのはマジなんだ」
「いいぜ。で、今日はどこ回るんだ?」
「実は……ウラインターネットに行こうと思ってる」
「ウラインターネット?」
「禁断の地と言えば、わかるな」
「おぉ……」
禁断とか男子小学生が食いつくワードよな。
とはいえ危険なことには変わりないから攻撃系だけじゃなく回復系や補助系のチップも満遍なく入れてもらうとして。
「な~に2人でこそこそ話してやがんだ? このデカオ様にも教えろ!」
どぷんと腹を揺らして登場するガキ大将に少しだけ考え、参加してもらうことに。この際、デカオとガッツマンも強化すればええやろ。
「――っつう訳でウラに行こうって話してた訳」
「もちろんオレ様とガッツマンも行くぜ!」
「ただし女子には内緒な?」
メイルとやいとをハブっている訳でも男子陣を秘密の共有で団結を図る、といった意図もなく、人数が増えるとフォローし切れないからだ。
まぁ、ロールの特殊能力の数々は役立つ機会が多そうだし、グライドもオペレーターの課金によって火力だけは一丁前だ。
ただデカオより実践経験がないのが痛い。
持ちナビがデリートされるのって割とトラウマものらしいし、そもそもメイルたちがウラに行きたいと望むとも思えないしな。
「熱斗! 今日は一緒に帰ろ!」
噂をすれば何とやら、美少女がはにかみながら小走りで近寄ってくる。
「おっ!?」
心臓が突然強く跳ねる。顔に熱が集まり、思考と感情の距離が生まれる。
なんだ、これ……? まさか俺が、メイルを意識しているとでも……?
いやいやおかしいって! 今まで一度も見惚れたこと無いのに! そもそも俺はロリコンじゃねぇ! 最低でも20歳は超えてないと無理なのに!
大した接点もないのに童貞みたいな惚れ方するかよ!
――童貞? まさか、『俺』じゃなく……
「おう。でも帰ったらデカオたちとインターネットするから寄り道はナシな」
「わたしもピアノのレッスンあるし、しないよ」
困惑する俺を置いて去っていく主人公とメインヒロイン。
彼らの姿が見えなくなってから少しして、心臓が落ち着きを取り戻す。
『ワタちゃん、どったの? 帰らないの?』
「……ちょっと考え事しててな。すまん」
精神が身体に引っ張られるパターンなんてのも転生モノではお決まりではある。
気が進まないが俺の性的趣向を今一度探ってみるべきか。
それでも変わらないと判明したのなら――肉体の本来の持ち主が一瞬でも目覚めたことになる。
ただなぁ……! そうだとしたら『隠岐渡』、とんだスケベ野郎じゃねぇか!
祖父の血筋だと納得できる要素はあるけれども! もっと感動的な場面で目覚めてほしかった!
野郎共と約束を取り付けたのもあり、手早く帰り支度を済ませて帰路に就く。
後任の護衛のオフィシャルは炎山と違って、一定の距離を保った状態で俺に付いてくるので心の安寧にはありがたい。
対処には一歩遅れるかもしれないけれど、WWWも俺なんぞの報復に動くほど余裕がないだろうしな。むしろオフィシャルの人手を割いてしまって申し訳なさがある。
「ただいま」
「おかえり。貰い物で栗どら焼きがあるから一緒に食べようか」
「ごめん。友達と約束あるから……。食後でいい?」
「いいとも。友人との時間は大事にせい」
少しシュンとした祖父に背を向け、手洗いうがいを済ませ、いざインターネット。
集合場所はデンサンエリアの端。数年前から更新が途絶え、ナビが寄り付かない寂れた通路となった場所だ。
『ごめんお待たせ~』
「悪い遅くなった」
『その声……シアンちゃん?』
言い出しっぺが一番最後の到着ともあって、一言謝罪を入れると困惑するロックマンとガッツマン。
『あぁ、これ? 可愛くないよねぇ』
『電脳世界には珍しい布製っぽいローブだよね』
『顔が見えないのに目だけ光るから不気味でガス!』
装備した本人含め不評ばかりのシアンのローブ姿。
目元どころか顔全体を影で覆うフードに、全身を覆い隠すほど長い丈のそれは身バレ防止として用意した代物である。
間に合わせで作ったからデザインも適当。防御力は紙。ただ替えはそこそこ用意してあるので用途は満たせると思う。
『あぁ、そっか。シアンちゃん、女の子だからね。その方がトラブルを呼ばないかも』
『ん~? ロックん、私のこと、女の子だって思ってなかったんだ』
『そういう意味じゃないってば~』
首に手を回し、うりうりとロックマンをヘッドロックするシアン。ロールちゃん嫉妬案件だから早々にやめなさい。
ちなみにロックマンとガッツマンは変装の類をしていない。
というか、ロックマンエグゼ世界の住民は身バレ気にしていない風潮があるんだよな。
平成の空気をたっぷり吸って生きてきた俺としてはネット上では個人情報を伏せるもの、だと考えているけれど、令和だとその辺緩いしなぁ。
一応、提案はしてみたけれど理解は得られなかったし。
まぁ、リアルでヤの付く自由業の方に喧嘩を売らねば、そこまでの問題にはなるまい。
「そろそろ出発しようぜ?」
「熱斗の言う通りだぜ! 何の為に集まったと思ってんだ!」
辛抱し切れない様子の小学生たちの要望に応えて、シアンがロックマンを解放すると、一見何もない空間に手を伸ばす。
『よく見ると歪みができてるね、そこ……』
『そうでガスか?』
ロックマンとガッツマンの認識の差は、解析能力の高低によるものだろう。
シアンでも近付いてみなければ感じ取れないらしい、その違和感。
それ自体の発見は一般ナビを使用していた1年前に偶然にも悪い色したナビが出入りしていることを目撃。しかし今まで手出しができないでいた。
というのも、シアンの特性というべきか。チップ依存のカスタムをしたせいか、0から1に、何かを生み出すのを苦手にしていた。
例えるのも難しいが、持ち前の解析能力で扉があるのがわかっても、そこから先、何もできないというか。
ただ今回は『ウラの割符』がある。
何も映らない空間にシアンの手が吸い込まれていく。あっけなくウラのアクセスに成功した証だ。
ただし、『ウラの割符』が効果を発揮するのは持ち主のみ。当然コピープロテクトが施されたそれをロックマンとガッツマンに配ることはできなかった。
が、取っ掛かりさえ得てしまえば、『鍵』は無理でも『扉』に細工するくらいはできるらしい。
『よいしょっ!』
両手を突っ込んだシアンが掛け声と共に、ぐっと腕を開く。その動きと共に歪みが広がっていき、ガバガバとなった入口の完成だ。
『すぐ閉じちゃうから急いで入って!』
『OK』
『でガス!』
彼らが飛び込んだ先は、今まで立っていた電脳空間とはガラリと景色が変わっていた。
所々、悪魔のような角で装飾された、黒と赤で入り混じるおどろおどろしい通路。テレビの砂嵐みたいなものが走る背景。
出現するウイルスもまた、毒々しい色合いが多い。
『いくよっ、熱斗くん!』
「おう!」
「バージョンアップした力、見せてやろうぜガッツマン!」
『腕が鳴るでガス!』
突然の接敵にも怯まない2組の後ろで俺とシアンは周囲の警戒に徹する。
一応、昨晩の内に入口近辺を探ってみたが、見落としがあるかもしれない。攻撃は【ロックオン】任せで、周囲に目を配りつつ、彼らの戦闘を観察する。
まずはロックマン。初見ということもあってか、大分慎重に立ち回っている。
小出しにしているせいか、なかなかデリートに至らず、時間がかかっているみたいだ。
続いてガッツマン。こちらは被弾を気にせずガードを固めて接近。
大振りな攻撃こそ変わらないけれど、その威力は一目瞭然。巨大に膨れ上がったガッツパンチは相手を一撃で粉砕してみせる。
それぞれのバトルを見届けた感想としては――ここら辺のウイルス相手なら何とかやっていけるレベルか。
できれば探索もしたかったけれど、今日は大人しくウイルスバスティングで慣らしていくか、と方針を決めたところで、
『おいおい。ウラはいつからガキの遊び場になったんだァ? あァん?』
ガニ股でこちらに歩み寄ってくる、人相の悪い紫色のナビ――通称ヒールナビ。
昨日はあれだけ探ってもナビとのエンカウントがなかったのに。もうちょい探索期間を設けるべきだったか?
いや、エレキ伯爵が起こす事件を考えれば悠長にしている暇はなかった。
たらればの話。今は置いておこう。
『ウチのシマで随分やってくれるなァ、オイ!』
「逃げるぞ、シアン」
『アンタたちのシマじゃないでしょ?』
「いや挑発すんなよ」
ニヤニヤと笑うヒールナビに、シアンが淡々とそう返す。
確かに1年前に出入りしていたヒールナビと様相が違うけれども。ハッタリかますには情報が頼りなさ過ぎる。
『チッ、知ってやがんのか。まァいい』
が、吹っ掛けたのは相手も同じらしい。
暗黙の了解に抵触していないことに安心している暇もなく、ヒールナビが腕を振るうと天から増援が降ってくる。
ゲーム時代にも思っていたけど、アレ欲しいわ。
決まったプラグインポイントから地道に移動するんじゃなくて、あいつらみたいに瞬間移動してぇよ。
と戯言をほざいている暇はない。
増援は2とこちらと同数となった形。ガキ相手に多勢に無勢はプライドが許さなかったか、それとも他に仲間がいないのか。どちらにせよ好都合だ。
「タイマン」
「だな!」
「劣勢なら助けにいくわ」
「こっちの台詞だ、ワタル!」
2連戦目、ヒールナビとのバトルが開始。
シアンの相手は増援の内の1人。ただ3人とも同じ見た目な為、もう見分けつかねぇよ。
「【インビジブル】、【リモコゴロー】、【ダイナマイト】」
『パターンGね、りょーかい!』
透明化で安全を確保し、続けて上下で揺さぶりをかける。
【リモコゴロー】は元となったウイルスを召喚。そいつが無事な限り、頭上に浮かぶデンデン太鼓の玩具みたいなヤツが落雷を発射。
【ダイナマイト】はセンサー式の手榴弾。そいつを設置することで相手の動きを制限する訳だ。
『しゃらくせェ! 【ガイアハンマー】!』
敵は巨大なハンマーを召喚し、そいつを大きく振り下ろす。
すると広範囲に爆発を伴った衝撃波が前方に吹き荒れ、設置した【ダイナマイト】、【リモコゴロー】共々、強引に消し飛ばされる。
「【デスマッチ2】、【パネルリターン】」
だが、大した驚きもなく、次のチップを転送。
シアンとヒールナビ周辺のパネルが次々と落下。文字通り、2人が動けないデスマッチ状態に持ち込む効果ではあるが、【パネルリターン】のお蔭でシアンの周囲だけパネルが修復される。
『【エリア――』
「【タイフーン】」
閉じ込められた相手が慌てて逃げ出そうとするも、遅い。
大振りの攻撃の後隙、カスタムの回転速度も一般ナビ程度。特化したシアンの能力には周回遅れだ。
敵の足元から出現する竜巻によって、ワープ効果を発動させる前に風の中へ閉じ込める。
「連コインだ。【タイフーン】」
続けざまに同じチップを投入し、相手をもみくちゃにする作業の継続。
途中、【インビジブル】で抜け出す動きもあったが、空中に浮いた状態だったので足元に【ステルスマイン】を設置。【インビジブル】貫通効果あるんだ、これ。
『ぐあああああァ!!!』
結局、敵は何もできずにデリート。
強いチップを所持してはいたが宝の持ち腐れだな。オペレーターの処理能力もそこまでじゃないし、大方複数人で囲んで叩くスタイルか、威力でごり押しするスタイルと見た。
何にせよ強力な一芸でも無い限り、俺とシアンは崩せない。
転生してからどれだけイメトレしたと思ってるんだ。モブになど負けるものか。
「さて、お二組は、っと」
シアンの視点を動かしてもらい、ロックマンとガッツマンの奮闘振りを見せてもらう。
ロックマンの相手は絡んできたヒールナビ。主体は【ラットン】や【ダイナウェーブ】で地を這う攻撃をし、相手が宙を舞ったところに、
『オラァ! 【メガキャノン】!』
『ぐっ、また……!』
ロックマンの前方に発生した【メットガード】を避けるようにして曲がる弾丸。『5』のマークキャノンの前身みたいな改造チップだな、あれ。
他にも【バリアブルソード】の出来損ないみたいな曲がる【ソード】や、急発進、急停止する【ダッシュアタック】などの虚を突く戦い方に苦戦している模様。
とはいえ次第に慣れつつあるのか、時々反撃も見られる。【リカバリー】もしっかり挟んでいるし、経験の為にも2人で頑張ってもらおう。
次にガッツマンの相手はこれまた珍しいタイプだ。
【アイアンボディ】や【メタルシールド】で相手を受け止め、【モスキート】で相手のHPを吸収していく持久戦の構え。
流石のパワー自慢も攻めあぐねている様子。
「打倒熱斗の為に取っておいた手段だったが、仕方ねー! 【ストーンキューブ】!」
『食らえでガス!』
デカオが解禁したのは、エグゼプレイヤーの定番とも言える、キューブ系を押し出すコンボだ。
後にブレイク性能を持つこのコンボは相手の防御を崩すのにも一役買い、
『メガガッツパンチ!』
アニメ版にしか登場しなかった謎の攻撃を連続で叩き込み、相手をK.O。
相性の差があるとはいえ主人公コンビより先に倒したよ、デカオとガッツマン。
「おらーっ! どーした熱斗ォ! まーだ終わんねーのか!」
「調子に乗りやがって……! ロックマン!」
『ボクらも負けてらんないね!』
今一度気合を入れ直した主人公コンビを前に、相手が急に構えを解くと、
『ガキが調子付いてんじゃねェぞ、ゴラァ!』
雄叫びと共に、更なる増援が10体駆け付ける。
流石にこの数は骨が折れるので、プラグアウトを呼びかけようとした矢先――
『みんなーっ! 元気ーっ?』
予想だにしない第三勢力の参入に、俺含め全員が固まる。
視線が集まった先には、ウラには場違いのスポットライトの光――それに照らし出される女性型ナビ。
身に纏うのはフリルなどの装飾をたっぷり付けたアイドル衣装。人型ナビ全般が装着する全身タイツの色が肌色なのも謎の拘りを感じさせる。
明るい茶髪を大きなリボンでサイドテールに結び、耳部分にあるナビマークはヘッドホン形状に見せかけているみたいで、徹底的に人へ寄せているイメージがある。
表の電脳世界でも、ウラの世界でも明らかに浮いた存在の彼女。
コール&レスポンスが上手くいかずとも挫ける様子はなく、指を鳴らして背後からララパッパを複数召喚。
ってララパッパ!? 『3』のウイルスだぞ、アレ!
『それじゃっ! 1曲目、いきまーすっ☆』
こちらの反応を待つことなく、彼女のライブが始まる。
バックにいるララパッパ、アイドルソング流せるのかよ。しかも電波ソング。
『【ゲリ女】だ! どうする!?』
『やっちまえっ! こっちは11だぞ11!』
困惑した空気は拭えぬまま、しかし俺たちより一足先に硬直を抜け出したヒールナビたちが彼女に押し寄せる。
対する彼女は笑みを崩さず、
『~♪』
スタンドマイクを握りしめ、可愛らしい歌声で以て応戦。
マイクによって増幅された音声は強力な音波となって、ヒールナビを一蹴。
『この野郎ォ!』
反撃の【メガキャノン】もララパッパの【オウエンカ】による無敵効果で傷ひとつ付かず、彼女の蹂躙は続く。
『4』に登場するシェードマンと同じく、【インビジブル】貫通効果があるのか、相手の無敵状態は許さない。
しかもララチューバの【ディスコード】やララボーンの【ティンパニー】が途中で挟まるせいか、混乱での同士討ちや震動による移動阻害効果もあって、更にエグい。
『オレっちには効かねーYO』
後に控えていたらしい、ヒールナビが阿鼻叫喚の中で平然と進む。どうも彼女メタの能力を持っているらしく、彼女は接近を許すものの、
『当たらねーYO!?』
キレのあるステップで相手の【ファイターソード】を避ける避ける。
相手の剣戟は何ら彼女のダンスを崩すこともできず、
『お触り厳禁☆』
間奏に入ったタイミングで、【ブレイクハンマー】を頭上に叩き込まれ、デリート。
1対11という圧倒的な物量差を軽く捻った彼女だったが、演奏は続く。
――次の標的は俺たちということか。
「……こんなん勝てる訳がねぇ」
『1』の戦術の幅が狭いチップで、しかもウラで碌に収集できてない状況では逃げ一択だ。
ロックマンやガッツマンと組んでも何分持たせられるか。
補助効果を齎すララパッパたちを排除してうっすら勝ち目が見えるレベル。
あの強い拘りを見ていれば演奏を中断させるヘマは犯さないから、追加で召喚されるだろうけれども!
『わー! 凄い凄い!』
なのに呑気に拍手を送るシアンの図太さに参るわ。
ヘイトを買う前にプラグアウトを試みたところで、
『えっ、女の子っ?』
ド派手なエフェクトをバラまいての【エリアスチール】でシアンへ接近を許してしまう。
目立つ癖して予備動作少なすぎィ! だがケーブルを引っこ抜くのは間に合った!
「大丈夫か、シアン?」
『あの子、敵意はなかったみたいだけど?』
「あの惨状見てて良く言えるな。笑顔で虐殺ライブしてんだぞ」
そんな状況下にロックマンとガッツマンを置いてきてしまったが、流石のアイツらも挑む相手は選ぶだろう。
『ワタちゃん、メールだよ』
「内容は……あー、うん」
差出人はロックマン。内容は彼女がシアンに会いたがっているとのこと。
律儀に相手と会話してんじゃねぇ! 危機感足りてねぇんじゃねのか、あの青バンダナに青ヘルメットォ!
『戻ろっか』
「戻ったら熱斗たちにマジ説教だな、マジで」
再度プラグインし、数分かけて元の場所に戻ってくる。
問題の彼女とロックマンは朗らかに会話しており、警戒しているのはガッツマンだけか――と思いきや動きが固い。野郎、緊張してやがる。顔を赤らめているから強者故のじゃなくて恋愛ボケしてやがるな、コイツ!
『ごめーん。待った?』
『ううん☆ ロックちゃんたちと楽しく会話してからへーきっ☆ でっ、あなたのお名前聞かせてほしいなっ?』
『私はシアン! どこにでもいる普通の美少女ナビだよ』
『よろしく☆ あたしはソプラノっていうの☆』
改めてソプラノと名乗った彼女を見やると、随分とまぁ工数のかかった外見していやがる。
恐ろしいほど整った顔面に施されたメイクも凄ぇ細かい。動く度に揺れるフリルとか、一部シースルーになっている装飾とか、所々アクセントになっている細いベルトなどの小物にも手間暇が掛かっているのが素人目にもわかる。
その上で、あの強さだ。
【エリアスチール】で見たエフェクトが他に無いとも思えないし、無駄と思えるコストを割いての、これだ。
戦闘面はおろか、ナビの完成度から見ても圧倒的敗北。
『1』のフォルテくらいなら倒せるんじゃねぇのか?
……ゲットアビリティプログラムが働いた結果、歌って踊るフォルテなど俺は見とうない!
『それでロックちゃんから聞いたんだけど☆ 強くなる為にここに来たんだって?』
『うん。WWWに負けない為にはどうしても』
『そっか☆ ならさ、あたしが案内してあげよっか?』
『いいの?』
『うん☆ だってシアンちゃんはあたしのファンだから☆ ファンサは大事だもんねっ!』
成り行きを見守っていたら、いつの間にかファンにされてやがる。
個人的にやべぇナビとお近付きにはなりたくないが、そもそもソプラノにデリートされなかったのはシアンの対応のお蔭だ。
しゃーない。
ソプラノによるウラツアー。お勉強させてもらいまひょ。
〇ソプラノ
人生に挫折したオペレーターがアイドルに救われたことで生み出された女性型ナビ。
最初は表のインターネットで活動していたものの、なかなか日の目を見ることが叶わず、嫌がらせでヒールナビを差し向けられたところで、オペレーター共々ブチ切れ。
狂気的と言える強化を重ね、最終的にはウラにカチコミに行ったところで気付く。オペレーターの彼と同じく、腐った人々がここには大勢いることに。
という訳で、はた迷惑なアイドルの布教活動が開始。
強さがルールのウラの世界なので、表と違って彼女たちの行動は大正義な模様。
ウラランク4位。
通り名は『ゲリ女』、『ゲリラライブ女』の略。
『3』開始前に血迷った事務所からスカウトが来て、ヴァーチャルアイドルデビューを果たす。
その際、ウラを卒業し、ウラランクを返上しているので登場しない、という妄想。