WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

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18.孤独のフォルテ 本日のお品書き:ドリームオーラ

「よう、そっちも検査終わったか、炎山?」

 

 病院の待合室の長椅子に項垂れていた伊集院炎山は、声に反応してゆるゆると顔を上げる。

 すると彼の傍に寄ってきたのは、明るく振舞おうとするも笑顔がぎこちない光熱斗。距離感も考えず、彼の隣に腰を下ろし、会話を続ける。

 

「オレは全く異常ナシだったぜ。そっちは?」

「……火傷が少々。動くのに支障はないだろう」

「パパも軽い打撲で済んだし、後は――」

「渡はおるか!?」

 

 自動ドアが開き切るのを待たず、強引に身体をねじ込んで駆け込んでくる老人が悲痛な声で叫ぶ。

 滝のような汗を流し、息を荒げて炎山へ詰め寄ると、両肩を思い切り掴まれる。

 

「渡は!? 儂の孫は!?」

「……こちらには運び込まれていません」

「じゃあ――」

「奴は、WWWに攫われて……」

 

 苦々しい思いと共にそう返すと、目の前の老人は糸を失った操り人形が如く、床に崩れ落ちる。

 声にならない嗚咽を漏らす彼に、炎山はかける言葉を見失うも、何とか絞り出す。

 

「オレが不甲斐ないばかりに」

「ちげーよ! 炎山は頑張ってたぜ! アイツがパパを人質に取らなきゃ……!」

 

 熱斗がそれを否定するも何の慰めにもならない。

 本来であれば民間人の助けなど借りず、オフィシャルである炎山が解決すべき問題だったのだ。

 それにも拘わらず、隠岐渡がいなければ早期発覚することなく事が起きていたし、光熱斗がいなければ科学省のトラブルシューティングに手を取られ、犯人と対面するのが遅れに遅れただろう。最悪、顔を合わせることなく取り逃がした恐れすらある。

 あまつさえ、渡の交渉が無ければ被害がどうなっていたか。もし光祐一朗博士が喪失などあれば、その影響は計り知れない。

 

「これが、報いだというのか……」

「どういうことだよ、渡のおじいちゃん?」

 

 熱斗がそう問いかけると、弱り切った老人は己の罪を自白しだす。

 

「儂は元WWW団員じゃった」

「マジ!?」

「えぇ、存じ上げております」

 

 約30年前までは元科学省ロボット技術開発部門職員であり、派閥の長であったDr.ワイリーが科学省を離れたとほぼ同時期に彼もまた離職していた。

 それから行方がわからなかったものの、16年前に突如として警察署へ自首しに来た。儂にはもうワイリー様を止められぬ、と口にして。

 ただし、WWWが本格始動する前の話であり、未遂として扱われた。

 

「しかし貴方は事件に関与していない筈」

「ですがワイリーさんの野望を知りながら手を貸していたのも事実。尊敬する相手だからとはいえ、強く出れなかった。離反した後も見て見ぬ振りをしておっただけ……」

 

 床に手を着いた老人の背中にのしかかる深い後悔。

 しかし、炎山は知っている。特赦を得た後の彼がどれだけの功績を残したのかを。

 国からの依頼を精力的にこなし、次第に彼を慕う研究者が増えたことで、彼らを食わせていく為に会社を立ち上げ、ある程度後任が育ったところで潔くそのポストを明け渡した。

 それに炎山の父である伊集院秀石も世話になったという。彼なくして今のIPCは無かった、とエリート志向の父が手放しに誉める人物など片手の指しかいない。

 

「それでお孫さんがWWWに詳しかったんですか?」

「全て処分したつもりじゃったが……どこから嗅ぎ付けてきたのやら」

 

 自嘲しながらも爺馬鹿の片鱗を見せ、老人は言葉を続ける。

 

「年に数回しか会えんかったが、あの時までは普通の子供じゃったよ、渡は」

「あの時……?」

「あぁ。忘れもしない、3年前のトンネル崩落事故じゃよ」

 

 それはデンサンシティ北部で起きた原因不明の事故だった。少なくとも電子機器のトラブルが関わらない珍しいものだったと後の調査で判明している。

 被害者は100を超え、その時息があったのは10にも満たず、病院に搬送されて生存が確認されたのはたったの1人。

 それが隠岐渡だった。

 

「その事故で渡は両親を失って……そのショックで心を閉ざしてのう。目を開けても息をしとるだけの状態が続いておった」

「そんな……。でもアイツは今、すげー元気だぜ?」

「それでは心が耐えきれんと防衛本能が働いたのか、再び意識を取り戻した頃には記憶喪失になっておったよ」

「では今の彼は?」

「解離性人格障害――二重人格じゃろうな。臆病で人見知りだったあの子とはまるで別人だったわい」

 

 普段はおちゃらけた言動をしながらも、時折覗かせる大人びた包容力はその時人格形成されたのだと炎山は悟る。憧れも含まれているようだが、恐らくは――両親の面影。

 人付き合いが少なかったと言われた隠岐渡が一番影響を受けたであろう両親を真似た、と考えた方が自然だった。

 

「失ったものを取り戻せる訳ではないと頭ではわかっていても、未練がましく伝手を使って崩落事故について探ってみるとの、人為的に行われたことが判明したんじゃ」

「事故じゃ、なかった……?」

「えぇ、その通りです」

 

 崩落現場を解体した結果、マグネメタル含む希少鉱石を乗せたトラックの荷台からそれらが無くなっていたことが判明。しかし、犯行の手口も解明できず、迷宮入りとなった。

 その当時、スキャンダルや食品偽造の話題で盛り上がり、一般に報道はされなかった。

 

「それらを纏めたデータを、渡に見られた可能性があるかもしれん」

「それもWWWの仕業だと?」

「わからん。じゃが、凶悪犯罪を許せぬ気持ちになるのはわからんでもない」

 

 重い空気が漂い、3人の会話に空白が生まれる。が、それを引き裂くように、老人の鞄から電子音が鳴り響く。

 

「なんじゃ――!?」

 

 のっそりとした動作で鞄に手を伸ばした老人だったが、PETの画面を確認した途端、勢いよく立ち上がる。

 

「何かあったんですか?」

「……言えぬ」

「隠岐さん!」

 

 泣きはらした顔から一転、鬼気迫る表情に変わった彼は足早に病院を去っていった。

 

「突然どーしたんだ? わたるのおじいちゃん」

「恐らく、WWWから連絡があったのだろう」

「急いで追いかけないと!」

「いや……待て。オフィシャルに連絡を入れる」

 

 熱斗の言う通り、今から追いかければ間に合うだろう。

 だが、炎山はそれを躊躇した。老人の表情を見れば察しがついたのだ。もし彼1人でなければ、人質である孫の身に危険が及ぶのだと。

 オフィシャルの判断としては、大きな間違いだ。

 しかし、炎山は無意識に隠岐渡を失うことを恐れてしまった。

 

「でも他にWWWに繋がる手がかりなんて……」

『あるよ熱斗くん!』

「ホントか、ロックマン?」

『元団員の日暮さんに話を聞こうよ!』

「そうか!」

「……」

「何ボーッとしてんだよ炎山! お前も来るだろ?」

「まずは検査の結果を待て」

 

 日暮闇太郎の聞き取りは既に終わっている。

 WWWに繋がる情報をこれ以上得られるとは思えない。そう結論付けて病院を飛び出していく熱斗を最後まで見届けることなく、顔を伏せた。

 

 またもや失敗した。

 人質の有無など言い訳にならない。接敵が早ければ防げたことだった。浮き足立ったオフィシャルを引き締め、偽拠点を事前に暴けていれば、人手が足りた。

 隠岐渡に、尻拭いさせずに済んだのだ。

 

「なーにしょげた顔してやがんでぇ、オフィシャルのエースさんよぉ!」

 

 後悔ばかりが背にのし掛かる中、病院に似つかわしくない声が炎山の鼓膜を震わせる。

 眉根を寄せて声の主を睨み付ければ、禿頭に鯰髭の中年男性がズカズカと近寄ってきていた。

 知らない顔だ。一方的に炎山を知る相手など腐るほどいる為、視線を逸らそうとするも、

 

「こりゃあ子供にゃあ荷が重いかぁ?」

「なんだと?」

 

 挑発的な物言いに炎山の眉がぴくりと跳ねる。

 しかし、その言葉とは裏腹に男の目が優し気なものだと気付き、炎山は額に手をやった。これでは子供扱いもやむなしだ。

 

「……オレに何か用か?」

「オフィシャルの調査部隊がWWW本拠地を突き止めたぜ。今度こそ間違いねぇってよぉ」

「そんな通知は受け取っていないのだがな」

「本部は今、てんやわんやだしな。WWWと名乗る大量の自立型ナビに襲われてよぉ」

「……わざわざオレを直接呼び戻しにきたのか」

「いんや、それも違ぇよ。こいつを見な」

 

 男が炎山の眼前に突きつけたのはPET、そこに流れる映像には己をWWW首領だと名乗る老人が世界に向けての声明があった。

 

「終末戦争、だと?」

「おうよ。オフィシャルに差し向けられた戦力はその足止めだろうよ」

「諸外国への応援要請は?」

「すぐ飛ばしたが、多分間に合わねぇ、だとよ」

「……オレ単独でWWWを直接叩け、ということか」

「そいつも違ぇ。俺()()、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 軟禁生活3日目、日課であるチップ改造とウラ散策だけでは飽きたのもあり、

 

「実在するんだ、電撃デスマッチ」

「エレキテル家伝統! ナビがダメージを負えバ、オペレーターも電撃で味わウ、スリリングなバトルだゼ!」

「イカれてんなぁ。アメロッパのフットボムくらいイカれてる」

「何だァ? アメロッパにもビリビリくるエキサイティングなのがあるじゃねーカ!」

「ちな爆弾使ったPKな」

「ボンバーマンの元ネタそれかヨ!」

 

 昼食時にエレキ伯爵と雑談するようになっていた。

 始めの内はWWW関連の話題を出していたのだが、なかなか口を割らないので、雑談から徐々に崩していこうと思ったら、いつの間にか雑談がメインになっていた。

 抑圧されていた貴族生活の反動か、ノリで動くだもん、こいつ。

 

「手ぇ止まってんぜ? もう酔ったのか?」

「まさカ! まだまだ余裕だゼ!」

 

 真昼間から飲む酒は旨い、と唆したら普通に乗ってくるし。

 今日はいっそ酔い潰してやろうか、とチャレンジ中である。

 

「仕事中に呑むワインがこれほど旨いとはナ! もっと早く試しとくんだったゼ!」

「仕事かぁ?」

「立派な見張りダ、見張リ!」

 

 貴族とは思えぬラッパ飲みでボトルを飲み干すと、エレキ伯爵の頭がぐらりと揺れる。

 そのまま重力に引かれ、床に倒れるとそのままイビキをかいて眠ってしまう。

 

「さてと」

 

 無防備となったエレキ伯爵の懐からPETを取り出し、そいつにプラグイン。

 

『何の真似だ!?』

『ふふふ……』

「ここまでされてまだわかんねぇか? 目的はお前だよエレキマン」

 

 全身黒の中に黄色いアクセントが入り、額と目元に雷マークが描かれ、背中に電極を背負うといった、あからさまに電気属性といった、エレキ伯爵のネットナビ。

 そいつを前にしてシアンはあくどい笑みを浮かべ、俺もまた歯列を剥き出しにして笑う。

 

「大人しく俺たちに協力しろ。さもなくば――」

『力ずくか? エレキ伯爵がいなければオレに勝てるとでも思っているのか!』

『違う違う。目的は()()()

『エレキ伯爵の写真?』

「そう。お前の主のだらしない写真データだよ。そいつを奥さんであるアン・エレキテルに送り付けてやるんだよ!」

 

 アニメ版でエレキマンが忠誠心の高いナビだと知っている。こっちでもそうであるなら無理やり従わせるなんて無理筋なのは重々承知だ。

 だからこそ最強の交渉カード、エレキテル夫人の存在を示す。

 

『フン、馬鹿馬鹿しい。お前如きが奥様と通じている筈がない』

「よーく考えろよキングランド出身。何でお前にこの話を持ち掛けたと思ってんだ?」

『まさか……本当に?』

 

 勿論、ハッタリである。堂々とした態度してりゃあ相手が深読みするってナルホド君から学んだしな。

 

『だがここはアクセス制限されている! 連絡など取れまい!』

「それはどうかな?」

『なんだと?』

「この程度で対策した気になっているお前らの姿はお笑いだったぜ。確かに圏外だから無線での連絡は無理だ。でも、有線なら普通にあるじゃねぇか」

『だがWWWサーバーの出入り口はひとつ! お前が出られる筈が――』

『ないんだな、それが』

「台詞取ってやんなよ……ここはウラと繋がってるんだろ?」

『それがどうした?』

『これなーんだ?』

 

 【フォレストボム】をスロットインして、そいつを見せびらかしてやるとエレキマンの表情が固まる。

 

「こいつは海外で購入したチップだ。この意味がわかるか?」

『お前ッ! ウラの住人だったのか!?』

「だから抜け道くらい知ってんだよ」

 

 いいぞ、もっと勘違いしろ。俺の危険度を高く見積もれ。その警戒心はありもしない可能性を頭にチラつかせる筈だ。

 

『では何故誰もお前を助けにこない?』

「流石に天下のWWWだ。だから機を待ってもらってんだよ」

『待つ?』

「あぁ。お前らは無敵のドリームウイルスを作ろうとしてんだろ? そのせいで最強のナビをここに招いちまうんだよ」

「何?」

「強さを貪欲に求める、フォルテをよ」

 

 そうカッコつけたタイミングで、エレキ伯爵のPETに連絡が入る。おう話途中やぞ、勝手に出んなや。

 

『エレキ伯爵! このWWWサーバーに襲撃です! 急いで迎撃態勢を!』

 

 通話相手はマハ・ジャラマ。声には焦りが出ているのに、糸目は全く開かないその拘りはなんだ。

 

『何故隠岐渡が……? エレキ伯爵はどうしたのです?』

『主はその……酔い潰れている』

『この事態に何をしているのですか!?』

 

 ド正論をかまされた相手はこの緊急時でも全く起きる気配がない。流石は貴族、ある意味大物だなぁ。

 

『くっ……もういいです』

 

 マハ・ジャラマは応援の要請を早々に諦めたらしい。そら、いつ起きるかわからない男を待つより、自分で対処した方がマシだろうし。

 

「さてどうするエレキマン? このままオペレーターが起きるまで待ってるか。それとも俺の要求を呑むか」

『……お前の要求はなんだ?』

「このアジトからの脱出。そいつを手引きしてくれるのであれば、お仲間の援護にも行かせてやる」

『それだけの為にお前は……』

 

 何か俺が黒幕ポジにいるみたいに思われているけれど、意味深な笑みでも浮かべておこう。

 タイミングが良過ぎてビビったが、侵入者の正体は恐らくフォルテ。狙いは【ドリームオーラ】の入手。

 ここら辺は原作だとオフィシャルのメーリングリストの文章で匂わせするだけで、実際の描写がないから詳細は不明なのだが、考察だと十中八九そうだと言われてきた。

 実際、フォルテを倒した際に手に入るチップが【ドリームオーラ】で、絵柄もドリームウイルスだし。

 それに原作時空で熱斗がアジトに到着した頃には爆速でドリームウイルスが完成し、後はロケットに載せるだけ、という段階なのに、熱斗が今までの事件で起きた再現ギミック搭載の電脳空間を全て攻略するまでに完了しないというね。

 これフォルテの侵入が結果的に時間稼ぎになってなかったら間に合ってなかっただろ。

 

『……いいだろう』

「うっし。じゃあ早速――」

『ただその前にひとつ聞かせてほしい。奥様はお前に何を頼んだ?』

「伯爵家に泥を塗ってんじゃねぇよ、ってところかな?」

 

 まぁ、アニメ版だと普通にWWWの活動応援してたけども。ただそれも金目的だし、終末戦争なんぞ起きた後に経済が回るかっつう話よ。

 

『これを渡しておく』

『WWWID?』

『こいつがあれば電脳世界、現実世界で通行が自由になるだろう。ただし、お前が脱出した後は変更させてもらうがな』

「サンキュー。夫人に会ったらエレキマンは頑張ってたって伝えとくわ」

『いいからさっさとプラグインしろ』

 

 エレキ伯爵のPETをコンパネに差し込んだ後、俺のPETもプラグイン。すると瞬きしている間にドアのロックが解除される。

 

『あっさり上手くいったね』

「そうだな。エレキ夫人エミュしまくって、もっとエレキマンを惑わすつもりだったんだけどな」

 

 まぁ、上手くいったのだから気にせず脱出だ。

 とはいえ、フォルテがやってきた、ということは既に終末戦争へのカウントダウンが始まった、ということだ。

 外の状況は不明だけど、ドリームウイルスに一番近いのは俺たちかもしれない。でも脱出の意思は変わらない。

 ぶっちゃけストーンマン、ボンバーマン、マジックマン、エレキマンにドリームウイルスだろ? どう考えても無理ゲーである。

 フォルテがいるにしたって味方という訳ではないし、流れ弾でティウンティウンする可能性の方が高い。

 つーか原作の流れだと取るもの取ったら即帰宅してるっぽいんだよな。ついでにドリームウイルスだけでもデリートしていけよ、マジで。

 後はもう主人公補正にかける。

 

 熱斗ー!!!! はやくきてくれーっ!!!!

 

 

 

 

 

「フォルテめ、ドリームウイルスを狙うとは……!」

 

 警告音を発する画面を前に、ワイリーは歯軋りをしながらキーボードを叩く。

 門衛を務めるボンバーマンとストーンマンの猛攻を物ともせず、容易くWWWサーバーに侵入を果たすと調整中のドリームウイルスの元へ接近するフォルテ。

 応援に駆け付けたマジックマンもまた歯牙にもかけない。彼の圧倒的実力を前に為す術も無く――

 

「じゃが調整はもう終わっとるわい!」

 

――散ることはなかった。

 あるいは元弟子である隠岐を呼び戻していなければ調整不足のままフォルテと対峙し、事を為す前にデリートされていたかもしれない。

 だが、現実は虫と人型を折衷したような巨体と、ボロの布切れを纏った自立型ナビが向き合う形となった。

 

『……』

「効かぬ、効かぬわ!」

 

 お得意のシューティングバスターもドリームウイルスが発生させる【ドリームオーラ】に阻まれ、霧散する。

 何度と撃ち込まれようと同じこと。

 【インビジブル】などとは一線を画す、完全なる無効化。

 あのフォルテですら、その牙城を崩せないのであれば、もはや敵う者などおるまい。

 

「世界の前座として、散れいフォルテ!」

 

 ドリームウイルスのプロトタイプであったドリームビットを複数投入し、各種属性攻撃をフォルテに向けて放つ。

 いくら素早くとも全体を埋め尽くす暴力の嵐の前では流石のフォルテも終わり――

 

「なんじゃと……?」

 

 果たしてフォルテは無事とはいかなかった。左腕と腹部にダメージを負うものの、デリートには至らない。

 何故なら彼もまた紫のオーラを、完全無敵の【ドリームオーラ】を纏っていたからだ。

 

「この短時間に学習しおったか……!」

 

 フォルテの傍らに転がる複数のドリームビット。それらを盾としながらゲットアビリティプログラムを発動させ、彼もまた【ドリームオーラ】を完成させたのだ。

 苦々しい表情を浮かべたフォルテは右手を振るい、電脳空間を歪曲させると、その身を隠してしまう。

 

「ちっ……逃げおったか。まぁ、いい。お前は後じゃ」

 

 とんだ邪魔が入ったが、ようやくワイリーの悲願が目前にまで迫ってきている。

 

「ドリームウイルスよ、この憎き世界をデリートするのじゃああああああ!!!!」

 

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