WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

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19.帰ったらワイリーん家に集合な!

 狭い範囲ながらWWWアジトの構造を見て回ったところ、割とシンプルな感じだった。あちこちに剥き出しのコードが伸びており、ロックされた部屋の方が少ないくらいで、解放されたそれらは見慣れない機械群ばかり。

 俺が閉じ込められていた部屋は数少ない居住スペースだったらしい。

 そんな軟禁状態を脱したのも束の間、各フロアを繋ぐエレベーターまでやってきたのだが、

 

「ハーイ、ボーヤ。久しぶりね」

「色綾まどい!? それにヒノケンも……」

 

 まさかの鉢合わせである。逮捕された筈の2人がここにいるってことは、

 

「脱獄したってか!」

「せ~かい。ワイリー様がウイルスを差し向けてくれてね。お蔭様で戻ってこれたワケ。ボーヤがここにいるとは思わなかったけど」

 

 『3』でも団員を脱獄させていたし、そもそもワイリー自身もそうだった。

 原作の設定だとそのカリスマ性で優秀な仲間を引き入れたとあるが、公的組織にもシンパでもいるのか?

 てかウインクしながら投げキッスしてくんじゃねぇ。歳考えろ。

 

「……侵入者のせいで、お仲間が忙しいみたいだぜ? 俺に構ってていいのかよ?」

「あらそうなの? だったらボーヤを連れて早く行かなくっちゃ」

 

 まぁ、そう簡単に見逃しちゃくれないか。

 相手が一歩進める度に、俺もまたじりじり後退させられる。ネットバトルなら2対1だろうとやりようがあるが、現実世界だと無力な子供と大人2人。

 さっきから無口でいるヒノケンも不気味だし、どうする?

 念の為、ポケットにスタンガンを忍ばせているがリーチが短く、仮に1人をどうにかできても、もう片方に取っ捕まるのがオチだ。

 

「さっ、大人しくこちらにいらっしゃい?」

「おうおめぇらがな!」

 

 俺の焦燥感をまるっと吹き飛ばす、威勢のいい大声。

 WWW団員の背後から現れるその人影は、

 

「マサさん!」

「ワタ坊! 助けに来たぜぇ!」

 

 禿頭に鯰髭(なまずひげ)の伊達男、マサさんその人だ。

 完全に原作ブレイクの展開だが、これほど心強い味方はそうそういない。

 ただ……マサさん、オフィシャルの制服似合わねぇ……。わざわざタイが描かれた前垂れもしているし、センスがズレているんだよな、あの人。

 魚型のヘルメット被っておいて『ビーフ司令』だし。

 

「性懲りもなくオレの前に現れるとはな」

「伊集院!」

 

 炎山はポケットに手を突っ込んでの登場だ。そういや小学生でオフィシャルは特例、炎山の制服姿など一度も見たことないな。どうでもいいけど。

 

「……」

 

 無口でその横に並ぶのはクールビューティの黒井みゆきさん。野郎の制服と基本的なデザインは同じなのに、お似合いっすわ。着る人によってこうも違うとは。

 

「大丈夫? 怪我はない?」

 

 そして、転生してからようやく会えたサロマさん。

 緑色の姫カットに、茶色のバンダナ。ほぼ無表情のみゆきさんとは対照的に柔らかい笑みを浮かべる彼女は自然を愛する優しい少女だ。

 原作だと自然食の弁当を販売する屋台を科学省前に出しており、マサさんと同じくポッと出の彼女だが、アニメだと花屋に変更され、ちょくちょく出番が盛られている。

 

 にしてもサロマさんにはなかなか出会えなかったんだよな。マサさんとは転生1年目で普通に遭遇したっていうのに。

 見た感じ、みゆきさんより顔付きが幼いし、原作と同じく中学生くらいだろうか? アニメだと17歳設定に変更されているのも珍しい点ではある。尚、原作初期案は男だった模様。

 

 にしても中年男性が男子小学生、女子高校生、女子中学生を引き連れる図は犯罪臭が凄い。

 つーか2人共、オフィシャルになってるとか経緯が知りたいわ。

 

「オフィシャル……伊集院炎山ッ!」

 

 思わぬ援軍に喜ぶ俺を他所に、今まで萎びていたヒノケンが俄かに活気付く。目をかっ開き、その興奮で声が震えていた。

 

「足りねぇ……熱が足りねぇんだよォ!」

「うっさいわね~北京原人」

「黙ってろオバサン! やっと生きた心地がするぜ! オレと戦え伊集院炎山!」

「ぬわんですって!」

 

 瞬間沸騰したまどいに胸倉を掴まれながらもヒノケンは喜々として壁に備えられたパネルへ手を触れると、隔壁が真上から落ちてくる。

 警告音も安全確認も無し!? まだ俺が下にいるんですけどォ!

 

「うおっ……!」

 

 慌ててそこから離れるついでにWWWの2人の脇をすり抜け、皆と合流する。結果オーライ? その前に死ぬわボケ!

 

「隠岐。貴様は帰れ」

 

 噴き出した冷や汗を拭いつつ、急激に上がった心拍数を落ち着かせようとしたところに、冷ややかな声が頭上から聞こえてくる。

 

「そうしたいのは山々だけど……爺ちゃんもここにいるんだろ?」

 

 俺1人ならともかく、炎山たちが参戦するならば尻尾巻いて逃げる理由はない。

 何より俺の責任で祖父が悪事に加担させられている事実から逃げる訳にはいかない。

 

「ふっ……貴様ならそう言うと思った」

「何笑ってんだ、お前?」

「なーに。炎山がワタ坊を男として認めたってぇことよぉ!」

「露払いは任せる。マサ、みゆき、サロマ」

「さんを付けろやイワシ野郎! いくぜぇ! みゆきぃ! サロマぁ!」

「「了解」」

 

 炎山がカッコつけて腕を組みながら壁に寄りかかると同時に、3人が前に出る。ネットエージェント組が揃い踏みという、胸の熱くなる展開である。

 

「チッ、まぁいい。すぐに引き摺り出してやらぁ!」

「こっちの人数のが少ないじゃん、ずっる~い。か弱い23歳をイジメる気ぃ?」

 

 そして血気盛んなヒノケンと、口調とは裏腹に嗜虐的な笑みを浮かべる色綾まどいも前へ。どうやらネットバトルで決着をつけるらしい。

 こういっては何だけど、ホビーアニメ感あって個人的には嫌いじゃないけど、双方にそれでいいのかと問いたい気持ちはある。つーか、少し前の俺にもその対応よこせよ。

 

「「「「「プラグイン」」」」」

「シャークマン!」

「ウッドマン!」

「スカルマン」

「ファイアマン!」

「カラードマン!」

「「「「「トランスミッション」」」」」

 

 彼らのネットナビが転送された先は警備システムの電脳。物理的に遮断しただけでなく、ネットワーク上でも隔離されたエリアらしいのが、マサさんのPETから窺える。

 

「いくぜぇシャークマン!」

 

 マサさんが扱うネットナビはシャークマン。その名の通りサメがモチーフであり、上半身がサメ、下半身が人型のナビだ。

 彼の呼びかけと共にパネルの下へ沈み込むと、サメ映画よろしく背びれだけ覗かせてファイアマンへ突進をしかける。

 

「【フレイムタワー】だ、ファイアマン!」

 

 対するファイアマンはバーナー状の手をパネルへやると、シャークマンへ火柱を向かわせる。

 が、

 

『分身だと!?』

 

 いきなり背びれの数が増え、先行したそれが【フレイムタワー】と直撃。火柱の勢いが止まる。

 

『ヒレカッター!』

『ぐわああああっ!!!!』

「ファイアマン!?」

 

 すかさず飛び出したシャークマンが背びれから刃物のようなエネルギーを複数飛ばし、ファイアマンを切り刻む。えっ、グロ……四肢切り飛ばしてんじゃん。

 しかもこれだけでファイアマンがデリート? 威力えっぐ。弱点の水属性だとしてもこうはならんやろ。

 

『大地の怒り【ウッディタワー】!』

『地獄の炎……受けてみよ』

 

 んで、女性陣の対決はというと、フィールドがとんでもないことになっている。

 ピエロ風の道化が玉乗りしたナビ、カラードマンが【フレイムタワー】と【アクアタワー】を連発するが、それに対して下膨れした丸太のようなウッドマンと、骨がモチーフで大分ガリガリな見た目のスカルマンは真正面から対抗。

 ウッドマンは鋭利な丸太をパネルから生やす攻撃、スカルマンは【鬼火】というオリジナルチップによって、カラードマンの攻撃を相殺。

 

『ボーン、ストーカー……』

 

 スカルマンの肘から下が分離、それらがブーメラン状となってカラードマンを襲う。

 

『玉ッ!』

 

 が、大玉を蹴りで発射し、難なく撃ち落としてみせる。

 

『タネデッポウ!』

 

 そこに無防備となったカラードマンの側面に、デカい種が射出される。木属性のバスター攻撃だ。

 

『ゴメンネ、子分!』

 

 それを呼び出した分身を盾にして難を逃れる。2対1だけど、まどいとカラードマンコンビ粘る粘る。

 

『ぎえええっ!!!!』

 

 しかし、悲しきかな。合流したシャークマンが背後からずんばらりとカラードマンを切り裂き、デリート。

 美味しいところ全部持っていきやがったよ、このおっさん。

 

「チッ、燃えきれねぇ……」

「なによなによ! 1対1ならこんなヤツら……!」

「へっ、世界を敵に回して甘ったれた事ぬかすじゃあねぇの。悠長におめぇらに構ってられる程、暇じゃあねぇのさ、俺らは」

 

 マサさんは悔しがるWWW幹部たちに手錠をかけ、彼らを床に転がす。連れていく余裕がないから、後詰めのオフィシャルに回収してもらう手筈らしい。

 

「思わぬ時間を食ったな」

「だったら自分で戦えば良かったじゃねぇか」

「無駄な消耗を避ける為だ。そうでなければ連れてきた意味がない」

 

 隔壁のロックを解除し、先を急ぐオフィシャルたち。その後を俺も追うのだが、誰からも文句が出てこない。

 てっきりマサさん辺りから小言を貰う覚悟はしていたのだが、炎山が同行を許可したから口出ししてこないのかね?

 

「にしてもよぉ……まさかエレベーターが1階分しか動かねぇとはなぁ。不便で仕方ねぇや。敵は爺だってのによぉ」

「元気じゃなきゃ世界をどうこうしませんって」

「そういう問題なのかしら……?」

「貴様ら、口より足を動かせ」

「……ふふふ」

 

 敵地に侵入したとは思えないほど緩い雰囲気で俺たちは突き進む。

 フォルテの対処に追われているからか、ヒノケンたちと戦って以降、邪魔が入らず、実にスムーズだ。

 

「そういや熱斗はいないのな」

「……奴は民間人だ。来る筈がないだろう?」

「いや、そうなんだけどさ……」

 

 主人公不在で最終決戦突入とか不安しかないのだが、待っている余裕もないか。

 ラスボスを除いても、エレキマンにマジックマン、ストーンマン、ボンバーマンの4体が残っている。現実でボスラッシュとか勘弁してくれよマジで!

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 光熱斗は猪突猛進にヒグレヤへ向かい、勢いのまま日暮闇太郎を説得。

 熱斗の強い感情に突き動かされた日暮は彼のナビ、ロックマンをウラインターネットへ(いざな)った。

 途中、偶然ウラにいたガッツマンの助力も借りることに。

 

「WWWのサーバーがこんなところに繋がってんのかよ~?」

「あくまで噂、でマスが。危険故に近付かなったでマスが、ロックマンの護衛のお蔭でなんとか来れたでマスね」

「でもこの辺、何もないぜ?」

「フフフ……ナンバーマンの解析能力をもってすれば!」

 

 ナンバーマンが虚空に手をかざしてから暫し、隠蔽されたリンクを発見する。それを辿っていくと、

 

『あれは……ストーンマン! ボクが倒した筈なのに!』

『隣にいるのはボンバーマン……噂に違わず強そうだな闇太郎』

「でも当たりってことだよな! ワタルに繋がる手がかりがここに……!」

「退くって選択肢はねーよな!」

「お子様たちは怖い者知らずでマスね……って熱斗くん!?」

 

 日暮が制止する前にロックマンとガッツマンが姿を現す。

 

『ストーンマン! ボンバーマン!』

『ワタルを返すでガス!』

『ゴ、ゴゴ(誰だ、そいつ?)』

『さてな。しかし、侵入者は排除せよというのがワイリー様の思し召しだ』

『どうする闇太郎?』

「仕方ないでマスねぇ……腹括るでマスよ! ナンバーマン!」

 

 奇しくも日暮が決断したと同時に戦いの火蓋が切って落とされる。

 

「まずは行動パターンのわかってるストーンマンから叩くぞ、ロックマン!」

『うん熱斗くん……うわっ』

 

 先手はボンバーマンによる爆撃。目の前にボムを出現させると同時にそれを蹴り込み、爆破させるといったシンプルなもの。

 その破壊力でWWWに仇なす者は全てデリートしてきた。しかし、

 

「――【ミニボム】……甘いでマス。実に甘いでマスよ」

 

 爆風はロックマンに届く前に捻じ曲げられた。それが初期フォルダにも入っている【ミニボム】による仕業だというのは、流石の熱斗も信じられなかった。

 

「アッシのナンバーマンの主要武器はサイコロボム。ボム系の扱いなど容易いでマスよ」

「サンキュー日暮さん。そっちは任せたぜ!」

「いや、それは荷が重いでマスよー!!」

 

 悲鳴は謙遜だと聞き流し、熱斗は改めてストーンマンを見やるが、そうこうしている内にガッツマンがその巨体に挑んでいたらしい。

 

『コイツ、固いでガス!』

「わざわざ()を用意してくれてんだ。そいつを利用するんだガッツマン!」

 

 ストーンマンによって召喚された【ストーンキューブ】が降り注ぐ中、それらをかわしながら【ガッツパンチ】で押し込んでやる。彼らの強力なコンボだ。

 

『ゴゴゴゴ……』

「よっしゃあ! ダメージ通ったぜ!」

 

 彼らの狙い通り、直進した【ストーンキューブ】はストーンマンの左腕を破壊。有効打を見つけてはしゃぐデカオであったが、それも束の間のこと。

 

「何だと!? 再生してやがる!?」

 

 近くにあった【ストーンキューブ】を吸収し、みるみるうちに左腕が再生する。そして反撃は初見である目からビームを発射。

 愚鈍な印象を拭わせるそれは熱斗を歯噛みさせた。

 

「こりゃあ長期戦になるなー。ボンバーマンも近付けねーし……ロックマン?」

『何か、来る……! 強者の波動だ!』

 

 不意に戦闘から目を離したロックマンを気にした熱斗だったが、その答えはすぐにやってきた。

 

――この戦場に平等に降り注ぐ、数えるのも馬鹿らしくなる程の弾丸の雨。

 デカオと日暮に呼びかける暇もなく、熱斗はバトルチップを掴むとPETへ叩き込むようにスロットイン。

 

「【エリアスチール】、【バリア】! ……くそっ、大丈夫かロックマン!」

『なんとか……でもガッツマンが!』

 

 よろよろと立ち上がったロックマンの視界に入ったのは、暴力の嵐が過ぎ去った後だった。

 あれほど頑強であったストーンマンはボディの8割を失い、相対していたガッツマンは僅かに頭部を残すだけで、それも儚く散っていく。

 厄介であったボンバーマンは咄嗟に自身に爆風でも浴びせたのか大きく後退しており、左腕を失う程度で済んでいた。最後にナンバーマンは、

 

「ふいー危なかったでマス~」

『怖かった! 怖かったよ闇太郎~!』

 

 間一髪、プラグアウトが間に合ったようで、熱斗の隣で無事を喜んでいた。

 たった一瞬で悲惨の一言に尽きる攻撃に、日暮は最適解を叩き出していた。そう、戦場で呆然としている暇などない。それを、光熱斗とロックマンはわかっていなかった。

 

――何の予告もなく、二度目の掃射が、来る。

 

 【シューティングバスター】、流星群の如く一瞬で過ぎ去る無数の煌めき。

 ロックマンにできたのは腕を頭の前に構えるだけで、直撃をモロに食らう。一撃、また一撃と数えるのも馬鹿らしい攻撃にロックマンの身体は宙に投げ出される。

  

「ロックマーーーーーンッ!!!!」

 

 そして長い長い一瞬が終わった頃には、熱斗の手元にはロックマンのHPが0になったという事実だけが残された。

 




ゲームでもアニメでもロックマンがデリートされたのなら、もはやノルマだよなぁ?
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