たった一度の反撃によって形勢逆転され、絶望的な状況に追い込まれた俺たちの前に現れたのは、青いナビだ。
これまで最終決戦で集ったナビの誰よりも小さく、頼りない子供型のネットナビ。
しかし、彼は俺がずっと待ち望んでいた存在――最後の希望である主人公、ロックマンだ。
『シアンちゃん! ブルースも平気?』
『シャークマンが……スカルマンに、ウッドマンがやられちゃった』
『そうなんだ……許せない!』
「あぁ! やられちまったガッツマンの分も、そいつらの分も纏めてお返ししてやらねーとな! 彩斗兄さん!」
安堵でへなへなと脱力した俺に、まさかの追撃が突き刺さる。彩斗兄さん? この世界でも兄弟バレしおったんかワレぇ!
「光!」
「へっ、炎山! 後はオレたちに任せな!」
怒りの形相で突っ込むロックマンに、ドリームウイルスが初めて吠える。昆虫的な顎が開き、レーザーが射出されるも既に彼の姿は無い。
一瞬で肉薄したロックマンによる【ファイターソード】が一閃、再生成された【ドリームオーラ】ごとドリームウイルスの表皮を切り裂いてみせる。
「バトルチップ【メガキャノン】スロットイン!」
『いけぇッ!!』
続けざまに生じた隙間へキャノン砲を打ち込まれ、巨体がのけ反る。
「なんだ、これは……。ありえぬ! 【ドリームオーラ】が破られるなぞ!」
「関係ないね! オレと彩斗兄さん……ロックマンなら!」
『どんな壁だって打ち破ってみせる!』
縦横無尽に跳ね回るロックマンに狙いを定め切らないのか、やたらめったらにぶちまけられるドリームウイルスの乱打にシアンを退避させる。その間にも青い影は勢いを全く衰えさせない。
【ダイナウェーブ】
saito.bat組み込んだお蔭で実質最大強化、フルシンクロ状態でバチクソに覚醒しているとはいえ、ドリームウイルス君が完全に雑魚扱いじゃねぇか。
「確かに、あの青いナビは恐ろしく強い。じゃが、ドリームウイルスも弱体化しとるように儂には見える」
「爺ちゃん」
「先程のダメージによる影響でオーラの出力が低下しておるんじゃろ。そうでなければ、アレは貫けん。渡たちの奮闘は決して無駄じゃなかった。儂にはそう考えるよ」
ぐりぐりと俺の頭を撫でくり回し、PETを覗き込む祖父。画面が見づらいから正直やめてほしいけれど、褒められるのも悪い気はしなかった。
「トドメだ! 【ソード】スロットイン! 【ワイドソード】スロットイン! 【ロングソード】スロットイン!」
『プログラムアドバンス! 【ベータソード】!』
「嘘じゃあああああ!!!!」
ロックマンによる渾身の縦一閃は見事ドリームウイルスを真っ二つ。派手に爆散してその最期を迎えた。
……で、その影響がロケットにまで及ぶのはどういう理屈なんすかね? リアルの方でも派手な音が聞こえるくるし、小さな爆発を繰り返してやがる。
タンクに引火した割にはおかしな反応してません? どうなってんだよ、これェ!?
『ケイホウ! ケイホウ! ジバクソウチ ガ サドウ サレマシタ! マモナク コノ ケンキュウジョ ハ バクハ サレマス!』
こんなところで原作再現はいらねぇんだよ!!!!
何を考えて自爆機能なんざ付けてやがる! ロマンの一言じゃ済まさねぇぞ!
「シアン、プラグアウト!」
『ふい~助かった』
結構乱暴に引き抜いたけれど、内部の配線を気にしている場合じゃない。さっさと脱出せねば。
マサさん、デリートされたショックから立ち直れていないみゆきさんとサロマさんを小脇に抱えてダッシュしてるよ。下っ腹出てるのにあの運動能力やべぇよ、あの人。
「隠岐! 何をしている!」
「ちょい待ち! 爺ちゃんが!」
いつの間にか俺から離れてワイリーの傍にいるし。完全に忘れていたが、マハ・ジャラマとエレキトリカル伯爵も避難しないし。
この非常事態に何考えてんだ、あいつら。
「ここまで来て何故負ける? ドリームウイルスは完璧だった筈じゃ……」
「日夜進歩を遂げる科学に完璧などということはありえないということですな、ワイリーさん。それを孫とその友人たちが証明してくれた。だから儂と共に出頭を……」
「黙れ! ワイリー様はこの研究所と運命を共にするのです! 不肖マハ・ジャラマもご一緒させていただく所存」
「ガッデム! こんなことなラ、高めのワインを飲んどくべきだったゼ!」
完全に意気消沈したワイリーに、最後まで更生を願う祖父、死ぬ覚悟を固めたマハ・ジャラマに、未練タラタラながら忠義の為に残ることを決めたらしいエレキ伯爵。
よくよく考えなくとも全部が全部、ワイリーの態度次第で動けないだけじゃないか。
「あぁ、もう……!」
原作では爆発しても奇跡的に生存を果たすことができたワイリーだが今回もそうなる保証もないし、周囲の人間だって助かる保証はない。
ドリームウイルス戦で大したアシストもできていない俺が出しゃばるのもアレだが、挑発でも何でもして動かしてやらぁ!
「なーに悔しがってんだよDr.ワイリー!」
「……何?」
「結局負けたのはお前の力じゃねぇ! 光正の遺産だ!」
「何を言うか! ドリームウイルスは! 儂の生み出した究極の存在!」
「違うわボケ! 他人の研究成果に手を加えただけだろうが! この盗人野郎!」
「……!」
大きく目を見開き、パクパクと口を動かすものの、声にならないワイリー。
あぁ、そうだろう。いつまでも見て見ぬ振りしてんじゃねぇ。
「だとしても! あの光正が
「爺ちゃんの言葉通りさ。ドリームウイルスに打ち勝ったナビは光正の息子、光祐一朗が生み出したナビだからな」
「な……」
「ただの過去の遺物が! 光の家に脈々と受け継がれてきた傑物に勝てる訳ねぇだろうがよ!」
息を切らすぐらいそう叫んでやると、諦観の色に染まったワイリーの目がどことなく変化したように思える。
「だから! 次は自分の力だけで来いよ! Dr.ワイリー!」
「もう限界だ! 行くぞ隠岐!」
その説得未満の言葉がワイリーに響いたのかはわからない。痺れを切らした炎山に祖父共々手を引かれ、WWW本拠地を後にする。
マジで限界だったのかエレベーターは機能せず、最後の最後には爆発によってできた通行口の壁の穴から決死のダイブ。
背中は爆風に煽られ、眼前に青々とした落葉樹の枝葉を目前に俺の意識はプッツリと途切れた。
病院のベッドで再び意識を取り戻した頃には全てに収拾がついていた。
WWWは壊滅、ロケット発射が阻止されたのは周知の事実となり、炎山率いる特別選抜部隊が大々的に表彰されることとなったらしい。
落下の途中で枝葉が衝撃を吸収したのと、下が軟らかい土だったお蔭で全身打撲で済んだとはいえ、俺より早く意識を取り戻した炎山は参加したとの事。
次に、大量のウイルスに襲撃されたニホンオフィシャル本部の被害はそこそこ大きかったらしい。
施設への被害もそうだが、所属するナビの実に4割がデリートということで、臨時に各国のオフィシャルが直接応援に駆けつけたのだとか。
復旧の目途が立っているのかは一般人の俺には伝わっていないが、見舞いに来た炎山の表情からしてそこまで深刻ではないかもしれない。
後は皆の様子がどうだったのかといえば、炎山は言わずもがな。
祖父は右肩から前腕にかけて複雑骨折、右足の筋肉が断裂したらしいけど、命に別状はないらしい。軽い後遺症が残るかもしれないが、医者の見解ではあまり生活に支障は出ないとのこと。正直、ホっとした一幕だった。
マサさん、みゆきさん、サロマさんは怪我一つなく生還。各個人のナビはバックアップデータがあったことで、大して引き摺らずに済んだっぽい。
ただマサさんからの説教だったり、みゆきさんからの俺の寿命が縮んだ云々の占い、サロマさんの涙交じりの心配は色々心に来るものがありました。
マサさん以外はほぼ他人だったけれど、子供が無茶するのはキツいものがあったのだろう。まぁ、反省はしない。悪いのは全部WWWの連中だ。
あぁ、そうそう。今回の立役者である熱斗とロックマンも無事だったと直接面と向かって言われた。
自爆の影響で通信が途切れ、こちらがどうなったのかわからなくなった、と心配の言葉をいただいた。
ちなみにデカオとガッツマンも応援に駆けつけたが、ガッツマンまさかの戦死。死因は絨毯爆撃がどうの、と言っていたけれど、フォルテの仕業やろな。
デカオはタフなことにリベンジマッチに燃えていたが、近接主体のガッツマンだと相性悪過ぎて相当キツいだろう。まぁ、元気そうで良かった。
メイルとやいとは完全に蚊帳の外ではあったが、一応お見舞いには来てくれた。
ただね、病室で熱斗とイチャつくのはやめてくれませんかね? 個室じゃないから病室のオッサン共にからかわれて赤面していたけれど、自業自得だと思うの。
やいとは見舞いの品である高級フルーツ詰め合わせ美味しかったです。暑中見舞いか何かでまたください。皮肉っぽいコメントはいりません。
最後にWWW連中について。
幹部4人――ヒノケン、色綾まどい、エレキ伯爵、マハ・ジャラマの身柄は確保できたらしい。
ヒノケンとまどいはマサさんが台車で運んだらしく、外傷はゼロ。エレキ伯爵、マハ・ジャラマもシェルターらしき隠し部屋で発見。こちらも外傷は無し。
ただDr.ワイリーに関しては消息不明。
幹部連中が生存してあの爺が生き残っていない筈が無いので、どこかに潜んでいるのだろう。
『つーまーんーなーい』
「頭打って検査入院中なんだからしゃーないだろ」
『わかってるけどさー……ワタちゃんメールが来たよ』
「内容は?」
『プライドちゃんから「医療チームの準備はバッチリですので待ってます」だって』
「おう、伝えるなって言わなかったか?」
『何日も連絡途絶えて心配そうだったし、根負けしても仕方ないじゃん』
「まぁ丁重にお断りしてもろて。文面考えるついでにインターネットするか」
『現実逃避ー』
「してなきゃやってらんないわ……プラグイン シアン トランスミッション」
くぅ疲(ry
という訳で『1』のシナリオがこれにて終了です
適当に後語りするので暇な人だけ読んでもろて
正直、後半がグダった言い訳をば
最初組んだプロットだと主人公がWWW加入、内部からなぁなぁしてアニメ路線へ、というのが当初の路線でした
日暮さんのWWWメトロを言葉巧みに頂戴して、ファイアプログラムをワイリーに献上、仲間入りという流れだったんですけどね
順々に原作のゲーム的都合を潰した結果がこれだよ
ネットエージェント組の3体をもっと活躍させたかったけれど、アニメの戦闘がパターン少な過ぎてアレだし、魔改造するには主人公との絡み少ないわ、で残念な結果に
マジで後悔の念が強いですが自分の頭には限界だったので、お恥ずかしながらこれで勘弁を。
最後にこんな拙作をお読みいただきありがとうございました
『2』はコメディ成分多めの予定ではあります