WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

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今話は独自設定を含みます


29.ぷりぷりプリンセス

 プリンセスプライドの生まれた国、クリームランドは小さな島国であった。

 1年を通して1日の寒暖差が激しいものの、寒冷地故か夏はそこまで気温が上がらず、冬は暖流の影響で比較的暖かい。着る服を適切に選べば過ごしやすいと言えた。

 また世界では珍しい四季が存在し、季節によって豊かな自然が様々な顔を見せるのもクリームランドの特徴と言えた。

 幼い頃から穏やかな国民性に触れ、自然と愛国心を育んできたプライドは背丈が大きくなるにつれて自国の苦しい状況を知ることとなる。

 他国に先んじてネットワーク黎明期にその技術を取り入れ、いち早く先進国の仲間入りを果たしたクリームランド。

 しかし、他国も同様に取り入れた結果、その間に独自性を見出せなかったクリームランドの経済は翳りを見せていった。

 父である国王は病で倒れ、母は塞ぎ込み、兄弟はその穴埋めに奮闘していた。プライドもまた義務教育を終えてからは国政に携わる合間に通信教育をこなす日々。

 現状を知れば知る程、閉塞感が真綿で首を絞めるようになっていた。今はまだ国民の生活にそこまで影響が出ていないものの、そう遠くない未来に破綻するのは目に見えていた。

 打開策など容易に浮かぶ筈も無く、募っていく他国への恨み。

 逆恨みだと頭で理解していても自国を愛しているからこそ、止められない想いでもあった。

 

『プライド様、本日の投書ですぞ』

「ナイトマン、ありがとう」

 

 膨れ上がる憎悪は入眠を妨げ、それを抑えつけている理性もすり減っていく。

 いっそ他の国が滅んでしまえば――といった思考に囚われていた時、運命的といえる件名が目に飛び込んできた。

 

「【共に腐った世界を滅ぼさないか】ですって?」

 

 差出人は【ゴスペル】という見慣れないもの。十中八九迷惑メールの類だろうが、好奇心に負けたプライドが開いてみれば、ボイスメッセージらしい。ここまでくれば、と躊躇せず再生する。

 

『我々は海外マフィアの「ゴスペル」、この世の中に正しき制裁を与える集まり也。もし我々の手を取るのであれば、貴国に資金を援助してやろう』

 

 それは実に甘美な悪魔の誘惑であった。平常な判断能力を有している者ならば、一笑に付して削除するものをプライドの手は止まったまま。

 喉から手が出る思いで、その続きを欲した。

 

『なーんて、くだらねぇ文言に引っかかるアホはいないよなぁ?』

 

 しかし、荘厳な物言いと打って変わって人を小馬鹿にする高い声に、プライドは怒髪天を衝いた。執務机を思い切り叩いた勢いで立ち上がり、PCに向けて腹奥から上る熱を吐き出す。

 

「ふざけないで! こんな……期待させないでよ!」

『仮に一時的に助かってもよ、手を組んだ事がバレりゃ世界中の国から大バッシングだ。それこそクリームランドが傾きかねない』

「わかってる、そんなこと……」

 

 自分の愚かさを言葉のナイフで抉られ、久しく流していなかった涙が頬から零れ落ちる。

 長い間諦観が胸の内を渦巻いていたプライドにとって、負の感情を発露するなど無駄でしかなかったから。余計なエネルギーを使うくらいなら、少しでも皆を助ける思考に回したかった。

 

『一発逆転なんて方法はそんな簡単に転がってりゃしない。考えなしにしがみ付きゃ、昔のクリームランドと同じ。次に繋がらねぇ』

「言わないで……」

 

 しかし、現実は残酷だ。どれだけ思考を回しても空転するばかりで、どれだけ苦しんだとしても好転しない。

 淡い金髪を揺らしながらゆるゆると首を振るも、耳は塞がない。もう聞きたくないのに、意思に反して耳はその声に傾けていた。

 責められたくはない。けれど、厳しい事を言うその声には不思議と悪意を感じられなかったから。

 プライドは顔を伏せながらもボイスメッセージを遮ることはしなかった。

 

『だから新しい方法ばっか探してないで、今あるものをちゃんと見ていけよ』

「え……」

『詳しく内情なんざわからねぇけど、成功体験にしがみ付いてんのかIT関連に金つぎ込み過ぎだろ。アイス――もといクリームランドの自然とかいいじゃん。観光業、見つめ直せよ。島国なんだし水産もまだまだいけるって』

 

 何故だかクリームランドを褒められていた。

 具体的なことなど言わないくせに、その言葉には彼女には無い、明るい希望が乗っていた。

 

『地熱とか再生エネルギーに使えるだろ? 環境問題なんかのお題目にピッタリだ』

「それはもうやってる……」

『俺程度でも、こんだけ良いところが見つかるんだ。そいつを伸ばしていけよ。そんでも不安なら家臣の奴らにぶん投げて一緒に考えさせろ。俺よかマシな案が出るだろうよ、きっと』

 

 顔は決して見えない。けれど、自ずと子供みたいな笑顔が目に浮かんだ。

 

『クリームランドは()()大丈夫。盗みが横行する程、治安が悪化してねぇし、ハイパーインフレにもなってない。内紛が起きてる訳でもねぇし、島国だから移民問題も深刻じゃねぇだろ?』

「何を極端な……」

 

 言いたいことだけ言って終わったボイスメッセージに、プライドは届く筈もない小さな不満を吐き出す。

 甘言から始まったかと思いきや、全ては無責任な妄言だった。けれど、全部が全部、プライドへの励ましに満ちていた。

 

「ナイトマン」

『プライド様、如何しました?』

「この音声を翻訳した言語を割り出して」

 

 いつの間にか止まっていた涙をハンカチで拭い、プライドは命令を下す。

 

「クリームランドに送られたラブレターの送り主を探してちょうだい」

 

 人の心はお見通しのくせして、こんな無謀を犯すおバカさんと直接話をする為に。

 

 

 

 

 

 そして、探し主は30分もしない内にクリームランドの南端エリアで見つかった。

 現在鎖国状態に等しいニホンのナビという珍しい特徴があったが、何より次から次へとバトルチップを流れるように繋げていくバトルスタイルが目を惹いた。

 

『【バンブーランス】からの【ヨーヨー】まではわかったけど、【ブロンズフィスト】のコマンド入力って何さ!?』

「あるんだから仕方ねぇだろ。CAPCOMに言えCAPCOMに」

『やいとちゃん家のGABGOM(ガブゴン)社に何言えっていうのさ!』

 

 バトル中にも拘わらず仲良く口喧嘩しながら、その手が緩むことは無い。

 特に連続でスロットインされた【エリアスチール】で目まぐるしく位置を変えようとも対応してみせる全身を布で覆い隠すナビには驚嘆で言葉のひとつも出てこない。

 

『誰か見てるね』

「何でこんなところにナイトマンが……例の陳情モドキもまだ完成してねぇのに」

『いや送ったけど?』

「何送ったんだよ? 没案はちゃんとした文章になってねぇだろ?」

『罰ゲームのヤツ』

「よりにもよって悪ふざけのアレかよ! バリバリ不敬罪だけでもやべぇのに『ゴスペル』名乗りは完全にアウトだろ! 国際問題になるわ!」

『えー……ワタちゃんって文章無駄にこねくり回してるよりストレートに感情ぶつけた方が絶対いいって。ネッちゃんより人タラシなんだし』

「んな訳あるかァ! 幸い姿は見られてねぇ……プラグアウトだプラグアウト!」

 

 やいのやいのと喚くオペレーターに、けらけらと笑うナビのやり取りに、プライドはついつい破顔してしまう。

 間の抜けた彼女らを直接見て、やっぱり友人になりたいと思ってしまったから。

 

『ニホンの者よ、姫様は危害を加える意思は無い。プラグアウトするのを止めてくれることを願う』

『だってさ。結果オーライじゃん』

「いやいや殿下がお許しになられてもナイトマン様が許さない可能性もあるでしょう?」

『某は姫様の意思に違わぬ。お話があると仰せだ。付いてまいれ』

『逆らってもアウトの奴ですね。わかります』

 

 承諾をいただいたところで、女性型らしきナビにクリームランドスクエアの隠しリンクからプライベートエリアに跳んでもらう。

 そこはナイトマンの趣味が全開に出た無骨な空間で、客を招くのには不適切ではあったが、こうでもしないとやんごとなき身分のプライドが口をきけなかったのだ。

 

「大したもてなしもできなくて申し訳ございませんわ」

『ご機嫌麗しゅう?』

「こちらこそ下賤なものをお送りしまして何と謝罪して良いものか……この者が腹を切って詫びる所存」

『切腹文化は海外だとドン引きじゃない?』

「……テンパって詰んだわ。いやもう既に詰んでるか」

 

 忙しない客人にクスクスと笑いを漏らしてからプライドは言う。

 

「そう固くならないで。わたくしは貴女方(あなたがた)とお話がしたいだけだから。楽にしてくださる?」

『はーい。却って失礼になりますわよ、ワタちゃん様?』

「寛大なお心遣い、ありがとうございます……!」

『固い。固いから』

 

 それから軽い世間話を振ってみれば、シアンと名乗った白銀髪のナビはフランクな口調で付き合ってくれる。

 遠慮が無いと、はしたないと思われる距離感であったが、失礼となる一線は決して越えない為、プライドとしてはありがたい限りだった。

 久々に年相応の、女学生らしい会話ができて嬉しかったのだ。

 そして恐縮してばかりのワタと呼ばれる()()オペレーターも次第に開き直ったのか、ちょいちょいシアンの話の軌道修正をしてくれていた。

 

「――それでですね!」

『プライド姫様。そろそろ政務に戻らねば』

「もうこんな時間。最後にひとつ、お願いがあるのですが、よろしいですの?」

『いいよ! もうお友達だもんね!』

「……お手柔らかにお願いします殿下」

「連絡先を交換してくださる?」

「………………はい」

 

 随分と葛藤が見られたものの、その日からニホンでできた友人との交流が始まる。

 最初こそ愚痴を聞いてくれたり、互いの文化の違いに盛り上がったりしていたが、

 

『ワタちゃんさ、前に調べものするのに不便だって言ってたじゃん?』

「あぁ、そうだな」

「そうなんですの?」

「ニュースとか天気予報ならメインストリートにアクセスすれば一発ですけど、ディープというか専門的な情報になると掲示板でのやり取りが主になるじゃないですか」

「えぇ、そうですわね」

「でもいざ聞いたところで知っている人間が来なければ返答はありませんし、レスポンス性も悪くありません? やっぱり検索エンジンが欲しいなぁと思いまして」

「化石みたいな代物をご存じですわね、ワタ。なら脆弱性を解決できず廃止されたのも既知でしょう?」

「まぁ、そうなんですけどね。せめてまとめサイトみたいなのがあればなぁ……」

「まとめサイト?」

「各地に散らばった掲示板の内容を纏めたサイトといいますか。著作権とかに引っかかりそうだから無理だと思いますけど」

 

 といったものから、

 

『プライドちゃん、メールって不便だと思う?』

「いえ、特に不便さを感じたことはありませんね」

『ワタちゃんがさ、まーたレスポンスが遅いっていうの』

「とおっしゃいますと?」

『「先人が偉大過ぎるから固定観念が崩せてねぇのか、オールドメディアが強過ぎんのかSNS文化が流行らねぇな」って言ってて。プライドちゃんは何か知ってる?』

「いいえ。ですが何か面白そうですわね!」

『そう? じゃあ聞いてみよっか。ワタちゃん!』

「取り込み中。後にしてくれ」

『プライドちゃんからの頼みなのに?』

「わかりました。手短にお願いします殿下」

「SNSってなんですの?」

「あー、広義的にはメールとかも含まれるんですけど、現在は会員制の狭いコミュニティを指しますね」

「でもワタが想像しているSNSとは違いそうですわね?」

「個人が情報を発信したものを世界中に届けられるサービスといいますか」

「……不可能ではありません?」

「まぁ、そうですよね。せめてメッセージアプリくらいは出てきてほしいかなぁ、とは思いますが」

「メッセージアプリ?」

「基本、連絡を取る際、電話かメールの2択じゃないですか?」

「えぇ」

「それより気軽な手段、欲しくなったりしません?」

「?」

「電話って夜遅くだと迷惑にならないか、とか気遣う事があったり、電話自体が苦手って人もいたりしません? 切るタイミングが見当たらないとか、聞き取り辛いとか」

「そうなんですの?」

「まぁ、少数派かもしれませんがそういうものだと思ってください。で、メールはメールでレスポンス悪くありません?」

「出ましたわねレスポンス」

「手紙がベースになっているからか文章が長くなりがちだし。チャット形式に短文でやり取りできたら気楽じゃありません?」

「チャットというのは、ネットナビ同士のお喋りではありませんでした?」

「ネットナビがわざわざその場に集まらなくとも、複数人が同時にチャットできたら良いな、って話ですよ。それすら面倒なら絵文字のコピペから発展して、使い回ししやすい画像なんか送れると楽ですよね」

 

 といった画期的な発想がポロポロと飛び出すことに、ワタとは違った意味で浮世離れしたプライドは当初こそイマイチ実感が薄かったのだが。

 軽い気持ちでメッセージアプリの構想を家臣団に通したところ、2週間と経たずに国内で一大事業にまで発展したところでプライドは遅ればせながらにその凄さと、自分がワタのアイデアを盗んでしまったことに気付く。

 慌てて謝罪し、幾らでこのビジネスモデルを売ってくれるのか、と恐る恐る尋ねるも、当の本人は無頓着で、

 

「元はパクりですし、世の中便利になるならそれで良いですよ」

 

 と軽く流されてしまった。

 どんなに調べても他社のビジネスモデルを真似た形跡は無く、その後二番煎じやその後追いが出てきた時にもワタのアイデアには遠く及ばない代物ばかりであった。

 

 この収益だけで国庫は大きく潤う計算であるし、来年度以降に他へ金を割く余裕も生まれた。

 その他にもワタが睨んだものは隠れた金脈であることが多く、流石に百発百中とまではいかなかったがそれでも国を建て直すには十分過ぎると言えた。

 

「ねぇワタ? どうして貴女はそこまで力を貸してくれるのですか?」

「別に横から口出しているだけで助けてなど無いでしょう?」

「そんなことありません! 貴女の助言でどれだけ救われたか……!」

「その期待が重いんですって……! 愚痴の聞き役に徹するつもりだったのにどうしてこうなった……」

 

 ワタに対して助力してくれる理由を問い質しても、明確な答えは返ってこない。しかし、ワタの言動をそのまま受け取るならば、自身の価値を理解できていないのかもしれなかった。

 プライドを傀儡にする意思が無いどころか、クリームランドの政治に介入することには大分後ろ向きであった。

 そう察していても、プライドはワタに頼る事をやめられなかった。

 罪悪感はある。けれど、末席ながらも王族としてみすみす使える人材を手放す訳にはいかない。

 それに――プライドにとって甘えられる相手は親以外にはいなかったから。相手の顔も知らないけれど、ワタは凄く寛容で何とも言えない包容力があった。

 

「ねぇワタ? 貴女はクリームランドのセキュリティをどう思うかしら?」

「どうとは? というか俺に聞くことですか、それ?」

「貴女はニホンを、他の国を知っているのでしょう? 私見でもよろしいので答えてくださる?」

「おぉう……割と洒落にならない情報をさらっと見せられた……。見なかったことにしても?」

「ダ・メ♪」

「うっす。数値だけ見せられても専門家じゃないんでわからないのですが、そのファイアウォールはP.A.(プログラムアドバンス)何発くらい耐えられます?」

「はい……?」

「あぁ、そういう反応ですか。とはいえプロテクトシリーズみたいな耐久力お化け以外は誤差みたいなものだと思いますけど」

「プロテクトシリーズ?」

「ある意味最高峰のセキュリティの固さであり、周囲の被害も考えないアホみたいな産物です。まぁ、例外はともかく、()として機能すれば十分じゃないですか?」

「網……」

「ネットナビの攻撃性能やハッキング性能に対して、セキュリティレベルが追い付いているとは言い難いんですよね。だから応援を呼ぶ時間を稼げれば十分だと個人的にはそう思う次第です」

「ワタは破られる前提で考えていますのね」

「この持論、理解は得られないとは思いますけれど、何分、心配性なものでして。後はガードナビについてですけど、どれも同一の性能をしているみたいですね」

「大臣からは生産性に重きを置いたと伺いましたわ」

「……あぁ、うん。侵入者の強さとか考慮するに消耗品みたいな扱いになりがちですよね、ガードナビ。数で勝負するのも悪くは無いですけど、汎用性がどうも」

「連携を考えるのでしたら汎用性に優れて然るべきでは?」

「それも一理あるんですけどね……例えとして適切と言えるかわかりませんが、同種のウイルスを複数相手するより、色々な種類のウイルスを相手した方が苦戦しません?」

「確かにそうですわね」

「ガードナビの行動パターンがそこまで単調とは言いませんけど、大して幅が無いように思えます。キャノン系やソード系を中心としたオーソドックスな感じですし、個人的にはウイルスの方が手強いかもしれません」

「そこまでですの?」

「何かに特化させている分、役割がしっかりしていると言いますか。ハルドボルズとか単体ならそうでもないですけど、カブタンク系やキオルシン系と組まれるとキツくありません?」

「……そう、ですわね」

「これでいて一般的なナビの容量の何百分の一、でしょう? 戦闘面だけ見ればコストパフォーマンスは段違いですよね。何ならどこぞの国ではウイルスを防衛手段に組み込んでるところもあるみたいで」

「まあ! 体裁としてはどうしてなさるのでしょう?」

「俺としても気になるところではありますが。要するに、リソースを満遍なく割いて何でも小器用に動かせるようにするより、尖らせた性能を持つ個体を組み合わせた方が厄介だと思います。ただ生産コストやらアップデートの際に手間がかかるのが難点ですけど」

 

「ちなみにですけれどワタ。もし、このクリームランドに侵入するのでしたら、どうするおつもりですの?」

「何て事言い出すんですか殿下。思考実験にしたって物騒ですって」

「お願い。聞かせて?」

「……一番簡単な方法としてはクリームランド人からナビを譲り受けて侵入とかですかね」

「他には?」

「他ぁ……? まぁ、金でファイアウォール突破できるナビと、ウイルス召喚できるナビを複数雇って多方面から侵攻。それである程度戦力を釣り出せたら、その内の幾つかのガードナビ捕まえてボム系括り付けて投擲。いい感じにゴタついてきたら、一番手薄そうな所から侵入、といった感じですかね」

「ワタクシの想像以上にダークですわね、ワタ」

「人に言わせてその態度は酷くありません!?」

 

 ワタと出会ってひと月もすれば城内に漂っていた閉塞感もすっかり消えていた。無論、穏健派は急激な改革に難色を示していたが、それでもその活気は比べるべくもない。

 誰もが忙しいと口にしながらも、上向きの気持ちを表情から隠し切れていない。

 その功労者であるプライドに称賛の声が浴びせられたが、彼女は素直に喜べない。だってそうだろう、大々的に労われるべきワタが、真の功労者が日の目を浴びていないのだから。

 それが当人の願いで、

 

「そんな重要そうなポジション、俺に務まる訳無いですって! 想像しただけで胃痛ががががが……! 大体どこの馬の骨ともわからない外国人に救われた、なんて与太話を吹聴するより、自身を広告塔として有効活用してくださいよマジで」

 

 と切実な声で頼まれては流石のプライドも表舞台に引き摺り出すのは叶わなかった。

 せめて心ばかりの報酬としてレアチップを贈与したり、シアンを戦術指南役として登用して多額の報奨金を支払おうとしたり、とあの手この手で何とか労ったが、それでも感謝してもしきれない恩がある。

 もし叶うのであれば、直接対面してお礼を言って、ワタが救ってくれたクリームランドを目一杯案内してあげたい。

 プライドが好きになったクリームランドの各所を見せてあげたい。美味しいものを一緒に食べたい。一緒に笑って沢山の良い思い出を作ってあげたい。できることなら一緒にお風呂に入って、お泊りして、そのまま住んでもらって。

 それからワタに尽くして、尽くして、尽くして――プライドひとりの人生を懸けても足りはしないだろう。それだけの、かけがえのないものを貰ったのだから。

 

 

 

 

 

 もし、もしもだ。

 ありえないことだけれども、()()()であったなら。

 きっとプライドは――

 




こっから原作やアニメに無い独自設定について

〇渡くん女性疑惑
コメント欄でも返信しましたが、一応説明をば
声変わり迎えていない渡くんの高い声だったり、小学生とは思えない語彙やら態度のせいで勘違いされました、はい

〇プライドの兄弟
原作には全く描写されず、何なら国の舵取りもプライドが行っている節が見られますが、拙作ではガン無視させてもらいました
王族の責務として男兄弟くらい作るやろ、という点がひとつ
国王と王妃がプライド産まれてから亡くなったのであれば、宰相辺りが実権握っているやろ、という点がひとつ
後妻を迎えないファンタジーは無しの方向で
国の代表がひとりしかいない状況下で、家臣が頑張った程度(開発者コメント)で『5』で元犯罪者がお忍びできるほど余裕がある訳ないやろ、という点が気になってこうなりました

〇プライドの年齢
原作
『2』の顔グラは20代っぽいな→『5』で若返ってるやんけ! どう見ても10代半ばやろ!
アニメ
無印39話視聴した印象は熱斗より年上っぽいかな?→44話、stream登場回だと20代にしか見えないやん……
あさだみほ版
熱斗のクラスに転校……?
って感じで年齢があやふやなので、拙作はJKプライド様になっていただきました
……20代で他国を滅ぼす思想はヤバ過ぎィ! という点もあります

〇投書
所謂目安箱的なアレ
今回の最大のガバポイントで、渡くんとプライドの接点を作るのに非常に悩ませた要因でもあります、投稿を遅らせた難所
プロット段階だとクリームランドで立身出世的な感じで気持ちガバ少な目でいく方針でしたが、
ウラや海外でのチップ収集(特にレアチップである【アクアバルーン】回収はヤバい)、【サイクロン】改の着手、WWWの起こした事件の先回り、誘拐etc…で時間が無いことに気付いて泣く泣く路線変更
ドリームウイルスくん撃破後でも『ゴスペル』のが先に接触して間に合わんやろ、っつうね
結果、生まれたのは渡くんの説得(笑)
フラッシュマンばりの洗脳光線でも出しているのか、プライド様がちょろいのか……

〇異世界チート()
元ネタであるアイスランドのV字回復を参考にしたり、平成初期っぽい価値観のエグゼ世界に令和の価値観を先取りさせた感じ
渡くん本人としては日常会話の延長戦から始まり、いつの間にか引き返せない所まで引き摺りこまれたのが今回の回想
最初は寝耳に水、途中からは彼としても「そんなに上手くはいかないやろ」と高を括っていたところに、この成果を叩き出したからさぁ大変
大体ネタを出し尽くしたので、登用されようものなら地獄確定なんすよね
胃痛案件
経済支援受けてそうな原作クリームランドよかマシだろうよ!

〇セキュリティ
基本的にはアニメを参考にしました
ファイアウォール簡単に突破され過ぎィ! ガードナビ弱過ぎ問題
その辺りを戦術指南役を拝命したシアンが実戦形式で暴れまわった結果、若干強化された感じ

〇激重感情
プライド視点だとガチでクリームランドの救世主なので、愛国心の強い彼女なら感謝の気持ちも相当強いやろなぁ
で、家族みたいに甘えられる相手?
相手が男ならどうなってしまうんやろね?
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