WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

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説明回が多くなってすいません
多分、次回から話が動き出す予定


3.ネットナビNTR

 デカオからネットナビ製作の基礎的な知識を教わってから苦節3年弱、俺のオリジナルナビ完成まであと一歩というところまでようやっとたどり着いた。

 当初こそ機材は父親のPCが残っているし、「成績不振のデカオができるくらいなら俺でも余裕でいけるやろ」の精神で挑んだものの、物の見事に初っ端から躓いた。

 まず資金が足りなかった。正確に言えば祖父に頼めばそれくらい捻出してくれそうではあるが、割と高額になりそうだったので、できる範囲で自己調達することを念頭に置いて。

 未知過ぎるプログラム言語習得まで丸1年要したし、そこからは延々とバグとの闘いである。

 いっそモデリングは外注しようとも考えたが、リアルでそんな知り合いはいないし、かといってインターネット上で依頼するにはハードルが高過ぎた。

 なら外身は現状妥協して完成後から着手すればええやろ、という甘い考えもロックマンさんからの、

 

「ボクたちも電脳空間とはいえ生きているんだよ?」

(意訳:てめぇ全身ブサイクとか生き辛いだろが舐めてんのかゴラ)

 

 の鶴の一声により、ちゃんと作る羽目に。

 原作はドット絵のくせに、3Dモデルとか聞いてないんですけどォ!

 

「プラグイン、っと」

 

 とはいえ、オリジナルナビ全てに注力していた訳でもないのだけれども。

 ナビの性能だけでなく、俺のオペレーターとしての腕も不可欠なのだから。

 

 PETから伸ばしたケーブルをPCのプラグイン端子に差し込み、多少手を加えただけの一般ネットナビを電脳世界に送り込む。

 画面に映しだされるのは、無機質な仮想空間。しかしそれは間に合わせで作った自分のホームページで、通り過ぎればそこには広大な世界が待っている!

 

――と初見こそ感動を覚えたものの、今となっては目的のエリア以外はクソ長い通路でしかないのだが。

 

 前世でパソコンやスマホと向き合ってた身としては不便な事この上ない。

 国や大企業が報道している情報ならすぐメインストリートに流れるデータから掬い上げる形でアクセスできるものの、個人間のやり取りだとか調べものひとつするにしてもわざわざナビをそのホームページに移動させる手間と時間がかかるのだ。

 

 とはいえ疑似人格を与えられた()()にとっては、文字通り生きている世界そのもの。普通のことを普通にしているだけだ。前提となる他の世界のことを知らなければ不満なんて出る筈もない。

 

『ウイルスと接敵』

 

 けれども正直、物騒過ぎませんかね、この世界。

 例えるならば通り魔が頻繁にエントリーしてくるようなもんだぞ。

 

「っと、メットールか」

 

 横合いから現れるは黄色いヘルメットに鶴嘴(つるはし)を持った一頭身のキャラクター。可愛い見た目をしているが立派なウイルスの一種である。

 鶴嘴を振り上げて前方にショックウェーブを飛ばす破壊活動が主。

 一般市民に一番目撃されるウイルスであり、つまりは黄色いこいつは一番駆除されているクソザコとも言える。

 

「バトルチップいる?」

『時間対効果が悪いかと』

 

 俺の戯言に正論でぶん殴られたので大人しくポーチからバトルチップと呼ばれる薄型の記憶媒体を取り出す。

 基本、可視化されたウイルスバスティングをする上では上記のものが用いられる。それは武器であったり、ダメージの回復や移動の補助まで様々な効果を発揮する外部の拡張機能だ。

 んで、指に挟んだ【キャノン】のチップをPETのスロットに差し込むと、ナビにそれが転送される仕組みになっている。

 少々のタイムラグの後、一般ナビの右腕がキャノン砲に上書きされるとそれをメットールにぶっ放してゲームセット。

 マジで特筆すべき点がないくらいよわよわ。でも最終強化まで行くと反応できない攻撃速度を持ったマップ破壊兵器と化すから恐ろしい。

 

『残留データはどうします?』

「もち回収で」

 

 ゲームだとリザルト画面となり、ゼニーと呼ばれる電子マネーか、そのウイルスを元にしたバトルチップのデータが入手できるのだが、転生先にはゲーム的都合は存在していなかった。

 まずウイルスを駆除(デリート)しても何も残らない可能性があるのは前提として、運良く残った残留データもそれ単体では何の意味も為さない。

 ではどうすれば良いのかというと――わざわざ外に出てそれをチップ用のデータに変換する必要がある訳ですね。

 

 それから数戦ウイルスバスティングをこなし、謎に落っこちているミステリーデータの解析やらメインストリートの最適化の手伝いで微々たるお小遣いを調達した後。

 やってきたのはどこにでもあるコンビニ、ATM群が並ぶ一角にお目当ての装置があった。

 

 正式名称バトルチップ生成マシーン、という安直過ぎる名前の装置はその名の通り、バトルチップを生成してくれる。その素材となるのが残留データとなる訳だ。

 操作方法は至ってシンプル。

 まずPETをその装置にプラグインして、残留データを転送。次に安価で売られている空のチップをセットして待つだけである。

 生産元のバトルチップ協会とやらが「ネットバトラーの育成の為」と謳っているからか、手数料は設置している店舗にしかかからない。小学生の懐事情としては非常に助かっている。

 でも、原作を知っている身としてはある疑念が頭に過って仕方がない。

 

――これ、ゲットアビリティプログラムを流用してね? と。

 

 ゲットアビリティプログラム、それはロックマンエグゼの隠しボスと名高い電脳の破壊神フォルテの能力で、効果はそのまんま戦っている相手のプログラムを我が物にするといったもの。

 通常、奪った能力が増えていくごとにフォルテ自身の処理が重くなったり、プログラム同士が干渉して弱体化する筈なのだが、フォルテを生み出した優秀な科学者はそのデメリットを見事に解消してみせたのだとか。

 

 ここで話がバトルチップに戻ってくる。

 内部で処理するか、外付けの拡張機能にしたっつう違いしかないやんけ!

 普通の一般ナビでも負荷が軽いように、と使い切りの形にしたって推測しちゃうわ、こんなん。

 

 と、誰にも吐き出せない感情を何とか吞み下している内に、データの書き込みが終わったらしい。

 チップの表面にはご丁寧にラベルが印刷されており、一目でどんなものかわかるようになっている。

 ちなみに先程のメットールから得られたのは、【ショックウェーブ】と【メットガード】の2種類。前者は鶴嘴でえいや、とする衝撃波。後者はデカいヘルメットでのガード効果。

 使用感としては前者は攻撃が貫通するので序盤性能はまぁまぁ。後者はアップデートが来ないと使わないと思う。後継となる【リフレクメット】になってから出直してくれや。

 

 戦利品を手にしてコンビニを出た途端、強風に見舞われる。思わず少しだけ目を閉じて再度開いた時には、どこから流されてきたのか桃色の花弁が宙を滑る。

 小学4年の短い春休みも最終日、いよいよ本編開始時期が迫ってきた。

 必要不可欠とはいえオリジナルナビ製作に手を取られ過ぎて仕込みは不十分。

 せいぜい熱斗と家に遊びに行く程度の関係性を築いたり、ネットバトルに乗り気じゃない彼の意識改善に努めた程度だから焦りも不安も多大にある。

 バタフライエフェクトの可能性も恐れたさ。

 

 でも、ロックマンの厨性能と熱斗の天才的バスティングだけで序盤を乗り切るのはどうなんだ、と。

 

 原作はまだ仕様上しょうがない。その理由付けで熱斗は初めの内はネットバトルに乗り気じゃないところがある。むしろ大人しい性格をしているロックマンが相手の事情お構いなしに挑む戦闘狂みたいになっているのが恐ろしいとは思うけど。

 問題なのはアニメ版で、ネットバトルが流行していることもあってか、熱斗もドハマりしているくせして――お前いつまで初期フォルダ縛りしてんだっつう話よ。

 第10話にてN1グランプリというネットバトルの大会が開かれ、そこに当然彼も参加することとなるのだが、あろうことかフォルダ(カードゲームでいうデッキ)の見直しをしないのである。

 ぶっちゃけ、初期フォルダは弱い。特に『1』とかスターターデッキとして発売されようものならバッシング食らってもおかしくないレベルである。

 コンボは乏しいし、一番火力の出るチップを主軸にするには心もとないしで、バンバン入れ替えるの前提の作りとなっているのだが、アニメ時空の熱斗はそうしない。

 【ロングソード】と、ビーフ指令なる人物から貰った【エレキソード】以外マジで変更しない。

 大人の事情とかあったのかもしれないけれど、もっとこう何とかなりませんかね……?

 

 

 

 

 

 気分転換の外出を終え、スリープ状態のPCの前に戻ってくる。それを復帰させて改めてナビの構成画面のチェックに移る。

 構成は大まかに分けると(ヘッド)身体(ボディ)(アーム)、そして(レッグ)の4つ。

 

 それぞれ詳しく掘り下げていくとまずは頭。こいつはナビの性能を決める上で一番重要となる部分である。

 人格データや学習したデータ諸々を納めるストレージと、情報処理を行うcpuを複合したもの、と例えるべきか。あっ、そうそう。機械などの操作技術とか暗号化した情報などの解析能力といった実務に関わる能力も担っているのも大事な点。

 とにかくここを疎かにすると全てが台無しになり、せっかく色々プログラムを組み込んでも、それを動かすスペックが足りなければ宝の持ち腐れというヤツだ。

 んで、コア部分になるだけあってか、かなりの難物でプログラミングに時間が一番かかった。

 何なら人格データは複雑怪奇過ぎて、戦闘ルーチンも自分で組むと単調になりがちだったので諦めて科学省で販売されているものを購入したくらい。

 

 次に身体、こちらは主にナビの耐久性や特性などに関わってくる。

 前者は基礎HPだったり、ダメージを軽減する装甲の有無。後者はナビの属性、特殊能力などが挙げられるだろうか。

 属性については今のところ炎、水、電気、木の四すくみに、無属性の合計5つ。4属性は弱点ができる代わりに、対応したチップの火力補正が乗る。ポケモンでいうタイプ一致と同じだと考えていい。で、無属性には強みも弱みも無い。

 特殊能力に関してはそのナビの特徴みたいなもので、例えばロックマンの嫁的存在のロールなんかは【チップ使用時にHP微量回復】【他ナビへの回復能力】【特殊攻撃時に魅了判定】【ウイルス召喚及び使役】と多彩。

 逆にデカオの持ちナビのガッツマンなんかはシンプルに基礎HPと攻撃力に全振りしており、オペレーターごとに性格が表れているようで面白い。

 

 腕に関わるのはナビの自衛機能、チップに頼らない内蔵武器が主だろうか。

 標準装備はバスターと呼ばれる豆鉄砲で、ゲームだと最弱のウイルス、メットールの攻撃力すら下回るとあってか、オリジナルナビだと搭載されていないことが多いけれど主人公のロックマンが使用している。

 原作ゲームだと最大強化してもメットールと並ぶ程度なのだけど、アニメだとウイルスを一撃で葬る辺り、アドコレのバスターMAXモードを使っていた疑惑がある。マジ厨性能。

 で、話を戻すとバスター以外にも様々な武器が存在する。

 ただオリジナルナビ毎に違うから分類するのも難しい。ナビの個性が一番わかりやすい形で表れているといってもいい。

 前述のロールにしたって、頭から伸びる長い黄色いアレで叩くロールウィップ、チップ破壊効果のあるロールアロー、ウイルスの浄化効果と魅了効果のあるハートスラッシュと、ゲーム的都合なのかもしれないがロックマンと違って複数個持っているのが多い。

 後は属性持ちのナビの場合、その属性が反映されることが多いのも特徴か。水属性なのに攻撃は電気属性を放ってくるカエルもいるが例外よ例外。

 

 最後に足はというと機動力が主。

 基本人型が多いナビだと多脚は見られず、動物や物モチーフの異形タイプが少々いるくらいか。異形タイプや巨体ナビは原作だと鈍足か動かないイメージが強く、機動力を削った分、他にリソースを回しているのかもしれない。

 逆に機動力が高いナビだと瞬間移動めいたものだったり、残像を生んだりもする。

 後は一部飛行能力持ちも足部分が担っているらしい。背中に羽が生えているナビは飾りかオイ。

 ちなみにアニメだとそういった描写がないから不明だが、原作だとロールは空を飛べる。

 

 ……改めてみるとマジでロールの性能おかしいな。

 ハードであるPETや情報処理に限度がある以上、限られたリソースをそれぞれに割り振るのが醍醐味であるナビ製作。潤沢な資金があればどうにかできるのかもしれないが、どう考えても並大抵のプログラマーには無理な所業だ。

 何ならオペレーターが熱斗の家とお隣ということで、ハッキングパパ製と邪推するレベル。

 

 さて参考にならなかった例は脇に置いて現実に立ち返ろう。

 頭パーツに何度目かわからないテスターによる起動チェック……問題なし。

 ぶっちゃけリソースの大半をここにつぎ込んだ以上、失敗は許されない。地味なバグ取りはもう嫌じゃ。

 戦闘面には直接関わらないように思える判断だが、身体との連携でその実態が見えてくる。

 

 で、身体は安定の無属性。

 装甲も特殊能力も搭載しない代わりに、チップの転送速度及び展開速度を最大化させた。原作的に言えばクイックゲージとカスタム+系をぶち込んだと言えば話が早いか。

 これでもうあのもっさり動作とはおさらばである。

 

 次に腕のリソースはがっつり削った。

 バスターすら取り除き、オペレーターがいなければ抵抗すらできない案山子の完成である。

 まま、ロックマンエグゼはチップ回すゲームやし、何とかなるやろ。

 その代わりと言ってはあれだが、微弱なバリアを展開できるようにした。回数制限も設けたのでバスターよりも他にエネルギーを回せてうま(テイスト)

 

 足は残ったリソースを速度にガン振り。

 ロマン溢れる多脚も余計な処理を食い、スピードが落ちることが判明して断腸の思いでお蔵入り。

 飛行能力も付けたかったけれど、リソースが足りず断念。

 『1』基準だろう現状だと地形効果とかも見られないし、大きな障害にはなるまい。

 

 シリーズが進み、新しいウイルスの出現やらネットワーク全体がアップデートされれば見直す必要も出てくるだろうけれど、今のところはこれでいいだろう。

 面白味ゼロだし、物足りない感も否めないがモブにはこれが限界よ。

 

 最後に外見はメダロットのシアンドッグにそれとなく寄せた。

 あまりに著作物そのままだと検閲で弾かれるからグレーゾーンすれすれだけど、デザインくらい好きなナビを操作したいんだ。

 腕からライフル弾出ないお飾りだけど、仕方ないんだ。かっこよさ、もとい誤認させる役目があるから必要なんだ。

 

「よし、後は初期化すりゃあ終了か」

 

 ぐいと背筋と腕を伸ばし、背もたれに寄りかかる。

 終了予定時間は深夜を回ることを確認した後、空腹を覚えて台所へ顔を出す。

 すると古風にも冷蔵庫に書置きのメモがあり、祖父は町内会の爺さんたちと飲みに誘われているらしかった。

 適当に冷蔵庫の中にあった野菜と肉を炒め、焼き肉のタレで味付けしたものをメインに。後は市販のコーンスープと、炊飯ジャーの白飯で十分な夕飯となるだろう。

 それらを平らげた後は新学期の準備をしてから入浴。

 宿題? んなもん春休み初日に全部終わらせたわ。

 

「ふぅ……」

 

 早い時間だが布団の上に寝転がり、目を閉じるのだけどなかなか寝付けない。

 これから全てが始まる不安もそうだが、同時にオリジナルナビを持てたことによる高揚感が湧き上がるのも否定できなかった。

 やべぇの何のと言ってきたロックマンエグゼの世界。

 しかし、それでも前世では世界観含めて好きだったのも確かだ。

 生活の大部分を占めていたナビ製作も終わり、少しくらい楽しんでも罰は当たるまい。

 そう自分に言い訳を繰り替えしている内に俺は意識を失い――

 

『おはようワタちゃん!』

 

 そして翌朝。

 俺のシアンドッグが別の女ナビに乗っ取られていることを目の当たりにし、大人気なく本気で泣いた。

 

 




N(寝ている間に)TR(取られ)だから合ってるでマス
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