WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

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30.10時だョ!(オフィシャル)全員集合!

 明くる朝、ベッドの上でぼんやりとした頭で昨夜のことを思い出す。

 思いがけずプリンセス・プライドと出くわし、歓喜した彼女に高級ホテルへ招かれたところを侍女であるグロディアさんに諫められて、何とか回避。

 

「今夜10時、電話してもよろしいかしら」

 

 しかし、圧の強い笑顔で俺と約束を取り付け、渋々といった様子で寝泊まりするであろうホテルの中へ入っていた。

 で、夜ご飯や風呂を済ませた後、10時ピッタリにオート電話がかかってきて。みっちり1時間程お話を堪能させられましたよ、えぇ。

 その内容といえばグロディアさんの行いへの謝罪から始まり、俺のアメロッパ来訪の理由を聞き出してからのクリームランドへのスカウト、長期休暇ならばクリームランドへ遊びに来ないかといったお誘い、性別は本当に男の子なのかどうかの確認などなど。

 やけに高いテンションで詰め寄られて、ナイトマンに中断させられていなかったら、どうなっていたことやら。

 

『おはよ、ワタちゃん。今日は10時からお城で会議だっけ?』

「あぁ。世界遺産で会議とか一体何考えてるんだろうな、国際オフィシャル」

『何も考えてないんじゃない?』

 

 割と失礼な発言だが、ヒーローコスチュームを通した一件を知る身としては否定できないところさん。

 レンタルした礼服をキャリーバッグに入れてあるのだが、一応着用していくべきなのか。ひとまず時間はまだあるので、マサさんや熱斗の服装を見てから考えることにしよう。

 

「おはようさんワタ坊! カルシウム摂ってるかぁ?」

「おはようございます。これから摂るんすよ、マサさん」

 

 朝食はビュッフェ方式で、俺は定番のバターロール、オムレツ、ウインナー、サラダをチョイス。カルシウムは牛乳に相談だ。

 

「そういや熱斗はまーだ寝てやがんのか?」

「恐らくは……というか、マサさんは昨晩酒カパカパ飲んで良く起きて来れましたね?」

「あたぼうよぅ! こちとら江戸っ子! 酒に弱くてどうするんでぃ! それに魚仕入れるのに朝弱くてどうすんよ!」

 

 少なくとも俺が来た時には既にワインボトルを一本空けていたように見えたのだが……。今日も元気にムニエルやらアヒージョをパクつくマサさんに苦笑しながら食事を楽しむ。

 その後、寝坊助の熱斗を起こした後、彼が普段着しか用意していないと判明。という訳で背恰好が近い俺の礼服を貸して、俺は初めからサイバースーツで乗り込むことに。

 

『ゴメンね、ワタルくん。ボクもドレスコードとか気にしてなかったよ』

「別に服なんて何でもいい気がするけどな~。ネクタイとか窮屈だし」

「漢にゃあビシっと決める時ゃあ、形から入るモンだぜぇぃ熱斗! おめぇもニホンの顔役に選ばれたんだ、気ぃ引き締めてけよぉ!」

 

 マサさんの個室で熱斗にネクタイの結び方を教えつつ、サイバースーツのセットアップを行う。といっても昨晩に大半は済ませているので、最低限の確認程度ではあるけれど。

 

「ワタル? その頭の……なんだそれ?」

「スピーカーみたいなもんだよ」

 

 頭に被ったそれはピクミンみたいな見た目の細長く伸びたスピーカーで、マスク型のマイクから拾った音を発するといったもの。

 要は変装であるオフィシャルホワイトの身長、口に当たる位置から聞こえるようにするデバイスだ。

 まぁ、変装前の見た目が完全に間抜けなので、熱斗のツッコミたくなる気持ちは良くわかる。

 全身をホログラムで覆っても違和感無いレベルに仕上げられる技術力があるのに、スピーカーはどうにもならなかったのか。

 

「マサさんまで……アメロッパの正装ってわっかんねーなー……」

「こいつぁ、仮の姿よぉ――よぉく、目ん玉かっぴらいて見やがれ熱斗ぉ!」

 

 どこぞで仕込まれたらしい変身ポーズをキレッキレに決めたマサさんの全身が光に包まれ、一瞬の内に赤い全身スーツ姿へと変身した。

 試作段階と違ってちゃんとしたデザイナーを雇ったのか、各部位に装着されたプロテクターやらフルフェイスマスクの見た目は悪くない。

 新しい戦隊シリーズだと言われても信じてしまいそうな完成度だ。

 

「お、おぉぉぉっ!!!! 変身した!? かっけーマサさん!」

「はっはっは。ありがとう熱斗くん。これがオフィシャルレッド、私の戦闘服さ」

 

 ビーフ司令みたいな爽やかなイケボで返すマサさんに、熱斗は目を輝かせる。そして、こちらにも期待の目を向けてくるが、変身ポーズなんて習っていないので静かにサイバースーツを起動させる。

 

どうだ? 声が出てるところ、おかしくねぇか?

「声! 声が渋いオッサンになってる!」

俺の方はボイスチェンジャー仕込んでるからな

 

 オフィシャルホワイトはニホンの成人男性の平均身長くらいに設定してあるので、声変わりを迎えていない俺では不自然になるという訳で機械で弄っているという訳だ。

 ちなみに色々と調整した結果、オフィシャルホワイトのCVはおてんこさまとなっている。もっとわかりやすく言えば段ボールで潜伏する某軍人と同じボイス。

 

「オレもオフィシャルになれば変身できるのかワタル!」

多分な

「うおー! 目指すぜオフィシャル!」

『そんな不純な理由で目指しちゃ駄目だよ熱斗くん!』

 

 張り切る熱斗をクールダウンさせてからホテルを出て、やつれたエレキ伯爵と何故か顔がツヤツヤしているエレキ夫人を連れて通行人の注目を集めながらアメロッパ城へ。

 外観はレンガ造りで、某シンデレラ城みたいな城と言われてパッと思い浮かぶデザインと言うべきか。

 何度か改修工事でも行われているのか、ヒビ割れなどの風化した跡はあまり見られない。

 

「本日は一般開放されていない。お帰り願おう」

 

 石畳を進み、閉ざされた巨大の門の前で、アメロッパ人らしき守衛のふたりが呼び止めてくる。

 

「私はこういったものだ。オフィシャルホワイト、熱斗君、君らも提示したまえ」

 

 マサさんに言われるまま、熱斗と共にPETを取り出して認証コードを提示する。それから守衛が何らかのデバイスで俺たちのPETに接続。

 数秒後、本人確認が取れたのか、険しい表情だった彼らが僅かに破顔する。

 

「オフィシャルレッド様、並びにオフィシャルホワイト様、光熱斗様、ジャック・エレキテル様、アン・エレキテル様ですね? どうぞお通りください」

 

 城内にネットワークが通っているということもあってか、ひとりでに重厚な扉が音を立てて開いた。

 門を潜り、PETに表示される案内に従って足を進める。

 普段は立ち入りが禁止されているだろうエリアから少しして、行き止まりだろう壁に先頭を歩くマサさんが手を伸ばせば――音もなく壁を貫通する。ホログラムによって隠された通路だ。

 そこを通過してようやっと国際オフィシャルが開催した『ゴスペル』対策会議の到着である。

 

 先程までの中世っぽい様式と打って変わって、会議場は床から壁からまるっと現代風の様式に変貌していた。

 まず目に飛び込んでくるのは巨大なスクリーン。映画館で使われるそれと比べれば小さいものの、壁の半分以上のスペースを占めており、この距離からでも表示される文字が読み取れる程だ。

 中央に鎮座する会議机は機械式で、コンピュータでも内臓されているのだろうか? いまいち用途は思いつかない。

 そして、それを囲むようにして歓談する人々は様々な人種が見受けられる。どうも原作より参加人数が多いみたいだ。

 パッと見だと西洋系が多いだろうか。ぶっちゃけ、東欧系と見分けが付く自信が無いし、アフリカ系も一括りになっちゃう。これじゃあアジア系をアジーナで一纏めされても文句言えんわ。

 

「お前も招待されたか光熱斗」

「ラウルさん!」

「傍にいる珍妙なふたりは何なのだ?」

「ヒーローの正装とはこういったものなのだよ、ラウル君」

「まさか……その声はマサか? マサよ、本気か? 本気なのか?」

 

 歓迎ムードから一転、困惑するラウルさんに、あくまでヒーロー然を崩さないマサさんに、かっけーよな、と呑気に同意を求める熱斗。

 フリーダムな彼らから視線を反らした先、俺たちと同じくニホンを代表する一団と、彼らと似た顔立ちの推定アジーナ人が会話しているところを発見。

 

「これはこれは。どうですかな、そちらの調子は?」

「えぇ、お蔭様で順調ですな。これもニホンの協力があってこそ」

 

 内容こそボカしているが、耳で拾った単語からして『チェンジ.bat』の共同研究によることらしい。

 国宝のカギデータを巡ってニホンに有利な交易やら何やらがニホン・アジーナ間に結ばれたのと別に、先述のデータについても許可が得られたのだ。

 詰まるところ、ハッキングパパが公式に研究する機会が与えられた、という事だ。

 本来であれば国宝ということもあって、大分揉める筈のところをクックマンが協力的な姿勢を見せたことでそれが実現。

 お題目としては、長らく適合者の現れない『チェンジ.bat』に新たなブレイクスルーを欲したとのこと。

 当然、アジーナ国内からのバッシングは多かったが、僅か2週間という期間でアジーナの勇者のひとりが『スタイルチェンジ』を果たしたことで世間の評価は一変。

 功労者である光祐一朗博士と果断したクックマンに称賛が送られ、今現在も適合者を増やすべく研究が進められているらしい。

 尚、初期段階にてロックマンが『スタイルチェンジ』を発動した研究データを元に解析が行われたのは一部関係者以外には伏せられている。

 まぁ、体裁的に余所者がいち早く適合したと報道されるより、アジーナのナビが第一号の方が都合が良いしな。

 ロックマンがスタイルチェンジをした事実が公表されるのは追々だろう。

 

『あっ、プライドちゃんだ』

 

 シアンの声に反応して目線を右に滑らせれば、鼻の下を伸ばした野郎共に囲まれた隙間からプリンセス・プライドのご尊顔が見える。

 彼女へ遠まわしなアプローチをしているようだが、一定の距離に近付いた途端、ホワイトプリムを頭に載せた女性が大きく腕を振ってそれを牽制。

 相も変わらず凶悪なツラをしているが、それでも喜ぶドM男を目にして、そっと目を伏せる。公の場で何してやがんだ、こいつら。

 

 他に知った顔があるかグルリと見渡すものの、特に見当たらなかった。強いて言えばシャーロの軍服らしきものが見えたくらいか。ライカはいないみたいだな。

 そういやエレキ伯爵、とその夫人はキングランド勢と接触しないのな。単純に知り合いがいないからか、それとも国の恥として自粛しているのか。

 

「お集まりの皆様、これより『ゴスペル』対策会議を開始致しますので指定の席へお移りください」

 

 司会進行役であろうアメロッパ人がそう呼びかけたことで、ぞろぞろと会議机に移動する。ニホンが指定されたのは主催であるアメロッパの隣。

 『ゴスペル』への被害を最小限に抑えた手腕を鑑みて、その発言力が高いと見た結果かもしれない。

 

「……隠岐、怪しいところでも見つかったか?」

待たせたな

「何を言っているんだ貴様?」

会議始まって早々に、ンなこと聞いてくる奴が言えた台詞か

 

 いつの間にか俺の隣にやってきて腕を組む炎山に同じく小声で返す。

 

「会議場についてからしばらく眺めていただろう?」

フルフェイスで隠してんのに良くわかったな

「貴様はふざけた言動に反して存外観察眼が鋭い。光に交じって呑気に歓談しない辺り、何かあったのかと判断した。速やかに情報共有しろ」 

判断基準ェ。それくらいの分別くらいつけらぁ

「……ならば良いが」

 

 炎山との会話が途切れたところで、長ったらしい挨拶も終わり、軽い自己紹介に移るのだが。

 

「オレはジョンソン。自由と平和を愛するオフィシャルネットバトラーさ。それよりも――ニホンはどうしたんだ? 舞台役者にキッズが2人? おいおい……お遊戯会でも開くつもりかい?」

「そちらもごっご遊びが達者で。そろそろ話のわかる()()を連れてきてくれないか?」

「やめな! みっともない! 今は自己紹介の時間だよ。あたしは南アメロッパのジェニファー。続きをどうぞ?」

 

 金髪のリーゼントに嫌味な笑みを浮かべるジョンソンと炎山がバチバチに火花を散らすも、褐色肌の背中を豪快に晒すジェニファーという女性が黙らせ、自己紹介を再開。つつがなくそれを終え、進行役は本題へ移った。

 

「それではまず我がアメロッパの情報部隊が掴んだ『ゴスペル』の重大な情報から共有していきます。『ゴスペル』は究極のナビの開発を目論んでいるとのことです」

「究極のナビ? 聞いたこと無いアルね?」

 

 代表して問いかけたチョイナ人に、進行役は頷きを返してから話を進める。

 

「その名はフォルテといいまして、かつて初期型インターネットの暴走を引き起こしたと嫌疑をかけられた世界初の自立型ネットナビだと言われています。その実力はかつてのニホンオフィシャルの精鋭を全て退けたとのこと」

「おいおい太古の話されても欠伸が出ちまうぜ? 時代遅れのナビに何ができるっていうんだ?」

 

 ジョンソンが自慢のリーゼントを弄りながら問うが、進行役は神妙な顔つきのまま続ける。

 

「『電脳の破壊神』、こちらの言葉に聞き覚えはありますでしょうか?」

「どこぞの都市伝説だろ? 自分が強ぇとほざく奴らが瞬く間にやられちまった、っつう情けない話がどうしたって?」

「流布された話は事実かはともかく、全て可能だろうとニホンの科学省から回答をいただいております。フォルテに備わる『ゲットアビリティプログラム』があれば、と」

「ふーん……」

 

 軽薄なジョンソンであったが、信じていないのか興味を失ったのか適当な返事。

 周囲の反応としても半信半疑といったところだろうか。アメロッパとニホンが齎した情報だから一聞の価値ありとされたのかもしれない。

 

「理論上、今も尚、成長し続けるフォルテをデリートすることは不可能――かに思われましたが、光祐一朗博士がその対抗策であるアルティメットブラスターの開発に成功致しました。しかし、あくまでこれは最終手段。安易に切られるべきではありません」

「――ほう、それは良いことを聞いた」

 

 特徴らしい特徴の無い男の声がして、ふとそちらに視線をやれば会議机から距離を置く、くすんだ金髪のアメロッパ人の男性。

 にちゃり、と嫌悪感を抱かせる笑みを浮かべ――一瞬の浮遊感の後、視界から男が消える。

 男女こもごもの悲鳴を耳にする余裕も無く、落下していく俺の身体。思わず息が詰まりそうになるも、強引に呼気を吐き出して両足を壁に向けて伸ばす。

 何とか靴裏が届き、ザリザリと嫌な音を立てながら減速を試みるが、姿勢が乱れて頭が下に。慌てて背筋を丸めて頭を防御し――

 




思いの外長くなったので区切りのいいところで分割
次回は明日投稿予定



後、一部の読者様からメッセージにてネットナビを募集してはどうか、と意見をいただき、それに考えなしに乗っかってみることにしました
ろくに活用していない活動報告にて募集します
気が向いたらどうぞ
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