WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

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31.風雲! アメロッパ城!

ぎっ!?

 

 背中から落下した衝撃を逃すべく、身体を転がす。視界がチカチカし、思うように呼吸ができない。しかし、本能が上手く働いたのか、呼吸を再開。

 埃っぽい空気にむせながら、回復に専念する。

 

「無事か、隠岐?」

自信ない……

 

 現状把握するまで余裕を取り戻したところで、よろよろと立ち上がる。

 薄暗い空間の中、まず自身の状態を確認。背中は未だに痛むが、動けない程じゃない。唾に鉄の味がしないから口の中も切ってない。五体満足、ヨシ!

 PETも画面割れ無し。つーか、サイバースーツが壊れていないのが凄ぇよ。

 

ここにいるのは伊集院の他に……誰もいない?

「最初は大穴だったが、途中で光やマサと壁で分断されたな」

てことは、他の国でも結構細かく分断されてる感じか

 

 危機的状況でも冷静に観察していたハイスペック小学生のヤバさよ。

 にしてもマズいことになった。

 原作ではプリンセス・プライドが『ゴスペル』の手先となり、オフィシャルを一網打尽にするべく、会議中にトラップだらけのアメロッパ城地下へと落とすのが一連の流れなのだが。

 今回の殿下には『ゴスペル』に加入する理由は無い。というか、俺が潰した筈だった。

 しかし、彼女とは別の人物が原作再現に動くとは。『ゴスペル』視点からすれば、オフィシャルは邪魔だしな。やられてもおかしくはない。

 想定が甘かった。参加人数が増えるのであればその分、内通者が紛れ込む可能性も増えるだろうに。

 でも、アメロッパも悪いのだ。現実の会場警備はガチガチに固めている癖して電脳世界はガバガバとかどうなっとるねん。

 会議場で勝手な真似は控えていたが、熱斗にでもプラグインさせておくべきだったか?

 

ふぅ……

 

 反省するのは後回しだ。今は現状の打破に努めよう。

 

まずは通信をオープンにする。いいな?

「犯人にも筒抜けになる。やめておけ」

じゃあ伊集院はしなくていい。安全確認と情報収集は大事だろ?

「……勝手にしろ」

 

 一応、許可を取ってから通信開始。基地局を経由せず、トランシーバーのように周波数を割り当てる形だ。ぶっちゃけ電話番号知らん人の方が多いしね。

 

こちらオフィシャルホワイト。応答願います

「こちらはオフィシャルレッド。無事かね、ホワイト君?」

えぇ。俺と一緒の場所に伊集院もいますが、こちらも無事です

「私の方は単独だな。先行して確かめたが、どうもトラップが仕掛けてられているらしい。気を付けたまえ」

「マジか! こちらはジョンソンだ! こんな目に遭わせやがった裏切者がいるらしいな! ふざけやがって!」

「ジェニファーよ。提案があるのだけど、このまま通信をオープンにしたままにしない? リアルタイムで情報交換したいの」

「光熱斗です! オレも賛成! なんつーか、みんなが頑張ってるとオレも頑張ろうって気分になるし!」

「ラウルだ。オレも光熱斗に賛同する。こういう時こそ協力せねばな」

 

 返答が返ってきたのは原作とほぼ同じ。プライド殿下から連絡が無いのが気になるが、まずは脱出を優先する。

 闇雲に探し回るよりもアメロッパ城を統括するコンピューターまでたどり着いて、全体のトラップを解除した方が結果的に安全を確保できる。

 

ぬおっ

 

 行動開始してから数歩目にて早速、弓矢が飛んでくるトラップに遭遇。割と顔面スレスレだった為、もう少し前傾姿勢で歩いていたら被弾していたかもしれないことに肝が冷える。

 原作よりトラップの配置わかり辛ぇよ! つーか原作知識がまるで役に立たねぇ!

 早鐘を打つ心臓を落ち着けている内に炎山がトラップを解除してくれ、恐る恐る先へ進む。

 

分かれ道か

「オレは左へ行く。貴様は右から行け」

本気かオタコン?

「誰がオタコンだ。……効率重視だ。貴様ならばひとりでも問題ないだろう?」

 

 それだけ言って無情にも炎山は背を向けてさっさと行ってしまう。

 信頼してくれているのだろうけれど、肉体スペックは普通の小学生に殺意マシマシのトラップはキツいって!

 

『あのワンパターンソードマンめ!』

……ブルースと何話してたん?

『未だにメールでのやりとりが「そうか」しか返ってこないから文句言ったの! そしたら何て返ってきたと思う?』

そうか

『そう! それ! 会話プログラムバグってんじゃない?』

可哀想だなぁ

 

 どちらが、とは言わない。

 持ち主に似て仕事人気質だからか、あのグラサンロン毛、無駄な会話を嫌うんだよな。煽り耐性低いから結局自分のペース乱されてシアンの話に付き合わされているみたいだし。

 ネットナビに対する粗品って何がいいんだろう? プチエネルギーかシノビダッシュでええか?

 

 シアンとの会話で気を紛らせながら階段を上った先には小部屋があった。PETに備わったライト機能で照らしながら辺りを一瞥しても特に罠らしき装置は見当たらず、適当に転がっていた瓦礫を投げてみても変化は無し。

 扉は前方と左方にひとつずつ。原作と同じく地下に落ちた人間が合流していく仕組みになるのか?

 

「あら……?」

「むっ」

 

 いざ勇気を振り絞って部屋に踏み込んだタイミングで、向かい側から女性ふたり組が姿を現す。

 純白の露出の少ないロングドレスに、同色の長手袋、淡い金の前髪にちょこんと乗ったティアラ――プリンセス・プライドその人である。

 その後方を警戒していたのはクラシカルなメイド服に身を包んだおっかない女性の……確かグロディアといっただろうか? 

 敵意剥き出しの表情を隠そうともしない何ともわかりやすい人だ。

 てっきり原作通り熱斗と合流しているものだと思っていたが、今回は犯人として潜入していない点で変化が起きたのだろうか。

 

「警告。両手を挙げ、その場から動くな」

「よしなさいグロディア。貴方はニホンの……」

えぇ。訳あって顔と名を伏せていることをご承知ください

「笑止。緊急時、それで納得するバカがどこにいる?」

「グロディア! 人には人の事情があるのです。詮索してどうするのです?」

「不服! しかしプライド様!」

 

 当然、護衛を務めるグロディアさんは怪しむよなぁ。むしろ顔を隠している相手にも真摯に対応する殿下が呑気過ぎるとも言える。

 しかし、こちらとしても正体を明かす気になれない。身バレでもしたら最後、警戒心ゼロのロイヤル巨乳美少女が爆誕してしまう。

 一定の距離を取った現状でも心拍数が上昇しているのに、ガチ恋距離にでも来られたらちゃんとオペレートできる自信がねぇ。『渡』の性癖壊れちゃーう!

 

「不覚。扉が!」

『ワタちゃん! これガスだよ!』

 

 大人しく両手を挙げたまま彼女たちの会話を見守っていた矢先、背後にあった扉がロックされる。そして、炭酸が抜けたような音と共に、空気の流れが変わる。

 

マジか……!

 

 身を低くした体勢で小部屋を駆けてコンソールの元へ。幸い他にトラップが発動しなかったが、部屋の体積からして充満するのにそう時間はあるまい。

 

「制止。勝手な真似をするな」

あぁもう……! これでいいか?」

 

 後から追いついたグロディアさんに肩を掴まれ、コンソールから引き剝がされそうになるが、意を決してサイバースーツを解除する。ついでに通信も切っておいた。

 

「ワタ……! どうしてここに?」

「守秘義務! それより今はこっちを優先!」

 

 パーソナルスペースへ顔面偏差値の高い異性への侵入を許し、気が動転する前に唇を強く噛む。即座に小学2年の元担任、剛力敦(48)のムダ毛たっぷりの水着姿を思い出す。

 よし、鎮静! あの時はもっこりしたブーメランパンツから陰毛がハミ出しており、幼気な少年少女になんてものを見せやがる、と文句を垂れたくなったがこんなところで役に立つとは。

 

『うへ~ダンジョン化してるよ~』

 

 シアンがうんざりとした声を上げたことからわかるように、PETの画面に広がるのは迷路状になった電脳世界。『おしろの電脳』を再現したようなエリアだった。

 『1』にてデコギラスがダンジョン化についてさらっと触れていたが、今世だと侵入者を阻む為のセキュリティの一種とされている。

 とはいえ原作ほどダンジョン構造をしている電脳世界は少ないのだが、その理由としては単純にメインシステムへアクセスしづらいからだ。

 中には管理者用のショートカットを用意していることもあるらしいが、セキュリティホールになりやすいとのことで採用される例は少ないのだとか。

 今回も『吸血鬼』、『ゾンビ』、『盗賊』のプログラムから逃げ回りつつ、電脳カギを入手して先に進むこととなる訳だが。

 

『久方ぶりだな、シアン殿』

『おぉ麗しきシアン姫! その輝きは幾千の星々を集めても敵わぬ美しさ!』

 

 無骨な挨拶をしたのは、ずんぐりとした体型をしたナイトマン。紫色のプレートアーマーに身を包んだデザインで、プライド殿下のネットナビだ。

 シアンと比較して縦幅は2倍弱、横幅は3倍強あり、その鈍重なイメージ通り、移動速度は最低クラス。しかし、その耐久力は比類する者も数少ない防御型の優秀なネットナビだ。

 ただ今回のスピード解決を求められる場合には不向きだと言える。

 

 そんなナイトマンと同じく全身鎧を纏いながらも色々正反対なのがランスマンと呼ばれる、恐らくグロディアさんのネットナビだろう。

 その銀色の輝きが割と鬱陶しい、とシアンが愚痴をこぼすだけあって、プラグインして早々にシアンの手を掴んでナンパを始める姿は相変わらずである。

 通常のナビよりも手足が長く、自身よりも長大な円錐状の槍に、全身をすっぽり隠せるくらい巨大なタワーシールドを得物に戦うのだが……それらをほっぽり出している事にグロディアさんもお冠。

 

「注意! そんなことをしている場合かランスマン!」

『ふっ……こんな時だからこそ平常に振舞うものさ、レディ?』

「閉口! ウイルスを確認。戦闘に移行せよランスマン」

『アイマム。ここで私の雄姿を見守ってくれたまえよ、姫!』

『さっさと行けば?』

『冬の湖面のように冷たい表情も素敵だ!』

『ゆくぞランスマン殿!』

 

 ジト目のシアンにも意に介さず、ランスマンは槍と盾を拾い上げてウイルスに突撃する。

 その戦闘スタイルは実にシンプルで、高い突破力を駆使して突撃するか、長いリーチを生かしての迎撃のほぼ2択。

 ぶっちゃけ小回りが利かないし、遠距離攻撃にも無力に近いが、その強みもハッキリしている為、評価はその運用次第だろう。

 

『余計なのに時間取られたけど……解析完了! ここは使()()()ね』

「うっし。【デスマッチ2】、【エアシューズ】」

 

 シアンからのGOサインが出たのを確認し、ナイトマンらと距離を取らせた後、周囲のパネルをすべて穴状態に変えるチップを転送。

 

「ワタ? 一体何を……?」

「10,9,8,7,6……」

 

 体内時計を意識しながら手元のチップをスロット付近に持ってくる。ここからは時間との勝負だ。

 

「【インビジブル】」

 

 寸分違わずスロットインし、半ば祈りながらPETの画面を見つめる。透明化したシアンが【エアシューズ】の効果で宙へ飛ぶのに遅れて電脳世界が自動修復を始める。

 どうだ――間に合ったか?

 

『成功! やったねワタちゃん!』

「あぁ! そのままメインシステムまで向かうぞ」

『りょーかい!』

「ワタ? これは一体?」

 

 横からこちらの画面を覗き込むプライド殿下にどぎまぎし、それをインターセプトしてくるグロディアさんにも心臓がびっくりさせられる。

 二人とも近い近い! これ以上コード伸ばせないから逃げらんねぇんだよマジで!

 

「まぁ、壁抜けバグみたいなものですよ」

 

 通常、ダンジョン化するしないに限らず、電脳世界では飛行能力を有したネットナビでも通路から出られない制限が設けられている。『4』のシェードマン然り、浮遊している敵ナビが度々無視していることはさておいて。

 今回、俺とシアンがやったのは通路から()()()()()()()に飛び出すバグ技だ。

 その仕組みとしては、【デスマッチ2】などのパネル系のチップは時間経過によって効果が消失――自動修復されるのだが、その際どうも色々と判定が甘くなるらしいと、ウラの検証班により判明。

 その後、置物系や敵への当たり判定が消失する【インビジブル】を使用することで突破に成功。

 このコンボでネット銀行に強盗しようぜ的なスレも立てられるのだが、結果は同一エリアにしか壁抜けせず、金や貴重なデータが保管されたエリアは独立していた為、失敗に終わったのが一連の流れ。

 

 閑話休題。

 で、今回は移動が制限した通路をバグ技で脱出し、何も設置されていない空間にいったという訳だ。

 容量の問題で削減できるところは削減されているからな、電脳世界。エリア全体に飛行制限を設けるより、通路にだけ効果を発揮した方がコスパがいいしな。

 大胆ショートカットを決め、メインシステムに到着。通路に戻る際にも同じ手法でオーケーだ。

 猶予は数フレームしか与えられていないが、前世+今世で磨き上げた格ゲー技術と10代の反射神経が合わさればこんなものよ。一度でも成功しちまえば大抵体感で覚えられるしな。

 

『ロック解除したよ!』

「オーケー! 殿下、グロディアさん! プラグアウトを! 脱出します!」

 

 急いでプラグを引っこ抜いて扉にダッシュ。女性陣を先に入れてから俺も身体を滑り込ませて扉を閉める。

 ひとまず体調に変化は見られないが、地下を脱出したら真っ先に病院へ行こう。保険が無いから治療費やら検査費用がバカ高いかもしれないが、勿論国際オフィシャルに請求よ。

 

「ワタ!」

「制止! 抱擁はおやめくださいプライド様!」

 

 脱力して座り込む俺にハグしようとする殿下とそれを阻止するグロディアさん。マジ助かった。緊張感抜けたところに抱きしめられていたら惚れてたかもしれん。

 おう、『渡』。世の中には観賞用という言葉が存在するんだ。NOタッチだ。不敬罪がどこまで適用されるかわかったもんじゃない。首と身体がバイバイしたくなかったら大人しくするんだよ。

 

「改めて……感謝しますワタ。それで何故オフィシャルの会議に?」

「つい先日オフィシャルになったものでして」

「酷いわ! 何故教えてくださらなかったの?」

「そいつも守秘義務というヤツです。ご了承ください殿下」

 

 よよよ、と冗談交じりに泣く振りをする殿下に苦笑いを返す。そら職務上の問題もあるが、オフィシャルに所属したことがバレれば芋づる式に身バレするから言える訳が無い。

 今はもう気にする必要なくなったけれども、俺やシアンがオフィシャルだとあまり広まってほしくないものだ。ウラで情報収集する上でオフィシャル所属がバレない方が動きやすいしな。

 

「終了。話はそれまで。さっ、参りましょうプライド様」

「一本道なのだから話して歩くくらい良いでしょう?」

「却下。道中も油断されぬよう注意を払ってください」

 

 手を引かれて離れていくプライド殿下とグロディアさんから数歩遅れて歩き出す。良かった、本来の意味でのレディーファーストみたく、地雷発見役か盾役にされなくて。

 殿下の立場上、命令されてもおかしくないからな。何の訓練も受けていない俺が役に立つとは思えないが、オフィシャルになったからには要人警護も職務に入るらしいし。改めてネットバトラー要素どこいった。

 情けない話だが、熱斗と違って現実世界の俺は無力だ。『渡』の命を守るだけでも手に余る。だから、

 

「火に囲まれましたわね」

「そうですね」

 

 次に辿り着いた小部屋にて。前方を囲むように火の手が上がっても、どうすることもできなかった。

 仮にワイヤレスプラグを所持していたところで一発ツモもとい遠距離からスリケン・ジツで端子に差し込むのは不可能といっていい。

 

「ふふふふふ」

 

 途方に暮れる俺に対し、挑発的な笑みを向けてくるグロディアさん。あっ、敵意以外にも向けられたんすね。親戚みたいなもん? せやね。

 

「冷笑。先程は不覚を取ったが今回は手も足も出ないみたいだな、ワタ」

「そうですね」

「刮目。不甲斐ない事実を思い知るがいい!」

 

 止める暇も無く、両腕をクロスして炎の中に飛び込むグロディアさん。新手の投身自殺かな?

 

「覚悟。プライド姫様を思えばこの程度の熱さなど造作もない」

「おー」

 

 心配する気持ちなど無用と言わんばかりの頑丈さに感嘆する。流石はエグゼ世界の住人、炎の向こう側でピンピンしてらっしゃる。

 まぁ、原作でも天井から潰されても生き残るジョンソンだったり、全身丸焦げでも後遺症が残らなかったラウルさんとかいるからな。俺の常識が通用しない奴らばかりだぜ。

 

「因縁! ワタは決して許されぬ大罪を犯した。それは――」

「それは?」

「――私のお姉ちゃんポジションを脅かしたからだ!」

「なんて?」

「傾聴! 私のお姉ちゃんポジションを脅かしたからだ!」

 

 キメ顔で一方的に因縁つけられたけれど、その原因がまるで見当つかない。お姉ちゃんポジションどこから出てきた?

 

「ミッション! ランスマン! 攻略を開始する!」

『囚われのシアン姫! 私が助けに参ります!』

「不敬。プライド様が優先だろう?」

『言葉にしなくとも当然さ、レディ?』

 

 盛り上がる従者コンビを他所にそっと身を寄せてくる殿下。やめて、さらっと流れる横髪を抑える仕草だけでも好きになっちゃう。

 

「ランスマンについては以前お話した通り、王族の親衛隊の第3席を務めているの」

「オフィシャルも兼任しているんですね」

 

 原作では登場しなかった親衛隊だが、よくよく考えなくともありえる話だ。現実世界だけに限らず、電脳世界からも脅威が迫るエグゼ世界においては重要な役割と言える。

 オフィシャルのライセンスを所持しているのは初耳ではあるが、色々権限を持っている方が便利だし、不思議なことじゃない。むしろ、護衛のひとりも付けず、会議に単独で参加していた原作のプリンセス・プライドが頭おかしい。

 で、話をランスマンに戻すが、彼と初めて会ったのはシアンが戦術指南役に就任した時のこと。

 威勢のいいランスマンが文字通り一番槍を務めた親善試合という名の戦力把握でボコした際、何故かシアンに惚れたらしい。

 その後は職務そっちのけで口説く姿が散見され、一時接触禁止命令が出された程だ。尚、シアン本人としては性格が好みじゃないから、ずっと禁止されてほしかったとの事。

 

「元はグロディアの父君のネットナビでして。ひとり娘可愛さで自分のナビを強引に譲ったそうですの。それで口喧嘩は絶えないのですけど、あれで命令には忠実なナビなの」

『ランスマンには興味なーい』

 

 くすくすと口に手を当てて上品に笑うプライド殿下にバッサリと切り捨てるシアン。仲良くなってから更に容赦ねぇな、こいつ。

 

「まぁ! シアン、殿方にあれだけ好意を寄せられているというのに」

『優しくして好意があるって勘違いさせる方が酷じゃない?』

「そう、なのかしら?」

『それよりグロディアちゃんについて聞きたーい。ワタちゃんもそう思わない?』

「まぁ、お姉ちゃんポジションの謎については気になるところではあります」

「そう。なら、わたくしとグロディアが乳兄弟だというのはお話したかしら?」

『乳兄弟?』

「政務に忙しい母様の代わりにわたくしの世話をしてくれたのがグロディアの母君だったの。その縁でグロディアとは姉妹も同然の仲でして。ですけれど」

『ですけれど?』

「姉と慕うには、その、些か直情的でガサツな一面がありますの。だから、その機会に恵まれなくて」

『お姉ちゃん欲求を拗らせたんだね、うん』

「勿論、護衛としてはとっても頼りになりますのよ? 母君に世話役が向いてないと言われて泣いちゃう可愛らしい一面もありまして」

 

 ボカした程度とはいえ、恥ずかしいところを暴露して良いのだろうか? 頑張ってるグロディアさんに記憶処理として、しこたま頭殴られない? 大丈夫?

 

「それで、その……もうふた月も前になるのかしら。ワタとシアンに会ってから」

 

 いよいよ本題に入るのか、少しだけ言葉に詰まるプライド殿下。俺、何かやっちゃいました? の部分が明らかになる。

 

「政務で忙しかったのもあるのだけど、グロディアと話す機会もなくって。それで気を利かせた彼女が部屋に尋ねた際にわたくし、ワタがお姉ちゃんだったらなぁ、と呟いてたらしいの」

『ワタちゃんがオネエちゃん? 似合わなっ』

 

 長々と聞いたオチとしてはしょうもなさ過ぎて笑えもしねぇよ。

 グロディアお姉ちゃん、やっすい嫉妬だな、マジで。年下の野郎で、小学生のぽっと出に負けるって相当やぞ。

 

「そういえば……」

 

 ふと通信を切ったままだと思い出して再開する。知らない内にプライド殿下が距離を詰めてきたのを誤魔化す為でもある。皆の助けになれる訳じゃないけれど、煩悩を消す為に俺を助けておくれ。

 

「――アイヤー。電撃受けて平気アルか?」

「ハニーに比べれば可愛いもんサ」

「私の方がカワイイでしょう?」

「アウッ!? そういう意味じゃないってばヨ!」

「奥様から電撃が? 雑技団もビックリネ!」

 

 まず初めに耳に飛び込んできたのはチョイナ勢とエレキ夫妻の会話。アニメみたく電撃に縁があるなぁ、伯爵。つーか、毒ガスもだけど電撃トラップとか原作になかったじゃねぇか。

 

「お前もいい加減アフロを被るんだ炎山! YEAH!」

「断る」

「頭を保護する必要があるからさ! 現にオレはアフロに助けられた!」

「ラウル……貴様は頭でも打ったのか?」

「アフロのお蔭で助かったと言っている!」

「おいやめろ! オレはアフロなど――」

 

 続いて炎山はラウルさんと同行しているみたいだ。原作の黒焦げラウルさんと違ってほのぼのとしていいじゃないか。炎山? アニメ同様ブラザーになればいいんじゃない?

 

「オフィシャル・ビィィィィム!!!!」

「出た! お兄さんのオフィシャル・ビーム! マジかっけぇええ!!」

「オレなんてまだまだだよ。主任のオフィシャル・ビームは七色に輝き、科学省で研究段階の【ドリームオーラ】すら破ってみせたからね」

「よせよせ。オジサンはもう一線は退いている。若い世代が頑張るべきだろう? とはいえ小学生に任せる程、耄碌(もうろく)している訳じゃないがね」

「はい主任!」

「熱斗くんは我々の背中に学びたまえ。それが君の今の仕事だ」

「わかりました! でもオレとロックマンの力が必要になったらいつでも言ってください!」

「これは頼もしい。さぁ、行こうか」

 

 これは熱斗と警視監から選抜されたオフィシャルの会話か。音声だけではなく、現場が見てみたい。特にオフィシャル・ビーム。オフィシャル本部にいても拝む機会が無いんだぞ、俺に代われ熱斗ォ!

 

「Fooo!!!! 流石はオフィシャルレッドだぜっ!」

「ジョンソン……アンタ、会議ではバカにしてなかったっけ?」

「そりゃあさっきまでのオレの目が曇っていただけさジェニファー! 時間を巻き戻せるのなら昔の自分をぶん殴ってやりたいね!」

「そう……でも凄いわ。彼……オフィシャルレッドだったかしら?」

「あぁ! 無人の鎧お化けたちに果敢に挑む姿、最高にクールだぜ! くそっ、あばら骨さえ折れてなきゃあオレだって……!」

「そのアバラを折った誰かさんはさっきまで何してたんだっけ?」

「……オフィシャルレッドの足を引っ張ってこうなりました」

「よろしい。私たち怪我人は大人しく見守っていましょ? 私まで彼の足を引っ張るのはゴメンよ」

「情けねぇ……! でも応援ならいくらでもしてやらぁ! 頑張れオレのヒーロー!!」

 

 掌クルックルのジョンソンに、冷静なジェニファー。そしてマサさんはどうも遠隔操作されている鎧と剣戟をしているらしい。お魚ソードらしき単語やら金属の擦れる音が微かに聞こえてくる。

 ひとりだけやっている事が違うが、やっぱ凄ぇよマサさん。ガチで魚屋やる前は何やってきたのか経歴が気になって仕方ない。

 

「勝利。終わりましたプライド様」

「ありがとうグロディア。わたくしたちも頑張りましょう、ワタ?」

了解

 

 火の手はすっかり消えたことを確認し、これから合流する事も考慮してサイバースーツも再起動。

 殿下が何やら不満そうな顔でこちらを見るが、何が不満だというのか。場違い感が半端ない恰好はともかく、地声よりもいいだろ、この渋いボイスはよ。

 

 

 

 

 

 

 道中は合流する度にスムーズに事が進む。

 ギスギスした空気はあったが脱出する意思は皆同じということで、人海戦術で探索すると電脳カギもすぐ見つかるし、物理的なトラップは腕利きのヒーローと、腕っぷしの強いメイドと、雑に耐久力の高い電飾ピカピカおじさんがいるお蔭で小学生は出る幕も無かった。

 そして、全員揃って最上階のメインルームに辿り着いた。

 

「何故だ!? 何故、ここまで来れた!?」

「それは勿論! 神秘の国からヒーローがやってきたからさ!」

「ジョンソンったら偉そうに言っちゃって」

「チョイナ4000年の歴史を舐めるんじゃないアル」

「アジーナの看板背負ってきているんだ。ここで負ける訳にはいかない」

「シャーロ軍の厳しい訓練と比べれば苦にもならん」

 

 今回の主犯であるモブ顔が驚愕しているところに、エグゼ本編では脇役と、登場もしなかった彼らがタコ殴りしてゲームセット。

 ネットバトル? 今の今まで命の危機に晒されて殺気立った彼らが悠長な真似をしている余裕が無いっつうね。拳の方が早かった。

 

 こうしてアメロッパ城地下で繰り広げられたサバイバルは幕を閉じた。

 各国から怪我人が続出したが、命に別状がないとの事。勿論、俺やプライド殿下、グロディアさんも検査結果は異常なし。

 万々歳と言える結果ではないし、俺が介入を怠った結果でもあるけれど思いの外、大人たちが頼りになるのが確認できただけ収穫だと言えなくもない。この調子で頑張ってくれよ、マジで。

 

 身バレに関しては……明日の俺がどうにかするやろ! 今日はもう終わり! 閉廷! 以上! みんな解散!




〇ランスマン
グロディアと同じく本作のオリジナルナビ
読者様応募ナビではないです
俺如きがそんな迅速に対応できる訳ないやろ!

優美な振る舞いと気障な言動に反して戦闘スタイルは脳筋
風呂場で30分くらいかけて適当に思いついたので、今後出番があるかは不明な模様


〇壁抜けバグ
(原作には)ないです
意図的に設置された見えない通路はありますが、割とこの辺はしっかりしている感じ
まぁ、俺が知らないだけで、もしかしてあるかもしれませんけど、ここまで有用なバグは流石に無いやろ!


〇チョイナ、シャーロ、アジーナ
君らはランスマンより影が薄いので『4』の薄っぺらい情報からどう膨らませていいのかわからんかった
考えなしに出すべきじゃなかったと反省
でも国際云々謳っておいてニホンとアメロッパ、クリームランド以外、参加国の無い原作はどうなんよ?
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