考えなしに募集したせいで、すぐには採用には至りませんが、すべてに目を通させていただいております
恐らく大部分がN1グランプリに、後は前話みたく渡くんが捻じ曲げたことで配役変更された敵対組織とか、全く関係ない第三者としても使わせていだたきます
事件のゴタゴタがあったものの、人的被害はともかく会議場の設備の被害はゼロ。後日改めて開催――されることは無かった。
理由としては当然、天下の国際オフィシャルに内通者がいたからだ。それも極秘裏に進められた『ゴスペル』対策会議から現れたものだから、各国の上層部はさぞ疑心暗鬼に陥ったのだろう。
この一件で『ゴスペル』団員やそのシンパがどこに潜んでいるか、わかったもんじゃないと露見したのだ。
特に主催国であるアメロッパから出てきた、ということもあって、アメロッパの求心力もガタ落ち。まとめ役を失った各国は連携を取るのが難しくなった。
これが『ゴスペル』の狙いであるとすれば、見事にしてやられたといっていい。
我がニホンとしてはアジーナとは依然良好、クリームランドからは協力体勢を打診されているとの事。
木っ端オフィシャルである俺が何故早期にこんなことを知っているか、って? プライド殿下から情報を横流しされているからだよ!
守秘義務云々を説いても「貴方は我が国の重鎮」とか返されるし、胃痛でどうにかなりそう。
過去に一度着拒したら、プライド殿下がショックのあまり失神したとナイトマンから伝えられ、くれぐれも穏便に済ませてくれないかと懇願される始末。
ストレス解消されるまで愚痴聞くだけ聞いてから自然とフェードアウトするつもりだったのに、どうしてこうなった。
「――提案。空港まで乗っていけ、との仰せだ」
「謹んでお断り申し上げます」
会議は中断されお役御免となった俺たちは滞在していたホテルをチェックアウト、空港までの足としてタクシーを捕まえようとしていたところにお高い車が複数停車。
で、そこからグロディアさんが降りてきて現在に至る。
「そちらの別嬪さんはワタ坊の知り合いかぁ?」
「一応は、まぁ、そうです」
「身元がはっきりしてんだ。ご厚意に甘えねぇっつうのも失礼になんぜ、ワタ坊」
「そうそう! すんげー車に乗せてくれんだろ? いいじゃんいいじゃん!」
「できれば妻とは別ニ……」
「アナタ?」
「わかッタ! せめて仕事だけハ! やめてプリーズ!」
「プリーズ? それだけ意欲的で嬉しいわ、アナタ」
他が乗り気ということもあって、多数決の暴力に負けた俺の意思表示を待つこともなく荷物を奪われる。
不服な表情を隠さないグロディアさんに車内へ押し込まれ、ニホン人は俺だけという孤立無援状態で車は出発。
「改めてアメロッパ城での事、感謝しますわワタ」
「大したことはしていませんから。それよりこんなことして大丈夫なのですか?」
「友好の形としてニホンの皆様を送迎しているだけですの」
「少々強引過ぎません?」
サングラス越しでもわかるくらい、強かに笑うスーツ姿のプライド殿下へ下手糞な愛想笑いを返す。
護衛を複数名を乗せても尚、広々とした乗車スペースに反して肩身が狭い。護衛の役割上、仕方ないとはいえジロジロと好奇の視線に晒され、グロディアさんに至っては視線で人を殺さんばかりの勢いだ。
アメロッパ城では格付け完了とばかりに渾身のドヤ顔を披露していたのもアレだが、今思えばあっちの方が大分マシだったわ。
「あー……会食のご予定などは?」
「この時勢ですもの。『ゴスペル』の活動が収束するまではリモートになりそうですわね。ですので! ワタと同行するのに何ら支障はありませんの!」
「それは……喜ばしい事なので?」
「ワタはわたくしと一緒はお嫌?」
「うぐっ……」
幼気な微笑みから一転、悲し気な声を発するプライド殿下。思わずといった様子で、ぎゅっと握られる拳も俺の罪悪感を加速させる。
『渡』もクリーンヒットしたことへのダブルパンチで精神をゴリゴリ削られるが、放心は許されない。グロディアさんの視線が気付けとなって脳を再稼働させる。
「そういう訳では決して……小市民としては、この状況に慣れないものがありましてね」
「これから慣れる機会はありますわ。たっぷりと、ね?」
「ははははは。ニホンオフィシャルにそこまで金がありますかねぇ?」
「ふふふ。ニホンに拘る必要はありませんわ」
にこやかに笑い合う車内の中、内心早く空港へ着かないか祈り続ける。冷や汗が止まらん。
「プライド様、まもなく空港へ到着致します」
その祈りが通じたのか、グロディアさんから報告が。どっと精神的な疲れが表出し、思わず柔らかい座席に身を沈める。
「あら、もう? 続きはプライベートジェットでしましょう?」
「……殿下はニホンにご予定は無いでしょう?」
「えぇ。クリームランドに帰るのですわ、ワタ」
「機内で電話は無理でしょう?」
「直接お話するのに電話なんてしませんわ」
「そうですか。では、またの機会に」
会話の最中にさりげない体重移動で腰を浮かし、扉のロックへ手を伸ばす。しかし、開かない。窓越しに映る景色は空港をズレて滑走路の方へ向かっているではないか。
「児童誘拐は洒落にならないですよ殿下!」
「誘拐なんて人聞きの悪い。ワタもクリームランドに行ってみたいと仰っていたでしょう?」
「言いましたけれども! それで合意取れたというのは無理筋でしょうに!」
『お戯れが過ぎますぞ、姫様』
『まー、ニブチンだからねワタちゃん』
「へ……?」
やれやれといった様子で口を挟むナビたちに呆けている間に、ぐるりと空港を一周した車はターミナル前で停車。
どうも一連の流れは殿下なりの冗談であったらしいが、俺の心臓に悪過ぎる。
『乙女としては少しでも長く一緒にいたいものなんだよ、ワタちゃん』
「もう! シアン!」
『シアン殿、無粋ではありませんかな?』
『いーの! 言わなきゃワタちゃん、本気で拉致る気だったんじゃ、なんて誤解しちゃうから』
可愛らしく口を尖らせてシアンに小言をぶつけるプライド殿下から視線を逸らし、ジト目で俺を見つめる白銀髪の電子生命体からのダメ出しを不承不承受け入れるが、仮に殿下の提案に乗っていたらニホンに帰れなかったんじゃないのか。
そういった不安は未だ拭い去れずにいる。小学生のガキからかうにしては言質の取り方が怖かったわマジで。
「歓迎のセレモニーの準備はまだ整っていませんから。また今度、ですわね」
「追い打ちは勘弁願いたいです、殿下」
「けれど貴方を歓迎する気持ちは本当よ、ワタ?」
「……俺としては外国の子供を歓待する費用を自国民に還元した方が大変嬉しいんですけれど?」
熱烈とも言えなくもないプライド殿下に空笑いを返し、自動で開かれる扉から降車する。
「また……会えるかしら?」
背中越しにかけられた不安の籠った本音に、俺は数瞬だけ動きを止める。そして、
「今度はお手柔らかにお願いします」
そのまま振り返ることもなく、普段メールで行われる返事をして熱斗たちと合流するのだった。
【電脳世界検証スレッドpart98】inアメロッパ
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36:NO NAME ID:C2+qa2tsH
ついこないだからバックアップデータが機能しないんだが?
どう思う兄弟?
37:NO NAME ID:QLHDQ6Zb4
>>36
日々進化し続ける電脳世界やネットナビの性能にキミのPETの性能が追い付いていないんじゃないかい?
かくいうボクもそうさ!
一緒に紙幣握って新型を買いに行こうじゃないか!
38:NO NAME ID:bLa9DvL04
>>36
ま、ネットナビは色々とおデブちゃんだからな
この機会に
42:NO NAME ID:g6jjREFzU
野郎共! ビッグニュースだ!
【動画】
【動画元のURL】
45:NO NAME ID:24x2tH3rS
>>42
フェイク……じゃねぇのか、コレ?
49:NO NAME ID:RH64fbVJY
>>42
なんだこのチップ?
ミラーボールに、植物の種?
で、最後に処理落ちからの謎のフラッシュときた
52:NO NAME ID:O3F0yKarS
>>42
こいつぁ、アメロッパで先行公開された【プリズム】に、キルプラントの落とす【フォレストボム】じゃねーか
それだけでサーバーが再起不能ってどんなアンティークだぁ?
56:NO NAME ID:rVluYNXEa
>>42
レンタルサーバーの運営主に訴えられてて笑うわ
んでもってチップ製造元に責任転嫁して引き起こしたアホも訴訟する流れも酷い
裁判所は大忙しだな
57:NO NAME ID:tdIQ8+k6q
>>42
その記事、軽く読んできたけど、外的要因は無いみたいだな
使用ナビもHPに特化しただけの実験用だったし
60:NO NAME ID:wdZApLSqk
>>42
再現性はあるのか?
誰か【プリズム】持ってないのかよ?
検証班はまだか?
63:NO NAME ID:JPE4WbLAB
おいおい……タイムリーなことに【プリズム】の回収、始まってるらしいぜ?
67:NO NAME ID:ZWOlp1E/z
>>63
マジで?
公式発表ってことは信憑性高まってきたんじゃね?
68:NO NAME ID:Y8pya7qVz
>>63
おっ? 転売チャンスか?
72:NO NAME ID:y7egRMh4j
>>68
流通量の少ないレアチップっぽいしなー……
転売には向かないだろ
75:NO NAME ID:SNHpq3JHk
>>42
あくまで私見ではあるが、高速且つ継続的にダメージが入っている様子だ
明滅する回数を【フォレストボム】の威力から計算するに……軽く8000は超えているのか!?
道理で個人用のサーバーが落ちる訳だ
79:NO NAME ID:DAKKT6wup
会社のサーバー破壊してやろうと思ったのに、なにやってやがんだオフィシャルはよー!!
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搭乗ロビーの免税店でお土産を物色する熱斗たちを横目に、暇潰しとしてアメロッパのウラインターネット的立ち位置のサイトへアクセスし、そこの掲示板を覗いていたところ、なんとこの世界でもプリズムコンボが発見されたようだ。
短時間の記録映像では仕様の判明こそしなかったが、原作と同じであれば【プリズム】の『消えるまで何度でも攻撃を拡散させられる』特性と【フォレストボム】の『着弾するまで判定がない』特性が嚙み合った結果、【フォレストボム】が消滅するまでの間、攻撃が拡散され続けたのだろう。
具体的な数字では90回反射され続けられ、【フォレストボム1】で9000、【2】で10800、【3】で13500ときた。
ラスボスや裏ボスですらMAXHPが2000の時代にこの威力はオーバーキルであり、GBAの画面で恐ろしい挙動を見せたプリズムコンボだが、この世界だとトンデモ兵器になっているらしい。
原作の1マス拡散じゃなくて、アニメ仕様の範囲攻撃になっている点も含め、安易に試そうとしなくて正解だったわ。
エグゼ2プレイヤーなら誰しも通る道ではあるが、プラネットマン以外ワンパターンになって、せっかくの戦闘がつまらなくなる邪道行為だ。
それに【ポイズンアヌビス】と同じく無差別攻撃になりそうな点も考慮しておいて良かった。あっちもチップを弄らずそのまま使うと自殺しかねないしな。
アドコレみたく修正されていない現状、【インビジブル】運用無しでは死なば諸共となるプリズムコンボ君に悲しき現在。
まぁ、前世みたくプリズムコンボが氾濫する世界とか地獄でしかないので、迅速な回収は喜ばしい。
俺が入手した修正前【プリズム】? 所持しているだけでは犯罪にならないっぽいし、セーフだセーフ。
最悪、ラスボスへの最終兵器にもなるので手離す選択は無しの方向で。サーバーぶっ壊す副次的効果も決戦のバトルフィールドであればバンバン使って問題無いだろうしな!
『そろそろ時間だよ』
「おう」
シアンに短く返答し、これから待ち受けるイベントに向けて思考を切り替える。
帰るまでが遠足、などといった定型文があるが、俺としてはオフィシャルの会議なんかよりも帰りの飛行機内こそ本番と言えた。
そうでも無ければ無理を言ってエレキ伯爵を連れて来なかったしな。
……席に項垂れてグロッキー状態の彼を見て不安を覚えるが、思わぬ再会に奮起するだろ。してもらわなきゃ困る。
俺もそれとは別件でやらなきゃいけない事があるしな。
まずは――コンプライアンス意識の低い客室乗務員をどうにかしないと。杜撰な管理で毒蜘蛛が機内に放たれるとか洒落にならねぇわ。
これでプチパニック程度、事件にすらカウントされないのがエグゼ世界の恐ろしい所だぜ……!
フライト開始から数時間、味気ない機内食を口にする時間こそが至福となったエレキ伯爵――ジャック・エレキテルは、できるだけその時間を引き延ばそうと顎が疲弊せんばかりに口をもぐもぐし、食器などを回収に来た客室乗務員や妻の冷たい視線にも負けず涙ぐましい努力をしていたところ――突如として機内が揺れる。
それから数拍置いて、客室乗務員からこんなアナウンスがなされた。
「お客様の中にオフィシャルネットバトラーの方はいらっしゃいませんか?」
「オレっちがそのオフィシャルだが、どうしたんでい?」
「詳しい話はこちらで」
「おっしゃ! 行くぜぇワタ坊!」
手招きする客室乗務員の前で威勢良く腕まくりするマサだが、小さな同僚が見当たらないのかキョロキョロと視線を彷徨わせる。そこに、
「ワタルなら腹壊したとかでトイレから戻ってきてないよ、マサさん」
「そうかい。ならしゃあねぇ。漢マサひとりで何とかするっきゃねぇか」
「オレも行くよマサさん」
「遊びじゃねぇんだぜ、熱斗?」
「それくらいわかってるよ! でも、じっとなんてしてらんないぜ!」
「その心意気は良し! しかーし! これはオフィシャルの仕事だ熱斗ぉ! わかるか?」
「――オレが同行しても問題無いナ?」
ごくん、と噛むに噛んだことでペースト状になったパンを嚥下し、ジャックはきりりと顔を引き締めて立ち上がる。
「なーに言ってやがる! お前さんの出る幕じゃねぇ!」
「監視がいなくなると困るだロ?」
「別嬪侍らせて何言ってやがるよぉ?」
「そうですわジャック。大人しく待っていましょう?」
「いいヤ! オレは行ク! でなけリャ、オレが来た意味がねーんダ」
「ジャック……」
本来の目的である元犯罪者の知見から『ゴスペル』の動向を推測する仕事は立ち消えとなってしまったのだ。
これではタダ飯食らいも同然。ニホンに残った元WWWの仲間たちと顔向けできない。
――彼を引き留めるアン・エレキテルから割り振られた仕事から逃れる為では決してない。決して、無いのである。
「……仕方あるめぇ。着いてこい、エレ公」
「上等ダ」
「ではワタクシも参ります」
「エレキ伯爵がいいならオレも!」
しれっと便乗するジャックの妻と光熱斗に嘆息するマサを先頭に、時節揺れる機首を抜けてコックピットまで案内される。
「機長、連れてきました」
「ご苦労。下がってくれ」
操縦席で忙しなく操作する機長は客室乗務員に目もくれず、退室を命じた。それを見届けることもなく、マサは早急に本題へ入る。
「で、用件はそいつかい?」
「あぁ。急に機体のコントロールが利かなくなってしまった。機内に配備されたネットバトラーもご覧の有様だ」
「なんなんだあのナビは……つ、強過ぎる」
両手両膝をついてショックを受けた様子のアメロッパ人。あまりのオーバーリアクションに機長らだけでなく、マサたちからも白い目が向けられるが気にする素振りはない。
ブラウンのティアドロップの位置を中指で調節した機長は舌打ちをした後、乱暴にプラグを引っこ抜き、蹴りで役立たずとなった男をどかす。
「大変申し訳ないが、君たちに託す他にない」
「それでおまんま食ってんだ! 大船に乗ったつもりでいな!」
ドンと胸を叩き、マサが操縦席に歩み寄る。それを挟んで熱斗とジャックが並ぶ。
「「「プラグイン!」」」
「シャークマン!」
「ロックマン.EXE!」
「エレキマン!」
「「「トランスミッション!!」」」
お決まりと言える掛け声に合わせてプラグイン端子を叩き込む。それによって電脳世界に送り込まれた3体のネットナビはあまりの磁力に揃って顔を
『こんなもの!』
しかし、電気のスペシャリストであるエレキマンが背中の電極を使い、周囲の磁場を操作することでそれも緩和される。
『あ、ありがとうエレキマン!』
『礼などいらん。勘違いするなよ? 奥様の命により、一時的に協力しているだけだ』
『それでもだよ!』
にこやかに接するロックマンに対し、エレキマンは頑なな態度を崩さない。残るシャークマンはポーカーフェイスで油断なく周囲を観察していたことで、いち早く脅威に気が付いた。
『来るぞ! ロックマン! エレキマン!』
果たして磁場の乱れと共に現れたのは赤い体色の巨体ナビだ。頭部と胴体はU字型磁石のようなデザインをしており、電磁浮遊により僅かに浮かんでいる。
『マグネットマン!』
「ってことはこいつのオペレーターハ!」
「その声は……ジャックか」
1組のコンビが敵の正体に勘付いた時、ジャックたちに通信が入る。それはしわがれた壮年の声で、どことなく威厳を感じさせる。
「クソ兄貴……!」
「こんなところで奇遇だな、愚弟よ」
「えぇ!? 兄弟揃って犯罪者なのかよ!!」
驚愕する熱斗に目もくれず、ジャックはPETを強く睨みつける。
生き別れの兄弟との再会ではあるが、感動する要素など微塵も存在しない。何故なら、
「相変わらずのうのうとした顔が目に浮かぶなぁ、ジャック」
「兄貴こそオレをいつもいつも見下しやがル……!」
元から兄弟仲がよろしくなかったのもあるが、彼らには決して溝が埋まることの無い決定的なできごとがあった。
「見下す? お前が勝手に卑屈になっているだけだろう?」
「兄貴ガ! 兄貴たちがそうさせたんだロ!」
「全く成長の無い奴め……そうやって周囲の環境のせいばかりにしていたのか?」
「うるさイ! うるさイ! 家族を捨てた奴らに言われたくなイ!」
今でこそキングランドの名家であるエレキテルの家を背負っているが、生まれはその日の食うものにも困る極貧の家族の元に生を享けた。
勝手に産んでおきながら口減らしの為にジャックを売り払った家族が今でも憎くて憎くて仕方がない。
「フンッ……それでお前は裕福な暮らしを手に入れたんだ。感謝されど文句を言われる筋合いは無い。残された私は常に腹を空かせ、着る服にすら困る生活。困窮する我々に差し伸べる手はとうとう現れず、両親は簡単に亡くなったよ」
「ハンッ! オレを売った金があっただロ?」
「そんなもの、借金返済ですべて消えたさ。それから死に者狂いで勉強し、この地位と莫大な富を得た! 全部、全部私ひとりだけの力でだ!! それに比べてジャックは降って湧いた幸福に甘んじていただけの、唾棄すべき金食い虫に成り下がったのだろう?」
「クソ兄貴は全くわかってねェ! オレだっテ、オレだってナ――」
わなわなと拳を震わせながら、ジャックは語る。
子供に恵まれないキングランドの名家、エレキテル家に引き取られたジャックではあるが、その生活は順風満帆とは言えなかった。
物を知らないガキがいきなり上流階級の中に放り込まれて上手くいく筈が無い。
家の中では数年の遅れを取り戻す為に、寝る間も惜しんで電流と共に知識や教養を叩き込まれ。家の外では劣等感に塗れた生活だ。
彼らにとって当たり前のことが、ジャックにはできない。それを何度も何度も突きつけられても誰も助けてはくれない。その苦しみを理解してくれない。
必死に頑張って、ようやっとこなせた事もちっとも褒めてくれない。足りない自分は責められるばかり。
育ての父も母も悪い人ではなかったが、とにかく厳しい人間だった。幼い頃は耐えきれず、何度家を飛び出したかわからない。
「それは単に恵まれた環境も生かせない程に、お前が無能だった。それだけの話だろう?」
「簡単に切り捨てやがっテ! だから兄貴は嫌いなんダ!」
「私も昔からそうだよ。泣き言ばかりの泣き虫ジャック」
「ほざケ!」
「いいだろう。受けて立つ!!」
両者の口喧嘩はネットバトルへと移行する。彼らの代理人たるマグネットマンとエレキマンが互いの距離を詰め、
『【エレキソード】!!』
『ふんっ!!』
電撃を放つ一閃とショルダータックルが衝突するも、力負けしたエレキマンだけが弾き飛ばされる。
『エレキマン!』
『手出し無用だロックマン!』
「そうダ光熱斗! これはオレノ、オレたちの戦いダ!」
「そんなこと言ってる場合かよ!」
チップを握りしめて食ってかかる光熱斗の眼前をそっと掌が遮る。
「エレキ夫人!?」
「光熱斗。主人の言う通り、やらせてあげられませんか?」
「でも!」
「貴方にも譲れない戦いがある。そうではありませんこと?」
歯噛みする光熱斗とアン・エレキテルを尻目にジャックは笑う。自分の母よりも厳しい妻ではあるが、こうして自分を理解してくれるからこそ、一緒になったのだ。
「……ハニーの手前、負けられないナ、エレキマン!」
「そうですね伯爵!」
奮起するエレキマンとジャックは果敢に挑む。格上たる兄と、それにふさわしいネットナビに。
「どうも操作不能になっているのは、メインシステムだけじゃあねぇみてぇだなぁ」
「マサさん! いつの間に……」
「エレキ伯爵が敵を引き付けている間にオレっちたちは他のコントロールを取り戻しに行くとしようや」
「でも!」
「
「……ラジャー!」
「にしてもまーだ戻ってきやがらねぇのか、ワタ坊。機内食にフィッシュを選ばねぇからこうなるんだぜ、全くよぅ」
次回は渡くんが何をしていたのか
と
兄弟喧嘩の決着の2本立てでお送りします
……シャドーマンのバックアップデータ?
せや! PET複数台持ちで解決や!