WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

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36.バグっとかじる!

 3時間――それが『ゴスペル』の文明破壊作戦によって主要国家が危機に晒されていた時間であり、発覚してから解決に至るまでの所要時間であった。

 短いと捉えられなくも無いが、いざ事態の解決に奔走する身としては実に濃密な時間だった。

 

 (すぐる)さんとの話を終えての帰宅途中に、オフィシャル本部から緊急連絡が入り、所属している人員総出でインターネット中の氷型ウイルスを排除することとなった。

 環境維持システムに関わる一大事ということで、てんやわんやの状態の彼らを差し置いて俺が動いた訳だが、まぁキツかった。

 原作知識を頼りにワクチンの素材である各種欠片探しに始まり、『闇医者』にワクチン製作依頼、完成品を貴船総監を経由して科学省に送信して一通りの検査の後、増産を要請して。

 案の定、今回も首を突っ込んだ本作の主人公である光熱斗を途中で捕まえて、『闇医者』同伴で『ゴスペル本部』に向かわせた。

 ……アイツ、原作だとしれっと侵入できていたから、問い質してみればこの時空でもハッキングで直接親玉の元へ乗り込めたみたいだしなぁ。元WWWという肩書は伊達ではなかった。

 で、その間に電話で『鍵屋』との交渉と並行しつつ、アジーナやクリームランドにワクチンを横流しにしていた。

 まぁ、最終的にはヒノケンが全部持っていったことで、凡その努力は水の泡と消えた、というのが今回の顛末だった。

 

「やあ、お疲れのようだね」

「名人さんこそ」

「さんはいらないよ」

 

 オフィシャル本部の待合室のソファに項垂れる俺に、名人さんからエナジードリンクが差し出される。隣に腰を下ろした彼と互いに乾いた笑みを交換して、ぐいっと健康に悪そうな液体を嚥下する。うん、甘い。

 

「貴船総監の名前で随分と派手に動き回ったみたいじゃないか」

「俺はなーんにもしてませんよ」

 

 派遣した熱斗から本部にフリーズマンがいないと聞いた時は焦ったし、そのリカバーとしてウラコトブキスクエアの突入を急いだものの、こちらも空振り。

 大変焦ったところに氷がひとりでに破壊されていったことで、事の次第を察したところだ。

 

「君の尽力が無ければワクチンの開発及び配備は大幅に遅れていただろう。その点に関しては頭が下がる思いだよ」

「でも結局解決したのはヒノケンとヒートマンでしょう?」

「アレは博打に等しい。それに君に寄せられた意見が無ければ現段階でファイアプログラムは形になっていなかっただろう」

 

 缶を手の内で弄びながら苦笑いを漏らす。

 ワクチンを作ったのは『闇医者』だし、ファイアプログラムに関してもアニメ再現がしたいが為に、『究極のプログラムの利用方法』を名目に、名人さんへ頼んでおいた事ではある。

 俺としてもこんなに事が上手く運ぶとは思っておらず、完全に棚ぼた展開だ。

 プリンセス・プライドの時と同様、横から口を出しただけで、頑張ったのはヒノケンとヒートマン、そして名人さんである。

 

「私が代表するのもアレだがお礼を言いたい。ありがとう隠岐くん。君がいてくれて本当に助かったよ」

「あぁ……はい。受け止めたんで頭上げてもらえません?」

 

 固辞していても悪目立ちするばかりなので肯定の言葉を投げかけるが、たっぷり10秒以上かけて頭を下げた名人さん。

 そして面を上げた彼は厳しい表情を作ると、低いトーンでこう言ってきた

 

「しかし今回は褒められた点ばかりでも無いことはわかってもらいたい」

「……独断専行、ですか?」

「そこまでわかっていて、何故上からの判断を待てなかった?」

「どれだけ時間の猶予が残されているのかわからなかったからです」

 

 名人さんからの詰問に、俺は作り笑いをやめて向き直る。

 指摘されるのはわかっていた。わかっていて、それでも俺は実行に移した。被害を最小限に収めるべく、最短ルートを目指したつもりだ。

 

「結果的に君の判断は間違ってはいなかった。だが、君の勝手な行動でオフィシャルに少なくない混乱を招いたのも確かだ」

「はい」

「それに外部の人間、それも反社会的な者へ協力を要請するのもいただけない。オフィシャルの権威を貶める行為だと受け止められかねない」

「そう、ですね」

「小学生の君に求めるのは酷だとは思う。が、オフィシャルとして認められている以上、君の行動が周りにどう影響を及ぼすのか知ってもらいたい」

「……はい」

「今回の事件は迅速な対応によって被害らしい被害は見られていない。それ故に古狸共からやっかみを入れられる余裕が生まれることも考慮してくれ。君を登用した貴船総監の立場が危ぶまれるだけでなく――君の祖父にまで責任の所在が飛び火しかねない」

「……!」

 

 反射的に開きかけた口を強引に噛み締めて押し黙る。

 ふざけるな。どうしてニホンが、世界が救われたのに、誰かが悪いように仕立てあげようとする?

 何でも権力闘争の火種にしたい輩がいるのは前世で知ってはいたが、いざ思い知らされた時に逆上しそうになった。

 名人さんにぶつけたところでどうにもならないと寸前で踏み留まったが、精神年齢的に良い歳した大人が簡単にカッとなってどうする。もっと冷静になれ。

 

「……大変申し訳ございませんでした」

「わかってくれたのであればそれでいいよ。今回は貴船総監が上手くやるだろうが、以前よりも動きにくくはなるだろうね」

「後で本人にも直接謝罪に行きます」

「しばらく面会するのは難しいだろうけれど、そうするといい」

 

 ありがたい説教もこれで終わりなのか、名人さんが立ち上がる。ふっと表情を和らげて手を挙げる彼に、俺も腰を上げてぺこりと頭を下げた。

 

「あぁぁぁぁ……」

 

 それからノロノロとした足取りでオフィシャル本部を出て、メトロに向かう最中に我知らずゾンビみたいな呻き声が出る。

 原作知識は有用ではあるが同時にガバ要素が多大に含まれている点に対し、考慮が至らなかった。

 とはいえ、あの短いスパンで事件を起こされては堪ったものじゃない。

 ただでさえ俺はアホなのに、準備期間も熟慮する時間もくれなきゃこうもなりますわ。なんて言い訳を心の中で呟きながらも、反省はしなければならない。

 ネット警察の頭が貴船総監から挿げ替わってしまえば今以上に動きにくくなるのは明白だし、英さんにこれ以上の心労を与えるのも御法度だ。

 本格的に動くのはネットセイバー設立後にしようと思っていたが、手回しできるところはもっとすべきだったか? 

 それを捻出する為に余暇の時間を削ればストレスで胃腸がやられかねんし。何なら『渡』との今後を考えるならば娯楽は必要だ。企てばかりだと精神引き籠りが加速するやもしれん。

 

『今日もいっぱい働いたし、明日はぐうたらしてもいいんじゃない?』

 

 そうこうしている内に自宅へ到着し、手荷物をベッドに放り投げ、烏の行水でシャワーを済ませ、軽く食事をした後、シアンからそう声をかけられる。

 

「そうも言ってらんねぇかもな……」

 

 原作通りであればハイジャック事件から数日ほど時間が空くのだ。それが立て続けとなった原因が、帯広シュンに啖呵を切ったことであれば悠長にしている暇は無い。

 『2』の最終決戦に向けてやらねばならないことがまだあるしな。

 ただまぁ、今日はもう眠気がヤバいので就寝することにした。洗濯物とか掃除とかは知らん。明日の俺が何とかするだろ。

 

 

 

 

 

 

  アメロッパでの商談を終えた伊集院炎山だったが、未だ帰国が叶わなかった。

 

「クソッ、キリがない……!」

『ヒャハハハ! くらいやがれェ!!』

 

 それというのも連日アメロッパエリアにて『ゴスペル』構成員と思われるナビに襲われていたからだ。しかも戦っている相手とはこの短時間に5度目の遭遇だ。

 ランペイジ・ガンバレル。ウラでは少々名を馳せた荒くれナビである。

 一部欠けた鉄帽に、両腕をバルカン砲へ換装し、あちこちに弾丸をバラまくトリガーハッピー振りに、ウラの住人からも鼻つまみ者にされる一方。

 とにかく暴れられればそれでいいといった表裏ない性格から、鉄砲玉として裏稼業を営む組織を練り歩く。今回は『ゴスペル』の勧誘を受けていたらしい。

 

『いい加減聞き飽きたぞ、そのセリフ!』

 

 銃弾の嵐の中をリフレクトをかざして突っ込んだブルースは、【バリアブルソード】で以て彼を一撃で叩き切る。

 デリートの表記の後、彼のデータは形を保てず消滅するものの、

 

『ヒャハハハ!』

『ヒャハハハ!』

『ヒャハハハ!』

 

 PETのバックアップでは考えられない数のランペイジが次々に送り込まれてくる。狙いが定かでないクソエイムとて圧倒的な物量を以てすれば恐るべき脅威と成り得る。

 

「【エリアスチール】スロットイン! 仕切り直しだブルース!」

『了解しました炎山様』

(一体どうなっている!?)

 

 このままランペイジの相手をしていても埒が明かないことは炎山も理解している。

 が、根本となる原因も不明、増殖した彼らを野放しにしてはアメロッパのインターネットの機能に支障を来すこととなるだろう。

 現状こそブルースだけを狙っている彼らだが、あちこちに離散してしまえば厄介なことになるのは目に見えている。

 だからアメロッパ所属のオフィシャルの応援が駆け付けるまでは律儀に相手してやらねばならなかった。

 

『ぐ、ぐぐっ!?』

「どうしたブルース!?」

『ぐあああああああッ!!!!』

 

 

 

 

 

 明くる日の正午、『闇医者』からの連絡があったのでシアンをウラスクエア向かわせた。

 

『頼まれていた品、用意できたぞい』

『へっへっへ。約束の山吹色の菓子でございます』

『何言っておるんじゃコヤツ』

 

 ワクチンとは別に俺個人として依頼していたのは【バグシュウセイ】、その名の通り、バグを修正するチップのプロトタイプである。

 一応、医者の二つ名を持っているだけあって、バグに関しても造詣が深かった。

 製作を依頼した当初としてはラスボスへのメタ――弱体化を狙っていた。だが今はそれだけじゃない。

 

『お主に頼まれた通り、それぞれ構成を弄ったぞい』

 

 用意してもらったのは全部で3つ。

 1つはメジャーに見られる移動系バグを中心に修正するもの。1つはあまり見られないマイナーなバグを修正するもの。そして、最後の1つはシアン用に調整してもらったものだ。

 正直、もっと数を用意してもらったのだが、エグゼ世界だとプログラムの仕様が前世と色々と違うからなぁ。

 光正理論のフォースプログラム関係は複雑怪奇過ぎてコピーがそもそも不可能らしいし、難解なヤツだとコピーするのに相当時間がかかるのだ。

 今回の【バグシュウセイ】も初の試みということもあって、コピーが難しいらしい。何なら無理やりすればデッドコピーでバグる可能性もあるらしい。バグ修正がバグを生むってクソゲーのパッチかよ。

 

『効果の程は期待してくれて良いぞよ』

「助かります」

『まー、あんだけ渡したんだし、ちゃんと仕事してくれなきゃね』

 

 元WWW団員という懸念はあれど、ウラスクエアでの評判では仕事に誠実とあったので信用はしている。少なくとも俺が自作するよりも成果が出るだろう。

 一通り使用感を聞いた後、プラグアウトしてPC越しにシアンと向かい合う。

 

「今までバグをどうにかしてやれなくて悪かったな」

『別に~? デフォでこれだし、もう慣れっこだよ』

 

 本当であればネットナビを一から作り直すべきなのだろうけれど、ぶっちゃけ纏まった時間を取れなかった。事件多過ぎなんだよ、マジで。

 

「人格データを他に移さなくて大丈夫か?」

『大丈夫だって! 悪いところ直すだけでしょ?』

 

 自分のことなのに楽観的なシアンに白い目を向けつつも、シアンドッグ()が彼女に乗っ取られてから俺にはどうすることもできないからな。自立型でもねぇのに、割と細かいところ拒否されるんだよな。

 

「じゃ、インストールするぞ」

『りょ』

 

  唾を飲み込んでから【バグシュウセイ】を実行。見た目からは特に変化が見られないが、内部のパラメータ的に変化自体はしているみたいだ。

 元がラスボスメタとして利用する側面があったからか、数秒で作業は完了。特にデータが崩壊するといったアクシデントも見られず、早速、試運転としてメットール君をサンドバッグにするのだが――

 

『なーんかチップの回転速度落ちてない?』

「だよなぁ」

 

 本来であれば不具合を取り除けば余計な処理を食わない分、性能が向上する筈なのだが、どうも逆に弱体化したように思える。体感的には2割ほど落ちただろうか?

 一応、その代わりに移動速度が若干向上したらしいが、こんなん釣り合い取れねぇよ。

 地味にバグの恩恵を受けていた事が判明したのだが、何とも釈然としない。

 

『ワタちゃん……』

「どしたよ?」

『身体がピリっとする』

「それってまさか……」

『コトブキスクエアの時と同じ……あっ、収まった』

「気のせい、なんてある訳ねぇよな」

 

 どうにも胸騒ぎがしたところにメールの着信音が鳴る。

 差出人はオフィシャル本部。その文面はというと、コトブキ町の電磁波異常を知らせる緊急メールであった。

 

「幾ら何でも早過ぎるだろ……」

 

 プラグを引っこ抜くと、すぐに身支度を済ませてマリンハーバーへ向かう。

 恐らくではあるが、文明破壊作戦を早期に解決した影響が帯広シュンの焦りを生み、計画の前倒しをさせたのかもしれない。

 マリンハーバー駅付近の適当な路地裏に入るとサイバースーツを起動。それらしい恰好のおっさんに変装してからオフィシャル本部の自動ドアを潜った。

 俺が一般人立ち入り禁止の地下に降りた頃には、そこそこの数のオフィシャルネットバトラーが集まっており、職員があちこちで説明を行っているらしかった。

 

「現在インターネット中に『ゴスペル』所属だと思われるナビが大量に発生している模様! 速やかにそれらを排除せよ! 尚、ナビが違和感を覚えた段階で撤退を徹底するよう動け!」

「違和感?」

「以前、コトブキスクエアに突入したオフィシャルのナビ全員から発見されたバグと同様の症状だと思われる! 長時間接していると人格データに異常を及ぼす危険性アリとの事だ!」

 

 彼らの説明に困惑するオフィシャルの面々。

 それもその筈で、ナビのボディ面に異常を来すことは数あれど、人格データにまで影響を及ぼす事態は例を見ないからだ。

 以前、俺が思い浮かべていた洗脳説も強ち間違っていなかったことに思わず溜息がこぼれる。つくづく原作より厄介だな、俺のいる世界はよ。

 

「緊急通達! 伊集院炎山よりアメロッパにて同様の事例が先んじて発生! 対処していたところ――ブルースが暴走!? 制御不能となったブルースが向かった先は……ここオフィシャル本部の模様!」

 

 そこに大声で叫ぶ職員の一報に、辺りは騒然となる。これから不明瞭な敵を相手にせねばならない前に、まさかのエースが敵に回る展開なのだ。どうしたって混乱は避けられない。

 

「ここは私たちに任せてもらいませんか?」

 

 誰もが判断に迷う中、ある男が良く通る声でその任を立候補する。

 ニホン人ばかりの施設内で一際目立つ褐色の肌を大きく晒すその人物の名はマハ・ジャラマ。元WWWにしてDr.ワイリーの右腕。実力者としては確かなものだ。

 

「お前が? 駄目に決まっているだろう!!」

 

 だが、今の今まで更生を拒んでいた人物が名乗りを挙げたことに反発する人たちがいるのも当然のことである。何せこの緊急事態で彼の監視はどうしても甘くなってしまう。

 そこに反旗を翻すなり、脱走を企てられれば止めるのも難しい。助力を願うよりも閉じ込めて無力化した方がいい、といった意見が出るのも無理はない。

 

「こんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」

 

 そこに立ち上がるのが、マハ・ジャラマの同僚である色綾まどいだ。いつもよりも濃いメイクを施した彼女に注目が集まったところにウインクをかます。歳を考えろ。

 

「そうだゼ。あの生意気なナビを止められるのハ、ミーたちしかいないってばヨ!」

 

 更に追撃とばかりに主張するエレキ伯爵。アン・エレキテル夫人が一時離れていることで活き活きとしているピカピカおじさんがビッグマウスをかます。

 

「役割分担ってヤツだ」

 

 そしてシニカルに笑う火野ケンイチがそう締めるのであるが、

 

「ちょっとヒノケン! アンタのヒートマンはまだ戦えないでしょ?」

「うっせぇ! こんな燃える展開に黙ってられっか!」

「こンの北京原人! ボディ部分がズダボロ、ファイアプログラムも駄目になってんのに、どうするつもりよ!?」

「オレがいない間、良く頑張っタ! 後はこのエレキ伯爵に任せナ!」

「そうです。あれだけ美味しい役どころを貰えたのですから我慢なさい」

「嫌だぁぁぁあああ!!」

 

 ぎゃあぎゃあと醜態を晒す元宿敵の姿に憮然とするオフィシャル一同。そんな中、澄んだ声が差し込んだ。

 

「……私が彼らの監視役を務めるわ」

「みゆきさん」

 

 控えめに、しかし凛とした表情で訴える彼女の姿にオフィシャル一同の様相に変化が生まれる。どうも俺が知らない間に一定の立場を築いているらしかった。みゆきさんがそう言うなら、と納得の姿勢を示している。

 

「みゆきだけで不安というのであれば、わたしも協力します」

 

 一部不満を漏らす人たちに対してサロマさんが続けて立候補。完全に、という訳でも無いが、概ねの人間が異議の声を取りやめたことで、全体の空気が元WWWの助力を得る方法に進むようだ。

 つっても最終的に判断するのは上の人たちではあるが、

 

「警視監より特別に認可が下りた。マハ・ジャラマ、色綾まどい、ジャック・エレキテルに限定的に戦闘を許可する!」

「オレは駄目なのかよぉおおお!!」

 

 電話によるやり取りであったが、存外早く彼らの意見が通ることになった。

 バグによって生み出されたナビの被害がヤバいのか、それともブルースの脅威をそれだけ重く受け止めているのかはわからない。

 けれど、アニメとは別路線で元WWWと共闘する流れは何とも言えない嬉しさがある。ただ、ダークブルースより前に敵対する展開はどうよ? ダークチップで二番煎じになったりしない?

 

 話がある程度纏まったところで各員に担当箇所が割り振られる。俺には……何にも通達が無い。あれか、文明破壊作戦対抗時に色々やり過ぎたから待機しろ、とでもいうのか。

 

『ワタちゃん! オート電話!』

「相手は……光博士?」

 

 

 

 

 

『おっと! 主役のお出ましだよ~ん!』

『カラードマン! 気を引き締めなさい!』

『はいは~い!』

『言っても無駄だマジックマン! 来るぞ!』

 

 オフィシャルの第一ファイアウォールの前で待機していたカラードマン、マジックマン、エレキマンの正面から高速で迫る赤い影が見える。

 いつもの冷静沈着な姿はどこへやら、やたら薄紅色のソードを振り回すブルースが愚直に突っ込んでくる。

 

「離脱後、一斉射撃です!」

『玉っ!』

『Magic Fire!』

『ライトニングブレス!』

 

 マハ・ジャラマの指示に従って後退した彼らがそれぞれの得意技を放つが、リフレクトによって8割方のダメージを反射されてしまう。

 

「ふむ……防御する頭は残っているようですか」

 

 複雑な動きで相手を翻弄する姿は見られない割に、武器の用途は理解している。マハ・ジャラマは情報分析を続けながらマジックマンの位置取りを細かく指示する。

 

「なぁ、誰か代わってくれよ!」

「邪魔!」

「鬱陶しイ!」

「気が散るので我慢なさい」

 

 駄々をこねるヒノケンに一瞥もくれず、マハ・ジャラマは嘆息する。

 フリーズマンとの戦闘を経て、彼はどうも戦闘に病みつきになっている様子が窺える。そのせいか、やや精神的に不安定な部分も見られる為、ヒートマンが無事であろうと戦闘に参加させたくはなかった。

 他2人――色綾まどいとエレキ伯爵にも表には出さないが不満はあった。

 

(腑抜けている)

 

 カラードマンの遊び心は芸術性の現れだとまどいが訴えていたが、それが油断に繋がりがちだ。

 

『ワオ!? よくもやったな~!』

 

 現に被弾回数が多いのは彼女のカラードマンである。致命的なダメージこそ避けてはいるが、メイン火力の玉が斬られる度に戦闘のテンポが落ちるのでマハ・ジャラマとしては不服であった。

 

(愚直)

『【エレキソード】! ぐぅッ!?』

「エレキマン!」

 

 そしてエレキマンはこの中では誰よりも遠距離攻撃が豊富だというのに、相手に隙があれば切りかかる癖が抜けきらない。それを許可するエレキ伯爵も実に甘い。

 

「マジックマン、ウイルス召喚です」

 

 WWWを結成してから短くない時間を共にしてきた間柄だ。マハ・ジャラマが口で何度指摘しようとも決して耳を貸さないことは良く知っている。

 だからリーダーである彼がフォローに回るのも自然な流れと言えた。

 

(今後の為に宿敵ブルースを分析しているのは私だけのようです。全く、あの方にふさわしくあれと思わないのか)

 

 でなければマハ・ジャラマはオフィシャルに手を貸す真似などしなかった。根が単純なまどいたちと違って絆されることもない。

 それでも決して見限る選択が彼の頭に浮かばないのは、心の底から彼らを仲間として認めているからだ。

 

「マジックマン! 10時の方向にマジックファイア!」

『Magic Fire!』

 

 ブルースの移動先を先読みしたマハ・ジャラマの判断は的中し、即死効果を持つ炎が赤いナビを半包囲してみせる。

 

『フレイムタワー!』

 

 そこにカラードマンがその穴を埋めるように追撃。地を這う火柱が赤いナビの逃げ道を更に制限したところに、

 

『【チャージスパーク】』

 

 HPを消費する代わりにその数値分を攻撃力に上乗せする強烈な電撃がブルースを襲う。

 ダメージによって完全に足を止めた相手に対して彼らは容赦なく、

 

『玉っ!』

『Magic Fire!』

『ライトニングブレス!』

 

 ブルースに更なる追い打ちをかけ、デリートの表記が出るまで徹底的に叩くのだった。

 




拙作の『ゴスペル』に速水ダイスケとプリンセス・プライドがいない穴埋めとして、パスクケーキ様の案を採用させていただきました。







ブルースを鬼強にしてWWWとスカルマン&ウッドマン返り討ち、からのVSシアンの案もありましたが、『2』のバグ量産ナビってそんなに強くないし、正史のアメロッパ城デリートが無いからバージョンアップもないしで、廃案となりました。
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