時系列的には『1』前からのスタートです。
深酒でいつの間にか寝入ったところ、気が付けば
前世からの生来の性格で深く悩まない彼は二日酔いの頭痛がしなくてラッキー程度にしか思っていない。
捨て子なのかはわからないが孤児院にいるらしいが、むしろ子供になったことで仕事から解放された喜びに満ちていた。
「上手くいかねーなー」
が、水道水で腹をごまかす生活も数年目、小学生となった鳴人は口を尖らせて不満を漏らす。
せっかく人生も二度目だというのに、転生モノのテンプレみたくリア充生活には程遠い生活を送っていた。
というのも顔も頭脳も普通、運動神経も並。枯れた大人の価値観が小学生の中に馴染む筈もなく、かといって理想的な人物を演じるには根本的な演技力が足りない。短期的なリターンも望めないのなら自分磨きを続けるモチベーションも欠けるというもの。
だから鳴人は恋愛事などに早々に見切りを付けて、趣味に生きることにした。
始めは子供に転生したことばかりに目を向けていたが、今現在いる世界は日本ではない。それに良く似たニホンのあるロックマンエグゼの世界だった。
せっかく異世界に転生したのだから、その世界特有のことでもしよう。そう考えた鳴人は日本にはいなかったネットナビに目を付けた。
「ふむふむ」
退屈な授業も聞き流し、教本片手に級友が捨てる予定だったのを譲り受けた古いPETを弄る日々。
元SEでの経験も生き、プリインストールされているネットナビの手も借りて完成したのはアジタートというナビだ。
見た目はガンタンクに近い鈍重なもので、実際の移動速度もトロいの一言に尽きる。
しかも、その削った分を含め、大半のリソースを肩に搭載されたキャノン砲に回したせいで、移動砲台のようなワンパターンの攻撃しかできない。
しかし、総弾数12発という弾丸制限を課したことでその火力は凄まじく、どんなナビでも余裕のオーバーキル。長距離射程で、ブレイク性能も搭載。そして【インビジブル】貫通という、攻撃全振りしたアジタートはまさしくロマン砲のおまけにネットナビがついている、といっても過言ではないかもしれない。
アジタートが完成した頃、鳴人はちょうど高校受験シーズンに突入したこともあってか、ストレスの溜まる日々が続いていた。
未だ金銭面に余裕が無い以上、就学給付金を頼らねばならず。また大学進学も視野に入れるならば塾に通う費用もない彼は、授業料免除の為にも県下でもトップの高校に通う必要があった。
目先の誘惑に負けて派遣社員となった前世を思えば勉学に励む必要があり、その結果としてストレス発散の機会をアジタートを用いた方法になるのは自然な流れかもしれない。
とはいえ前世は日本人、最低限の分別があったからか、アジタートを暴れさせるのは荒くれ共の集まるウラインターネットだ。
薬物中毒者を装ってウラへの侵入経路を確保した後は鬱憤を全部ぶちまけるのみ。
「ひひ、ヒャハハハハ!!!!」
『あァ~ネットナビの壊れる音ォ!』
凡そ健全と言えない笑い声を上げながら鳴人は爆散していくヒールナビを眺める。血気盛んな彼らは突然の侵入者に慌てふためくものの、すぐに切り替えてアジタートを排除すべく動き出す。
「チッ……もう終わりかよ」
流石は猛者揃いということもあってか、その無双状態も長くは続かず。【エリアスチール】による攪乱や、【バリア】や【オーラ】系による無効化。中にはプログラムアドバンスによる攻撃で相殺する者まで現れて。
結局、30に満たないデリート数でHPが危険域になったのでプラグアウト。全弾使い切る前に、だ。
『ンだよ止めんじゃねェよ鳴人! せっかく面白くなってきたのよォッ!』
「うっせーよ。オレァ負け戦に付き合う程マヌケじゃねーんだ」
『しゃァねェなァ。リベンジマッチはいつだゴラァ』
「まー待てよ。オメーはまず多対一の特訓から始めっぞ。その辺のウイルスでな」
『アァン? ウイルス相手じゃ燃えねェぞタコ』
「生まれたてで何言ってんだ。なんもできずにボコられるよりマシだろが」
しかし、彼らの顔には不満はあれど、どちらも笑っていた。奇襲という形とはいえ、まだまだヒヨっ子であるアジタートの攻撃は通じたのだ。
とすれば、後は足りないところを補って勝つところまで持っていけばいい。
「――サブウェポンの威力ショボ……。こうなりゃメインウェポン一本に絞って連射式に切り替えられるようにすべきか……?」
『オレ様としてもションベンみてェなレーザーはいらねェし、そうしろ鳴人ォ!』
『――ア゛ァ゛!!!! 弾数制限ウッゼェ!!!! どうにかしろ鳴人ォッ!!』
「無茶言うなボケ! 連射式にしたから余計にリソースカツカツなんじゃボケ! 無駄にバカスカ撃ちやがって!」
『そこをどうにかするのがオペレーターの仕事だろうがッ!!』
「はいはい。アジタートちゃんは我儘ですね~」
『やんのかゴラァ!!!!』
「――バトルチップをアジタートのリソースとして変換成功! どーよこのシステム!」
『おッせェわ!!!! すぐリロードできるようにしろッ!!!!』
「オメーの要望聞いてやっただけありがたいと思えやボケ! いちいち文句つけやがってコイツァ! 第一テメーも狙いつけんの遅いんだよ!」
『テメーのリロードに比べりゃ爆速マシンガンだぜ、こっちは!!』
「マシンガン(笑)」
『――なンなンだァ今のはァ? 豆鉄砲かァ? 伝説のナビさんよォ?』
『なんだとガバガバ大砲野郎! その豆鉄砲でボロボロのテメェこそなんなんだ?』
『命乞いすんなら舎弟にしてやってもいいんだぜ?』
『テメェこそ! このナパームマン様に忠誠を誓うのなら命だけは助けてやってもいいんだぜ?』
「口だけは威勢いいのに、どっちも逃げ回ってて草ァ」
『『喧嘩売ってんのかアァン!?』』
言い争いを繰り返しながらも鳴人とアジタートは立ち回りや搦め手への対処方法を見直しながらも軸はメインウェポンの強化を進め、ウラへの襲撃を繰り返し。
ひょんなことから出くわしたナパームマンと何度もネットバトルをする内に喧嘩友達となって。
受験シーズンが終わってからも灰色の高校生活を送る鳴人にとって電脳世界で暴れることが主になるのも自然のことだった。
『ウラランカーってのも大したことねェのな!! いやオレ様が強くなり過ぎたのかァ?』
「コピーマン相手に戦闘がグダってたのに良くいうぜ」
『ありゃァ、ド派手なバトルを楽しんでただけだ!! すぐ終わらせちまうのもつまんねェからよォ!!』
「ダッセー言い訳」
『そもそもオペレーターのテメーがなだらしねェんだよ。鳴人がしっかりしてりゃあシャドーマンだって逃がさなかったのによォ』
「だったらダークマンの時はオメーの不手際だろうが」
『最後にデリートしてやったんだからいいだろ別に!! にしてもブラックウイングはウザってェかったが、属性攻撃のオンパレードは楽しかったぜェ!!』
いつものようにウラを練り歩くアジタートの足を止めたのは、前方より不用心に歩み寄るネットナビの姿。
今や『電脳の破壊神』の二つ名をフォルテから上書きした彼の前に現れるのは、実力を過信する輩か、碌な情報も持っていない世間知らずのみ。
しかし、今回の来訪者はそのどちらとも違った。
『おめぇ、噂に違ワず、なかナかやルな』
『誰だテメー?』
言語プログラムがイカれているのか、片言に喋るそのナビは。
オレンジを基調とし、黄色いモヒカンのような頭部とペリカンのような口、両肩に爆弾をはめ込んだ特徴的なデザインをしており、戦意を滲ませることもなくアジタートの正面に立つ。
『ボンバーマン、そっチはアジタート、といっタか?』
『おうよ。で、やンのかやンねェのか、どっちだ?』
『おめぇヲ我ら
『ア゛ァ゛? オレ様にテメーらの下に着けッてかァ!?』
「待てアジタート」
腕を組んでボンバーマンを睨み付けていたアジタートだったが、彼からの勧誘の言葉に瞬間沸騰。怒声を浴びせすぐにでもキャノン砲をぶちかます前に、鳴人が待ったをかける。
『ンだよ鳴人!! 喧嘩売ってる相手見逃せってかァ!?』
「いンや。その提案、呑むことにするぞ」
『どういうこッたアァン? バックに付いてるWWWの名前にビビってンじゃねェだろうなァ?』
「いいか――」
『……嘘じゃねェんだな?』
「当ったり前だろ? 」
『話は纏マったのカ?』
『しゃァねェから受けてやるよ!! ただし!! テメーの軍門に下った訳じゃねェ!! あくまで協力者としてだ!!』
こうして鳴人とアジタートはWWWに加入することとなるのだが、普段の生活は変わらない。あくまで学業やアジタートの興味優先で、依頼も気に食わないものは受けない。具体的には明確な犯罪行為には加担しなかった。
そのデメリットとしてもWWWオペレーターのランクがなかなか上がらない程度の話。WWW内の地位などどうでもいいし、給金としても現時点でも満足できる額だ。少なくとも学生の身分でアルバイトするより余程儲かる。
「で、鳴人は就職どうすんべ?」
「ん~? 考え中」
そうして気が付けば大学生活も折り返し地点を超えて、就活に動く生徒がチラホラ見られる頃を迎えていた。
友人未満の男からの世間話に鳴人は適当に返し、本命であろうレジュメのやり取りを無難にこなす。
今こそWWWに在籍しているが本格的に腰を据えることはしない。『ロックマンエグゼ』の主人公である光熱斗がWWWを壊滅に追いやるから、ではない。
あるいはアジタート単体であれば強敵ロックマンと戦う為だけにAランクを目指す為に催促してきたかもしれないが、転生者である鳴人はそうさせなかった。
『就職なァ……一部のネットナビ以外には無縁の話だぜ』
「オメーはPETに永久就職してやがる自宅警備員だろ?」
『おうおうテメーの事情でそうしてやってんだろ? で、まだ終わんねェのかよ?』
「後もうちょいだ。少なくとも卒論始める前には終わらせる」
そも、鳴人がWWWに加入したのはその親玉であるワイリーの技術を近いところで、直接的にでなくとも、彼の薫陶を受けた技術者から間接的にでも学ぶ為だ。そしてもうひとつは――
「――何? アジタートのオペレーターが辞めたじゃと?」
「はい。WWWでも随一の強さを誇る彼らが突然姿を晦ませました」
「これから本格始動だというのにあの小僧め……! まぁ良い。あ奴の戦力など無くとも我がWWWは強い。それにドリームウイルスさえ完成してまえば……!!」
「大変ですワイリー様!」
「次から次へと何じゃ!」
「Aランク及びSランクナビのファイアマン、カラードマン、エレキマン、マジックマン、ボンバーマン並びにストーンマンが何者かの手によってやられました!
オペレーターの見解によればアジタートの仕業である可能性が高いとの情報です!」
「小僧貴様ァあああ!!」
『オレ様としてはワイリーのジジイが自信満々に語るドリームウイルスとバトりたかったんだがなァ……』
「あんな雑魚、相手するまででもねーよ。ンな事より、よーやく顔繋ぎも終わったし、厄介そうな追手も潰してやった! オレたちは自由だ!」
――折地鳴人の目的は変わらない。彼の目的は趣味に生きることだ。
その為だけにWWWの元で技術を学び、解散後に放流されるであろう人材に目をつけてビジネスライクな関係性を築き上げ、ワイリーと密かに繋がる企業のお偉方とコネを作ったのは、すべてその目的の為。
「ロックマンやブルースと戦いたきゃN1でもいい。何ならオレたちでそれらしい犯罪紛いを起こしてもいいかもなァ!」
今まで贅沢らしい贅沢をしてこなかったから会社を興す前金としては充分な貯金もある。プロテクトシリーズの製作者も青田買いしたからセキュリティ面に関しても十二分といっていい。
厳密には仲間といえないナパームマンも鳴人の目的を聞けば手を貸すくらいはしてくれるだろう。
「ネットワーク社会を壊すなんざくだらねー。世界征服なんざ面倒でしょうがねー」
だからワイリーに手を貸さない。
好きなように、強い相手と戦い。好きな飯を食らって、好きな時間に寝る。そんな生活が欲しいから色々と頑張ってきた。
単純なアジタートの強さだけでない、『力』というモノが必要だったのだ。
「後は女さえ手に入れば完璧なんだが……金さえあればどうにでもなるだろ」
これから訪れるであろう未来に鳴人はほくそ笑む。
シナリオ的には世界規模の事件が何件も起こるだろうが、彼にはどうだっていい。気が向けば首を突っ込んで、危なくなったら手を引けばいい。
アジタートも無敵ではないから負けることもあるだろう。そうなったら、いつものようにその都度強化すればいい。
最悪エグゼ世界のセーフティネットである光熱斗がいるのだから、鳴人自身の命さえ直接脅かされなければそれでいいのだ。
今後、鳴人たちを危険視した科学省やネビュラ、新生WWWから人員の引き抜きを行いつつ丸ごと返り討ちにするのは、また別の話。
一番求められるであろう鳴人たちの今後はエイプリルフールなのでカットや。
まぁ、本音で言えば1話じゃ絶対収まりきらないから……そこまでの労力を割くのは無理やねん。
……記憶失ったフォルテみたく戦闘狂にする案もあったけど、原作キャラがオリキャラに蹂躙されていくだけの話もアレだなぁと思ったので没になりました。
来年の4月までに完結か打ち切りしてなかったら続きを書くと思います、メイビー。
……渡くんがいなかった結果の、
水道毒混入状態のデンサンタウンとか。
CERO:A取っ払ったデンサン中央街で起きた自動車事故の惨状とか。
経済的に破綻したクリームランドの経済協力の闇とか。
アジーナのネットワーク機能停止状態での水害IFも自重してお蔵入り。需要無いだろうし。
でもクリームランド以外、俺の妄想じゃなくて全部原作で起きたってマ?
次回は明日投稿予定。
いつものノリに戻って『2』後半的に挟めなかった日常SSをぶち込んどきます