WWWを草と笑えない恐ろしい世界   作:じぱんぐ

42 / 69
アニメじゃ存在全カット! 迷惑千万の初期型インターネット編
40.リニューアルオープン! ニューシアン始めました!


 短いリハビリ生活を終え、残暑というには厳しい9月上旬。

 マリンハーバーのメトロ駅を抜け、温い潮風を浴びながらすっかり通い慣れたオフィシャル本部の道を歩く。

 自動ドアを潜り、地球環境によろしくない冷房のガンガンに効いた空間にようやっと一息ついてから。受付でいつものようにアポの確認を取ってエレベーターに乗り込む。

 一般職員が訪れる機会が無いフロアなのを良いことに、手早く上半身の汗を拭った後。

 

「失礼します」

 

 ネット警察の警視総監に与えられたご立派な扉をノックしてから入室。

 正面に出迎えるのは部屋の主と、傍に控える女性警視。その脇には白衣を纏ったツンツン頭の眼鏡の男性。

 そんな彼らに向き合う2人の小学生のアンマッチさに思わず笑みを零しつつ、その人の輪に合流する。

 

「遅いぞ」

「掃除当番あったんだから仕方ないだろ」

「ワタルは真面目だな~」

 

 真っ先に俺を咎めたのは、未だ身長が追い付けていない事に若干焦りを覚えている伊集院炎山だ。

 いつ見ても卵の殻と揶揄される髪型に目線をやっていると、視線が更に鋭いものへと変わる。しゃーないだろ、お前が物理的に伸び悩んでいる間にも『渡』ボディはすくすく成長しているんだし。

 そんな彼とは対照的な笑みを浮かべるのは我らが主人公である光熱斗。対面することも珍しい大人たちを前に緊張でもしていたのか、俺の顔を見て表情が綻ぶ。

 

「学校での時間も貴重な人生の財産だ。炎山くんも我々に遠慮せず大事にしたまえ」

「お心遣い感謝します総監」

「よろしい。では隠岐くんも来たことだし早速始めるとしよう」

 

 温和な笑みを浮かべて炎山をとりなした貴船誠心(きふねせいしん)警視総監が改めて口を開く。

 

「本日付けで正式にネットセイバーが発足されることとなった。よって簡略ではあるが任命式を行う」

「あの、他の方々は?」

「そちらは既に済ませてある。後は君たちだけだ――」

 

 貴船総監からネットセイバーの名を耳にしてから約ひと月。水面下で動いていたとしても、これほどハイスピードに組織の立ち上げが上手くいくとは思わなんだ。

 あるいは昨今の事態を危険視しているが故の無茶だったのか。そう思考が飛んだ矢先に炎山から肘で突かれる。

 

「異例の早さだと思うか? 要因のひとつは貴様――お前だろうが」

「俺?」

「……マリンハーバー爆破未遂に始まり、『ゴスペル』関連でお前はあまりに暴れ過ぎた。文明破壊作戦はその決定打とも言える」

「直接解決したのはヒノケンさんだろ?」

「迅速過ぎるワクチンの配備。そのせいで貴船総監はマッチポンプすら疑われることになったのにか?」

「マジ……?」

「ヒノケンに関してもお前の手回しによる成果が大きい。隠岐、お前はどこまで想定していた?」

 

 声を潜めて問いかけられるも俺は口を噤む。正直に全部わかっていた、と答えたところで頭疑われるだろうし。

 

「だんまりか……まぁいい。平隊員という立場のせいで、裏で手を回すようになったのではないか、と貴船総監は苦心した結果がこれだ」

「こ~ら。そこ、お喋りしない!」

「やーい怒られてやんの!」

「熱斗くんも! 茶化さない」

「はーい」

 

 真辺鈴(まなべりん)警視 の注意によって会話が途切れたものの、話は終わったとばかりに炎山が鼻を鳴らす。

 俺としては早期解決に動いただけなのだが。上下関係すっとばすし、団体行動が取れないけれど、成果だけは上げるガキの為に特別な立場を与えたってことかよ。事実だからしゃーないけど。

 実際、正式な段取りに従っていたら何人の上役に話を通す必要があることやら、とか考えていたけれども。

 ヒートマンinファイアプログラムがなかったら洒落にならない被害があったかもしれないからなぁ。

 環境維持システムに頼り切った弊害で、耐震強度の低い建造物が崩れる事態も想定されてた、っていうしな。

 組織に混乱を招くのは悪いとは思っているが、俺はこれからも人命を優先に動くと思う。でも、これからはもっと()()()()()って言いたいのだろう。

 

「――さて堅苦しい話はこの辺りにして、君たちにライセンスを渡すとしよう」

 

 形式ばった語りをやめた貴船総監がふっと笑うと、俺たちを手招きする。

 

「といってもそれだけじゃないがね」

 

 執務机に置かれていたアタッシュケースから取り出されたのは――新型のPETだった。アニメ勢ではお馴染みの丸みを帯びたデザインで水色のアレである。

 玩具メーカーから出された名称は『プラグインPET』。

 従来のモバイルPCっぽい見た目から大きくデザインを変更されたそれは、一部界隈だと『3』はアニメから逆輸入されたとも、アニメ用にわざわざデザインされたとも言われている。

 まぁ、ゲーム開発チームからの資料提供が妥当だとは思うけれども。

 

 閑話休題。

 そんな新型PETではあるが、現状まだ一般販売に至っていない代物だ。

 といってもその広告は盛大に打たれ、1週間後には販売予定のものではある為、現物が目の前にあるのは不思議なことじゃない。

 この場にはバリバリ関係者の炎山がいるし、アニメみたく融通してくれたのだろう。

 

「色が違うんだな~」

「こちらの水色のは熱斗くんのだ。光博士から預かったものだよ」

「パパから?」

 

 熱斗は光博士が関与していることに小首を傾げているが、十中八九ロックマン関連だろう。通常のネットナビと違い、エクサメモリを搭載しているので普通のPETでは運用できないことが『1』にて示唆されている。

 今回も同様であるならば、彩斗兄さん未だにオーバーテクノロジーよなぁ。最終作においてもバックアップという保険が機能しない辺り、マジでヤバい。

 あるいは倫理的な問題かもしれないが……あのマッドが今更踏み止まるかぁ、といった疑問が残る。

 

「そしてこちらの白いPETは隠岐くんのだ」

「……ありがとうございます」

 

 お偉方から贈与されたのに思わず頬がヒクついた。実際手に取ってその端末のカラーが普通の白じゃないことが再確認できたからだ。

 丁寧にツヤ消しされているそれは明るい白銀――シアンと同じカラーリングである。一般製品として出回るようなパールホワイト着色とは明らかに高級感が違う。

 思わず炎山に視線を向ければ、無言でワインレッドのPETを見せつけられる。お前の分を心配した訳じゃねぇ! 何気合入れて特別仕様にしてんだ! 

 

「ワタルと炎山の、良くみたらCMじゃ見ない色じゃん! ずりーよ!!」

「多少観察眼は働くようだな光」

「いいなーいいなー! ワタル、気に入らないなら交換しようぜ?」

「光博士からのプレゼント交換する訳にはいかねぇよ」

 

 俺個人としては外装くらい交換したかったが、特殊ネジで固定されているのを見て諦める。ボックスドライバー対応でもない、何だこのネジ? 特注品か?

 

「初期不良などは既に確認済みだが、一応使用感を確かめてくれるかね?」

 

 貴船総監の指示に従って俺と熱斗は新型PETの電源を入れる。

 おぉ、明らかに立ち上がりが早い。UIも結構変わっていて個人的にはこっちの方がわかりやすいかもしれない。

 

「ん?」

 

 しかし、右下にインストールされたネットナビ.EXEが表示された途端、真っ先に違和感を覚える。まず見た目が完全にマネキンっぽい。機械的な無機質さではなく、のっぺらぼうのように顔のパーツが存在しないのだ。

 そして何よりも……動かない。てっきり言語プログラムが未設定であったり、無口な人格データをしているのかと思ったら、そもそも休眠状態らしい。

 通常、セットアップ時でも小さい子供や老人でもわかるように、ネットナビがナビゲーションしてくれる仕様だ。 

 そこから基本的にナビはずっと稼働状態でいることが多い。

 例外としてはナビ自身が重大なダメージを負った時、PETが物理的破損した際に記録領域を守る為の強制停止それから――ナビを入れ替えまたはカスタマイズする時なんかがそうだ。

 

「お察しの通り、それは君の新しいネットナビだ」

「名人さん」

「さんはいらないよ」

「でも俺が頼んだのは内蔵プログラムだけじゃ……?」

 

 確かに俺は入院中、名人さんへ製作依頼を出していた。その代価として色々と頼まれ事をこなしていた、所謂ギブ&テイクの関係ではある。けれども俺はそこまで頼んじゃいない。

 名人さんとて忙しい立場の人間だ。大量のバグ融合体による損耗は激しく、ネット警察上層部からその埋め合わせとして汎用型ネットナビの開発を急かされていた筈である。

 

「隠岐くん、君は市販のものを多少改造して間に合わせるつもりだったね?」

「えぇ、まぁ」

 

 シアンのボディはバグと無理やり修復した影響で想像以上にボロボロということもあり、今あるものを直すよりも新しいものへ移すことを提案されていた。

 それについては俺も異論はない。だからノーマルナビで慣らし運転をしたし、今までの戦術を見直していたのだが。

 

「君も立派なネットセイバーの、精鋭の一員なんだ。こんなところで妥協していい筈がない」

「ですが」

「子供なんだ、大人に甘えたって罰なんか当たらない」

 

 指貫グローブ越しに頭を雑に撫でられ、反論の言葉を飲み込む。こうして用意してもらった以上、厚意に甘える以外に選択肢などないのだから。

 しかし、気を取り直して沈黙状態のマネキンナビへと目をやるが、如何にも名人さんらしくない。

 コロコロコミックからの公募、という点もあってか、彼の持ちナビは結構特徴的な見た目をしている。まぁ、目の前のそれも目立つと言えば目立つのだが、コンセプトがまるでわからない。

 例えば『2』だとゲートマジックで大変お世話になったゲートマンが名人さんのナビだが、こちらは扉を盾にしたり、扉から武器やら兵隊を出現させて戦うスタイルをしていた。だが、このマネキンに武器らしい武器は存在しない。

 ひとまずパラメータでも確認したところで、気付く。この偏り具合は――

 

「光博士に提出されたシアンのデータと、貸与したノーマルナビに記録された戦闘データを元に作り出したのが、このナビだ」

「名人さん……」

「さんはいらない。その顔はどうもお眼鏡にかなったかな?」

 

 その数値はシアンを思わせる配分をしていた。といっても以前のように極端なカスタム特化ではなく、新型ハードによる恩恵を十分に生かし、基礎HPなどに回されている分もある。

 それでも使用感は今まで通りと変わらない。せいぜい誤差を調整するぐらいで済むだろう。

 

『ワタちゃん』

「なんだ?」

()()()()()?』

 

 シアンからの短い問いかけに俺は頷く。

 なんだかんだ二度目の人生で一番長い付き合いをしてきたからこその確認だ。俺が3年近くかけて開発したナビには相応の思い入れがある。

 バグさえ無ければ、いけるところまでバージョンアップを重ねていくつもりではあった。

 だから彼女は乗り換えて辛くないのかと、そう問いかけてくれている。

 

「大丈夫だ」

 

 今一度決意を露わにして俺は従来のPETとプラグインPETを接続する。

 性能面を考慮すれば今のシアンから引き継ぐパーツはほぼ無いと言っていい。せいぜいが蓄積された戦闘データくらいだが、こちらもシアンが意図的に無視している疑惑があるし、プログラムアドバンスに使っているぐらいじゃねぇのか、って印象しかない。

 

『図々しいかもだけど、大事な部分は私が持っていくから』

「図々しいのは今更だろ」

『ひっど』

 

 惜しむような会話もあっさりと終え、シアンの人格データとその付属データが新しいPETへ移行する。

 それに伴い、彼女のガワがシアンドッグ(仮)へと戻る。脳内で美化されていたのか、バグの影響なのか、その外身は随分と不細工で……唇がへの字に曲がった気がした。

 

(今までご苦労様)

 

 『渡』と共に俺も何となく黙祷を捧げ、改めて新型PETの画面に目を移す。

 するとマネキン状態だったナビがすっかりシアンの見た目に上書きされてしまい、その名残も見えなくなってしまう。おニューのボディの割に変化に乏しいのも寂しい気もする。

 

『か、快適過ぎて逆に落ち着かない』

「んだよそれ」

『今まではじゃじゃ馬の機体乗りこなしてたのに、優等生タイプに乗り換えた気分?』

「お前だけロボゲーでもやってたん?」

 

 明確なボケが出てこなかった辺り、シアン自身も困惑が強いらしい。

 素人製作よりもその道のプロが作った方が精巧なものに仕上がるのは重々承知だけど、なんか複雑な気分だ。

 

『で、これが肝心のプログラム?』

「あぁ。ステータスガード、今回の目玉だ」

 

 俺の技術では到底不可能ということもあり、将来的に備えるであろうウッドマンの意見を取り入れたり、名人さんへぶん投げた結果、完成した代物だ。

 その経緯は一部しか聞いていないが、どうもウッドプログラムを改造してできた産物らしい。

 で、その具体的な効果は文字通り、麻痺や混乱などのバッドステータスを防ぐものとなる。マジでシリーズが進むごとに状態異常の凶悪さは跳ね上がってくるからなぁ。事故を防ぐ為に取り入れたという訳である。

 前者はストーリーだけでなく対戦でも猛威を振るい、『3』のとあるナビチップが無法過ぎてヤバかったとしか言えない。

 後者も後者でシューティングバスター攻略には大変世話になった。フォルテに混乱付与すると自分以外のマスにしか狙わなくなるんよな。後、ビーストマン君が棒立ちしてたのも面白かった記憶。

 

 またそれに伴い、シアンの属性が無属性から木属性と変わった。

 火属性に対して2倍のダメージを食らう羽目になるのだが、それ以外の恩恵がデカいのがいい。

 属性限定である【ガイアブレード】のチップが使用可能になるのもそうだが、何よりクサムラパネル上による高速回復が実施されていればゾンビ戦法ができるようになるしな。

 パネル変化ができない相手だとマジで詰ませられるから恐ろしい。『5』でナーフされたのも寧ろ遅過ぎるといってもいい。

 

 ぶっちゃけこの辺りは電気属性と悩みに悩んだ。

 あるいはラウルさん及びサンダーマンからの手厚い協力が得られていたら天秤が傾いていたかもしれない。

 サンダーソウルの効果がチャージショットに麻痺、無属性と電気属性チップに麻痺付与といった効果で、『4』のラスボスをハメ殺しできるんだぜ?

 それを再現できるのならロックマン相手でも勝ち目が見えてくる。尚、天敵であるステータスガード君には無力な模様。

 

『まだ新しいシステムがあるみたいだけどこれって……』

「スタイルチェンジ?」

「シアンだけに限らず、ブルースや他のオフィシャルにも試験運用が開始されたんだ」

「へぇ」

 

 口を挟んだ炎山のPETをどれどれと確かめてみるが、グラサンロン毛の見た目は変わらない。まぁ、この短期間に発現する訳もないか。最悪、原作みたくスタイルチェンジしないで終わるかもしれないし。

 個人的には漫画版のムラマサスタイルは拝みたいものだ。

 

『私は何スタイルになるんだろうね?』

「カスタムじゃねぇかなぁ」

 

 と言いつつもぶっちゃけ俺たちはスタイルチェンジせず終わるのではないか、という諦観があった。

 個人的にはバグストッパーとダークライセンスを生成可能なバグスタイルを狙えればいいかな、とは思うけれど現実はそう甘くないだろうしな。

 まぁ、最悪バグストッパーはどこかで拾えるか、科学省が開発することに期待しよう。

 

「さて受け渡しも無事終えたところで仕事の話をしよう」

「早速ですか?」

「といってもここ最近は大きな事件が舞い込んでいないから未来の話になるけれどね」

 

 おほん、と喉の贅肉を揺らして咳払いした貴船総監が続けて言う。

 

「N1グランプリ、こちらの配置についてだ」

「はいはーい質問! N1グランプリってなんですか?」

「その説明もまだだったね熱斗くん。N1グランプリ、この催しは世界中のネットバトラーの中から最強を決める大会だ」

「最強! すっげー面白そう!」

「落ち着け光。オレたちはその警護ですよね?」

 

 不満をダダ漏れさせる熱斗に炎山が窘めるものの効果は薄いようだ。しかし、

 

「いいや炎山くん。ネットセイバーも参加する運びとなった」

「よっしゃあ! そうでこなくっちゃ!」

 

 パチンと指を鳴らす熱斗に炎山が白い目を向けるも、無視して会話を続けるらしい。

 

「しかしよろしいので?」

「WWWや『ゴスペル』の台頭によってオフィシャルに対し、不安視する声が上がっているのは知っているかね?」

「ではそれを払拭する為に?」

「エンタメとして彼らの不安を和らげるのは勿論のこと、ニホンの防衛組織の威信を示す絶好の機会だと我々は考えたのだよ。それは我が国だけでなく、各国のオフィシャルも招待選手として来訪する予定だね」

 

 貴船総監の説明を聞く限り、原作通りの流れになるっぽい。俄然乗り気となった熱斗に暖かい目を送る辺り、出場選手にも融通が利くのかもしれない。

 

「すべての希望が叶うとは限らないが、君たちにその意思を聞きたいと思ってね」

「ぜったい参加したいです!!」

「……不都合で無ければオレも参加を表明します」

 

 即決する小学生たちの視線が俺へと集まる。目を輝かせる熱斗ほど露骨ではないけれど、炎山もまた期待を寄せているらしかった。が、俺の返答は、

 

「俺は警護に回ろうかと」

「えぇ~みんなで参加しようぜ?」

「遠慮することはないんだよ? 君以外にも警護を担ってくれる人たちは沢山いるんだ」

「いえそうではなくて。警護ついでに試合を全部見ておきたい、ってのが本音です」

 

 事件に対応する時間を確保する為に参加者から外れたというのもあるが、全試合見たいというのも偽らざる本音だ。

 ぶっちゃけ、原作でもアニメでも登場しなかったオリジナルナビが出てくる事が楽しみで仕方ない。

 参加しても面白いだろうな、とは思うけれど、それだと予選が見れないしな。今度こそオフィシャルビームを拝んでやる。

 

「こちらとしては隠岐くんの選択は助かるが……」

「何か含みのある言い方しますね」

「本来であれば炎山くんのIPCがメインスポンサーだったのだが、どこから嗅ぎ付けてきたのかミス・ミリオネアも名乗りを挙げてね」

 

 原作ともアニメとも異なる相違点に目をぱちくりとさせながら話を飲み込む。

 原作時空であればアメロッパ滞在中にバトルチップをスられた熱斗が、闇市に流された自分のチップを買い上げたミリオネアから取り戻すべくバトルする、小さなサブイベントがある。

 それ以降も登場する機会はなく、退屈した金持ちがバトルによって無聊を慰めるだけで出番は終わりだ。

 アニメもアニメでバトルに楽しみを見出す趣向は変わらず、気に入ったネットナビを商品で釣り、サバイバルバトルに参加させて、いずれはコレクションに加える、といった悪趣味なものだった。

 いずれにせよ、N1グランプリに食いつくのは自然な流れのように思える。

 

「そしてその流れでスポンサーが募る内に、クリームランドのプリセンス・プライドも観戦する意思表明を為されたそうだ。その際、現地の護衛をオフィシャルホワイト――つまりは隠岐くんをご指名だ」

 

 やや得心のいかない様子の貴船総監を気にする余裕もなく、俺は心の中で叫ぶ。

 あの人やりやがった! オリンピックや国際大会を考えれば来訪するのは別段不思議ではない。けれど、特別指名は完全にアカンやろ! 

 ニホンの一個人を一国の姫君が懇意にしているって言ってるようなもんだろ、これ!?

 

「彼女は隠岐くんに世話になった、と言っていたが心当たりあるかね?」

「アメロッパ城の一件で多少関わり合いになった程度であります」

「それでもう一度問うが、本当に警護で良いんだね?」

「どうせ試合が無い時間は回されるでしょうし今更ですよ」

「わかった。サポートは十全につけると約束するが、君にはVIP席の警護をお願いしたい。できるかね?」

「了解であります!」

 

 どのみち選択肢が限られているのだ。選手として参加してプライド殿下に応援される姿をすっぱ抜かれるより、オフィシャルホワイトとして適度に相手してやらぁ!

 ミリオネア含め金持ち連中も纏めてだろうが関係ねぇ。

 粗相をしないよう、こっから先はマナーのお勉強の時間だオラァ!

 




楽しいN1グランプリの代わりに、プリンセスプライド、伊集院パパ、ミリオネアのジェットストリームアタックを食らえ!

勿論、主人公のバトルもあるよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。