『いけーっ!』
桜がすっかり衣替えを迎えた5月上旬、今日も今日とてプラグイン行脚の日々を送っていた。
原作のゲームでは細部に至るまで作り込まれており、あらゆるところに存在するプラグインポイントを探す作業がまた楽しいのだ。
電子機器の内部で活動するプログラムくんの会話も一興だが、思わぬところで強化アイテムやチップが拾えたりと、有益な面もあったりする。
その上、出現するウイルスまで変わってくるのだから、その拍車がかかるというもの。カードゲームとアクション、ハクスラ要素が入り交じる独特のゲームシステムがこの上なく面白いから探索にも力が入る入る。
結果、Rボタン連打マンになるのもエグゼプレイヤーにとっては通過儀礼みたいなものだろう。
『そこ! 惜しい!』
が、それはあくまでゲームでの話。いざその世界に転生したからって同じ行動ができるのか、と問われればどうだろうか?
端的に答えれば、片っ端からプラグを差し込んで喜ぶ不審者の誕生である。
ぶっちゃけ恥ずかしさは多大にあるのだけど、小学生の身空ならギリセーフだと信じたい。
ミステリーデータがあちこちに存在しているのは市民ネットバトラー強化説が流布されているのだ。
仮に真実なら配置場所もっと考えろ。関係者以外立ち入り禁止区域に置くのは頭おかしいだろマジで。
『がんばれ! もう少し!』
「そろそろ終わりそうか?」
『なーにその確認?! 育児放棄も大概にしなよパパ!』
「パパじゃねぇよ」
右手に持ったPET越しに戯れ言が聞こえてくる。アクアマリンの瞳を半眼にし、大仰に首を振るものだから、揺れる白銀の長髪が鬱陶しい。一人で盛り上がって恥ずかしくないのかコイツ。
放火事件から約一月。
不法侵入からの相棒(予定)を乗っ取るダイナミックエントリーをかましたシアンに対し、初めこそ排除に動いていたのだが、勢い任せに助力を願ってしまったのは迂闊だった。
結果はどうであれ、彼女に負い目ができたのもまた事実。恩を仇で返せるほど非情にはなりきれなかった。
それに、だ。よくよく考えれば彼女はどの媒体にも存在しないイレギュラー。
どこぞに任せて逃げられる事を思えば、手元で保護観察処分でもするべきか、と判断したのだけど。
今のところ毒気の抜かれる言動ばかりで、こちらを誘導する気配も見られない。
引き出した彼女の証言によれば、たまたま不出来なネットナビが空っぽの状態だから入り込んだのだとか。
盗人猛々しい空き巣宣言に奥歯を噛み締め、続きを促すと、どうも彼女は幽霊的な存在らしい。
何を馬鹿な、と一笑に付すのが普通だが、普通じゃないのがロックマンエグゼ。
なんと『4』のサブイベントにおいて、ナビの幽霊が確認できるのだ。内容としてはサイバーお経で成仏させるというもの。
尚、サイバーお経とは何ぞや、という疑問は置き去りに話は進む模様。
後はデリートされた再戦ナビもまた幽霊の類だと噂されていたな。こちらはただの戦闘マシーンに成り下がっていたので、可能性はないんだけども。
そういや再戦ナビもキャッシュの仕業だと考えられなくもないのか。ファントムオブネットワークをプレイしてないから詳しくは知らんけど。
レジェンドオブネットワークといい、何故アドコレのDLCで収録してくれなかったんや……!
『アドバンスド』? 百歩譲って『バトルチップGP』と『4.5』はGBAやろがい!
「1号から5号は……劣化EXくらいにはなったか?」
『メットんたちを番号で呼ばない! 何度言ったらわかるのさ!』
「んなもん、覚えられっか」
で話は戻って現在、プラグイン行脚の傍らウイルス育成の真似事をしている。『3』や『6』では本格的にやっていたのを思い出し、急遽取り入れた訳だ。
始めた当初こそシアンはブー垂れていたくせに、愛着が湧いたのか個別に名前を付ける始末。
というか俺たちがやっていることは完全に洗脳なんだけどな。ロールと違って使役能力が無いシアンにはウイルスを味方に付けることはできない。
が、ウイルスをハッキングすることで中身のコードを書き換えることは可能だった。
だから破壊活動やそれを邪魔する輩を排除するコードを、ウイルスを標的にするよう変更したという訳だ。
正直、手探りで進めているので順調とは言い難い。
調達したウイルスが量産型だからか大雑把な行動しか指定できないし、行動パターンを増やすことも現状は不可能だった。同時運用しようにも同士討ちするので難しいし。ひと月足らずじゃノウハウが足りねぇわ。
「つーかよ、そっちこそ覚えてんのか? こいつらは次に起こる事件に使うってことを」
『でも起きないじゃん。未来(笑)が見えてるんじゃなかったっけ???』
「全部が見通せる訳でもねぇんだよ」
本来の原作軸では放火事件が起こった数日後に、秋原小学校にて洗脳事件が起こるのだが……随分と間が空いていた。
そもそも原作の描写からして、熱斗宅での放火事件が早まった可能性が高いのだ。
ゲーム、アニメ、漫画それぞれでも何気ない日常からのスタートであり、始業式の半ドンスケジュールではなかった筈。前提がズレているからこそ、ここまでの開きがあったのだろう。
「つっても遅くとも6月までには起こるだろうよ」
『その根拠は?』
「教育実習の時期だよ」
事の発端は教育実習生が秋原小学校に派遣されたことにある。
潜入先となった秋原小学校のネットワークに手を加え、全施設を閉鎖後、洗脳映像を各教室に流し、生徒たちをWWWの手先とするのが事件の全貌だ。
ゲームでは熱斗が教室から脱出後、大元の原因である職員室を目指すこととなるのだが、ほぼ一人で解決する羽目となる。
更にお使い要素がふんだんに盛り込まれたRPGである原作では遠回りを強いられ、相応に時間がかかるのだ。
ゲームでの熱斗視点では放火事件と違って被害らしい被害が見られないものの、それは狭い認識での話で職員たちに被害が伏せられていた可能性も捨てきれない。
それに原作だと学校単位で生徒たちがネット犯罪に手を染めていることもメールニュースで確認できることから、他の地域では計画が成功しているのも仄めかされているしな。用心に用心を重ねるべきだ。
『未然に防ぐのはやっぱナシ?』
「そうしたいのも山々だけどなぁ……」
犯人が事前に洗脳映像を仕込む場面を直接目撃すれば言い逃れできず、現行犯逮捕まで持っていくのは可能だとは思う。単独犯でモヤシ体型だから、デカオを犯人にぶつけるだけでもどうにかできるかもしれない。
が、それだと今後困るどころか最悪詰む可能性も否定できないんだよな。
「その人、改心して仲間になるんだよ。釈放された後にチップ屋開いて色々助けになるんだ」
『じゃあそんなに悪い人じゃないんだ? なら説得すればいいじゃん!』
「倫理観は欠けてそうなんだよなぁ……。説得も俺には厳しいし」
そもそもの動機がレアチップを購入する資金目的にWWW入団という軽いものだし。生活に困窮している訳でもないのに闇バイトする奴がまともかと言われると正直回答に困る。
改心後も小学生相手に労働を強制させるわ、金持ち相手にチップの値段吹っ掛けるわで、私欲に動く場面もあるから原作プレイ当時はいつ裏切るのか疑っていたこともあったっけ。
そんな彼への説得材料は無いに等しい。
原作では熱斗くんへの説得で心が動かされていたが、直接対決で負けた後だったから響いたのもあるだろうし。
「だから事件の被害を軽減する為にウイルスを育ててる。手が足りない俺たちの対抗手段だってのにお前はよぉ」
『こんだけ手間暇かけてるのに愛情湧かないワタちゃんがおかしいんですぅー!』
「だって感情データないだろ、こいつら」
『私の愛で芽生えるかもしれないじゃん!』
「ねーよ」
現に敵ウイルスを全滅させた後、それぞれ隔離したけど反応が一切見られないし。
原作のレアウイルスだったり、アニメの愛嬌たっぷりの動きがあればまた違った感想が持てたけれど、完全にプログラミングどおりの動きしかしないから、現在完全静止状態のウイルスをどう愛でろと?
「おーうっ、ワタ坊! こんなところで奇遇だな!」
「ん?」
ひとまずの戦果は見られたのでプラグアウトしたところに、背後から声をかけられる。
ロックマンエグゼ世界では珍しい自転車のブレーキ音と共に現れたのは、頭頂部全体が禿げ上がり、
でっぷりとした中年腹の下に巻いた黒の腰エプロンに描かれるタイの絵柄に、白のゴム手袋と長靴から見てわかる通り、魚屋を営んでいる。
「久しぶりです、マサさん。そちらは出張販売で?」
「おうよっ! 魚は鮮度が命! 美味しい内に食べてもらいてぇからよ!」
腹の底から出る大声ながら不快に感じないのはその気風の良さからか。江戸っ子気質で、親しくなってからは魚をくれる気前の良さもあり、前世から更に好きになったキャラだ。
「ところで副業の件、考えてくれません?」
「またかよワタ坊。俺にゃあ天職の魚屋があるって言っただろうがよ」
「調べた感じ、オフィシャルって時間に都合付けられるみたいですし」
「何度言われても同じでぇ! 俺は魚一筋で生きるってぇ決めてらぁ!」
相も変わらず頑固ではあるが、情に厚い人だということも知っている。だから、
「熱斗ん
「あァ、ありゃあ災難だったな」
「それ最近話題のWWWの仕業だっていうし、今後も危ない目に遭うかもしれないと思うと怖くて怖くて。そんな時、頼れる大人が近くにいればなぁ、と」
「しかしなぁ……」
今までにない手応え。こちらから目を逸らし、迷う素振りを見せるマサさんにもう一押しだ。
「きっとまりこ先生も不安だろうなぁ……」
「まりこ先生……だァ!?」
とある女性の名前を振ってみればマサさんの反応は劇的なものだった。
それもその筈。
大園まりこ、若手の美人教師で熱斗たちの担任で――マサさんが惚れた相手でもある。
どこぞで接点を得たかは知らないが、いつの間にか惚れていたので、そこを突かせてもらう。
「仮に学校で事件が起きた時、マサさんはそれを知っても指を咥えて見ているしかできないんです。ただの一般市民だから」
「うぐぐ」
「でもオフィシャルになったなら? その権限で堂々と救うことができるんですよ」
「わぁーった! わぁーったよ! 男マサ、そこまで頼まれちゃあ仕方がねぇ! やってやんよオフィシャルネットバトラーをよぉ!!」
ようやく折れたマサさんに良い笑顔を向けると早速説明を始める。
まだ実装されていない『2』の市民ネットバトラーと違って、そこそこ条件は厳しいがマサさんなら何とかなるだろう。
人格面も全く問題無いし、肝心の強さも何せ『1』時点はポッと出なのに最強候補に挙がる人物なのだから。
シナリオ終盤辺りでいつの間にか科学省の前で屋台を構え、話しかけることでネットバトルができるだけのキャラながら強いの何の。
『3』ではしれっとN1グランプリに出場しており、そちらもベスト8と実力者なのは確かだ。
ちなみにアニメ版はもっと盛られている。
表ではPETも持たない化石人間を振る舞い、裏では凄腕のネットエージェントとして活躍するビーフ司令その人なのだ。子供向け故、その変装は雑の一言だが、普通にカッコいいのが悔しい。
どちらにせよこれほどの人材を遊ばせておくのは非常にもったいない為、数年間勧誘を続けていたのがようやっと実を結んだという訳だ。
「――てな感じで、他にわからないことがあればオフィシャルセンターで確認すれば問題ないと思います」
「おう。色々すまねぇなワタ坊」
「こちらから頼んだことですし、いいですって」
その後、当たり障りのない会話をした後、俺に鰆を手渡して去っていくマサさん。
……アニメ1話でも思ったけど、生身の魚をそのまま手渡すのは迷惑だからやめてくれ。
『生臭い手で触らないでね』
「お前は臭い感じねぇだろうが」
5月にもなると流石にクラス内の立ち位置も決まってくる頃で、教室内にはいくつかのグループに分かれる。俺の所属する5-Aにおいて中心的な4人がいる。
一人は我らが主人公、光熱斗。
青いバンダナがトレードマークで、基本明るく素直な性格ではあるが、お調子者で口が悪くなるのが玉に瑕。漫画版の不良路線に走らなくて少し安心している今日この頃。
次にメインヒロインの桜井メイル。
赤毛のショートカットで秋原小学校1の美少女と謳われているが、その文句に負けていない可愛さだ。の割に原作では見惚れるモブがいないんだよな。あれか、熱斗とイチャついているから諦めている奴が多数なのか。
原作ではいじらしいアピールに気付かない熱斗とのやり取りに微笑ましさを覚えるのだが、アニメOPだと抱き着き魔にされる模様。
自称熱斗のライバルである大山デカオも忘れてはいけない。
小学生離れした大柄な体格でガキ大将気質ではあるが、嫌味なところがない少年だ。漢を磨く信条を持つだけあって弱い者イジメを嫌い、ライバル視した熱斗に負けた時でも素直に相手を認めることができる少年だ。
アニメ版だとメイルに惚れているのだけど、ゲームだと女の子として意識していないことに驚いたのが当時の俺である。まぁ、実らない恋をさせても悲しいのでスルー案件だな。
最後に残るのは小学生ながら飛び級とかいうぶっ飛んだ設定を持つお嬢様の綾小路やいと。
長く伸ばした金髪をツインテールを三つ編みにし、広いおでこがチャームポイントだという彼女は他の生徒より年下とあってか身長も小柄だが、なかなか角が立つ言動をする少女だ。
とはいえ決して悪い子ではないし、シリーズが進めば丸くなって親しみやすくなる。
ちなみにアニメ版はツンデレ。原作より財力でやりたい放題してて面白かった記憶がある。
そしていつもの4人に交じってしまった異物がいる。そう、俺である。
前々から熱斗とデカオとは接点を持っていたものの、特別仲が良かった訳でもなかったのだが、オリジナルナビ持ちという共通項が彼らとの結びつきを強くした……というのは切っ掛け程度で、シアンが彼らのネットナビに絡みに行って仲良くなったおこぼれを貰っている、というのが正しいだろう。
氷川くんのポジションを奪ったみたいで申し訳なく思う。氷川くん、隣のクラスだからなぁ。
『おーおー。ネッちゃんと違ってロックマンは相変わらず身長が伸びないねぇ』
『ボクはネットナビだから当たり前だよ!』
シアンにウザ絡み――ヘルメット部分を雑に撫で回されているのが、ロックマン。
通称青いネットナビと言われるだけあって、全身紺のボディスーツを青い装甲で覆った外見をしている。
真面目で優しい性格をしているからか、いちいちシアンに付き合ってあげている。調子乗るから適当に流すことを提案してもやんわり断る辺り、本当にお人好しだ。
モデリングが小学校高学年に近いこともあってか、女子高生くらいのシアンと絡むと犯罪臭がどうもね。おねショタ? 全年齢向けゲームやぞ。
『むー……』
で、そんな2人の絡みに面白くなさそうな女の子ナビがロール。
オペレーターであるメイル共々、主人公コンビに好意を抱いているので嫉妬しているところが可愛らしい。
ただ今見返すと恰好が、その、フェチに溢れているというか。
首から上はまだいい。黄色い半透明のアレが特徴的な見た目をしていて、後ろに流しているローポリのロングヘアの先端付近に緑色のリボンが女の子らしさを感じさせる。
ただ、首から下。まずピンク色のピチピチのノースリーブのタートルネックに、それよりも濃い薄紅色の長手袋にブルマ、黒タイツの上からピンクのニーソにブーツの重ね履きだ。
ネットナビの都合上、肌を露出しているのは顔面だけなのだが、妙にエロスを感じるよね。デザインした奴は変態という名の紳士だよマジで。
そんなロールのおろおろを見つめるのが黄色を基調とした大柄なナビがガッツマン。
オペレーターのデカオ同様、頭の出来がよろしくない典型的なパワータイプ。シンプルイズベストという感じがして個人的には嫌いじゃない。
アニメだとロールに片思いしているのだけれども、原作はそうじゃない。アニメスタッフは当て馬が好きなのか。
で、我関せずと傍観するのがやいとのネットナビ、グライド。
優秀な執事型ナビらしいのだが、どうも熱斗視点だとその描写がされない地味なナビだ。
他2人と違ってゲームだとどのシリーズでも一切戦えないし、活躍の場もあまり思い浮かばない。オペレーターのやいとが金持ちなお蔭でレアチップばんばん使っているのに、だ。
トンボっぽい羽が生えているからか飛行能力を有しており、アニメ版でロックマンを乗せて飛んだくらいしか印象ねぇぞ。
正直、元となったロックマンDASHのがキャラ立ってたんじゃねぇかなぁ。
「なーに変な顔してPET見てんだワタル?」
「いやウチのが迷惑かけてるからプラグアウトしようか迷ってさ」
「こんくらい別にどうってことねーだろ? なぁ熱斗?」
「んー? 身長かー……ロックマン的にはどうなんだ?」
『別に今のままでも不満はないから大丈夫だよ熱斗くん』
ハハハと話は流れて別の話題へ。
小学5年に進学した当初こそオリジナルナビの構想を話していた熱斗とデカオには驚かれたが、シアンをすんなり受け入れる度量が凄ぇよホント。シアンもシアンでコミュ強なのか馴染むの早ぇし。
中身おじさんの転生者は世界のスピードに置いてけぼりよ。
「はーいみんな! 席について」
チャイムと同時に教室に入ってくるまりこ先生の声に、生徒たちが蜘蛛の子を散らすように自分の席に戻っていく。
今日も伊達巻みたいな髪型がバッチリ決まっていて整った顔立ちよりそっちが気になって仕方がない。
「今日から2週間だけだけど、みなさんに勉強を教えてくれる新しい先生を紹介します」
「日暮闇太郎でマス。趣味はバトルチップ集め。特にレアチップを持ってる人はアッシに一声くれると嬉しいでマス」
もさもさとしたボリュームのある髪型に、眼鏡越しの垂れ気味の糸目。ヒョロヒョロの体躯に覇気の無い声。まさにステレオタイプのオタクといった風貌の男こそ今回の犯人である。
もうひと月待つことも考えていたから不意打ちだったぜ、マジで。史実みたく熱斗も遅刻してないしよ。
「これから日暮先生と楽しく勉強していきましょうね。ホームルームを終わります」
大人たちが退出し、ガヤガヤとした空気を取り戻す教室内。
あちこちで新顔の日暮さんの印象が飛び交うが、悪印象ばかりだ。平成の価値観を引き摺るエグゼ世界だとオタクは気持ち悪い存在だと描かれるから悲しいものよ。令和だとスタンダードの位置に近づくから余計に。
俺だって隠れオタクだし、気分は隠れキリシタン。
シアンの存在もそれに拍車をかける火種になりかねない。
自身と同性ナビを使うのが普通とされるロックマンエグゼにおいて、異性ナビを持つのは珍しいし、そのオペレーターは女性しか確認できていない。
つまり何が言いたいのかというと、格ゲーで女キャラ使う男子小学生はどうなるか、ということ。
熱斗たちが底抜けにいい奴だからそうはならかったけれど、普通はからかわれるわ、こんなん。
しかもシアンはロールと違ってかなり現実寄りの見た目をしているのもヤバい要素のひとつで――アイドルオタクのオペレーターだと思われかねないというね。それも売れない地下アイドルの、というディープなの。
『ワタちゃんが言ってた人、ホントに来たね……って何落ち込んでるのさ』
「気にしないでくれ……今、切り替える」
『で、これから洗脳映像が流れるってマジ?』
「できればアニメ版のが平和だからそっち路線祈ってるんだけどな」
しかしそんな願いもむなしく、ブラックボードから鳴り響く警告音によってかき消されるのであった。