主神ソーマ
自分が、異世界の人間であったことに気づいたのは、とある少女に恩恵を授けた瞬間だった。
「リリルカ・アーデ……。か」
「り、リリはリリですが……」
自身の眷属である
背中に刻まれた【
リリルカの後ろには酒を煽り口元から涎を垂らした彼女の両親。そして、【ソーマ・ファミリア】の団長を務める男の不敵な笑顔。
「いっそ良い拾い物と考えるか……」
「ソーマ様?」
「少し興味が湧いた。二人だけにしろ」
自身の酒造りのみに興味を示し、またファミリアは酒造りの資金稼ぎとして関わらなかった主神の行動に、団長は呆けた顔をした。
「何をしている? 早くそいつらを連れて外へ出ろ」
服を脱ぎ、自身に背中を向けたままの少女と面と向かっていた団長は、どこか苦虫を嚙み潰したような顔を見せたのち、リリルカの両親を引き連れて部屋の外へと出て行った。
部屋の中には、くつくつと鍋が煮える音と、壁に染み付いた酒の匂い。そして窓から入る外の光。
「リリルカ。早く服を着ろ。少し話をするぞ」
「え? え?」
戸惑う少女を気にせず、俺は部屋の端に置かれていた二つの椅子を持ち出し向かい合わせに置くと、一つに座る。
きょろきょろと部屋の中に視線をさまよわせたリリルカは、意を決したかのように服を身に着け、向かい合うように席に着いた。
「改めて話をしよう。俺はソーマ。歳はまぁいいや。……あー趣味は酒造り? お前は?」
「り、リリはリリです。リリルカ・アーデ。まだ三つです。趣、味はわかりません……」
様子をうかがうような彼女の目線に疑問を感じるが、ソーマの作った酒のせいで、両親は親としての立場を取らなくなっている以上、自身の親を狂わせた原因であることを考えれば、それもそうだと納得する。
「両親のこと、俺のこと。お前はどう思っている?」
「どうって……。嫌いです。ソーマ様のお酒を飲んでおかしくなったし、リリのこと殴るし……」
「それはすまない。謝罪して許されるようなことじゃないが」
謝らせてくれ。そう言って俺は頭を下げる。
急に降って湧いた異世界人の感覚としての謝罪。そんな行動に、親やザニスたちから聞いていた話と違うとリリルカは面を食らっている。
「君は、現状を変えたいか?」
「突然何ですか……」
「少し自分を見つめようと思ってな。酒造りも行き詰っている。興味がなかったからといって眷属を無視しすぎた」
お前らの顔を見ようと思ってな。そう言って、彼女の背中に刻まれた【神聖文字】を読めるよう書き写す。
「まずは【
リリルカ・アーデ レベル:1
| 力 | I | 0 |
| 耐久 | I | 0 |
| 器用 | I | 0 |
| 敏捷 | I | 0 |
| 魔力 | I | 0 |
《魔法》
シンダー・エラ
詠唱式:【貴方の
解呪式:【響く十二時のお告げ】
《スキル》
【
・『力』『耐久』『精神』の高補正
・精神汚染に対する高抵抗
・飲酒時における全アビリティ能力の高補正。補正効果は酒質に比例。
「リリは何をすれば……」
「ああ、辛いとは思うが、今まで通りの生活を続けてくれ。すぐに整えてしっかりとした生活を送らせる。俺とお前の約束だ」
多分団長のあいつや両親に殴られることにはなるが、耐えてくれ。
その言葉を添えて。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
まずは整理。
そう考えた俺は、団長に大きな紙とペンを用意させたあとは、部屋に誰も近づけるなと命令した。
そして机の上に広げると、記憶の中にあるソーマとしての部分と異世界人としての部分を書き記す。
ソーマ・ファミリアについてのこと。団員のこと、オラリオにおいての自分の立ち位置。
「団員とか、団長とリリルカ以外知らないのやばくね?」
異世界人としては、ソーマという言葉について。特に回復アイテムとして名前を聞くことは多かったが、神としては知らない。ほとんど無知だ。
まあ神が作る酒。つまりは神酒ということは知っている。
というか、何よりも素晴らしい酒を作るって目的、曖昧すぎないか?
至上至高の酒に溺れる人が醜いとか、酒なんて酔ってなんぼだろ。
酒は薬であり毒。だからあんな幼い女の子が恩恵を得なくちゃいけない環境になるんだろうが……。
というか、
「酒造りは続けるとして、全てを魅了する依存性の高い酒。これは厳禁だな。回復薬的なのを作ってファミリア内に流布させよう。それに、資金集めするならダンジョン行くより酒作って売るべきだろ」
ビールに清酒、ワインやリカーにウイスキーと種類はたくさんある。
「市場調査。だな」
酒にもいろんな製法がある。その知識もあるにはあるっぽいが、
「優先順位は市場調査。次に売れる酒造りと