神酒←「みき」って読めんよね   作:パルプンテ権左衛門

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今更ですがオリキャラのタグを追加しました。

出来る限り出さないようにしようと思ってましたが、
暗黒期編無理過ぎて無理です。

そのうち良い感じに紹介します。


準備

 闇が着実に広がっている。

 

 それもそのはず。ゼウスとヘラの派閥が潰れ、街の治安が悪化した。

 大衆の神ガネーシャと秩序の神アストレア。その他多くの神と眷属が立ち上がるものの、絶対的な支えであった二大派閥が無い影響は多い。

 

 それに比例して勢いをつけたフレイヤとロキの派閥は、多くの神が無視できない存在になりつつある。

 

「このオラリオで一番守らんとあかんのはデメテルんとこや。あそこがやられるだけで冒険者だけやなく街全体の機能が落ちる」

「そうね。重要度だけで言えば今はギルドよりも上かしら」

 

 神会にて議題にあがったのは、緊急時の優先順位について。

 闇派閥が活発化する現状。叩けば叩くだけ湧き上がる闇派閥に多くの神と眷属が頭を抱えていた。

 

「イシュタルの歓楽街とソーマの酒所は?」

 

「イシュタルのところに関しては多くのアマゾネスがいて自衛ができる。金と女が集まる場所ではあるが、あまり気にしなくても良いんじゃ無いだろうか?」

「そうね。ただ、ソーマのところは冒険者も良くて第二級冒険者しかいない。非冒険者が多い構成である以上何かしらの対策はいるかもしれないわ。私やゴブニュのように団員がレベル2以上のわけでも無いから」

 

「見回りの頻度を増やす? それとも常駐……」

「可能なら常駐の方が良いかもしれないな。いまオラリオの金の多くがギルドかソーマのところに集まってる。冒険者だけじゃなく、市民含めての金が」

「できる限りはギルドに預けてはいるが、酒の収入だけでもバカにならん。正直、団員も増えているが闇派閥が紛れている可能性はなくも無い」

 

 それに、ソーマ・ファミリアは働き手を増やすことに重きを置いているため、純粋な冒険者は少ない。

 探索部と商業部に分けているとは言え、多くの団員は酒造りをしたくて、酒を飲みたくてファミリアの門を叩いている。

 

「持ち回りでソーマのところに団員を送る方が良いか」

「そうしてくれるとこっちもしてもありがたい。飯と仕事終わりの酒は喜んで提供させてもらう」

 

「他の議題とすれば  

 

「それで? お前はどうするんだ?」

「珍しく真面目だなガネーシャ」

 

 会場の中心から離れた俺のところへとやってきたガネーシャ。

 普段の雰囲気から大きくずれている彼を見ると違和感がすごいが、街を守る側の存在としてピリピリするものなのだろう。

 

「どうする。とは?」

「単純な話だ。ここからオラリオは大きく闇に傾く。大きく強さを持った二柱がいなくなった今、不安が大きくなり、酒に頼る者が増える」

「確かにな。実際、売上は上がってるが客層は悪くなっている」

「ファミリアとしての対策は決めているのか?」

 

 強盗や襲撃が起きたときはどうするのだとガネーシャは言いたいのだろうが、正直俺たちのファミリアが執れる行動はほとんどない。

 流れに身を任せ、なくなったらまた初めから作り始めるだけだ。機材がなくなるのは非常に惜しいが、ファミリアの皆が知識として酒造りを知っている。俺がいなくても俺の酒を造ることができる。その事実が、最近とても心地よい。

 

「日和見というわけでもないし、何もしないわけじゃない。オラリオから離れたいと言っている団員にはある程度のお金を渡してオラリオ外での新しい生活ができるよう取り持っている」

「見回りは増やせる。が、すべてがすべて俺たちが対応できるわけじゃない。分かってるか?」

「もちろんだ」

 

 呆れた様子のガネーシャは別の神に呼ばれたようで俺のもとから離れる。

 

 ただ、ガネーシャが言う通りだ。俺たちも俺たちで自衛の方法を考えていかないと行かない。

 最終手段としては神酒を無理やり飲ませて無力化させる方法があるが、可能ならばとりたくない手段だ。光と闇という言葉で表現はしたくないが、光側のファミリアとして逸脱し過ぎない方法を考えていくしかない。

 

「そういえば、イシュタルのところから来てるアマゾネスに変わった子がいたはず……」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「お戻りで。神ソーマ」

「ああ。バクティは居るか?」

「バクティなら酒の在庫出しに倉庫に行きましたけど……」

 

 粗暴な冒険者たちが目立ち始めた酒場に戻った俺は、ウェイトレスの制服に身を包んだアマゾネスを探す。

 イシュタルのファミリアに属しながら身を売ることを好まず、客を取らないことで半ばイシュタルから押し付けられた冒険者の一人。それがバクティ。

 

「ああ。バクティちょっといいか」

「どうしたんだいソーマの旦那。なんか用かい?」

 

 イシュタルのファミリアから来た眷属たちは、割とウェイトレスの制服を着崩すものが多く肌をさらすものが多い中、バクティは数少ない身なりを整えているウェイトレス。

 良く焼けた小麦色の肌と長い黒髪。出るところは出るプロポーションをきっちり隠しているが故に出る妖艶さ。アマゾネスらしく無い立ち振る舞いだからこそ醸し出される独特の雰囲気に、彼女に会いたくてやってくる冒険者も多い。

 

「バクティは確かレベル3で合っていたか?」

「ああ。あってるよ。ダンジョンにしか潜ってなかったからね。他の子たちよりもランクは上さ。それがどうかしたのかい?」

「いや、単純な話で引き抜きだよ。イシュタルのところから完全に俺たちのファミリアに移籍しないか?」

 

 手に持っていたお盆と酒をカウンターに置いた彼女は顎に手を当て少し考える素振を見せると、訳アリだね? と小さく口に出す。

 

「正直俺のファミリアには自衛手段がない。ネクタルと数人しかレベル2以上がいない中で、ここで何か起きたときにガネーシャなりアストレアなりに頼む時間が惜しい。その場で対処できる手段としてね」

「そうなるとあたしは酒場(ダーナ)じゃなくてダンジョン(パティ)側ってことかい?」

「いや、待遇は変わらないさ。好きなだけここにいて良いし、仕事終わりの酒もある。休日はダンジョンに潜ることができる。違いとしては、ウェイトレスの勤務中に武器を携行できるか否か。くらいだ」

 

「なるほどねぇ……。イシュタル様には伝えてんのかい?」

「いや、今回の神会に来なかったから直接話すことは出来てない。この後手紙でも書いてギルド経由で依頼するつもりだ」

「ははは。んじゃ構想段階ってわけだ。んじゃあ少しばかり考えさせてもらっても良いかい?」

「もちろん。俺からの話はこれだけだから、あとは業務に戻ってくれていい」

 

 カウンターに置かれたままだったお盆を彼女に渡した俺は、一杯酒を出してもらう。

 こちらとしてできることは探索部(パティ)の戦力を上げること。そして、酒造りを任せられる商業部(ダーナ)の者を増やすこと。

 

「ソーマ様は、アマゾネスが好きなんですか?」

「……どういう意味だリリルカ」

「いえ……何でも……」

 

 いつの間にか横にやってきていたリリルカから向けられる視線に違和感を覚えつつも、俺は酒を煽る。

 

「ソーマ様はお酒が好きだと思っていたのですが、“大人の女性”が好きなんですね」

「お前まだ6つだろ。何を言っている」

 

 ジーッという擬音が聞こえてきそうな程見つめてくるリリルカ。リンゴサイダーを彼女に持ってくるようにバーテンに伝える。

 

「俺は俺ができることをしてるに過ぎん。商業部を広げる、探索部を強くする、そのための酒場であり酒でありお前たちだ」

「ふーん。そうですか……」

 

 まだ6つ? のはずであるが、なぜかカーリーやサラスバティ達故郷の女神と相対しているような感覚。

 

「ダンジョン探索は順調か?」

「はい。今日は戦いもしました」

「怖くなかったか?」

「怖かった。ですけど、でも、ちゃんと戦えました。団長にも褒められましたし」

 

 そうか。そういって俺はリリルカの頭を撫でた。

 

「いつかお前とも酒を飲めたら良いな」

「リリだってみんなと一緒にお酒も飲めます!」

「だめだ。せめて10になってからだな」

 

 そう言うと頬を膨らませたリリルカに、俺は思わず笑った。

 

「なら4年後です! 一緒にリンゴ酒飲んでください」

「ああ。約束だ」

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