神酒←「みき」って読めんよね   作:パルプンテ権左衛門

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会話文多め。


試飲と試闘

 目の前には朱髪の酒カスことロキ。

 右側には青い髪で反神酒の相談に乗ってもらった薬神のミアハ。

 左側には黄色の長髪でお互いにお得意先である女神のデメテル。

 

 四角のテーブル一つを囲んだ4柱の神の前に置かれているのは俺が作った神酒と、先日ザニスが飲んだ反神酒の試作品それぞれが入れられた酒瓶2つ。そしてグラスが2つずつ計8つ。

 

「忙しい中呼んですまない。若干呼んでいない奴が紛れ込んではいるが……」

「あかんでデメテル! いくらソーマの作った新しい酒が気になるからってやってきたら」

「いや、あなたじゃない……」

「あ、あはは」

 

 ザニスが飲んだ試作の反神酒(アンチ・ソーマ)。ダンジョンに潜った帰りや次の日など彼のことを注意深く観察していたが、俺の目にはザニスが酔っているような雰囲気はなかった。

 そこで、自身の整理も兼ねて以前反神酒の相談をしたミアハと食材の仕入れをしているデメテルの2柱を呼び試飲してもらおうと声をかけていたのだが、当日酒場を利用していたロキに対しミアハが試飲会をすることを漏らしてしまったせいで、この状態になった。

 

 まあ、起きたことは仕方がない。そう思い込み、それぞれグラスを準備した。

 

「それにしてもその反神酒っちゅうのは黄色いんやな。もっと澄んだ酒想像してたわ」

「薬草などから抽出したエキス次第で色は付くと思っていたが、ここまで鮮やかなんだな」

「ソーマがはちみつを大量に仕入れてたから、ミード酒? をもとにしてるんでしょう?」

 

「正解はデメテルだな。はちみつを基本にしてジンと薬草たちを合わせた形だ。見た目よりも酒精はあるぞ」

 

 飲みにくく感じるのであればと、今度シードルに使ったリンゴを使って改良するつもりだが、秘密にしておこう。シードルも殆ど完成してるが市場に出していないし。

 

「とりあえず、私たちはどうすれば良いかしら?」

「一旦神酒を飲もう。その後反神酒だ」

「うっひょ~ソーマただで飲めるとかホンマついてるわ!」

 

 グラス四つに神酒を注げはまずはロキが口をつけ、続いてデメテルとミアハが。俺はその様子を見て最後にグラスを傾けた。

 

 喉を焼く感覚と同時に鼻を抜ける爽やかな空気。口に入れた瞬間の感触はまろやかだが、喉元を通れば体の芯を熱くするような少しの辛み上がってくる。

 

「ああ。やっぱソーマはええなぁ。なんちゅうか、独特なんよな。ワインとかそんなんよりも」

「それこそジンやウォッカに似た味よね」

「ただ、それも少し違う。言葉にするのは難しいが、とても美味しいよ。ソーマ」

「いや、ソーマの試飲会じゃないんだ。賛辞はいらない。それよりも次だ」

 

 止めなければロキがずっと何か言いそうなので会話を無理やり止めて、今度はからのグラスに反神酒を注ぐ。

 初めに飲むのは俺。今度の最後はロキだ。

 

  っ!?」

「すごく……、独特だな」

「なんていうか、飲みにくいわね……」

 

 生薬というミアハからもらったヒントを使い、薬について調べ、酔い冷ましに良いと聞く香草をふんだんに使っている。そのせいで飲みにくい部分もあるだろう。

 極東あたりの神たちに話を聞き、いろいろと調べた知識で作ったから、求めている効果が本当に出るか。

 

「一応、体内の血行を整える効果があるもの、胃の調子を整える効果があるもの、体の熱を抑える効果があるものらをまとめた薬草から液を抽出し、ミードとジンに混ぜたのが今俺たちが飲んだ反神酒だ。いろいろ改善の余地はあるだろうが、素直な感触を教えてほしい」

 

「これ、ホンマに酒か?」

「一応。薬の成分が入っている酒。だな」

「あ~。なんちゅうか、個神的にやけど、酒に振り切るか薬に振り切るかした方がええんとちゃうか? 酒として飲むには薬が邪魔しとるし、薬として飲むには飲み心地が酒過ぎるな」

 

「私からも良いだろうか」

 もちろん。とミアハの発言を促す。

「飲んだ感覚だが、ソーマが言う通り体に影響のある感覚はある。おそらく医療の神独特の感覚なようが気がするが。ただ、人で試したことはあるだろうか」

「子らにはまだだ。俺だけが試飲している。神酒を飲んだ時のような酩酊が起きては本末転倒だがな。ただ、先日ザニスという眷属に誤って飲ませてしまったとき、本人は酔った雰囲気はなかった。その原因もわからないから皆に試してもらおうと集まってもらった」

「そうだな……。薬としての部分で話すとすると、効果が実際にどのようにして出るのか子らに協力してもらい飲んでもらうのが一番だろう。生薬に明るくはないが、どの薬草を増やし減らすのか程度の簡単な助言ならできる。と思う」

「そうね。そのザニス? に異常は出てないんでしょう?」

「ああ。数日間様子を見ていたが日常生活にも問題なくダンジョンも潜っていたくらいだ」

「なら、ザニスに飲ませればいいじゃない。ソーマと反神酒を両方飲ませて確認するのが一番手っ取り速いじゃない」

 

 他に飲ませられる眷属はいないの?

 そうデメテルに聞かれて頭に浮かぶのは、あの日ネクタルによって返り討ちにされた新体制に不満があった面々。カヌゥやリリルカの両親たち。定期的にネクタルが神酒を少量ずつ渡している者たち。

 

「その顔は居りそうやな」

「あまりやりたくは無いがな」

「それじゃあそのソーマに魅了されるような症状が出なかった件だけど……」

「ソーマとちゃうから。なんてオチかも知れんで?」

「いや、『シャシン』シリーズを作成したときに神酒か否かに限らないことは確認しているからその線はない」

「無意識に神威を制御していたとか」

 

 確かに、可能性としてはある。

 酔わすことを意識して作成していたか否か。製法や材料を抜きにした違いはそこだ。反神酒は酔いを醒ますことが目的だから。

 

「あーなんやろうなぁ」

 そう言いながら空いたグラスに神酒を注ぎグイッとあおるロキ。

「うちは下界に降りてから神威を使ったこともないし、そもそもアンタやフレイヤみたく無意識に神威が漏れ出るタイプやないからなぁ。デメテルもミアハもそうや」

「そうね。故郷(オリンポス)の面々の中だと、概念を司っていた神なら何かしら可能性はあるけれど。火とか海とか」

「たしかにフレイヤは美しさっちゅう概念の神やな」

「私の領分とはかけ離れているな……」

「神威を抑えていた。だが、フレイヤに聞くのも難しいな。あいつは抑えられたとしてもそもそも抑える気がないだろう? そういうやつに聞いても無駄だ。聞くにしても最終手段だな」

 

「それこそディオニュソスに聞いたらどうかしら? ディオニュソスが作るワインはソーマみたく魅了された人は少ないんじゃない?」

「せやな。たしかアイツと仲良かったやろ」

「それほどでもないぞ。共同で酒は出したりしたが、あまり時間がないのか顔を突き合わせて話すほどじゃない」

 

 ただ、同じ酒を司る神同士相談はできるような気はする。

 

「そうだな。今度聞いてみるとしよう」

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「これが【鞭刺し姫(スタビング・ウィップ・レディ)】……。想像以上だな」

 

 先日正式に改宗したバクティを含め、リリルカ、ネクタルの3人は13階層まで降りていた。

 

「ムチと短剣。ですね……。凄い」

 

 大きなバックパックを背負い、本格的なサポーターとして歩み始めているリリルカは、褐色の女傑の動きに声を漏らす。

 

「ははっ! 褒められたって何も無いさ」

 

 モンスターに対し右手に持ったムチで間合いを管理し近づけさせず、また時々ムチによって絡め取られバランスを崩したモンスターを懐に引き摺り込み左手の短剣で攻める。

 

それ(ムチ)は独学か?」

「ああ。昔テルスキュラにいた頃に近づくとヤバい奴がいたのさ。アイツに近づかず戦うために必死だったよ」

 

 結果戦わなかったけど。と笑う彼女だが、その口調はリリルカから見ても心底恐れているような雰囲気だった。

 

「リリルカ。前に教えたことは覚えているか?」

「はい! この13階層からが中層で、求められるレベルは2。レベル2に上がった冒険者が油断しやすく命を落としやすい階層……。です」

「そうだ。リリルカはまだレベル1だが、基本的に俺が守る。バクティの戦い方を知るためにここに来たが、だいぶ慣れてきたな」

 

 バックパックを持つようになってから、メインで戦う冒険者の邪魔をせずドロップアイテムを回収したり、周囲の状況警戒から何からかなり細かく指導をされている。

 

「正直6歳のサポーターって話だから不安視していたが、普通にやるじゃないか」

「団長に色々教わったので!」

 

 普段、レベル4のネクタルではリリルカがいるべきダンジョンの階層と適性が違うため困っていたが、バクティが協力してくれるなら。と普段より深い階層に足を運べた。

 

「他ファミリアに声をかけてパーティを組むのも悪くはないが、やはり分け前など揉める事もあるからな」

 団員たちをボコボコにして以来ネクタルと共にダンジョンに潜りたがる同派閥のメンバーも居ないらしい。本人は自業自得だと笑っていたが、幹部というか、もともとファミリアの運営をしていた面々から嫌われているというのは私には分からないが悲しいだろうと思う。

 

「それにしても、その大きなバックパック、重くないのかい?」

「すこし重く感じることもありますが、それでも小人族(パルゥム)は非力ですから……」

「たしかに、ロキ・ファミリアの《勇者(ブレイバー)》やフレイヤ・ファミリアの所の4人兄弟とかの方が異質なんだもんな……」

「リリルカの両親もよくいる小人族だな。あまり優れた冒険者というわけじゃない。危機管理能力だけは一人前だが」

「両親は、狡猾で、しぶといですから……。娘のリリが言うのもなんですが」

 

「ところで、リリルカは自分で戦うんだろう?」

 暗い話題になりそうなところ、バクティが声をかけた。

「勇者は確か槍かなにかを使っていたと思うけど、リリルカは何を使ってるんだい?」

「あ、私はダガーですね」

「リリルカは体が小さいからあまり大きな武器を扱うのは難しい。いろいろ試した中で一番マシだったのがこれだったってわけだ」

 

 槍を扱うには筋力が足りず、剣を扱うには身長が足りない。

 小人族が冒険者に向かないという大きな理由が、他種族と比べたときの身体能力。

 

「だからサポーターってわけだね。まあ、ステイタスさえ上がれば何かしらできるようになるってわけか」

「すこし投げやりになるが、リリルカを育てられるほど俺も小人族に詳しくないし、身近な冒険者もいない」

 本人の希望でなければ引き受けてなかったと思う。

 ネクタルはそう言葉を締めた。

 

「まあ、6つのころの私なんて部屋の端っこで震えてるだけのガキだったんだ。それに比べたら一人で生きる練習をしてるリリルカは偉いと思うよ。ソーマの旦那も娘がこんなに良い子なんだ、自慢だろうな」

 

 自慢の娘。バクティからもらった評価をリリルカはうれしく思う。

 だがそれと同時に本当に自慢できるほどソーマに貢献できているか不安にも感じる。

 

 まだ冒険者・サポーターとして一人前というわけではない。ゴブリンと戦うのだって勇気を振り絞ってやっと倒せる。

 酒の作り方は何となく知っているが、試飲もさせてくれず、仕入れと卸を手伝うことがほとんど。

 

「もっと頑張らないと」

「ああ。神ソーマは眷属に酔いを求めている。熱狂し、高ぶる酔い。正直俺もよく理解していないが、ただ、目標にひたむきに進めばおのずとリリルカの中でなにか芽吹くはずだ。励みなさい」

「はい!」

「よし、じゃあもう少しここら辺うろついたら戻るとするか」

 

 バクティの提案にリリルカとネクタルは頷き、ダンジョンでの歩みを再開させた。




バクティのステイタス、レベル3しか決めてないのでまた今度出します。
二つ名は安直に決めました。
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