神酒←「みき」って読めんよね   作:パルプンテ権左衛門

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キリのいいところまでかけたので再開


協力関係

「ねえ、どうかしら……」

「俺の【酒宴の寝床(アカシャ・アワムリ)】とコンセプト、客層が被らないのであれば特に問題はない。場所も遠いのだろう?」

「ええ、西側のメインストリートにいい場所があったの。ミアもファミリアから離れると言ってるしね。飲む場所。というより食べる場所になると思うわ」

「分かった」

「反対しないのね」

 

 面白くなさそうな顔をする女神だったが、彼女の癇癪でファミリアのみんなを危険にさらすことはしたく無い。面倒な相手である以上気持ちよくさせて帰ってもらった方が身のためだ。

 

「お酒を卸してもらうには、エンブレムを掲げないといけないって聞いたけど……」

「店内か店外の見える位置に掲げてくれればいい。店内の形とかはこれからだろう? カウンターの端にでも置いておけ」

「ふふ。じゃあそうさせて貰うわ」

 

 フレイヤから指定されたカフェでの会談。内容は酒場を作ると事後承諾。

 

「それにしても、急な話だな。そのミア? が言い始めたのか?」

「いいえ。ほんの気まぐれ。すこし、神じゃない時間を作ってみたかっただけ……」

 

 何かありそうだが、首を突っ込みたくない。

 

「とりあえずその酒場……」

「豊穣の女主人」

「その何とかの女主人ができること、そこに酒を卸に行くことは分かった。今度うちの商業部(ダーナ)のメンツに直接卸値やもろもろの話をしに行かせよう。一応先に言っておくが、デメテルの所を介するより、俺から直接買った方が安いとだけ伝えておく」

 

 俺はそれだけ伝えると、そのままカフェを後にする。何となくその酒場が厄ネタになりそうな雰囲気を感じるが、開店しないと分からないこともある。今は触れずにいよう。

 それよりも、リンゴ酒であるシードルだ。

 つい先日、【シャシン】シリーズの種類が増えないことに不満を持っていたロキが、直接怒鳴りに来た。その場は一旦神酒を無理やり飲ませて場を落ち着かせたが、新作は必要だろう。

 

「出すしかないか……」

 

 一応酒であるシードルだが、あまり酒感は強くなく、酒もどきのジュース的な雰囲気が俺の中ではあるのだ。それに【シャシン】を付けるのがあまり納得していない。

 

「ザニス、シードルは販売するべきか?」

「何をおっしゃいますか。他に選択肢はないでしょう」

 ミード酒よりも飲みやすく、口当たりの良い酒であることから、ザニスはシードルを女性や子供向けとして販売しようと提案していた。それを販売する気はないと突っぱねていたのだが、新作を求めているのはロキだけではなく、オラリオの街だ。

 

「これまでの【シャシン】シリーズは冒険者など酒に強い者に向けた酒ですが、シードルなら新たな市場を開拓できます。ファミリアとしての資金が増えれば新たな開発を進めることもできますし、【探索部(パティ)】の面々に防具など物理的な支援を整えられる良い機会かと」

 

 ソーマ・ファミリアを強くするには一番良い方法。ザニスはそう言い切る。

 

「神デメテルや神ハトホルなど多くの女神から果実酒を求められていると愚痴をこぼしていたのはソーマ様ではありませんでしたか?」

「いや、そうだが……」

 

「ソーマ様の意思に私たちは従いますが、ファミリアのための選択をしていただきたい」

「……。いや、そうだな。お前のいう通りだな」

 

 子供でも飲める酒。それで売り出そう。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「今日はよろしくお願いします!」

「いやぁ、まさかリリルカたんがアイズたんと知り合いやったとは……。なあなあ、ロキ・ファミリア(うち)に改宗せぇへん?」

「いえ! しないです!」

「リリルカ、じゃが丸くん、いる?」

「い、今からダンジョンに入るのに!?」

「アイズ、なんでそんなものを持ってきた! ……すまないな二人とも。ただ今日は協力をありがとう。【鞭刺姫(スタビング・ウィップ・レディ)】。リリルカ・アーデ」

「いやいや。私のことはバクティで良い。王女にそんな畏まられちゃ、他のエルフから刺されちまうさ。リリルカも緊張しちまう」

「助かる。初対面だが私のこともリヴェリアと呼んでくれ」

 少女二人の行動に腹を抱えて笑う主神のロキを殴り飛ばしたリヴェリア。リリルカが食べなかったじゃが丸くんを代わりに食べるアイズにリリルカは苦笑いをし、バクティはそんな少女に大物だなと笑いかける。

 

「基本的に今日は今後パーティを組むことを見越した実践形式の練習だ。10階層ほど潜ってまた戻ってくる。相違は無いな?」

「ああ。前衛はそこの少女だろう? それを私がサポート。全体を確認しつつリリルカはサポーターとして行動し、全体のフォローをリヴェリアがやる」

「リリルカは、サポーター? 冒険者じゃなくて?」

「はい! 戦う指導は団長から頂いてますが、まだちゃんと戦えません。基本的には皆さんの邪魔にならないように気を付けながら、魔石だったりドロップアイテムを回収するのが仕事です」

「はは、すっかりサポーター業が染み付いてきたな」

「この前ソーマ様から大容量バックパックも頂きました!」

 

 まだ90Cに届かない小さな体ではあるが、その背中には大きな白い袋というか、バックパックが備わってた。

 

「それで、速く動ける?」

「頑張ります!」

 

 初めての他派閥との合同探索ということでテンションが上がる。

 

「リリルカは、普段からサポーターなの?」

「そうですね。と言っても、まだまだ見習いなのでよく団長に怒られてますが」

「モンスター。自分で倒したく無い?」

「倒せたら、いろんな人の助けになるとは思いますが、リリは正直、ちょっと怖くて……。アイズさんは怖く無いですか?」

「うん。モンスターは倒す。全部」

 

 じゃが丸くんを食べてる時とは違う、感情が抜けたような目をした少女に、リリルカはどこか恐ろしく感じたが、それも一瞬。リヴェリアが彼女の背中を押して歩き始めたことで、普段の不思議な少女に戻る。

 

「では行こう」

 

 ダンジョンに入った四人の足並みは順調だった。

 モンスターが出ればアイズがそのことごとくを切り裂き、少し数が多いと感じればバクティが援護する。リリルカは彼女たちに置いていかれないようどんどんとバックパックに魔石たちを入れながら、二人の後ろをついていく。

 

「想像以上に強いね。あの子。ほとんど一人でやっちまう」

「対モンスターに異常な執着を持ってる。顔にはあまり出ないが……」

 気がつけばもう六階層にまで来ているが、硬いはずのキラーアントの甲殻を何事もないかのように剣筋が通る。

 

「これじゃあリリルカが戦う出番が無いなぁ」

「落ちた魔石を大量に拾ってくれているが、重くはないか?」

「大丈夫です! ギルドのアドバイザーからも、小人族は力のステイタスが伸びにくいので、普段から重いものを持ったり運ぶ方が良いと言われてます!」

「はは、ウチの小さな奴にも見習わせたいな」

 

 気がつけばアイズがリザードを切り伏せていたが、そんな彼女を放り出し、リリルカたち3人は少し話をしていた。

 

「リリルカは、モンスターが怖い?」

「まあ、怖くないかどうかでいうと、怖いですね」

「自分より弱いのに?」

「私はそれほどステイタスが伸びてないので……」

 

「なら、なんでダンジョンに潜るの?」

「え?」

「私は、置いていかれないため。もう、一人にならないために、モンスターを倒す。リリルカは?」

 

 そう言って、私の後ろに出現していたらしいモンスターにレイピアを突き立てた。アイズの髪がリリルカの頬を撫で、そして風が舞う。

 

「ダンジョンに潜る、理由……」

「アイズ、ほとんど初対面なのになんてことを聞くんだ! 理由はそれぞれ、聞かれたくない話もある!」

「いえ、大丈夫ですよリヴェリア様」

 

 アイズの剣によって霧散したモンスター。その体があった位置に代わりに出現した魔石を拾ったリリルカは、それを手に持つ。

 

「リリの両親はソーマ・ファミリアにいます。でも、お酒ばっかり飲んで、私を殴って、お駄賃を盗んで。そんなどうしようもない両親です。でも、最近の両親はほんの時々笑ってるんです。まあ、酒を飲んでる時なんですけどね」

「それはなんというか……」

 

「でもそれは全部、ソーマ様が恩恵をくれたからです。恩恵を頂いてからファミリアでの暴力は少なくなって、今じゃほとんど見ません。たまにバルで暴れてる人はいますが……。服をくださって、一緒にご飯を食べて、散歩して、お酒を作って、卸に行って。リリには見せなかった笑顔を両親がするようになって。そんななかった日常をくださったソーマ様の役に立ちたいと思ったんです」

 

 3歳の、多くの他種族からも嘲笑される種族。生まれながら虐げられる種族。それが小人族。だから両親はソーマに酔い、さらに弱い立場たる娘に手を挙げ、暴言を浴びせた。

 

「ソーマ様は優しいから教えてくれないですが、ガネーシャ様に教えていただいたんです。ソーマ様はリリが持つ可能性に酔っているって。それがなんなのかは分かりませんが、でもきっと、ダンジョンに潜って、ソーマ・ファミリアを大きくして、一緒にお酒を作って、売って、飲んで。そうしたらソーマ様は、私にしてくれたみたいに色んな人に優しさをあげれるんじゃないかなって思うんです」

 

 なんか恥ずかしいですね。なんて笑うリリルカの頭を乱雑にバクティが撫でた。

 

「だからリリは、戦うのは苦手ですけど、ダンジョンに潜ります」

「そう……」

 

 アイズの表情から何かを読み取ることはできなかった。それでも、アイズは何かモンスターに執着する理由があるのだろうというのは、一つしか年が変わらない彼女の行動でリリルカは理解した。

 

「リリはリリのためにダンジョンに潜ります。ソーマ様が好き勝手お酒を作るように、リリも好き勝手みんなの荷物を持って、運んで、体が小さくても、非力でも、一番下からみんなを手伝います」

 

「ならあれだな。極東の奴らがたまに言うあれだ。縁の下の力持ちだな」

 

 少し前を歩き始めたバクティの一言がどこかすんと入っていくような気がした。そして、なぜかパンパンのバックパックが軽くなった気がした。

 

「アイズさん。足手纏いかもしれないですけど、一緒にいる時はリリがアイズさんのことを支えますから」

「……、アイズで良いよ。さんはいらない」

「ふふっ。一緒に頑張ろうね。アイズ」

「うん」

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