神酒←「みき」って読めんよね   作:パルプンテ権左衛門

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大前提、ソーマ・ファミリアがまともすぎて原作時点の乖離がえぐい……。どうやってリリとベル絡ませよう。

皆さんのおかげで久しぶりにランキングになりました。
確認したときは200位。ありがとうございます。
がんばります。


接触

 リリは悪い子です。

 

 ソーマ様から言われた、件の白髪の少年。

 5階層でミノタウロスに襲われ、理由は知らないが豊穣の女主人にも足を運んでいた。

 

 ヘスティア様に頼まれたからと言って、ソーマ様が特別気にかけそうな雰囲気には見えなかったし、冒険者としての才能のようなものは特に感じなかった。

 

 だからこそ、ソーマ様が気にかけるよう伝えられたのがどこか嫌だった。

 

 きっとソーマ様にはソーマ様の考えがあり、それにはヘスティア様と白髪の少年の関係性があって。他派閥の冒険者のことなんてよくわからないものだから、気にした方がダメなのに。

 

「どうしましょう」

 

 考えれば考えるだけ上手くいかない気がする。

 思考が固まって他の答えが思いつかなくなる。

 

「きっとソーマ様はその少年に興味はない。ただ、ヘスティア様に気にかけて欲しいと頼まれたからリリに言っただけ。うん。そう」

 

 そうです。

 ソーマ様は私に酔ってるって言ってくれました。

 確か、【神酒月杯(シャシン・ソーマ)】。過去何度か試飲やらなんやらで酒を飲んでいるのにいまだに発生した実感のないスキル。

 

 でも、ソーマ様の名前が刻まれた、ソーマ様との繋がり。

 

「というか、考えていても仕方ないです! なら直接会ってどんな人か見るのが一番早い!」

 

 そうと決まれば、ダンジョンに潜る服を準備する。

 少なくともリリの身長で斧を持っていれば上手くいかないことは想像できる。なら、サポーターとして接触するべきだし、探索部の人と潜る時の服装とは違う方が良いはず。

 

「と、なれば……、全然使ってなかったこの白いローブと、赤色のこの一式で前は閉じておいて。あとはアスフィ様から頂いた大きなバックパック」

 

 服装を整えたリリは鏡の前に立つ。

 

「ああ、流石にこのままだと良くないですね。【貴方の刻印(きず)は私のもの。私の刻印(きず)は私のもの】 シンダー・エラ」

 

 変身魔法を使って頭に犬の耳をつける。フードを被れば完璧。

 

「っし!」

 

 気合いを入れたリリは、そのまま部屋を出て、他の団員に不思議がられながらも拠点を飛び出す。

 

「そういえば、その人の名前を知らないですね」

 

 まあ、そんなことは些細なこと。特徴的すぎる見た目だし、顔も大体覚えているから問題ない。はず。

 

  通りを抜け、広場を進み、しばらくしてバベルの前に到着する。

 

 あとはどうやって接触をするか。

 すでにダンジョンの中にいるかもしれない。そうなれば結構な時間ここで待つ必要があるし、そもそも今日はダンジョンに潜らない可能性もある。

 

 ヘスティア様がバルに居るときに、探索予定を聞いておけばよかった。さすがに、接触できるまでの間ずっとこんなことをしている訳にもいかない。

 よく団員から休んで欲しいといわれるけど、リリじゃないとできない仕事だってある。

 

「今日粘って無理だったら、ヘスティア様に聞くしかないですね」

 

 確か今日もバルで勤務しているはず。ソーマ様から聞いて、今日見かけましたよ。なんて言えば、あの性格だから答えてくれるだろう。

 

 バックパックを横に置き、誰も座っていないベンチに座る。

 バベルの入り口には多くの人が出入りしていて、装備を着込んだ冒険者の集団や、ギルドの制服を着込んだ職員。他にも大量の武器を抱えてバベルに入っていく男はきっと、ヘファイストス・ファミリアの団員だろう。

 

 そんな人たちを見送る中、遠くの方に白色の髪をした少年の姿が見えた。

 茶色の服を着て装備とはお世辞にも言えない中途半端な服装。腰にはナイフだけでアームガードとかもつけていない。

 

「見つけました……」

 

 時間にして2~3時間くらいだろう。

 子供が座ってると思って話しかけてきたエルフのギルド職員とかいろいろいたが、良い時間つぶしになった。

 

 幸い1人でダンジョンに潜るようだし。丁度良い。

 

 リリは意を決してベンチから立ち上がり、バックパックを背負ってから歩き出す。

 できればダンジョンに潜る前には話しかけたい。そんな思いで少し駆け足になる。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「お兄さん! お兄さん! そこの白い髪をした冒険者のお兄さん!」

「え?」

 

 急に声を掛けられた僕は、声がした方へ振り向いた。

 そこには大きなカバンだけがあり、人の顔は見えない。

 

「下です下!」

「うわぁ!? ごめんなさい気づかなくて!」

「気にしなくて良いですよ。よくあることなので」

 

 下と言われて視線を下げると、そこにいたのはクリーム色のローブを身に着けた少女。

 先ほどのカバンを背負えるとは思えないくらい小さい体の少女が僕に声をかけてきていた。

 神様よりもさらに低い身長に、触れれば折れてしまいそうな細い手足。一つ一つのパーツがとても小さい特徴的な外見に、僕は思わず小人族(パルゥム)と言う種族名を思い浮かべた。

 

「サポーターは探していませんか?」

「サポーター?」

「ご存じないでしょうか。ダンジョンの中でモンスターを倒した際に、魔石やドロップ品が出ると思いますが、そういうのを回収したり、マップ情報を伝えて安全な道を案内したり。冒険者様が冒険をしやすくするためにお手伝いする人のことです!」

 いや、ソロでダンジョンに潜っていれば一度は思う。そんな助かる人材と共にダンジョンを潜りたいと。

 

「でも、なんで僕に?」

「わかりませんか? 貧乏なサポーターが冒険者様のおこぼれに預かりたくて自分を売り込むためにお声がけしただけですよ? それに、人数が少ない冒険者様へサポートする方が、サポーターの価値を伝えやすいですから」

 なるほど。小さい子だけどすごく考えてるんだ。

「もしよければ、今日1日「お試し」という形で、冒険者様のお手伝いをさせていただけませんか?」

 

 どうしようか。

 1人での探索にも限界はある。神様が成長期って言ってくれてから倒せるモンスターも増えて、実際魔石を放置したタイミングも数回だけどあった。

 そういうのが無くなるのであればありだと思うし、エイナさんも、1人でダンジョンに行くより、人数を増やした方が良いって……。

 

「そうですね。悩んでいるのであれば、お金は要りません」

「でもそれだと君も困らない?」

「こっちもお兄さんがどれくらい稼げる冒険者かわかっていませんから。冒険者様がこっちを値踏みするのと一緒で、こっちも冒険者様のことを値踏みさせてください」

「そこまで言うならわかったよ。今日1日よろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いします! あ、冒険者様のお名前を教えていただけますか? 私はリリって言います!」

 

 目深に被ったフードからチラリと見える薄い唇がニコニコと笑みを描いている。可愛らしい小ぶりな顔立ちの中で鼻筋は綺麗に通っており、どこかおませと言うか、大人ぶった雰囲気を感じてしまう。

「よろしくリリ。僕はベル。ベル・クラネルって言います!」

「はい! よろしくお願いしますね! ベル様」

 

 僕とリリは横並びになってダンジョンへと向かう。

 その中で、リリからサポーターについてもう少し細かいことを教えてもらった。

 

 例えば、サポーターは稼げない。とか。

 基本的にはモンスターとの戦闘に参加せず、罠の設置や安全確認なんかを行うことから、冒険者たちと危険にさらされる度合いが違うからだという。

 リリもどうやらそうで、いろいろなパーティに声を掛けてダンジョンに行くものの、成果を人数で分ける上に、分け前を減らされるか稼げていないらしい。

 だから一人の僕に声を掛けた。

 

「ベル様は冒険者になってどれくらいなんですか?」

「僕? この前神様に恩恵をもらったばっかりなんだ」

「それで5層に? もしかしてすごい魔法を持ってるとか」

「いや、魔法とかスキルとかないんだよね。神様が言うには、すごい成長期だって」

 

 1階層に出てくるゴブリンたちは問題なく倒せるようになった。

 神様からいただいたこのナイフもすごく使いやすい。成長期って言っていたのもあるけど、今自分が強くなっていってることを実感できる。

 

「リリも魔法なんか持っていないですし、魔法を発現しないまま引退される冒険者も多いと伺います」

「ははは。やっぱそうなんだね」

 

 2階層、3階層とどんどん下へ降りていく。

 リリは僕がまだ覚えられていない道も覚えているようで、モンスターが生まれない場所や近道を教えてくれる。

 周囲の警戒はしてくれるし、その上で落ちた魔石の回収も早い。

 今までと圧倒的に効率が良い。

 

「すごいよリリ! すごい戦いやすい!」

「いえいえ。すごいのはベル様の方です!」

 

 僕の戦い方や動き方を褒めてくれるリリに頬が緩むが、自分が今戦えているのは、このナイフのおかげ。

 使えば使うほど手に馴染む。

 

「ベル様はそのナイフ二つだけで戦うんですか?」

「今のところは。僕のファミリアはまだできたばっかりで、武器の扱いを教えられるような人はいないから。まずは独学で」

「主神はどういった神様なんですか?」

「神様? 神様はヘスティア様って言って、炉の神様って言ったっけ。僕がまだ稼げないからいろんなところで働いてくれてて、すごく僕のことも心配してくれるし」

 少し抜けてるところはあるけれど、神様はとても良い神様だと思う。

 

「いつも神様には良くしてもらってるから、僕も神様の力になりたいんだ」

 あ、でもこんな話初めて会った子に言うのも良くないか。

「ごめんね。急にこんな話して」

「いえいえ。話を振ったのはリリの方ですし。でも、誰かの力になりたいって思って行動できるのは、とてもすごいことです」

「そうかなぁ。僕なんてまだまだだし」

 アイズさんには全く届いていない。

 アイズ・ヴァレンシュタインの隣には釣り合わないくらいの雑魚。それが僕だ。

 

「人には人のペースがありますから。ベル様もきっと強くなれます!」

「はは。ありがとうリリ。それじゃあ今日はこれくらいで戻ろうか。換金もあるし」

「分かりました! お任せください! 落ちたものは全部拾ってます!」

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「【響く十二時のお告げ】」

 

 ベル様と離れて少し。人の少ない裏路地に入ると同時に、リリはシンダー・エラを解除すると、フードを脱ぎ、少しだけ蒸れた髪をかきあげる。

 

「アレが、ソーマ様が気にしていたベル・クラネル」

 

 底なしに素直な人間なんだなと思う。

 疑う様子もなく、分前は要らないと伝えていたのに、今日の稼ぎの半分を渡してきた。

 

 リリのように幼い頃に何も経験していない、大切に大切に育てられた果実。甘味が強く、癖を持たないよう土を弄られ、日を制限され、香りが出るよう育てられたような存在。

 

 武器の力に頼った戦い方をしていて、冒険者としての才能は無い様に感じた。

 ネクタル様やザニス様、バクティ様の様に戦うために必要な力や観察力、判断力なんかが高い様には見えなかった。

 

「成長期……。妙な話です……」

 

 少し、悪さがしたくなる。

 雑味を知らないお酒は面白みがない。香りだけで物語のない酒は飲みたくない。

 

 ソーマ様が特別に何かを感じたわけではないんだろうけど、それでも、ソーマ様の酔いが、リリじゃなくなるかもしれない。

 それはあの日から紡いできたリリと、ソーマ様の関係を揺るがす一大事であり、主神と眷属という単純な言葉では表せない繋がりを自覚しているリリには耐えられるものじゃない。

 

「また会うんですね……」

 

 そんなことはないと言う理性と、少しの不安が、別れ際、明日の約束をしたベル様の笑顔でステアされる。

 

「リリは……、リリは悪い子ですね。ソーマ様」




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