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あと、ランキング105位ありがとうございます。
汗をかきながら畑を耕す。
最近はあまりしていなかった作業だ。
作物を育て神酒を完成させるために行う始まりのこれを、俺は儀式の一部のように感じている。
酒の原材料を自分で手入れし、育て収穫する。それを磨き、醸して生み出す。命の水とも言うべき神酒の完成を夢見る。
下界に降り立った神は神の力を制限される。
ステイタスを持たないただの人と同じ力だけで日々を過ごす。
概念を司る神は、一部制御
「俺が力を完全に制御し、人と同じ手段で技術のみを磨き上げた上で作られた神酒は、これまでに作った神酒とどう違うんだろうか」
今までになかった考えである。
これまでは材料を揃え、その分量の調整や手法工程を変えながら作り、研究していた。
「全く違うものを作るつもりで1から作るか」
必要な材料はなんだろうか。それを1から育てるとなると俺の知らない知識も必要になる。この街で一番農作物に詳しいのは豊穣の神であるデメテルだ。他にもその権能を持つ神はいくらかいるが、オラリオに対する影響力を考えても間違いない。
「会いに行くか……」
使う材料を考えよう。
神酒の源流はヤシ類の樹液を使った樹液酒だ。これは拠点内に植えておりいつでも樹液を採取できるから問題ない。
トウモロコシ、小麦と大麦、に芋類。あとはサトウキビも必要になる。
「アガヴェもか」
対して大きくない私用の庭に植わるだろうか。
「考えるよりもまずはやってみるべきだな」
案外やってみればどうとでもなる。あとは細かい調整という名の研究だ。そしてそれが一番心躍るものであり夢中になれる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なるほどね。わざわざ先に連絡までして会いにきた理由はそう言うことね」
デメテル・ファミリアの拠点。
彼女の神室で向かい合った俺は、事のあらましを説明し、必要な材料を記載した資料など準備したものを見せた。
「
彼女の口調からは、本当にできるの? と言った意味が含まれているんだろう。これまで多くの材料を揃え、俺の酒造の支援をしていたからこその意見だろう。
商品の融通やらなんやら、彼女達への見返りも行ってはいるが、利益ギリギリの値段で材料を買う俺達に対して、経営を行うものとしては疎ましいと思うだろうし、できる限り渋りたいだろう。逆の立場なら俺もそうだ。誰だってそーする。俺もそーする。
「それで? 穀物の育て方まで教えろって言うのはかなり横暴じゃないかしら? 私や
「最もな意見だな」
「分かってて言ったのね」
「ただ、本で知識を得ようとしても限界がある。ここに来る前に少し書物をも集めたが、実際に土を触るお前たちから教わるものほど、価値あるものはない」
さて、どう交渉しようか。
口下手な俺が何か上手いこと言いくるめようとしたところで無駄なのは分かっている。
俺ができることは酒を作ることだけだから。
「これは俺の我儘だ。他人に迷惑をかけてるのも自覚している」
「それでもしたいの? 作物一つ育てるのも簡単じゃないわ。適切な手段で愛を持って育てる必要があるのよ?」
もちろん理解している。
酒だって一緒だ。デメテルには違うものと言われるのが予想できるから口には出さないが。
「全てに気を付けて育てていても、天候や多くの外的要因ですぐ全てがダメになることだってあるわ。特に穀物はそう。それに、アガヴェなんてものは存在は知っていても私も育てたことのないものもあるわ」
それでもやるの? そう聞かれても、俺からの返答は変わらない。
「神は娯楽に飢えている。娯楽のためならすべてを賭けるのが神だろう。そして、そのためなら周りなど気にせず好きにやるのが俺たちだ」
ただ、デメテルには世話になっているし、迷惑もかけている。だからこそ話し合いの場を設け、したいことを伝え、受けている恩に見合った形を取ろうとしている。
「好き勝手やりたいわけじゃない。かつてのように俺がしたいことするために団員を利用するわけでもないし、他を利用しようと思ってるわけじゃない」
「それならなんのためにするのよ。反神酒は完成したんでしょう?」
「古来より酒は下界の子らが神と共振し、結合し、降ろすために使う儀式的道具だ。酩酊に落ちることで神と繋がるために酒を使う」
酒は神と繋がるための手段として酩酊を提供する。
酔いを醒ますための酒という反神酒という存在は、酒の存在価値から余りにもかけ離れた存在。それが俺の考えだ。
団員達に正しい酔いを持ってもらうために作成したと言う経緯はあれ、反神酒があるから、今ある神酒の形のまま進んで良い。そんなことはない。
「神も子もすべてが等しく酔い、繋がれる酒を造るためには、神の力は要らないのかもしれない。それが俺の出した1つの答えだ」
神が神の力をもって成す。それでは天界にいたころと変わらない。奇跡でも何でもない。
神が子らの力をもって成すからこそ子らに響く。
「だからって……。ねぇ」
その豊満な胸の下で腕を組んだデメテルは、ソファーに体を預け何かを考える。
「簡単に「はい」と言えないことは分かっている。ただ、少し考えていてくれ」
「わかったわ。ただ、改めて覚えておいて。あなたのファミリアにおいて酒造の知識が財産であると同様に、私のファミリアの場合は農業に知識が財産なの」
良い? と聞かれた俺は、短く返事をし、部屋から出た。
一つ、息を吐く。
これから取る手法で神酒が完成するとは露ほども思っていない。ただ、確実に今後の糧になるとは思っている。
デメテルの団員に案内されるがまま屋外へ出る。
「まだ飲んだことのない、造ったことのない酒がある。知らない手法や知恵がある。見たことのない原料がある」
それが神酒を完成させるための欠片になる。
「あら、ソーマじゃない」
ねっとりと、心地よく、また狂気を孕んだ声。背中に突き刺さる視線は背筋を遠慮なく撫で、こちらを値踏みしているように感じる。
「フレイヤ……」
「そんなに身構えなくても良いじゃない。別に取って食べたりなんてしないわ」
「……。お前と話す理由がないな」
彼女の方に顔を向けず、人だかりができないよう路地に入る。
彼女に関して言えば、この場にいないだけでどこかしら護衛はいるだろうし問題ないはずだ。
「顔くらい向けてくれたらどう?」
「顔を合わせるほど関係があるわけじゃないだろう」
そうかしら。なんてフレイヤは笑みを浮かべながら言うが、俺とフレイヤの関係性は単純だ。酒場の後ろ盾とその酒場に酒を売るファミリアの主神。
「今日を機に、もっと深い関係になってもいいんじゃない?」
「ぬかすな」
口に出せば護衛が襲ってきそうだから言わないが、阿婆擦れに興味はない。かといって処女にも興味ないが。
「別に貴方に会おうとは思ってなかったの。でも、見つけたからお礼を言おうと思って」
「礼? 何のだ」
「気にしないで。ただ、貴方の小さな眷属のおかげで、あの子の輝きが増したの」
小さな眷属? リリルカと、誰だ……。
「ふふ。それ以上でも以下でもないわ。さっきも言ったでしょう? 私はあなたにお礼を言いに来ただけ。ただ、あの女の子に伝えといてほしいこともあるの」
リリルカが標的になった。そう思い振り向けば、唇が触れそうなくらい近い距離にフレイヤの顔があった。
俺の首に彼女が腕を巻きつく。体重を預けるように体を密着させ、少し低い位置から、彼女の持つ菫色の眼が俺を見つめる。
薄気味悪く、口を三日月に歪めたまま。
「あなたの眼、紫色なのね」
思わずフレイヤを突き飛ばした。
突然のことで力を入れすぎたのか、彼女は思っていたよりも遠くにいて、後ろに立った山のような巨体に受け止められる。
「趣味が悪いな……」
「恥ずかしがるなんて可愛いところもあるのね。でも、少し揶揄いすぎたかしら?」
「やめろと言ってもするんだろう?」
「さぁ。どうしてもと言うなら考えてあげるわよ?」
考えるだけでなにもしないだろう? とは言えなかった。
「貴方の小さな眷属には感謝もしてるけれど、1つ、伝えておいてくれないかしら」
「何を……」
おいたしちゃだめよ?
フレイヤにとっては何のつもりもないただの忠告なのだろう。ただ、彼女の持つ権能を隠しもせずに発した言葉は、悔しいかな、酷く美しく感じた。
「それじゃあね。今度は貴方が注いだお酒が飲みたいわ」
背を向けたフレイヤの後ろに、すっと猛者が立つ。
「考えておく……」
無理やり発したことをわかっているのだろう。フレイヤはこちらに見向きもせず、「そう」と言葉をこぼすして立ち去った。
「まったく……、嫌な女だ」
美と愛の女神。そして、デメテルと同じく豊穣の女神。同じ権能を持つのにどうしてこうも違うのか。
今更ですが、何時更新が良いですか?
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