あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン!   作:おふざけちゃん

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しがらみの剣乙女
あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン! しがらみの剣乙女


 

 ___私はボールを持ち上げ、構えを取る。

 

 何時もの様に柵の外へとボールを投げ外に出たのを確認、守衛さんの所へと駆け寄っていく。

 

 私を見た守衛さんが少し苦笑すると、しゃがんで目線を合わせる。

 

「今回はどうしたんですか?お嬢様。」

 

「しゅえいさん!ボールを取ってきてくれませんか?」

 

「またですか…しょうがないですね。」

 

 少し呆れながらも、腰を上げ門を開けボールを取りに向かうのを確認。

 

 私はその隙に外へと走り出す。

 

「お嬢様!」

 

 そう守衛の声が聞こえるも、無我夢中で外に向かって走り抜ける。

 

 息が荒くなるのを自覚しつつも、今回は絶対に抜け出せると謎の自信があったのだ。

 

 何時もはすぐ街へと向かおうとするから駄目なのだと、子供ながらにして自覚した私は森へと方向転換。

 

 予想だにしなかったのが、守衛さんが少し声を荒げ追いかけて来るのを感じる。

 

 しかし小さい私が森に入ってしまっては見つけ辛いのだろう、私は初めて守衛さんを出し抜いて外に出ることに成功した。

 

 心臓がドキドキと止まないのを感じる、子供ながらにして上手く行ったと言えるだろう。

 

 しかし森へと隠れる際の振り返った時の守衛さんの顔を思い出し、なんだか居た堪れない気持ちになった。

 

 あんまり心配掛けてはいけないだろう…と。

 

 かなり心配掛けておいて何を今更だと言われればそうなのだが、アレだけ必死な表情は初めて見た。

 

 すぐに森から出ようとも思った…が、次はボールを取りにすら行ってもらえないかもしれない。

 

 またとないチャンスを無駄にするのも惜しい、そう感じた私は少しだけ森の奥を探索しよう…そう決め森へと足を進める事にした。

 

 初めて入った森は何処か神秘的な何かを感じたのを覚えている。

 

 家の中では感じる事のない自然の音、小鳥の囀り、全てが初めての体験だった。

 

 少しだけと思っていたのをすっかり忘れ、どんどんと奥へと進んでいるのに気付かなかった私は、やはりと言うべきか迷っていた。

 

「おとうさまー!……しゅえいさーん!」

 

 そんな私の涙声は自然の音に吸収され届かなかった。

 

 段々と前が涙で見づらくなって行くのを感じる、やはり守衛さんの言う通りに待てばよかったと、遅い後悔を初めた時だった。

 

「___ぎゃあ!おぎゃあ!おぎゃあ!!」

 

「…え…?」

 

 森の中で聞くはずのない人の声、いや当時の私は赤ちゃんの存在を知らなかったから、人間だと理解すらしていなかっただろうな。

 

 だが何故だろう、この声の先に私が求めている物があると感じたのだ。

 

 必死になって声のする方へと足を進める私、森を駆け抜け草木を掻き分け突き進む。

 

「おぎゃあ!!おぎゃあ!!」

 

 段々と大きくなるその声の主を私は発見した………そう、そこに居たのは___

 

 

 

「見た事のない材料で作られた箱に入れられた、お前だったって訳だ。カズマ。」

 

「……お、おう。」

 

「その後気付いたら何故かお前を抱いて門の前に立って居てな、息を切らした守衛さんが森から出てきて私を見つけたと思ったら、今のお前に対する私みたいに私をこっ酷く叱ってきたのだ。」

 

「そ、そうなんですね。」

 

 そうして説明が終わったのか、悲しげな目を開いて正座している俺を見下ろすララティーナ姉ちゃん。

 

 俺の方に手を置くとしゃがみこみ、目線を合わせて微笑む。

 

「だから…な?こんな命を粗末にする様な事はやめてくれないか。」

 

 家での生活に飽き飽きしていた俺だったが、窓から外へと飛び出し街の外へと逃げ出した俺は、案の定モンスターに襲われていた。

 

 クッソデカいジャイアントトード?だっけか、そのモンスターに目を付けられ捕食されそうになって居た所を姉ちゃんに助けられたのだ………姉ちゃんが食われる形で。

 

 あまり助けてくれた本人に言うのもなんだが、ジャイアントトードによって捕食されていた姉ちゃんは腹わたを剣で切って出てきた為、こう……唾液で臭いし血生臭い。

 

 今にも鼻が曲がりそうなのを我慢しながら俺は姉ちゃんの長い話を聞いていた。

 

「…分かったよ姉ちゃん。俺が悪かった、心配掛けてごめん。」

 

「そうか、分かってくれたなら良い。ほら、おいで。」

 

 そう言って聖母の様な微笑みで手を広げる姉ちゃん………キツイ匂いを充満させながら。

 

 ぎこちない笑顔で何とか俺は抱き着くと、更に接近した事によって喉から何かが込み上げてくる感覚へと陥る。

 

「私も悪かったな、部屋の中ばかりだと窮屈だろう。すまなかったな………だが、悪い事をしたのは別だ。これは私の愛の罰だ…受け取ってくれ。」

 

「う、うぷッ!!」

 

 なんて不穏な事を言いながら、抱きしめてくる……いや締め付けてくる姉ちゃん。

 

 何時もならその豊満な胸を堪能している所だったが、如何せん今はそれ所じゃない。

 

 必死に込み上げてくる何かを抑えつつ、それを促進してくる姉ちゃんを睨みながら過去の俺を恨む。

 

 こんな事になるなら部屋でのんびりしておけば良かった!!

 

「ね、姉ちゃん。」

 

「なんだ?そろそろキツイか?」

 

「……ごめん。」

 

「?」

 

 そろそろ我慢の限界を迎えた俺は、先に謝っておく事にした。

 

「お、オロロロロロロ…」

 

「ギャアァァァァァァァ!!」

 

 姉ちゃんの服に思いっきりリバースした俺は、その開放感からかスッキリした表情で姉ちゃんに向き直る。

 

 わなわなと震えながら俯く姉ちゃん……流石に悪い事したな。

 

 しかしアレは俺だけが悪い訳じゃない、うん俺は半分しか悪くない。

 

 ソロリソロリと家の方向へと歩いていると肩を掴まれる。

 

 機械の様に首をギギギとならしながら振り返ると、片方からスーと一粒の涙を流した姉ちゃんがとっても怖い顔をして佇んでいた。

 

「…ね、姉ちゃん?何時もの可愛らしい顔が台無しだよ?ほら、笑顔笑顔…!」

 

「………」

 

「………」

 

「今日という今日は許さんッ!!」

 

 俺はダッシュで逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一章 この愚かな義姉弟の日常を!」

 

 

 

 あの後、お父様にこっ酷く叱られていたカズマを尻目に私は風呂で身体をゴシゴシしていた。

 

 仕方ない、カズマが私をキツイ匂いだと連呼しながら街中を走るのだから………あの時の街の住人の顔と言ったらそれはもう……!!

 

 しかしそれはあくまでダスティネス・フォード・ララティーナ、としては良いかも知れないが、一乙女としては心が泣いていた。

 

 幾ら私でも耐えられない物はあるとカズマに教えるべきだろうか、いやしかし無茶が故の言葉というのも捨て難い。

 

 そんな事で頭を悩ましていると、風呂場の扉がガラガラと開く。

 

 ……またか。

 

「カズマ、またお父様に怒られたいのか?」

 

「いやいやいやいや!先程のお詫びも兼ねてお背中でもお流ししましょうかと!」

 

 私の顔……ではなく胸を凝視しながら鼻を伸ばし手を揉むカズマ。

 

 これも何回カズマに風呂場に侵入されただろう、そろそろ慣れてきた私も異常かもしれないが……こう何度も飽きずに来るカズマもカズマだ。

 

 まぁ、義理とは言えど弟なのだから一般人よりも抵抗はないのだが。

 

「……ハァ、まぁさっき吐いたのは私も悪い所があったのだろう。ほら、久々に一緒に入ろうじゃないか。」

 

「えッ!?い、良いんですか…?し、失礼しまーす。」

 

 コイツも飽きないものだ、男性と言うのはずっと見ていると飽きると何処かの書籍で見た記憶があるのだが…記憶違いだろうか。

 

 カズマに背中を向け私はまた考え事をする。

 

 それはここ最近来る求婚についてだ。

 

 私もそろそろ良い歳、本来なら男が居るなら男が名を継ぐのが基本なのだが……。

 

 私はチラリと後ろを振り返ると、手をワキワキしながら胸へと持ってこようとしているカズマを睨む。

 

 ビクッと手を引っ込み、また背中をゴシゴシし初めたカズマに溜め息を付きながらまた前へと向き直る。

 

 養子という部分もあるし、そもそもまだ十四歳と結婚できるまでまだ二年掛かる。

 

 ………なにより、この性格でとても上手く行くとも思えない。

 

 どうしたものかとまた溜め息を付いていると、洗い終わったのかカズマの手が止まる。

 

「…ん?あぁ終わったのか。ほら、次はお前の番だぞ。」

 

「あ、はい。優しくお願いします。」

 

「それは私の気分次第だな。」

 

 カズマからスポンジを受け取ると背中に出来るだけ優しく付け洗い始める。

 

 ………に、しても細く筋肉を感じられない身体だ、私と同じくらいご飯を食べている筈なのだが……心配になるな。

 

 少なくとも私の力に耐えうる筋肉を付けて貰わねば。

 

「カズマ、お前はもう少し運動した方が良いぞ?」

 

「ならイグニスさんに言ってくれよ。カズマも街の外に出してやって下さいって。」

 

「それはそうなのだが………お父様も、お前に怪我をして欲しくないから厳しくしているのだ。もう少し家で筋トレでもして筋肉を付ければ、お父様も許してくれるさ。」

 

「………」

 

 そう言うと黙ってしまって、自分の腕を掴んで確認している。

 

 やはり筋肉の無さを自覚しているのだろう、私もカズマの筋トレに付き合った方が良いだろうか…。

 

 そもそもカズマには強くなって貰わねばいけないのだ、何時王都が危険な状態になってもおかしくない…そうなれば、私もカズマも戦力として徴収されるだろう。

 

 今のカズマではそもそも使い物になるかも分からない、流石にカズマを守りながらは私もキツイだろうからな。

 

「まぁそう落ち込むな。私が何時でも特訓や筋トレに付き合ってやるから…な?」

 

「………俺も姉ちゃんみたいに腹筋バキバキになれるかな?」

 

「ん…!?あ、あぁ…そうだな。……うん、なれるさ!ただ私程度の腹筋じゃなくもっと凄い腹筋を目指せば良いんじゃないか?」

 

「え?でも俺姉ちゃんより割れてる腹筋見た事な……いってぇッ!?」

 

 なにか失礼な事を言う愚弟にチョップをかまし私は背中を流すのをやめる。

 

 スポンジを定位置に戻すと立ち上がり風呂へと浸かる。

 

 恨めしそうな目で私を見てくるカズマも、頭を押さえながら風呂に浸かる。

 

 やはり風呂は良いな……風呂は命の洗濯とは誰が言った言葉だろうか、カズマに教えてもらったが素晴らしい言葉だ。

 

 良くない思い出や身体の疲れ、その他諸々が洗い落とされていくのを肌に感じながらカズマへと目を移す。

 

 ………女々しい顔立ちの、男らしさは感じないが何処か守りたくなる弟。

 

 まだ十四というのもあるだろうか、可愛らしさを感じる。

 

 本当に強くなれるだろうかコイツ……そんな不安が込み上げる。

 

「……カズマ、最悪お前も貰われよう。そういう貴族は探せば案外居るらしいからな。」

 

「えなんの事!?姉ちゃん変な事言うなよ!!」

 

 己の身を抱き締め風呂の角へとゾゾゾっと逃げて行くカズマ、フッ…そんな目で見ても私にはご褒美でしかないと言うのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姉ちゃんが変な事を口走ったせいで、俺は筋トレせざるを得ない状況へと強制的に持ち込まれた。

 

 ラッキーな事に姉ちゃんが使っていた昔のトレーニング用具を発見、使っていない一室へとそれらを守衛さんと一緒に運ぶと早速トレーニングに掛かる。

 

 生まれてこの方マトモなトレーニングをした事ない俺にはどうやってやるのか分からない様な器具まであったが、そこは守衛さんや姉ちゃんに教えてもらい使えたのだが……。

 

「あー……キッツい…。」

 

「ハッハッハ。坊ちゃんもまだまだですな!」

 

 隣でガタイの良い守衛さんがガシャガシャと見せびらかす様に慣れた様子でトレーニングをする………やはり腐っても屋敷を守る者、そんじゃそこらの奴とは違い身体が鍛え上げられている。

 

「………なぁ守衛さん、ちょっと腹触っても良いか?」

 

「ん?あぁ、構わないよ。」

 

 俺は許可を得て守衛さんの腹を撫でる………えッ!!

 

「うそ…え、すっごいコレ。めちゃくちゃ堅い……!ゴツゴツして、なんか…もうすっごい。」

 

「………」

 

 服の上からでも分かるバッキバキの腹筋をサワサワ撫でていると、何やら守衛さんの息が粗いのに気付く。

 

 トレーニングをした後だから疲れているのだろう、俺はソッと腹から手を離すと守衛さんを見上げる。

 

「……どういう感情なんですか、それ。」

 

「えっ?あ、あぁいやなんでもないですよ坊ちゃん!それより、坊ちゃんは早急に筋肉を付けた方が良いですな…!身のためにも…。」

 

 最後不穏な事が聞こえたが気の所為だ、やはり守衛さんからも言われてしまった……これは頑張らないとな。

 

 でも今日はもう終わりだ、これ以上無理にトレーニングすると明日が大変な事になるだろうからな。

 

 それに姉ちゃんとも剣の素振りの約束をしているのだ………そろそろ、姉ちゃん剣当てれる様になったのかなぁ…。

 

 そんな少しの淡い期待を込め、トレーニング場を後にし庭へと出る。

 

 そこにはもう素振りを初めていた姉ちゃんを発見。

 

 気合は凄いんだよなぁ…気合は。

 

「ん?おぉ待っていたぞカズマ、ほらお前の分の木刀だ。」

 

 そう言って汗を拭いながら渡してくるのを受け取り、姉ちゃんの横に並び俺も素振りを始める。

 

「「一ッ!!二ッ!!三ッ!!四ッ!!」」

 

 声を合わせ素振りを開始、洗濯物を畳むメイドさんや門で待機している守衛さん、部屋から見ているであろうイグニスさんに見守られながら素振りに集中する。

 

 何だかんだ言って運動は好きだ。

 

 ただ普段は動きたくないだけで、こうやってやる気がある時は何時間でも出来る……!気がする。

 

 チラリと姉ちゃんを見上げると何処か華やかだ、やはり姉ちゃんも楽しいのだろう。

 

 こういう所は姉弟味を感じる………血は繋がってないけど。

 

 勿論そんな野暮な事は言わない、昔……二年ほど前、十二歳の頃に一度姉ちゃんと喧嘩した時にそれっぽい事を口走った時の事を思い出す。

 

 見る見る内に涙が溢れ出しその場で泣き崩れてしまったのを今でも覚えてる、流石に言っちゃいけない事だと感じた俺はその場でスライディング土下座。

 

 なんとか許して貰えたが一週間程傍にくっついて離れなかったな……それを不審に思ったイグニスさんが姉ちゃんに事情を聞いたら、俺がイグニスさんに呼び出され抱きしめられて二人して俺の傍を離れない事態になってしまった。

 

 今はそんな事はないと思うが……念には念だ、馬鹿な事を口走らない様に用心しながら生活している。

 

「どうしたカズマ!手だけじゃなく口も動かせ!!」

 

「あっ!え、えーっと……。」

 

「フッ、また一からだな。」

 

「え!ま、マジか…。」

 

 こうしてまた一からとなった素振りだが、まぁ筋肉を付けたい自分には丁度良いかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐへぇ!トレーニングも相まってめっちゃ疲れた!!」

 

「ふぅ、お疲れ様カズマ。」

 

 結局夕食時になるまでカズマと素振りに没頭してしまった。

 

 私も今日は疲れたな……もう腕がジンジンだ。

 

 俯せに倒れているカズマを抱き起こすと、お互い肩を預け合いながら食事をしに部屋へと向かう。

 

「………なぁ姉ちゃん。」

 

 何時になく真剣な表情のカズマが、私の方を見ずに口を開く。

 

「ん?どうしたカズマ。」

 

「俺、冒険者になりたい。」

 

「……え?」

 

「俺思ったんだ。姉ちゃんが外出が許されてる理由って、冒険者をやってるからだろ?」

 

「まぁ、そうだな。」

 

「なら俺も冒険者になる!姉ちゃん一緒にダンジョン攻略しようぜ!!」

 

 こちらを見たかと思うと、闘志に燃えた目で私を見つめるカズマがいた。

 

 ………い、いやいやいやいや!!

 

「待て待て!お前はまだ十四だ!私も冒険者になるのが許されたのも十六そこらの時だし…それにまだ鍛え初めて一日じゃないか!な?」

 

「そりゃすぐにとは言わねーよ。でもよ、俺だって外の世界を見てみてーんだよ!それにアクセルの街には俺と同じ十四歳の天才魔法少女がいるらしーじゃねーか!頼むよ姉ちゃん!可愛い弟の頼みだから…な!」

 

「うっ…!」

 

 そうキラキラした願望の眼差しを向けてくるカズマ。

 

 クッ…!いや、しかし…!!

 

 脳裏には悪い顔をしたカズマと怪訝な顔をしたお父様がよぎる。

 

 そりゃ出来るならカズマの頼みを答えてやりたい、答えてやりたいのだが…!!!

 

 これ以上私達の我儘でお父様を困らせる訳にはいかない……!いやでもカズマがあまりにも可哀想じゃないか!

 

 私は一体…どうしたら!!

 

 ………そうだ。

 

「…分かった。じゃあカズマ、私が結婚したら良いぞ。そしたらお父様も跡取りが出来て安心だろう。それまで待ってくれるか?なーに安心しろ、私はこれでもかなりモテるのだ。結婚なんてしようと思えば幾らでも出来るからな!!」

 

 そう胸を張ってカズマに答えると、意味が分からないと言った顔で私を見つめるカズマ。

 

 あれ、何か気に食わない事でもあるのだろうか?

 

「それだと姉ちゃんと一緒に冒険できねーじゃん。俺は姉ちゃんと一緒に冒険者をやりたいの!!分かるッ!?」

 

「え、えぇ。」

 

 そう嬉しいが困った事を言ってくるカズマ。

 

 そうやって戸惑っていると、さっきまでの疲れは何処へやら私の手を包み真剣な眼差しで私の前に立ち見つめあげるカズマ。

 

「姉ちゃん、駄目…?」

 

「ッ……!!」

 

 コイツは自分の武器が何か分かっているみたいだ、熱い情熱的な…それでいて頼み込む可愛らしい姿勢。

 

 私が姉で良かった、そこら辺の女じゃ耐えられなかっただろう。

 

 顔が熱くなるのを感じ助けを求めようと周りを見渡すと、アラアラとメイドさん達が見守る姿勢でこちらを見ていた。

 

 クソ!なら守衛さんは!!

 

 守衛さんは何故か皆カズマを凝視して息を荒くしていた、アレは駄目だ使い物にならない所か今宵のカズマの貞操すら危うい。

 

 コイツは魔性の男だ!一人でギルドにでも出してみろ…荒くれ者達に掘られるか、ギルドの生き遅れの受付共に食われるのがオチだ!!

 

「………はぁ、分かった分かった。お父様に頼んでみよう。」

 

「やった!ありがと姉ちゃん!!」

 

 全く、我儘で困った弟だ。

 

 にしても良く頭の回る奴だ…コイツは貴族の頭を取ろうと思えば取れるんじゃないだろうか。

 

 ………いや、これは身内贔屓か。

 

「ささ!腹減ったしさっさと行こうぜ!!」

 

 そう言って手を引いて走り出すカズマ。

 

 そうだな、私もそろそろ腹が減ってきていた頃合いだ。

 

 もうすぐ近くまで来ていたのもあってすぐに到着、ご飯ついでにお父様に相談してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___って事で、駄目かな?」

 

 俺は食事ついでに、姉ちゃんの協力を仰ぎつつイグニスさんに相談した。

 

 静かに聞いていたイグニスさんだが、食事の手を止め俺と姉ちゃんを交互に優しい顔で見ると口を開いた。

 

「確かに、言ってる事はご尤もだ。このまま家の中に閉じ込めておくのは私も忍びないからね……だが、やはり今のカズマに冒険は少し早いとも思うんだ。」

 

 まぁ、そうだよな。

 

 でもそんなものは俺も最初っから想定内だ、重要なのは準備期間だ!

 

 あまり遅い期間を言い渡すのはやめてくれよ…!じゃないと、じゃないと!!

 

 ___天才魔法少女を仲間にして、姉ちゃん、魔法少女、後もう一人くらい可愛い子の三人でハーレムパーティーを作る計画がおじゃんだ!!

 

 俺は守衛さんが言っていた言葉を忘れはしない、天才魔法少女は天才である上にかなり美形らしいからな……しかもソロで活動しているらしいし。

 

 姉ちゃんは確か前衛職?だった筈だ、しかもかなり強い……姉ちゃんがいたらその人もワンちゃん入ってくれるかもしれない!

 

 姉ちゃんの承諾はえたんだ、せめて長くても一年、いや半年!!あまり長いと姉ちゃんが嫁に行ったり、魔法少女がパーティーを組むかもしれないからな……!

 

「そうだね……三ヶ月、三ヶ月だ。」

 

 三ヶ月!!きた!これで勝つる!!

 

「ただし!」

 

 ……ん?流れ変わったな。

 

「ただの三ヶ月じゃ駄目だ、カズマ。アイリス様は覚えているかな?」

 

「アイリス……あぁ!王都のお姫様!!兼俺の妹!!」

 

「ハハッ覚えているみたいで結構。ただ妹ではないね…。」

 

「え、まさかお父様ッ!?」

 

「そのまさかだよララティーナ。カズマ、君にはアイリス様のいる王都に行って、最前線で戦っている騎士団に入れてもらい特訓させてもらいなさい。」

 

 え?

 

 王都の騎士団?

 

 あの超超超鬼畜な訓練で話題の?しかも魔王軍が高頻度で攻めてくる、あの王都!?

 

「ついでにララティーナも行ってきなさい。カズマのおもりと………剣を当てれる様に。」

 

 そう遠い目で姉ちゃんを見るイグニスさんと、その言葉で恥ずかしそうに俯く姉ちゃん。

 

 遠い目をしたいのは俺だよイグニスさん、俯きたいのは俺だよ姉ちゃん!!

 

 俺は頭を抱え考える………三ヶ月、いけるか?いや、いけるかじゃない、やるんだよダスティネス・フォード・カズマ!!

 

 ダスティネス家の看板背負って胸を張って行くんだ俺!!

 

 それに強くなるに越した事はないからな、天才魔法少女も強くない奴が居ると興味を持ってくれないかもしれない。

 

 あと久々にアイリスの顔も見たいし。

 

「……分かった、それで良いです!!」

 

「納得行ったみたいで何よりだ、王都に手紙を出したりも含めて……一週間後くらいかな?それまでに皆に挨拶して荷造りを済ますと良い。ララティーナもそれで良いかい?」

 

「え?あ、はいお父様!!」

 

 その後、これを味わうのも当分先だろうとご飯を何時もより噛み締めて食べる事にした。

 

 何時もは姉ちゃんにあげていたピーマンって野菜も、なんとか暴れ回るのを押さえ頑張って食べるとこれがまた美味しい事に気付いた。

 

 俺がピーマンを食べるのに手慣れた頃にシェフの方を見ると、涙を流して感動していた。

 

 ………悪かったな、今まで食べなくて。

 

 野菜類全般活きが良すぎて食べる気になれなかったんだよ。

 

 食事を済ませ本日二度の風呂を一人で浸かり上がると、誰かが扉をノックしてくる。

 

「はーいどうぞー。」

 

「起きてるみたいだなカズマ。」

 

「どしたの姉ちゃん?」

 

 ネグリジェに着替えた姉ちゃんが部屋へと訪れてきた。

 

 俺は遠慮せず空いた胸元をガン見していると、咳を一つ溢し注意を顔の方へと向けてきた。

 

「あーとなカズマ…久々に一緒にね、寝ない…か?」

 

「夜這い?」

 

 ガンッと重い音が頭の上で鳴る。

 

 姉ちゃんの鉄拳をくらい目眩を感じながら俺はベッドに座り込む。

 

「じょ、冗談なのに…!」

 

「の割にはさっきから私の胸しか見てないようだが?」

 

 ぐぅの音も出ない正論を言われた為フル無視する事にした俺は、ベッドに寝転ぶ。

 

「悪かったよ…んで?どうして急に。」

 

「いや…な。お前のその、勘違いするなよ?あの…貞操が、心配で…。」

 

「やっぱり夜這いじゃないか!」

 

「だから違うと言ってるだろう!!」

 

 これまた鉄拳がきた為受け止め、俺も立ち上がり取っ組みあいとなる。

 

 ………はぁ、折角風呂に入ったのにまた汗をかくハメになった。

 

 お互い落ち着くと手を下ろし、俺は布団に寝転ぶ。

 

 布団を手でバンバンと叩きながら………

 

「ほら、寝るなら隣にこないと敷き布団はねーよ。どういう理由かは知らないけど、たまには姉弟で家族らしい事しないとね。」

 

 そう笑いながら姉ちゃんに言うと、姉ちゃんも呆れながら布団に潜り込んでくる。

 

 ………やばい、なんか分からないけど緊張するな。

 

 やっぱり姉ちゃんは姉ちゃんだ……けど、義理だし姉ちゃん可愛いしなんか良い匂いするし……俺が弟じゃないと耐えられなかっただろうね。

 

「なぁ、カズマ。カズマは好きな奴でも出来たか?」

 

「ハハッ!なんだそれ、外に出てないんだからいないよ。強いて言うなら姉ちゃんかな?姉ちゃんこそ冒険に出たり、求婚したりしてるんだからいないの?」

 

「フッ、臭い事を言うようになって、私も今の所はいないな。今は手のかかる弟に手一杯だからな?」

 

「そりゃわるーござんしたね。これからもどんどん迷惑かけていくから、覚悟しとけよな?」

 

「それは困るな、立派になって貰わないと。」

 

 そんなどうてことない雑談は、二人が眠りにつくまで続いた。

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