あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン!   作:おふざけちゃん

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あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン! 紅色の片目 3

 

 

 

「第三章 この天才魔法少女に招待を!」

 

 

 

「___良いかカズマ?絶対に夜一人で外に出るんじゃないぞ。私はカトレアの様子を見ているから、お前は部屋で大人しくするだ、良いな?」

 

 と説明しながら俺を疑いの目でずっと見てくる姉ちゃん、どれだけ信用されていないのか。

 

 俺はダブルベットの部屋で横になっているクレアにチラリと目を向け、気分の悪そうな顔をしているクレアには悪いが内心ニヤけるのを抑えるので必死であった。

 

「勿論、それじゃあ俺は隣りの部屋だったよな?向こうで大人しくしとくよ。」

 

「あぁ……本当に大人しくしておくんだぞ?」

 

 念押しする姉ちゃんの言葉を耳から流しつつ、俺は部屋を出ると扉を閉める。

 

 さて、外に出よう。

 

 一応音を聞かれていたら困るので隣の部屋の扉を開け閉め、どうせ後からバレると思っている為あまり意味がないとは思うが。

 

 しかしここで馬鹿正直にドタドタと外に出るのは流石に姉ちゃんに呆れられてしまう、形だけでも従っているフリをしておくのだ。

 

 受け付けで新聞を読んでいる職員にバレない様忍び足で扉へと移動、後は職員に背中を見せて堂々と出れば良し。

 

 変にコソコソし過ぎるのも事情を知らない職員に怪しまれかねない、ならば俺を瞳に入れる時間を出来るだけ減らしてあまり考えさせなければ良いと言う物。

 

 結果驚く程簡単に外に出る事に成功。

 

 晴れ晴れとした気持ちで俺は空を見上げ………

 

「……綺麗な夜景だな。」

 

 家でも見る事は出来ていた夜空、しかしこのアクセルの街の下から見る星は今まで見てきたどの星よりも輝かしく思えた。

 

 姉ちゃん曰く貴族は没落してから空の綺麗さに気付くらしいが、俺は没落するまでもなくこの夜空に気付いてしまった……やはり拾い子であるからだろうか?

 

 真昼の様子は何処へやら、繁盛していた商店街は静けさを保ち人通りも少なくなっていた。

 

 住宅街もぼちぼち光を失う頃、俺は街を探索していた。

 

 この街の教会、ポツンと一つだけ存在する魔道具店、アイドルでも居るのかそこそこ大きな小劇場、非常に様々な建物が多いこの街。

 

「……お、何だ黒猫じゃないか。」

 

「なーお。」

 

 自分でも今何処に居るのか分からない状況、俺はそろそろ不味いかもと冷や汗を流していると黒猫が俺の前に現れる。

 

 黄色い瞳の小さな黒猫、人懐っこいのかスリスリと俺の足に頭を擦り付ける……おいおい何て可愛らしいんだ。

 

 そんな黒猫を持ち上げマジマジと見つめ……ある事に気付く。

 

「お前、片耳が無いのか。」

 

「…なーお。」

 

 俺の言葉に反応してか少し悲しそうな黒猫、申し訳ない気持ちで一杯になり思わず黒猫を撫でる。

 

「わりぃ、お前の片耳が無いの何かどうでも良かったな。ほら見てみろ、俺も髪の毛の一部が金になってるんだよ………俺の友達のクレアって奴は染めてるみたいなんだが、俺は地毛でこうなんだ、不思議だろ?」

 

「なーお!」

 

 金色の髪の毛を黒猫に見せつけると、大きく鳴きその部分はペロペロと舐める……毛繕いでもしてくれているのだろうか。

 

 正直汚れるからあんまし嬉しくはないが、コイツの優しさを無下にする訳にもいかない。

 

 やがて満足したのか、自分の毛繕いを開始すると俺の手から離れる。

 

 自分の居た所へ帰るのかチラリと俺に一度振り向くと来た方向へと走りだしていった。

 

「………俺も飼おうかな、猫。」

 

 あんな事されたら好きになってしまうといったものだ。

 

 そろそろ宿へ戻ろうと思い来た道を引き返そうと、気付く。

 

 俺、迷ってるんだった。

 

 通りを抜けると何本も道が奥へと続いている、どの道を辿ってきたのか微塵も覚えていないのは勿論、すっかり街の灯りは消え去り暗闇へと変貌。

 

 取り敢えず姉ちゃんに怒られる事は確定した、ならば引き返す必要もあるまい。

 

 黒猫が戻っていった方向へ踵を返し俺は突き進む事に。

 

 まぁ最悪街の端に行けば出口を目指し壁に沿っていけば良いだろう、途方も無いがこのまま迷うよかマシである。

 

 この先がまだ人が居る場所であると願いながら俺は暗闇を進む……時折物に引っ掛かり転けそうになったり、小さな虫を踏みそうになったりと、非常に不愉快きわまりない時間であった。

 

 しかしそんな暗闇ともおさらば、俺は少し明るくなっている前方に気分が高鳴る。

 

「……てあれ?ここギルドじゃねぇか。」

 

 まさか丸く一周していたとは。

 

 未だ明るさを保つギルドにこれ程ない位に感謝しつつ扉を開け中を覗く。

 

 酒を飲み疲れ果てたのか机に突伏している数々の冒険者、未だせっせこ仕事をしている職員……もしかしなくてもギルド職員ってブラックなのか…?

 

 一度貴族権限で内部調査でも行った方が良いかと考えていると職員と目が合う……あ、あの人は確か。

 

「あら?貴方は確かダクネスさんの……こんな時間に一人でどうしたんですか?コリウスさん。」

 

 手元に持っていた資料を置き此方に問い掛ける今朝の職員さん、邪魔してしまったと気付いた為速攻で話を切り上げるべく頭を回す。

 

「あ、あぁいえ。眠れないものでここまで……さてそろそろ戻ろっかなぁ!」

 

 そんな俺の様子にフフッと口元に手を持っていき笑う。

 

「それはそれは、気を遣わしてしまってすいません。」

 

「い、いえそう言う訳では無いですけどねっ!?別に忙しそうだからマズったなぁとか、そう言う事じゃっ!!」

 

 可笑しくて堪らないのか先程の披露感満載の顔は何処へやら、暫しの間笑顔で笑っているとやがて落ち着きコホンと咳払い。

 

「そうですね……もし、少しの罪悪感が残るのであれば私のお手伝いをして下さいませんか?勿論、強制とはいきません。」

 

 真剣な顔付きになり俺を見つめ直す職員、手伝い?資料などを運べば良いのだろうか。

 

「そんなもの任せて下さい!!冒険者として、職員を手伝うのは当然ですから。」

 

 姉ちゃんにも引けず劣らずの美貌と胸に目を奪われながら、俺は自分の胸を張りそう返す。

 

 ハッキリクソ面倒くさいが、ここで良い所を見せて置けば職員さんが俺に気を持つかもしれない……一緒に冒険は出来ないにしろ、冒険から帰ってきた時にお姉さんに優しくされ様ものなら……つまりここで手伝わない選択肢は俺には無い。

 

 やる気バッチシな俺に期待度半分、胸を見ている事に残念度半分、といった微妙な表情で苦笑。

 

「有り難う御座います。では、此処へ向かってくれますか?」

 

 そう言って机の下から取り出す地図、職員さんが指を指した場所には赤い点が付けられていた。

 

 良く見るとそこ以外にも様々な所に赤い点、もしかして此処に何か封印されていたりするのだろうか?

 

 だとすると俺には荷の重い案件ではあるが、引き受けてしまった以上断る事も出来ない。

 

 職員さんから地図を受け取ると、俺は街の外と言う事で貸し出しされている剣を握るとギルドを後にする。

 

「期待していますよ、コリウスさん。」

 

 そう職員が呟いたのを俺は聞き逃さなかった、絶対にこの案件を失敗する事は出来なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___しっかし、ここに何があるってんだか。」

 

 一応職員さんに赤い点の場所には何があるのか聞いては見たが、片目を閉じ人差し指を口元へ持ってき内緒です、との事……その仕草に心奪われたのを覚えている。

 

 何処か既視感のある動きではあったが、もしかしてこの街では皆がするのだろうか。

 

 姉ちゃんも昔珍しく俺の悪戯に便乗してくれた時、その仕草を俺に見せていたのを思い出す。

 

 ただ今そんな事はどうでも良い、段々と赤い点に近付いている自覚がある俺は少しワクワクしていた。

 

 もしかしたらお宝掘りかもしれないし、本当に封印された魔物が居るのかもしれないし、俺がこの赤い点の正体を知らない内は何を期待しても良いであろう。

 

 と、気付く……何か居る。

 

 魔物かとも思ったが、ジャイアントトードと対峙した時の様な殺気とは又違った気配……そして炎や焦げ臭い匂い、偶にピカリと光ったと感じる俺の目、これは魔法だ。

 

 つまりこの先に居るのは魔法を扱える人間、もしくは魔物といった事になるのだが……確か魔物が扱う魔法はもっと嫌な気配があると聞かされていた。

 

 徐々に徐々にその場所へと近付く、すると未だ微かではあるが魔法の詠唱が聞こえる。

 

 つまり、この魔法を使う者の正体は人間だ。

 

 俺は逸る気持ちを抑えながら少し小走りでそちらに向かう。

 

「___ムレス・スワンプッ!!』『エナジー・イグニッションッ!!』………チッ!『ファイアボール!!』」

 

 女性特有の甲高い声、先程から焦げ臭い理由は彼女が炎に関する魔法を使っていたからであろう。

 

 俺は足元に大量の焼け死体らしき者に目をやる……これは、初心者殺し…?

 

 他にもとても初心者が集まる街と呼ばれるアクセル周辺には似ても似つかない魔物達、彼女が一人で此等を倒しているのだろうか。

 

 だとすれば相当の手練れであると言える、しかしこの街にそんな事が出来る人間など思い付かない……ある一人を除いて。

 

 段々と山成になっていた坂道を登り、何時の間にか聞こえなくなっていた魔法を唱える声の正体が露わになる。

 

 暗闇だというのに彼女の髪は確かに俺の目に印象付ける、ここからでも分かる艶々とした黒髪、前髪は右から左へとアシンメトリーになる様に揃えられサイドから後ろに掛けて長い髪が風に靡かれていた。

 

 埃を払う様に黒いとんがり帽子をバサバサとふるうと、深く被り靡いていた前髪が動きを止める。

 

 やがて地面に置いて居たのか大きな杖を拾い上げると、周りをチラチラと見渡し俺が隠れている木へと杖を向ける。

 

「其処に居るのは誰ですか。」

 

 前髪によって片目が見えない彼女の片目は、赤く凛々と光る瞳であった。

 

 もし実際に魔法を撃たれればひとたまりも無いだろう、俺は両手を上げて敵意が無い事を主張しながら彼女の前に出る。

 

 そんな俺をマジマジと見つめる彼女は未だ疑いの目を向け杖を構えたまま、チラリと俺の足元に投げ捨ててある剣を見るとやがて杖を降ろす。

 

「……冒険者ですか。これは失礼しました、魔物が隠れているのかと。」

 

「いや、俺も悪かった。……何をしていたんだ?こんな所で。」

 

 周りの焼け死体を見渡しながら俺は彼女を上から下まで観察、残念ながら胸と呼べる物は無かったが身長は俺よりも高く俺を見下ろすその姿は何処か高揚感を覚えた。

 

「私は………ギルドからの依頼で魔物を討伐していました。まぁ、あまり強くない魔物だけですが。」

 

 ここに来る途中に居た初心者殺しを思い出しつつ、周りにある焼け死体はどれも御世辞に弱いとは言えない魔物達ばかりであった。

 

 これは彼女なりの謙遜なのか、はたまた俺みたいな弱い人間からしたら強いかもしれない魔物を私は余裕ですよとのアピールなのか……長く貴族と言う体裁で過ごしてきた俺は言葉通りに受け取る事が出来ない。

 

 意味などないのに深掘りするこの癖、自分に呆れながら何処か遠い所を見る彼女に向き直る。

 

「そうか、悪かったな邪魔して。俺もギルドのお姉さんに頼まれてこの周辺を探索してたんだ、ほらこの赤い点の所を。」

 

 そう言ってポケットから受け取っていた紙を取り出し彼女に見せる、と彼女の赤い瞳は先程よりも更に赤々と光りマジマジと俺の紙を見下ろす。

 

「……何を考えてるんですか。」

 

 そうボソッと言ったのを聞き逃さかった、すると俺の手から優しく紙を取り出すと己の胸元へと仕舞いこんだ。

 

「此れは私が彼女に伝えられた危険な魔物が居るスポット一覧です……貴方の様な初心者冒険者が何故此処に来たのか不思議でしたが、どうやら手違いの様ですね。」

 

 やれやれと言わんばかりに首を振り呆れた素振りを見せる彼女、だとするとあのお姉さんの俺にして欲しかった事が確定した訳だ。

 

 俺にして欲しい彼女に対する何か……難しいクエストを手伝ってやれ、と言う訳でもなく何か個人的な依頼だとすれば内容を隠す必要もない、それにこんな所で鉢合わせせずにお互いに面識を持って昼間等に依頼を受けるかどうか、彼女本人がする事であろう。

 

 つまりあのお姉さんの『期待している』と言う意味深な台詞、今にして思えば何故テーブルから離れた所に居る俺に聞こえる声で呟いたのか、只の俺の悪い癖に過ぎないが何かを汲み取って欲しいのではなかろうか。

 

 更に追い打ちを掛けるかの様に目の前の彼女の『何を考えているのか』これは俺に言った台詞ではなく、俺に依頼したギルドのお姉さんに対しての台詞であろう。

 

 一人でやるつもりであった、または他の人に頼めない理由があった……どれも定かではないにしろ段々とこの依頼の内容が読めてきた。

 

「………なぁ、急で悪いんだがあんたの名前って聞いても良いか?」

 

「?えぇ、別に構いませんよ。私が名はめぐみん…っ!……と、言います。決して巫山戯ている訳ではありませんよ?」

 

 急に手をバッと持ち上げようとし……直ぐにハタと気付き落ち着く、目の前のめぐみんさんは己の名前の奇抜性に気付いていたのか直ぐ様訂正……成る程。

 

 今の行動で間違いなく彼女が俺の耳に届いた天才魔法少女である事が確定、それと共にあのお姉さんが俺にして欲しい事が何とはなく理解出来た。

 

「めぐみんさん………と言ったか。貴方は紅魔族で間違いないでしょう?その目、先程の魔法、そして………何故か止めた名乗り。」

 

「………」

 

「しかし不思議だ。紅魔族と言うのは元来目立ちたがりやの多い種族だと聞く、貴方は間違いなくそれに該当する人間であろう事は分かる……が、何故名乗りをやめたのか。それは紅魔族である事を隠したがる何か理由があるんじゃないですか?やけに目を合わせたがらない所、目立ちだかりやと言うのは活躍を見て間違いないでしょう、でなければあの様に派手な……」

 

「探偵気取りはやめて下さい。」

 

 キッパリと、俺の言葉を遮り冷たい目で俺を見るめぐみんさん。

 

 ズンズンと俺に近付くと怒りの籠もった手で俺の胸ぐらを掴み持ち上げる、残念な事に体格差もあいまい俺に抵抗する事は出来ない。

 

 片目の隠れた赤い瞳でギロリと俺を見下ろす、何時もなら綺麗な顔が近いこの現状胸がドキドキしてやまなかったが今は残念ながら別の意味でドキドキしている。

 

 さしずめ……アルダープに見られた姉ちゃんと言った所か。

 

「何を勘違いしているのか分かりませんが、私は紅魔族である事は正解です。しかし私は紅魔族である事を隠そう等とはしていません……かと言って表立って目立とうとしない理由はそう言う人間だからです、それは何もおかしな所等ありません。実際私の友人である……っ!!」

 

 何か地雷を踏んだのかどんどんとヒートアップしていくめぐみんさんの言葉を聞いていると、急に隠れている片目を抑え俺を地面に投げ飛ばす。

 

 急に地上に戻された此方としてはたまったもんじゃないが、これで彼女の問題点を見つける事に運良く成功したみたいだ。

 

 殆ど首を絞められていた感覚であった俺は上手く回らない頭を回すべく酸素を補給、その間に蹲り未だ片目を抑えるめぐみんさん。

 

「……兎も角、これ以上私に関して探る事を禁じます。あの女にも……キツく言っておくとしましょう。貴方も他人を気にする暇があったら己の置かれた状況を良く見る事です…それでは。」

 

 ヨロヨロと立ち上がりながら杖を拾い街の方へ戻って行くめぐみんさん。

 

 夜も更に回った頃、彼女は帰って行く……何故お姉ちゃんがめぐみんさんを見掛ける事が出来なかったのか理由が分かるな。

 

 深夜に活動し深夜に依頼を終える、実力のある彼女だからこそ出来る芸当だ。

 

 だがだからこそ更に理解出来ない、何故彼女程の実力を持っていて王城に招集等名指し以外の依頼を受けようとしないのか……何故自分が積極的に外の更に強い魔物を倒しに行かないのか。

 

 何かここに滞在しなければいけない理由、姉ちゃんの様に見てくれは強い等と言った理由がなければさっさとここから離れるのが一番良いだろう。

 

 ……きな臭くなってきた、どうも俺の手におえる内容じゃなさそうだと。

 

 しかし受けてしまった物は仕方ない、取り敢えず出来る事はやろう。

 

 俺はトボトボと己の部屋に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___何故、お前の頬は赤く張っているのだ?」

 

「お前のせいだ。」

 

「えぇ…?」

 

 呆れた目で俺を見るクレア。

 

 そんな俺を冷たい目で見下ろす姉ちゃん、正確に言えばこの頬を作り上げた犯人の半分が姉ちゃん、そしてこれが出来る原因となった人物はクレアだ。

 

 結局あの後こっそり自分の部屋に戻ると部屋の中で仁王立ちしていた姉ちゃんと遭遇、何とか弁明の機会を得たは良い物の先程の出来事を言って良い物かと迷った挙げ句、俺は殴られる事を了承した。

 

 何よりもしここで姉ちゃんに事情を話せば少しは理解してくれるだろう、しかしどっちにしろ俺が自分の意思で部屋を出た事には変わりない為ただめぐみんさんとの約束を破り殴られる……ならば、せめて約束は破って殴られるのが男と言う者だろう。

 

「兎も角、今から帰ってお父様に謝りに行くぞ。カズマもお父様にこの事は隠しておいてやる、だから二度と馬鹿な事はするな…良いな?」

 

「はい……。」

 

 次からは完全にバレない様にする事を胸に誓い、俺達は帰路へつく。

 

 昨日深夜まで出歩いていたせいで目茶苦茶眠たいが我慢して歩く事としよう、正直今に地面で寝てやりたいが其処まで落ちぶれてもいない。

 

 フラフラな足取りで街の外へ向かっていると、横の薄暗い通路から何やら声が聞こえて来る。

 

「___ぉ!」

 

「___と、ちょむすけ!何処へ行くのですか…っ!?」

 

 ?何処か聞き覚えのある声と鳴き声……殆ど残っていなかった意識が覚醒し始める。

 

 ドタドタと慌てん坊な黒猫の足音、凄まじい速度で俺の足にしがみついてくる……いや爪が食い込んで痛いのだが……。

 

「「あ。」」

 

「なーお。」

 

 そんな黒猫を追いかけて来たのか、昨日の寝不足を起こしてしまった対象でもあるめぐみんさんが何処か気不味そうな顔をして出てきた。

 

 先程の眠たかった俺は何処へやら、痛みと衝撃によって完全に覚醒した俺は瞳孔を大きく開いていただろう。

 

「ん?どうしたコリウス、知り合いか?」

 

「いやコイツに女の知り合いが居る筈がないだろう。さしずめ昨日の夜中に脱走した理由……まさか、お前…?」

 

 良くも悪くも鋭い奴だよ全く、お陰で姉ちゃんの目が更に疑い深くなってしまった。

 

「………いやほら、昨日夜中に飛び出して迷ってた所を宿まで案内してくれたんだよこの人。な?」

 

「え、えぇ…そうですね。」

 

「成る程……家の愚弟が迷惑を掛けたな、すまなかった。」

 

「いえ、私も丁度宿に戻ろうとしていた所でしたので…それでは失礼して……。」

 

 そう言って何とか空気を読んでくれためぐみんさんがその場を立ち去ろうと、俺にへばり付いていた黒猫を引き剥がそうと……。

 

「いや待ってくれ、もし良かったらお礼をさせてくれないか?」

 

 等とクレアが抜かす。

 

 この野望此方は昨日の事もあいまって気不味いとか言う次元じゃないってのに。

 

 そんなクレアの言葉に何か二人の間に通じる所があったのか、クレアと姉ちゃんが顔を見合わせ頷く。

 

「私からもお願いしたい。これでも一応大事な弟でな、内心かなり感謝している……それを話せば、私のお父様も貴方にお礼がしたいと言うに違いない。」

 

 いやそれを話されたら俺がイグニスさんにまた家の中に閉じ込められるだけだって、それを分かってるからさっきだまってくれるって話じゃなかったのかと。

 

 何やら二人の間でめぐみんさんに興味を持ったらしく、グイグイとお礼をしたいと言う名の探りを入れようと必死になっている。

 

 そんな二人の内心を見透かしているのか苦笑い気味のめぐみんさんであったが、姉ちゃんの髪色を見てどうやら悩んでいる様子であった。

 

 ……まぁ分かりやすく貴族味が凄いよな。

 

 隣のクレアも白髪ではあるが所々金色が残っている、何故隠す必要があるのかと突っ込まれればどうにも言い様がない。

 

 最後に俺の顔と姉ちゃんの顔をチラリと見比べ………おい何だその疑いの目は。

 

 まるで似てないとばかりに怪しむめぐみんさん、そりゃまぁ拾い子だから似てる筈などないのだが……やはり弟と呼ばれている事に少なからず疑問も残るだろう。

 

 まぁ勿論聞かれるまで一切説明してやらないが。

 

「………分かりました。しかし私はこれでも忙しい身、昼頃には戻らせて頂きます。」

 

「あぁ、心得た。」

 

 そう言って踵を返し家へと向かう姉ちゃんとクレア、俺もめぐみんさんと二人っきりと言うのは気不味くさっさと横に並ぼうと……足を動かそうとした瞬間肩を掴まれる。

 

 首を後ろに回せないでいると、ゆっくりと俺の耳元に顔を近付けてくるめぐみんさん。

 

「………余計な事、喋らないで下さいね?」

 

 俺から完全に黒猫を剥がし抱え込むと、チラリと確認して姉ちゃんの後を着いて行く。

 

 ………困ったな、やはり美人と言うのは怒る姿はそれはそれは恐ろしいみたいだ。

 

 意地悪な三姉妹に虐められている一番下の弟な気分で、俺は三人の後を着いて行くのだった。

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