あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン!   作:おふざけちゃん

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あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン! しがらみの剣乙女 2

 

 

 

「第二章 この変態姉弟と姫様と!」

 

 

 

 まだハッキリとしない意識の中、目を擦り首だけを窓へと向け時間を確認する。

 

 丁度黎明時、昨日の運動のせいで筋肉痛な身体を伸ばそうと手を上げ………れない。

 

 俺は綺麗な長い金色の髪が布団から出ている所をゆっくりと持ち上げる。

 

「………」

 

 そこには普段のこわ………キリっとした顔は何処へやら、スヤスヤと綺麗な寝顔で寝ている人物、ララティーナ姉ちゃんが俺の右腕に抱き着いて寝ていた。

 

 筋肉痛とは別に右腕が痺れているのは姉ちゃんのせいだろう、それの復讐としておもいっきり左手を上に上げ頭にチョップを___

 

 するはずもなく徐ろに胸を鷲掴みする。

 

「……んっ…。」

 

 少しビクッと反応を見した姉ちゃんだったがどうやら起きてないらしい。

 

 チャンス!普段は見るだけで触ろうとすると飛んでくる拳が、今や赤ちゃんの様に俺の右腕に必死にしがみついている。

 

 ………少し大きくなったか?姉ちゃんはただでさえ豊富なこの胸を、何処まで成長させる気でいるのだろう。

 

 俺は弟として真剣な眼差しで胸を見て触り観察する…そう、これは必要事項なのだ。

 

 大きくなったら新しい下着を買うのは世の女性の性、本人では気付かないかも知れないから第二チェックとして確認する必要がある。

 

 それに姉ちゃんは時たま冒険に出ているから、下着が合わないせいで戦闘に集中出来ず命を落とす………なーんて事になりうるかもしれないからな。

 

 俺はこの確認作業に誇りを持って行う。

 

 姉ちゃんや守衛さん、メイドさん達はただのエロ目的だと断罪してくるかもしれない……しかし!俺はこの行いが評価されなくとも己を信じて、大好きな姉ちゃんを思って、弟として、この行いをしなくてはいけない。

 

 そう、これは義務なのだ。

 

 ………バレた時の言い訳はこれくらいで良いだろう。

 

 俺は大きく豊満な胸に釘付けになっていた___そう、扉のノックに気付かないくらいに。

 

 扉のガチャリと言う音でやっと人が来ている事に気付き振り向く、しまった!!

 

「失礼します坊っちゃん、起床の挨拶ともう一つ。ララティーナなお嬢様を見かけしませんで……した…か?」

 

 そう言って俺と目が合う執事。

 

 執事は俺と横で寝ている姉ちゃんを交互に見た後、静かに扉を閉め去っていった。

 

 それと同時くらいに横でガサゴソと物音が聞こえ始める、やっと起きたのだろう。

 

「……ん、おはよう、カズマ。」

 

 そう言って俺を優しい笑顔で見てくる姉ちゃん。

 

「ごめん、姉ちゃん。」

 

 俺にはそういう事しか出来なかった。

 

「……?何がだ。この左手の事か?」

 

 そう言いさっきまでの優しい笑顔は何処へやら、今度は怒った笑顔でミシミシと音をならしながら俺の左腕を締め上げる。

 

 右腕は痺れ、左腕は姉ちゃんに締め上げられ、昨日の運動の筋肉痛とトリプルコンボを貰った俺はさっき考えた言い訳は何処かへと飛んでいってしまった。

 

 ……フッ、これも男の性……か…。

 

 今日は俺の絶叫で一日が始まる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日はお父様は朝から仕事に追われ朝食は食べないと聞き、私とカズマとの二人で朝食を頂いていた。

 

 カズマは先程から不貞腐れて目を合わせようとしてくれない…どうしたものか。

 

「………なぁカズマ。私もしょうしょうやり過ぎたと思っているが、元はと言えばお前が悪いんだからな?」

 

「………」

 

 この調子で困っている。

 

 いやでも寝込みを襲うのは如何なものかとも思う、これは私なりの弟への指導なのだ………だが、正直を言えば寝込みを襲われるシュチュエーションと言うのはそれはそれで良い物だが……!

 

 と妄想にふけているとカズマのジト目の視線に気付く。

 

 私は咳を一つ溢し誤魔化す……いかん、カズマの前では清楚で清き姉として生きていくと決めているのだ。

 

 姉として、弟に尊敬される様にと決めている。

 

 カズマも姉の趣味が実は超がつくほどのドMだと知ったらショックで寝込んでしまうかも知れない、それに弟にガッカリされるのは姉として納得いかない!!

 

「ほらカズマ、私ばかり見てないで食事を済ませろ。それとも私の顔に何か付いているか?」

 

「ん?いや特に。強いて言えば可愛い目と口と鼻くらい?」

 

 ………ここ最近、私は頭を悩ませる事が二つある。

 

 一つは婚約云々についてなのだが……もう一つは先程のカズマの発言。

 

 そうこの男何時何処でそんな言葉を覚えたのか、歳が上がるにつれて臭い発言をする様になっていった。

 

 ただ臭いだけなら良いのだが、偶に…ほんと偶に格好良く見える時があって困っている。

 

 酷評する訳ではないが顔は別にイケメンと言える程ではない。

 

 むしろ地味よりの、まぁ実際に血が繋がっていないのだから似てないのは仕方がないのだが……貴族にしては派手ではない髪色。

 

 不思議な事に一部分だけが金色に染まって、他は茶色の………なんと言ったか、メッシュと言ったか。

 

 そんな感じの髪色で、少なくとも私が生きてきてまだカズマとクレア殿以外に見たことのない髪色。

 

 因みにメッシュという名前はカズマ本人がそう呼んでいた、理由はなんとなく頭に浮かんだとのこと。

 

「おーい姉ちゃんこそ手、止まってるよ?」

 

「ん…?あ、あぁすまない。」

 

 そうしてまた食事へと手を付ける事数分、お互いほぼ同時に完食して手を合わせる。

 

「「ごちそーさまでした」!!」

 

 メイドさんが食器の片付けを初めた。

 

 私はこの後友人との約束がある為ギルドへと出かける準備をしに私室へと向かう。

 

「あ、姉ちゃん今日もギルド行くの?」

 

「あぁそうだ。…連れて行かんぞ?」

 

「分かってるよ!!それに約束したからな。」

 

 男らしく胸を張りトレーニング室へと足を運んでいくカズマ。

 

 珍しい、何時も私がギルドへ行こうとしていたら連れて行ってと駄々を捏ねていたのだが………やはりあの約束の結果だろうか。

 

 なんだろう、人として成長したカズマを見ていて嬉しい気持ちはあるのだが……姉としては、姉離れの予兆の様に見えてなんだか寂しくなってしまう。

 

 嬉しい様な悲しい様な感情のまま、私は自室にある鎧を来て剣を手に取り外へと向かう。

 

「おや?行ってらっしゃいませお嬢様。」

 

「うむ、行ってくる。」

 

 門に立っている守衛さんに挨拶をして私は街へと歩んで行く。

 

 やはりカズマの外に出たいという我儘も、私自身痛い程に分かる。

 

 こうしてギルドへと向かっている訳なのだが……やはり心躍る様な感覚になるのだ。

 

 私も十六になるまでマトモに外に出た事のない身、まだ二年ほどしかアクセルの街を歩いていないのだが、まだまだ知らない事が沢山ある。

 

 そんな土産話を昔は良くカズマに聞かせていたものだ……最近は、街の外に出たい欲が強くなるから喋らなくて良いと言われているが。

 

 何だがムシャクシャして腹が立つらしい。

 

 その感情を是非思いっきり私に八つ当たりして欲しいものだ、絶対本人に直接言わないが。

 

「……あ!」

 

 どうしよう、もしカズマが三ヶ月鍛え上げられ私と一緒に冒険に出るとなったら……!

 

 私の趣味がモロバレしてしまうではないか!!これは死活問題だ、しかも冒険に出る過程でギルドへと冒険者カードを作ったり、受注したりの過程もある。

 

 そんな所に私とカズマで行ってみろ、絶対あやつらは碌な事を口走らない!!

 

 最早貴族とバラして口封じを……?いや駄目だ!!それをするとややこしい事になるのは目に見えている、それにカズマもそんなのは求めてないだろう。

 

 ………多分。

 

 何だかんだ言って自分の手で手に入れたい、良い意味で強欲なやつだ。

 

 貴族権限で無茶をするなんて事はしないだろう……!その筈だ、うん。

 

 私の趣味がバレない様に考えるも中々良い発想が出てこなく、唸らせていると人にぶつかってしまった。

 

「キャッ!」

 

 そう可愛らしい悲鳴が聞こえ私はハッとする。

 

「す、すまない。大丈夫か?」

 

「いてて…大丈夫だよ、ってダクネスじゃん!!」

 

「ん?あぁクリスか!すまない、少し考え事をしていて気付かなかった。」

 

「全く!ちゃんと前見てよね?」

 

 私の数少ない友人、クリスがそう言って頬を膨らます。

 

 彼女はこんな私の趣味を受け入れてくれている人間で、私と同じエリス教徒と言う共通点もあり良く一緒に冒険に行っている。

 

 かなり小柄な体型でどうやら胸があまりないのを気にしている為か、良く私の胸を羨ましそうに見ている___今みたいに。

 

「……どうしたクリス?」

 

「うぇ!?い、いやなんでも!!ささ、行こっか?」

 

 我に返ったのか首を横に振りギルドへと歩いていく。

 

 確かに自慢じゃないがここ最近私も大きくなったのを自覚している、一説によれば揉めば揉むほど大きくなると聞いた事があるが………アイツのせいだろうか。

 

 そんな人によれば贅沢な悩みをありつつ私はクリスと一緒にギルドへと行く道すがら、街並みを眺める。

 

 子供たちが走り回って遊んでいたり、奥様方が談笑していたり、商人が野菜を売っていたり、そんな平和な光景が私の目には映し出されていた。

 

 こんな平和なアクセルの街を、あの領主殿が守っているとは到底考えられない。

 

 このまま平和が続く事を私は望んでいる…例え、この身を捧げてでも。

 

 もしそんな事をしたらお父様は怒るだろうか、カズマはなんと言うだろうか。

 

 そんな事態にならない事を祈るばかりだ。

 

「おーいダクネス!置いてっちゃうよ!!」

 

「…!あぁ、待ってくれクリス!!」

 

 そんな友人の言葉を聞きクリスの方へと走る。

 

 折角街まで出たのだ、そんなあるかも分からない暗い未来を考える必要などない。

 

 ただ今だけは、私の気分を発散する時間なのだ!!はぁ…考えるだけでヨダレが出てくる!!

 

 私はカズマに趣味を隠す事などすっかり頭から抜け落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___一週間後。

 

 アレから早いもんで気付けば一週間、ただ筋トレして素振りして終わった気がする。

 

 俺は姉ちゃんと馬車に揺られ王都へと向かっていた。

 

 俺はこの一週間鍛え抜かれた自分の筋肉をじっくりと眺める……うん、変化なし。

 

 ほんの少し変わったかな?くらいだ、姉ちゃんに私の何処が変わったでしょうと聞かれた時くらいの感覚。

 

 結局変わっていたのは胸元の白いリボンが、赤いリボンへと変貌していただけだったのを思い出す。

 

 適当に腹筋が更に割れた?と聞いたら強烈なビンタが飛んできたな…いやーアレは痛かった。

 

 そんな理不尽な行いをした張本人である姉ちゃんは今、俺の膝を借りてスヤスヤと眠ってやがる。

 

 ………大概、姉ちゃんもブラコンなんだよなぁ。

 

 ま、俺もシスコンなんですけどね…主に姉ちゃんの胸に。

 

「フッ、これぞホントのブラコン…ってね。」

 

「何しょーもない事言ってるんだお前は。」

 

 何時の間にやら起きていた姉ちゃんのするどい突っ込み、腕を伸ばしプルプルと震えたと思ったら、今度は俺をジト目で見上げてくる姉ちゃん。

 

「なんだよ、猫みたいに身体伸ばして。」

 

「………カズマ、お前私が寝てる間に何もしてないよな?」

 

 そう聞き捨てならない事を言ってきた姉ちゃん。

 

「おいおい姉ちゃん、俺の手の行く先を良く見てくれよ。今俺は右手で頬を付き左手で姉ちゃんの頭を撫でているだろう?」

 

「そうか、撫でるのは止してくれ髪が崩れる。」

 

 コイツ!姉ちゃんから横になって良いかと聞かれたから良いと答えたら平然と膝に頭を乗っけてきた癖して、俺が何かしたらそれを咎めるだと!!

 

 随分と横暴な姉ちゃんに俺はほとほと呆れると、左手を姉ちゃんの頭からずらし胸の方へと___

 

「おい。」

 

「冗談だって、ほら笑顔笑顔。」

 

「全く…。」

 

 そんな乳繰りあいをしていると、王都に着いたのだろうか馬車が止まる。

 

 姉ちゃんは起き上がり俺もずっと座っていた為痛いお尻を我慢しながら馬車から降りる。

 

 ………何時見ても圧巻だな、王都ってのは。

 

 クソデカい城を囲んで色々な店やら何やら沢山ある都市、俺は田舎貴族の如く辺りをキョロキョロと見渡していた。

 

 そんな俺を恥ずかしそうに見ていた姉ちゃんにヘッドロックを決められると、周りの人間がクスクスと笑っているのに気付いて開放される。

 

 そんな事がありながらも、俺を待つ可愛いアイリスが居る城へと意気揚々と進んで行く。

 

 久しぶりに来たけど案外道を覚えているもんだ……目印がデカいのもあるが。

 

 姉ちゃんと歩く事数十分、段々と見えてきた城の前には見たことのある人影が三人分立っていた。

 

 向こうもこちらに気付いたのだろう、一番小さな子がこちらへと走り出したのに気付いた後ろの二人も慌てて走り出す。

 

「……カズマは本当にアイリス様に好かれているな。」

 

「そりゃ俺は立派な兄ちゃんだからな、自然と好かれちまうんだよ…。」

 

「そんな立派な兄ちゃんにも立派な姉が居たと思うが、あんな感じに慕おうとは思わないのか?」

 

「いや慕ってるよ?その立派な姉ちゃんに付いている大きな胸に。」

 

「はぁ、お前なぁ…。」

 

 なんて馬鹿な会話をしていると本格的に見えてくる俺の可愛い妹とその取り巻き、俺は手を振りながらその子の名を呼ぶ。

 

「おーい!アイリスー!!」

 

「___ちゃん!お兄ちゃーん!!」

 

 俺の前へと来ると先程の走るスピードは何処へやら、急ブレーキを掛けたと思ったらちょうど前へと立ち止まる。

 

「お久しぶりです!お兄ちゃん!!」

 

 そう言って俺に抱き着いてくる妹、改めアイリス。

 

「ララティーナもお久しぶりです!元気にしていましたか?」

 

「え、えぇそれはもうこの通り元気ばっちしです。………クレア殿に怒られるので、そろそろカズマから離れては?」

 

「嫌です!だって久しぶりにお兄ちゃんに会えたのですから!!」

 

「って言ってるからしょうがねーよ姉ちゃん。そう嫉妬すんなって、な?この前だって一緒に寝たじゃないか。」

 

「この馬鹿!!アイリス様の前で変な事を言うんじゃない!!」

 

「変な事…?姉弟で一緒に寝るのが変な事って言いたいのかよ姉ちゃんッ!?」

 

「あーもうあぁ言えばこう言うッ!!」

 

 そんな俺達のやり取りを聞いていたアイリスがクスクスと笑う。

 

 満足したのか俺から離れると、遅れて後ろから取り巻き二人も追い付いてくる。

 

「___リス様!!アイリス様!!もう…あまり手を振りながら走るものではありません。端ないのですから…。えーお久しぶりですダスティネス卿、今日から三ヶ月宜しくお願いします。」

 

 そう言って頭を下げるクレアとレインを眺めていると、姉ちゃんに頭を掴まれ俺も強制的にお辞儀をする。

 

「こちらこそ宜しくお願いします。急なお願いを承諾してくださって感謝しています。」

 

「いえいえ、それでは城へと向かいましょう。ほらアイリス様、手を繋ぎ……アイリス様?」

 

 クレアから差し出された手を無視し、俺の手を小さい手でギュッと握ってくる。

 

 …全く、しょうがない妹だよ。

 

「そう恨めしそうな目で見るなよクレア、アイリスは俺が良いんだって…いっでぇッ!?」

 

「クレア"殿"だ。あと敬語。」

 

「………クレア殿、アイリス…様は自分と手を繋ぎたいみたいなので、自分が責任持ってお城までエスコートします故。」

 

「あ、あぁ分かった。ラ、ララティーナ殿もあまり気にしなくて良いですからね?私とカズマ殿はそんな間柄を大切にする必要もないので…。」

 

「いえ、これは貴族としての義務ですので。家の愚弟を甘やかさない為にも宜しくお願いします。」

 

 稀に出てくる貴族としての姉ちゃんに本気で怒られてしまった。

 

 この時の姉ちゃんに逆らえる人間など存在するのだろうか…?俺は甚だ疑問を持ちながらオドオドしたアイリスに引っ張られドナドナした気分で城へと歩き出す。

 

 普段なら許してくれる言葉遣いも、時と場所によると良く姉ちゃんにこっ酷く言われる所以がこれだ……貴族と言うのは随分と面倒くさいものだ。

 

 その分生活面で楽してるからなんとも言えないが、俺には庶民の方が肌に合っているのではないだろうか。

 

「あの、お兄ちゃん…?そんなに落ち込まないで、ね?」

 

 コソッと耳元で励ましてくれる妹に涙がちょぎれる、どうして妹は常にこんなに可愛いのに姉はこんなに怖い時があるのだろう。

 

 俺はチラリと姉ちゃんを見上げるとまだ怖い顔をしていた、今日は姉ちゃんにもちゃんと敬語で接する事に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___えーそれでは、昼時になったらまた呼びますので城の中でゆっくりしておいて下さい。」

 

 そう城の執事に伝えられ、俺は一室へと案内された。

 

 訓練の名目で来たのだが一応は客人、兵隊と同じ宿というのは色々と問題があるのだろう。

 

 昼飯を食べたら早速訓練になるらしく、俺は億劫な気持ちになっていた。

 

 城内は移動可能だと聞いているので俺は部屋から出ることにした。

 

 やはり何度か来たことがある為なんとなく部屋割りは分かる…例えば、今アイリスが勉強している部屋だとか。

 

 一度邪魔しに行ったらレインに怒られてしまったので今回は邪魔をしない事にした、今回は。

 

 手持ち無沙汰な俺はクレアにちょっかいでも掛けようかと城内を散策していると、今一番会いたくない人間と出会ってしまった。

 

 角を曲がると俺を探していたのか怖い顔の姉ちゃんとバッタリ会ってしまった。

 

 俺は引き返そうと回れ右しようと方向転換すると___

 

「カズマ!」

 

「…ッ!は、はい!!なんでしょう姉様!!」

 

「何故敬語なのだ…はぁ、別にさっきの事を怒ろうなどではない。何時も通りに接してくれ。」

 

 そう言われ怖い顔は何処へやら優しい微笑んだ顔へと変化していた。

 

「姉ちゃんいっつもそんな顔だったら良いのに。」

 

「ムッ、何時もの顔では不満か?」

 

「ちょっと怖い。」

 

 素直にそう伝えるとおもいっきり頭をグリグリされてしまった、ちくしょう素直に言うんじゃなかった!!

 

「痛い痛いごめんって姉ちゃん!!ほら美人って真顔は怖いって良く言うだろ!?それだよ!!姉ちゃんは可愛いより美人だからさ!ね?」

 

 勿論嘘ではない、実際姉ちゃんは可愛いって言われるとあまりピンとこないが、美人と言われれば納得がいく。

 

 実際真面目な話をしている時の姉ちゃんはその顔も相まって少し気迫に押されてしまう、これは俺が弟だからなのかは分からないが。

 

 するとピタッとグリグリする手が止まった。

 

 まぁ言った事は本心ではあるが、姉ちゃんってチョロいよなぁ。

 

「ホントにお前は口が上手いな…全く。お前が外の世界に出るのが別の意味で怖いよ私は。」

 

 遠い目で俺を見つめる姉ちゃん、心外だ俺は嘘などついてないって言うのに。

 

「まぁ良い。昼まで茶でも付き合わないか?することが全くなくてな。」

 

「え、姉ちゃんが淹れるの?」

 

「あぁ、私の唯一の特技の紅茶が飲めるぞ?」

 

「よっしゃ!最近淹れてくれないから姉ちゃんの紅茶を欲してたんだよ!!」

 

 ラッキー!姉ちゃんの紅茶は何故かクソ美味いからな…ホントなんで紅茶は淹れるの上手いんだろ、他の事は不器用なのに。

 

 俺は上機嫌で姉ちゃんと一緒に中庭へと行き紅茶を楽しむ事にした。

 

 中庭と言っても流石この世界を統べる城、うちもかなり広い方ではあるがこことは比べ物にならない。

 

 中庭に行くのに五六分掛かるのはあまり流石に嫌だな……広いってのも良い事ばかりじゃないみたいだ。

 

 そんなこんなで中庭へ着き座ると、姉ちゃんが紅茶を淹れ始める。

 

 やはり姉ちゃんには紅茶が似合うな、淹れるのも上手いし淹れる姿も様になっている。

 

 題名はそうだな……紅茶を注ぐ女、とでもしておこう。

 

 入れ終わったカップを俺に差し出すのでそれを受け取り、まずは香りを楽しむ。

 

 正直紅茶の香りなど気にした事がないが、姉ちゃん曰くこれが貴族の嗜みだとかなんとか……お偉いさんの前ではこれをしないとあまり良い顔をされないそう。

 

 さっさと飲みたい欲を押さえ俺は頑張って習慣付けようと香りを楽しみ、そろそろ良いかなと紅茶をズズッと___

 

「……やっぱり美味いな。姉ちゃんこれで生計立てたら?」

 

「馬鹿を言え、これはあくまで趣味の範疇だ。」

 

 勿体無い、千年に一度いるか居ないかの逸材だろうに。

 

 しかしあの筋肉と不器用さから、なぜここまで美味い紅茶が産まれるのか全く分からない………やはり筋肉が大事なのだろうか。

 

 今度その秘伝の注ぎ方をレクチャーして貰おう、そう心に決め俺は紅茶を飲み進めていく。

 

 城に居る住人の話し声、物音、小鳥の囀り、「お兄ちゃーん!」可愛い妹の声、俺は全ての音を心で感じ楽しむ………ん?

 

 閉じていた目を開け声のした方を見上げると、勉強が終わったのか上の階から俺の名を呼ぶアイリスが居た。

 

「おーアイリス!勉強は終わったのか?」

 

「はい!それで、そろそろお昼ご飯の時間なので呼びに来ました!!」

 

「了解!わざわざありがとう!!…うし、姉ちゃん行こうぜ。」

 

「ん、分かった。」

 

 お互い紅茶を飲み終わったみたいだ、随分とベストタイミングで来てくれたアイリスに感謝しつつ、この後訓練だという事のせいであまり気乗りになれない。

 

 仕方ない、俺の我儘を聞き入れる形となったから黙って受け入れるしかないのだ。

 

 ここから食堂まであまり遠くない、姉ちゃんがティーカップなどを執事さんに回収を頼んでいるのを待ってから食堂へと向かう。

 

「なんか緊張するな…姉ちゃん、剣当てれる様になると良いな?」

 

「ん…!?ま、まぁなんとかなるさ。最悪カズマが私を守ってくれるだろ?」

 

「え?いや守られる気満々だけど。」

 

「えぇ…?そこは男らしくだな、」

 

「あーはいはい分かった分かった!!姉ちゃんは俺が守りますよーと。」

 

「頼りない男だ………お前こそ、頼りがいのある男へと成長すると良いのだがな?」

 

 なんて言っていると食堂へと着く、久々に王都のご飯を食べるからか喉が飢える……ここは飯も美味いからな。

 

「あ!お兄ちゃん!!お待ちしていました、ささこちらに!!」

 

 そうアイリスに招待された席はアイリスの隣、全く周りに他の貴族も居るってのに可愛い妹だ……ほら姉ちゃんを見てみろ、面白いくらいオロオロしているぞ。

 

 そんな感じで始まった昼の食事、昼だと言うのに色々な貴族が集まって各々料理を取って食べている。

 

 姉ちゃんが色んな男に囲まれているのを眺めていると、横にいるアイリスから肩を掴まれる。

 

「お兄ちゃん!ちゃんと聞いていますか?」

 

「え?あぁ聞いてるよ、アレだろ?クレアが夜トイレに行くのが怖くて俺の部屋にき___」

 

「ブッ!!貴様!!アイリス様に何を教えようとしてるのだッ!?」

 

「え!!それは本当なのクレア?」

 

「アイリス様コイツはデマを言っています!信じないで下さい!!」

 

「信じるか信じないかはアイリス次第…って訳だな、ただ思い出して欲しいのがお兄ちゃんが嘘をついた事あるかどうか…って事だな。」

 

「よーしその減らず口をこの場で切り落としてやろうかッ!?」

 

 コッチはこっちで修羅場な状態、姉ちゃんが時折俺を見て助けを求めてくるが見ていて面白いのでこのまま眺める事に。

 

「それでお兄ちゃん、三ヶ月こちらで特訓するのは聞いたのですが。何故急に強くなろうと思ったのですか?」

 

「ん?あぁアイリス俺な、ララティーナ姉ちゃんと一緒に冒険者になろうと思ってな。」

 

「冒険者!!良いですね、私も冒険者をしたいですクレア!!」

 

「駄目ですよアイリス様……に、してもお前が冒険者など出来るのか?そんなひ弱な身体で。」

 

 そう言って俺の身体を上から下にかけ舐める様に見ると鼻で笑いやがった。

 

 ……そうか、そっちがその気だというなら。

 

「それでアイリスさっきの話しの続き何だが、実はクレアって夜な夜な自分の部屋でアイリスの___」

 

「分かった私が悪かったから!!それだけは辞めてくれッ!!」

 

 フッ、所詮はクレア…俺に勝とうなど百年早いんだよ。

 

 アイリスはさっきから自分の知らない話しばかりのせいか、頬を膨らまし不満ですよアピールをしてくる。

 

 俺はそんなアイリスの頬を指で押すとプシュッとアイリスの口から空気が抜けてくる。

 

「もうッ!お兄ちゃんッ!!」

 

「ハッハッハッ!ごめんごめんアイリス、痛いから叩くのはやめてくれ。」

 

 端から見たらポコポコと可愛らしい効果音が付く様な叩き方でも、腐っても王族のアイリスの力で叩くとそれはもう暴力なのだ。

 

 姉ちゃんに引けを取らない打撃で俺の右肩が負傷していく、これはこの三ヶ月で今後の俺の命が決まるな。

 

 そう悟り、この三ヶ月真剣に取り組む事を決めた俺は涙目で助けを訴えてくる姉ちゃんを鼻で笑い、アイリス達と談笑へと戻るのだった。

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