あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン!   作:おふざけちゃん

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あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン! しがらみの剣乙女 5

 

 

 

「第五章 この女誑しの昔話を!」

 

 

※過去の話ではありますが、全て平仮名だと読めた物じゃない為漢字表記にしています※

 

 

 

 俺は今目のやり場に非常に困っていた。

 

 目の前には楽しそうに話すアイリス様、右手側には姉ちゃんに引けず劣らずの美貌と身体付きのクレアさん、左手側は姉ちゃん。

 

 あの夜俺はアイリス様に呼ばれ、説教でもされるのかと姉ちゃんの後ろでビクビクとしていたのだが。

 

 実際の要件は私と友達になってくれ、とのこと。

 

 友達ってそういう感じでなるの?なんて疑問をもったが、俺も同年代はおろかアイリス様と同じで友達が居ないから分からなかった。

 

 てな感じで、俺のやからしは目を瞑られ挙げ句お姫様と友達になったのだが。

 

 俺は今非常に困った状況に置かれている。

 

 今さっき言った人達でババ抜きをしているのだが……姉ちゃん以外と女性と接した事がない俺には、こう色んな意味でキツかった。

 

 アイリス様に失礼な事を言ったものなら、姉ちゃんから拳が、クレアさんから剣が飛んでくるのはあの日で分かった事だ。

 

 それに、なんか女性と目を合わせるというのは少し恥ずかしいのだ。

 

「___はい!カズマ!!次はカズマの番です!!」

 

 そう言ってアイリス様が俺にカードを差し出してくる。

 

 俺の心情など知ったこっちゃないと、屈託ない笑顔で俺を見てくる………お姫様って、なんでこんなに可愛いんだろ。

 

 アイリス様からカードを引き抜くと、俺は見事にババを引き抜いてしまった…!

 

「……フッ、カズマ殿。顔に出ているぞ?」

 

「えッ!?な、なんのことかな…。」

 

 クレアさんからの指摘にドキッとしたが、俺は平常心を取り戻し姉ちゃんにカードを差し出す。

 

 俺の目を見ながら一枚一枚慎重に選んでいく………姉ちゃんだって美形なのだ、こうもガン見されると幾ら姉でも照れるものがある。

 

 そんな俺を微笑ましい顔で見てくるアイリス様とクレアさん、一体なんだっていうんだ!!

 

「これかな?」

 

「あッ!?」

 

 マズイ、アイリス様と一対一になってしまった。

 

 俺はニヤニヤと見てくる姉ちゃんとクレアさんを尻目に、真剣な表情で俺を見つめるアイリス様のカードに手を伸ばす。

 

 一枚手に取り、残りのババとを手の後ろに持っていきシャッフルして混ぜる。

 

 大丈夫俺は運が良い方だから………いや待て、ここで勝ってしまったら何か言われないよな?

 

 コレってただの遊びだよな?アイリス様を勝たせる様に仕向けないといけない、なんて事はないよな?

 

 えーいままよ…!どうとでもなれ!!

 

 俺は混ぜ終わりアイリス様の前にカードを二枚差し出す。

 

 カードを交互に見て、覚悟を決めた様に息を吸うと___

 

「これです!!」

 

 意気揚揚とアイリス様が引いたカードは、見事ババの絵柄が描かれていた。

 

「クッ…!さぁ、次はカズマです!!」

 

 ババを引いたってのに笑顔のアイリス様。

 

 むしろ喜んでいる様にも見える、これはあの夜言っていた事が関係しているのだろう。

 

 やっぱり城の皆はアイリス様を勝たせようと考えるのだ、勿論それによってアイリス様のゲームの勝率は高いに決まっている。

 

 幾ら四歳と言えどそう何度も勝つと気付くのだろう、文句を嘆いて言っていたのだから。

 

 あの夜もアイリス様は負けた方が喜んでいたからな………今回も遠慮せず勝とうと意気込みカードを二枚見る。

 

 心の中で女神エリス様に祈りつつ、俺は左のカードを引き___

 

「あッ!?」

 

「よっしゃ!」

 

 どうやらエリス様は俺に微笑んでくれたみたいだ。

 

「やっぱりカズマはババ抜きが強いんですね……先程からまったく勝てていません!」

 

「そうですねアイリス様、カズマ殿は運が良いみたいです。」

 

 そう負けたのに嬉しそうなアイリス様に同調するクレアさん。

 

 楽しそうなのは良いが、正直そろそろババ抜き飽きてきたんだよなぁ……。

 

 俺は楽しそうに談笑するアイリス様を尻目に、どうしようかと姉ちゃんに目配せするとこちらに気付く姉ちゃん。

 

 やれやれと溜め息交じりにしつつも、任せとけと言わんばかりにフッと笑う姉ちゃん。

 

 流石姉ちゃんだ、頼りになる。

 

「アイリス様、そろそろ別の遊びをしてみませんか?」

 

 そう切り出す姉ちゃんに嬉しそうに答えるアイリス様。

 

「いいですね!私もそろそろ飽きていた所です、クレア。外で皆で遊びませんか?」

 

「えッ、ア、アイリス様。いくらなんでも外は危険が……!」

 

「駄目かしらクレア…?私、お友達と外で遊ぶのが夢でしたのですが……。」

 

「し、しかし…!!」

 

 姉ちゃんが俺の肩に手を置くと、耳元でコショコショと話し始める。

 

「カズマ、何時も私を遊びに誘いに行く時の様な態度でお前も頼んで来い。」

 

「え!?で、でも失礼じゃないかな…?」

 

「大丈夫だ、寧ろ私の見立てではクレア殿はお前みたいな弟やアイリス様みたいな妹には弱い部分があると睨んでいるからな。」

 

 姉ちゃんにそう言われ背中を押される………仕方ない、ここはクレアさんを姉ちゃんだと思って…!!

 

 俺はクレアさんに近付くと、裾をクイクイと引っ張り気を引く。

 

「あ、カ、カズマ殿。カズマ殿もアイリス様を止めて頂きませんか?」

 

 クレアさんが困った顔で俺に助けを求めてくる……う、心苦しいが俺も少し外で遊びたい気持ちがある。

 

 深く息を吸い、深呼吸をつくと意を決してクレアさんを見上げる。

 

「ぼ、僕も外で遊びたいから……駄目かな?ね、姉さん…!」

 

 そんな俺の言葉に空気がピタリと止まる音が聞こえた気がした。

 

 ほんの少しの間が空いたと思うと、凄い勢いでクレアさんが俺の両肩を掴み鼻息を荒くしているクレアさん………ど、どうしたのだろうか。

 

「___ねぇ…。」

 

「………え?」

 

「クレア姉ちゃんと呼んでくれ!!」

 

「ク、クレア…!?」

 

 アイリス様の困惑した声が聞こえてきたが、どうやらクレアさんの耳には聞こえていないみたいだ。

 

 俺は鼻息荒く迫ってくるクレアさんに少しビビりつつも、言われた通りに言う。

 

「ク、クレア姉…ちゃん?」

 

「………!!」

 

 目を見開いたと思うと物凄い勢いで俺に抱きついてくる……く、くるしぃ…!

 

 オロオロとしながら俺とクレアを交互にチラチラと見るアイリス様、を端でニヤニヤしている本物の姉ちゃん。

 

 一頻り俺の頭をワシャワシャと撫で終わると満足したのか顔を俺から離し、コホンと咳を一つついて真面目な顔に戻る。

 

「……えーではアイリス様、夕時までには戻る様にしましょう。さぁ時間は限られています急ぎましょう。」

 

「え、えぇ…分かったわ。……か、カズマもありが……とう…?」

 

 クレアの急変した態度に戸惑いつつも、俺の一声のお陰で外に出る事が出来たので取り敢えずお礼を言っておくアイリス様。

 

 そんな光景を愉快そうに笑いながら見ていた姉ちゃんに訳がわからないと視線を向ける。

 

「カズマ、お前は何も知らなくて良いんだ。ほら着いて行くぞ?」

 

 そう言って俺の手を引きクレアに着いて行く……訳がわからない、だが知りたくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中……とまではいかない位の緑が生い茂った場所。

 

 街へ出ても良かったがそれだと変装したりだとか色々と面倒くさいそうで、ボールや色々な遊具を持ってこの場所に来る事に。

 

 久々の外と言う事で一番ワクワクしているであろうアイリス様、やはり良い暮らしをする分自由は余りないのであろう。

 

「皆さん!私、ばれぇぼーる?と言う物をやってみたいです!!」

 

 そう言って俺達にボールを差し向けるアイリス様。

 

「ばれぇぼーる、知ってますかララティーナ殿?」

 

「いえ……カズマは知ってるか?」

 

 年長二人は知らない様子で姉ちゃんが俺に聞いてくる。

 

 バレーボール……何だろう、知らない筈なのに何故か情景描写が浮かび上がってくる。

 

 数人でコート上に立ちボールを落とさない様に相手のコートに落とすゲーム、コートとは何だろう何故コートと言う言葉が思い浮かんだのだろう。

 

 分からない……けど、気になる事でもない。

 

「えっと、確か二ptに別れてボールを落とさない様に相手のptが居る方に落とすゲーム……だった様な。」

 

「そう!それです!!良くご存知ですねカズマ!!」

 

 キャッキャとはしゃぎボールをポンポンと地面につくアイリス様。

 

「良く知ってたなカズマ。何処かで見た事があるのか?」

 

「うん、多分ね。」

 

 何故自分でも知っていたのかは微塵も分からないが、まぁ知っていて損する事ではないから良いだろう。

 

 こうしてダスティネスptと王都ptとで別れ、簡単なルール説明を行いながら取り敢えずやってみようと言う事で始めたのだが___

 

「___アイリス様!!」

 

「ナイスですクレア!!くらいなさい!『セイクリッド・ライトニングブレア』アタァァァァァクッ!!」

 

 クレアのトスにやって高く打ち上がったボールに勢い良く飛び上がり、王家に伝わる魔法の一種の様な技名を叫びながら勢い振り下ろした腕がボールに当たったその瞬間。

 

 アイリス様の腕が一瞬光ったと思うと俺の姉ちゃんの間を物凄い速度で光のレーザーの様な物が過ぎ去って行き、遅れてバチバチとボールから鳴ってはいけない音が聞こえてくる。

 

 姉ちゃんの方を見ると何処か青白い顔で俺と顔を合わせてお互いに固まっていた。

 

 二人でボールの着地点を見ると、そこには未だバチバチと鳴り稲妻が走るボールが地面を抉り取り鎮座していた。

 

「やりましたクレア!!」

 

「流石アイリス様!!」

 

 王都ptは二人で喜びあっているが、俺と姉ちゃんはそれ所ではない。

 

「「作戦会議ッ!!」」

 

 俺と姉ちゃんの叫び声がハモると線を引いたコートと名称を付けた場所から少し離れ、二人でしゃがみ込んだ。

 

「……ま、不味いよカズマ。このままだと私達死んじゃう……!!」

 

「ね、姉ちゃん口調が戻ってるよ!!」

 

 何時も御偉いさん達の前では厳重な口調で敬語を忘れず、がモットーの姉ちゃんが王家が近くに居ると言うの普段家に居る時の口調に戻ってしまっている、それ程までに今のアイリス様の攻撃は色々と不味かった。

 

 俺達はあくまで友達と遊びに外に出ているだけで、殺し合いをしている訳では無い。

 

 しかも質の悪い事にその張本人が己の殺傷能力に気付いていない様子なのだ、でなければあそこでにこやかに喜びはしゃいでいるアイリス様は何だと言うのだ。

 

 それにクレアさんもクレアさんだ、長くアイリス様と一緒に居るせいでアイリス様の強さに全く気付いていない。

 

 寧ろそれが当たり前だと言わんばかりその調子だとアイリス様を褒めている。

 

「……姉ちゃん、こうなったら二人で受け止めよう。」

 

「ふ、二人…?」

 

 正直子供二人でもあのボールを受け止める事はかなり難しそうではあるが、一人で受け止めるよりかは幾分かマシであろう。

 

 確かに遊びではあるが諦めて負けると言うのもつまらない。

 

 俺と姉ちゃんは先程の前と後ろで待つ体勢では無く二人で横を向きアイリス様の攻撃を受けるだけの体勢で待つ。

 

「よし………ほっ!」

 

 姉ちゃんのサーブによって相手の方へとボールを飛ばし、アイリス様の利き腕から放った時に来るであろうボールの着地点を予測する。

 

「___ふっ…!アイリス様!!」

 

 相も変わらずクレアさんが軽々と姉ちゃんの球をフワリと浮かす。

 

「いきます!『セイクリッド・エクスプロード』………!!」

 

 本格的に王家に伝わる技名を叫びながら腕を振り下ろそうとするアイリス様。

 

 俺と姉ちゃんはアイリス様の放つ腕が向いている方向を目視、二人でボールが着地するであろう場所で構え待つ。

 

「アタァァァァァクッ!!!」

 

 振り下ろされた腕からはやはり目視出来ないスピードでボールがこちらに向かってくる。

 

 一瞬の無音の後、俺と姉ちゃんが構えている腕に物凄い衝撃が起こり聞いた事のない爆音が腕の方から聞こえてくる。

 

 遅れてボールがぶつかった痛み、燃える様な熱さ、バチバチと身体全体に流れる電気……これ本当にただのボールかっ!?

 

 チラリと姉ちゃんの様子を見ると、何処かキツそうな表情は同じだか口元が少しだけ緩んでいる………な、何か見てはいけない物を見てしまった様だ。

 

 シュルシュルと物凄い音で手の上で回り続けるボールをどうにか相手の方へ返すべく、姉ちゃんと一緒に腰を落とし。

 

「「せぇぇぇぇのぉっ!!!!」」

 

「「あっ。」」

 

 やはり姉弟の絆は固い物でなんとか同時にボールを打ち上げる事に成功した。

 

 ………森の奥深くにだが。

 

 流れ星の様にキラキラと光りながら打ち上げられたボールは森の中へと消えて行き、かなり離れた所に落ちたのだろう先程とは言わずとも爆音が遅れて聞こえて来る。

 

 二人で気不味そうにアイリス様の方に振り返り___

 

「___す、すすす凄い!凄いです!!私のボールをあの様に綺麗な、そうまるで星の様に打ち返したのは初めて見ました!!」

 

 手を上げ大はしゃぎのアイリス様と、後ろで苦笑しているクレアさんとで反応が両極端な二人……良かった、取り敢えず怒られる事は無さそうだ。

 

 ホッと胸を撫で下ろしチラリと姉ちゃんを見てみると………。

 

「……どうしたの?姉ちゃん。」

 

「へっ?い、いや何でもないぞカズマ。」

 

 摩擦で少し焦げた自分の手を何処か嬉しそうな表情で見ている姉ちゃんがそう慌ただしく手を隠す………あれかな、アイリス様のボールを打ち返されたのが嬉しかったのか。

 

 うんきっとそうに違いない、じゃなきゃあんな表情にならない……筈。

 

 さて困った事に先程打ち上げたボールしかもってきていない為、もうボール遊びは出来ない。

 

 それにこのまま森の中にボールを放置して置くのも色々と問題だ。

 

「それでは、私はボールを探して来ますので三人で遊んでおいて下さい。直ぐ戻ります。」

 

「分かりました!お気を付けてクレア!!」

 

 そう言って森の中に行ったクレアさんをブンブンと手を振り見送るアイリス様。

 

 やがてクレアの姿が見えなくなると、アイリスが此方に振り返る。

 

「では、今度は此方を使って遊びましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___10分、20分、30分、どれくらい経っただろうか。

 

 時刻はそろそろ夕時になり掛けな頃。

 

 最初は色々な道具を使って遊んでいた俺達も、一向に帰って来ないクリスさんを心配し今は皆無言で横に寝転び夕日を眺めている。

 

「___私、クレアを探して来ます!!」

 

 急にガバッと起き上がると、クレアを探しに森へと走り出したアイリス様。

 

「えっ!?ちょっ!!か、カズマはここに居ろ!良いなっ!?アイリス様ァァァァァッ!!」

 

 御転婆少女に振り回されてばかりの姉ちゃんを見て、俺は弟として普段はもう少し大人しくしようと心に決め走り出した二人を眺める。

 

 やはりバレーボールの時から思っていたがアイリス様の身体能力は異常と言って良い程に凄い。

 

 お陰で姉ちゃんと一定の距離間隔を開けつつ森の中へと消えて行き、姉ちゃんも青褪めた表情で森の中へと消えて行った。

 

 ………さて困った。

 

 普段ならここで家や人の居る方へと助けを貰いに行くのだが、如何せん城への戻り方を忘れてしまった。

 

 本来なら一度見た道等はある程度分かる方ではあるのだが、アイリス様とのバレーボールの衝撃でそんな物はすっとんでしまっていた。

 

 しかしここで姉ちゃんの言付けを破るのもしのびない、それこそ先程大人しくしようと心に決めたばかりなのだ。

 

 その場でウロチョロと移動しながら考える………どうしよう、俺に出来る事がない。

 

 いやまぁ待っておけと言われたのだから待って置く以外に選択肢等ないのだが、そういう事ではない。

 

 ダスティネス・フォード・カズマ、カズマの部分は曰く俺を拾った時にカゴに書いてあった名前、年齢はアイリス様と同じ六歳。

 

 そんなアイリス様は今何をしているだろう、そう親密な関係であるクレアさんを心配し森の中へと探しに行った。

 

 何て褒められた行動だろう、もし一国の姫と言う肩書きが無ければ賞賛の嵐であっただろう行動。

 

 ………では俺はどうか?

 

 確かに貴族ではあるがあくまで拾い者、こんな事を言えば姉ちゃんに泣かれるから言わないが家を継ぐ可能性が高いのは姉ちゃん。

 

 ならば俺は貴族と言う肩書きがあるだけのほぼ一般人では……?

 

 そう気付いた俺を止めれる人間は存在しない、今、ここで、クレアさんを探しに行ける唯一の人間は俺ただ一人。

 

 ズンズンと森へと足を運びながら、俺は怒られた時様の言い訳を完成させる。

 

「………でけぇ…。」

 

 先程の辺りが広く見えていた草原とは違い、家の中からでしか見れなかったデカい木や草、見た事のない花など未知な物が沢山あった。

 

 お、この黄色い花何て姉ちゃんにピッタリじゃないか!持ち帰っておこう。

 

 やはり言葉だけでは心を鬼にした姉ちゃんを説得するのは難しいからな、こうやって機嫌を取る為の物を持っておかなければ。

 

 こうしてクレアさんを探すという目的半分、森の探索半分と最早遊びに行っている気持ちで奥深くへと進んで行く。

 

 そう言えば一応姉ちゃんとアイリス様が向かった方向に自分も向かったが、二人は今頃何をしているのだろうか。

 

 姉ちゃんはアイリス様を掴まれられただろうか?はたまたもうクレアさんを見付けて戻ってるよ最中だったりして………そうだったらもう大人しく怒られよう。

 

 上ばかりをキョロキョロしていると足元に何かぶつかる感覚。

 

「……あれ、ここにボールあるじゃん。」

 

 未だバチバチとなる硬度の高いボールを持ち上げ、これは本格的にクレアさんが何処に行ったか分からなくなってしまった。

 

 辺りは日が落ち始め段々と暗くなってくる、もしクレアさんがボールを回収済みならば真っ暗な森の中ボールが目立って探しやすいとも思ったが……そうは問屋が卸さない。

 

「クレアさーん!!アイリスさ……アイリスー!!姉ちゃーん!!」

 

 森へと消えて行った人物の名を呼ぶが返事は無い。

 

 俺が思っているよりもこの森は広く深い様だ、最悪姉ちゃん達の跡を付いてるからなんとかなるだろうと思っていた数分前の自分を殴りたい。

 

「クレアさーん!!アイリスー!!姉ちゃーん!!」

 

 何度も名を呼ぶが変化は無し、寧ろ俺の声が響かなくなっていっている状況で森の奥へと行き過ぎた事に気付く。

 

 ………引き返すか。

 

 正直帰り道はあやふやだがこのまま進むよりも断然マシであろう。

 

 そうしてくるりと回り右をし帰り道であろう方向へ歩みを進めようと___

 

「___ッ!」

 

 元進もうとしていた方向から覚えのある声が聞こえて来る……いや、聞こえてしまった。

 

 俺はその場でまた180°くるりも回り森の奥へ進む事に、悲鳴の聞こえた方向へ猛ダッシュで向かう。

 

 アレは確実にクレアさんの叫び声であった。

 

 やはりと言うべきか、ただ迷子になっているだけの方が余っ程良かったであろう。

 

 これは何者かに襲われている、果たして俺が駆け付けた所で戦力になるのかと言われれば花々疑問ではあるが行かない選択肢が無い。

 

 出来るだけ早く、何もされない内に、短い手足を懸命に動かし息を荒くしながらそこだけ明るく光っている茂みへ近付く。

 

 段々と聞き覚えのない男であろう者達の笑い声、成る程一番最悪なパターンみたいだ。

 

 俺は忍び足にかえ足音を出来るだけ消し、木の裏から状況を把握するべく顔だけを出し周りを見る………成る程。

 

「___うします?コイツ、まだ若いですけど。」

 

「おーん………お前、何処の貴族だ。名前は?」

 

「………」

 

「んでも良いから喋れよおいッ!!」

 

「………!カハァッ…!!」

 

 容赦なし、あの男女性の腹を蹴りつける等なんたる外道。

 

 ここで何か特殊能力がアレば格好良く登場した所だが……能力も無ければまだガキのドチビ、一気に状況を覆す術など存在しない。

 

 だが、抗う術はある。

 

 せっせと出来るだけ崩れやすい様に泥団子を作り、状況を伺う。

 

 悪いがクレアにはもう一度蹴られるか殴られて貰う必要がある、しかしこれは必要な犠牲だと割り切ってもらうしかない。

 

 作った泥団子を握る手が強くなるのを感じる、俺は行く末を唾を飲み込み見守る。

 

「おい、コイツやるよ。わりぃが俺にんな趣味はねーからよ。」

 

「え、良いすかっ!?じゃあお言葉に甘えて___」

 

「………!や、やめ…!!」

 

 クレアの服に手を掛けたその瞬間、俺は待ってましたとばかりに振り被る。

 

 外したら終わり、小さな物を狙った場所に正確に投げる技術など持っていないが………俺は運が良い。

 

「ブッ!!い、いってぇ!?」

 

 顔面に直撃、硬くなく程よく柔らかい泥団子は顔面にグリーンヒットして見事目の中に入り悶え苦しむ。

 

「クレアさん早く!!」

 

 こちらから一瞬目を離したもう一人は呆気に取られている内にクレアさんを立たせ、剣もついでに持ちその場から離れる。

 

「ッ!待てクソガキィィィ!!」

 

「お前はこれでもくらっとけぇぇぇぇっ!!!」

 

「___アッ。」

 

 バチバチと稲妻が走るボールをもう一人目掛けて蹴り飛ばすと見事命中、しかも急所へと当たった為悲鳴も上げずその場に前のめりになりバタンと倒れ込んだ。

 

 後ろから未だ泥団子で悶える声が聞こえて来るも無視、俺はクレアさんが着いてきているかを確認して更に森の奥深くへと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___はぁ…!はぁ…!ちょ、一旦休憩しましょう…!!」

 

「……!」

 

 先程から一言も喋らないクレアさんに静止を掛け、クレアさんを縛っていた縄をクレアさんの剣でゆっくり切っていく。

 

「……良し、切れましたよクレアさ___」

 

 縄を解くと同時に、ガバッと俺に項垂れる様に顎を肩に乗せ抱き着いてくる。

 

「………く、クレアさん…?」

 

 するとポタ、ポタ、と俺の肩に水が落ちてくる……あぁ、そういう事か。

 

 声はださなかったんじゃない、だせなかったんだ。

 

 そりゃ見ず知らずの男に拉致られたと思えば、とんてない変態に襲われそうにもなる、更に助けを呼んでも誰も来ず、黙れば暴力、当人からしたら気が狂いそうになる思いだ。

 

 俺は今先程の興奮冷めやらぬ様でアドレナリンが沢山出ている為だろう、そこまでこの状況に恐怖心を持つ事はないがクレアさんは別だ。

 

 俺は良く姉ちゃんとする様なハグではなく、右手でクレアさんの頭をポンポンと、左手で背中を擦る様に、落ち着かせる。

 

「………すまない…情けない所を見せた。私は、何を四つも下の子供に甘えているのだろうな……ハハッ…。」

 

 スルリと俺から離れ自傷気味に下を俯きながら震える腕を押さえるクレアさん。

 

 ……こういう時、相手が姉ちゃんならする事は決まっているのだが……果たしてクレアさんにやって失礼ではないだろうか、いや何もしない方が失礼か。

 

 俺は俯いているクレアさんの顔を両手で優しく持ち上げると、ポケットからハンカチを取り出し涙や泥で汚れた顔を拭く。

 

「ほら、上を向かなきゃ駄目だよ。綺麗な顔なのに下を向いて隠すのは勿体ないよ?」

 

 良く落ち込んでいる姉ちゃんに言うセリフを、少し敬語にしつつも伝える事に成功。

 

 歯に浮くセリフだと姉ちゃんに笑われたが、悪い気はしなかったと言われたので愛用する事に。

 

 まぁ自分の周りで泣く女性が少ない方が断然良い為、このセリフは多ければ多い程良くないという事の裏付けに過ぎないのだが。

 

 俺は顔を殴られていたのか切れた唇も拭いているとピクリとクレアさんの唇が動く。

 

 目をクレアさんと合わせようと少し上を向くと、後頭部を押さえられ顔との距離が一気に近付く。

 

 ………十八歳と二十二歳、という字面で見るとなんだかあまり良い感情が浮かばないが六歳と十歳の場合はどうなのだろうか。

 

 同じ四歳差ではあるがやはりお互い子供だから許されるだろうか?

 

「___んっ…。」

 

 息を吐きながら顔を離したクレアさん、俺は先程の状況とは打って変わった心臓がバクバクとなる状況で顔が熱くなるのを感じる。

 

「……え、えっと……クレアさん…?」

 

「クレア、クレアで良い。私が仕える相手であるアイリス様は呼び捨てなのに、その側近の私に敬語だと不自然だろう。」

 

 そう言ってクレアさん、改めクレアが髪で顔を隠しながら立ち上がると剣を腰に備えこちらに手を差し伸べる。

 

「………?なんだ、腰が抜けたのかカズマ?」

 

 クレアも呼び捨てになり、今までカズマ殿と呼ばれていた違和感が拭えないが手を取り俺も立ち上がる。

 

「ふっ…なんだ、その歳にして随分と女慣れしていると思えば、ちゃんと年相応だったか。」

 

「うわっ!?ちょ、な、なにして…!!」

 

 上から髪をワシャリと雑に撫でられ、クスクスと笑われる。

 

「ぎゃ、逆に俺はクレアくらい綺麗な人にあんな事されて耐えれる男を知らないよっ!?」

 

 そもそも外の世界も知らないし友達もアイリス様しかいないから知らないのも当たり前なのだが、ワシャワシャと撫でていた手が止まり先程の笑顔は何処へやら口元を隠しソッポを向いていた。

 

 なんだ、似た者同士じゃないか。

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