あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン!   作:おふざけちゃん

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あの愚か者にも脚光を!ダクネスのターン! 紅色の片目 2

 

 

 

「第二章 この世間知らずに一般を!」

 

 

 

 ワイワイガヤガヤと朝だと言うのに人の声が交差する場所、ギルド。

 

 曰く荒くれ者の集まりとも呼ばれるギルドには酒の匂いが蔓延っていた。

 

 未だ姉によって禁じられている酒の味、喉を鳴らさずにはいられない。

 

 ………そこで俺は気付く、これだけの人数の集まるギルド内部において此方に見向きもしないのは兎に角、此方に目を合わせまいと冷や汗を流す何人かを俺は逃さない。

 

 その視線の先にはもれなく共通点として、俺の前に居る人物に注がれていた。

 

 つまる所………

 

「……なぁ、姉ちゃんって問題児なの?」

 

「なっ!?そ、そんな事はない……多分。」

 

 今朝の不安要素、もしかしなくても姉ちゃん本人に関わる事柄らしい。

 

 しかしそんな事を気にしてもしょうがない、俺はイグニスさんから受け取ったエリスを握り辺りを見渡す。

 

「彼処だカズマ、あの金髪のお姉さんが丁寧で優しく教えてくれるぞ。」

 

「同じ金髪の姉ちゃんとは正反対だ……いっ!?」

 

 ゴンッと頭に衝撃がくるのを感じ俺はそれ以上は口を開かなかった。

 

 そんな俺達の様子を見ていたのか苦笑い気味のギルドのお姉さん、俺は高まる気持ちを出来るだけ抑えて話し掛ける。

 

「……あ、あのぉすいません!冒険者登録に来たのですが…!!」

 

「はい、冒険者登録ですね……手数料が掛かりますがよろしいですか?」

 

「は、はい!!」

 

 俺は内心ワクワク反面緊張半々と言った気持ちであった為、ポケットに突っ込んでいたエリス金貨を取り出し机に置く。

 

 そんな俺の様子にフフッと笑い二枚金貨を手に取ると残りに指を指す。

 

「少し多いですね、千エリスで大丈夫ですよ。」

 

「あ、す、すいません…!!」

 

「……フッ。」

 

 後ろで俺を鼻で笑う声が聞こえる、どうせ自分もやり方知らない癖に…!!

 

 未だ緊張する俺に脇腹を小突いてくるクレアは無視、俺はお姉さんが奥から持ってきた変な機械に夢中であった。

 

「それでは、まずは此方の書類に身長、体重、年齢、身体的特徴の記入をお願いします。お連れの方もどうぞ。」

 

「む?悪いな、同時並行させてしまい。」

 

「いえいえ…では、丁度千エリス頂きます。」

 

 丁度、と言ったタイミングでチラリと俺を見てくるクレア……何でこんな奴がアイリスの護衛になれたのか甚だ疑問でしかない。

 

 やっぱりコイツは俺達に着いてきて正解であった、もしあれ以上アイリスと共に居ればどうアイリスに悪影響があるか分かったもんじゃない。

 

 俺はそれぞれの項目に記入していく最中、チラリと姉ちゃんに目をやるとギルドのお姉さんと何やら内緒話しをしている様だ。

 

 そんな俺の様子に気付いたのか俺に少し微笑むと此方にまた向き直る。

 

 ………いかんな、俺の胸を鳴らす人間は金髪が多いみたいだ。

 

 馬鹿な事を考えながら書類に必要事項の記入が終わると、俺とクレアの書類をお姉さんが確認する。

 

「はい、ではでは……コリウスさん…と、カトレアさん…で宜しいでしょうか?」

 

「「はい。」」

 

「では今一度冒険者について説明させて頂きますね。」

 

 そう言って読み終えた資料を後ろの職員へと渡すと、真剣な面持ちで俺達に見つめ直す。

 

「まず、冒険者とは街の外で害を為すモノを討伐する依頼を担う職業です。とは言えモンスター退治だけが冒険者の仕事ではありませんが………さて、そんな冒険者には様々な役職があります。」

 

 脇に放置してあった変な機械を俺達の前にゴトリと持ってくる。

 

「此方に手を翳すと先程記入した必要項目に合わして各自己の身の丈にあった役割を割り振られます、『ソードマン』、『ナイト』、『プリースト』、『ウィザード』……実に様々な役割が御座います。因みに、貴方のお姉さんであるダクネスさんは『ナイト』の更に上をいく『クルセイダー』と呼ばれる役割に就いているんですよ?」

 

 そう言って微笑み姉ちゃんの方へ向く職員さん、俺はそれに釣られ姉ちゃんの方を向くが……何処か誇らしげな表情であった。

 

 正直頭には入っていた情報ではあるが、姉ちゃんのクルセイダーらしい部分を見た事が身体が丈夫である部分以外見た事がないため何とも。

 

 寧ろ俺は人を守り剣を振るうと言う点で見ればクレアの方が適任では無いかと思い振り返る、とクレアも同じ事を思ったのか何処か気不味い顔でそっぽを向いていた。

 

「さて、長く説明されても良く分からないでしょう。それでは実際に自分に合う役職が何なのか、此方の機械に手を翳してみて下さい。すると機械の下に置いてある此方のカードに貴方についての様々な情報が記入されます。」

 

 俺は生唾を飲み込み機械へと手を翳す。

 

 何だかんだクレアも楽しみなのか少しワクワクとした様子で俺と一緒に機械に手を翳していた。

 

 すると先に翳していた俺の機械の方がガシャリと音を鳴らし黒い液体の様な物でカードに文字を書いていく。

 

 そんな光景に目を取られ俺は物珍しく動く機械に目を奪われていた。

 

 すると二分も立たない内に機械が動きを止めると、職員さんがカードを優しく取り項目を読み上げていく。

 

「はい、有り難う御座います。カ……コリウスさんは、魔力、生命力、敏捷性共に平均的ですね……筋力と知力がそこそこ高く、幸運が非常に高いですね。幸運事態は冒険者そのものにはあまり関与しませんが、運何て高ければ高い程良いですから………しかし久しぶり見たかも知れませんね、ここまで高い数値というのも。」

 

 そんな俺の運の良さに驚いた職員さん、まぁ確かに今まで生きてきて運の良さを感じた事は多々あれど、数値として見ればそれ程までに高いとは。

 

「そうですね…これですと選択出来る役職と言うのは、『冒険者』『ソードマン』『ウィザード』のどれかになりますね………『冒険者』以外は魔物を倒す事によって得られる経験値によるレベルアップの恩恵で、更にその先の『ソードマスター』や『アークウィザード』になる事もありますが……どれに致しますか?」

 

 ………まぁ、名前的に『ソードマン』がそのまんま剣を使う前衛型、『ウィザード』が魔法を使う後衛型であろう。

 

 しかし後ろでコソコソ魔法を使うのは性に合わない、それに魔力が平均的だとも言っていたのを見るに、俺が『ウィザード』になった所で特にこれといった事も出来ないだろう。

 

 なら必然的に剣の扱いにも多少はなれている『ソードマン』になるのだが……

 

「……すいません、『冒険者』ってのは何ですか?」

 

 そのまんま冒険者と名前の役割、一体どんな立ち位置であるのか。

 

 少し渋い顔をする職員さん、あまりオススメ出来ないのだろうか。

 

「『冒険者』と言うのはですね……簡単に言えば器用貧乏といった役割ですね、他の役職にはある専用のスキルがない代わり全てのスキルを覚える事の可能な役割です。」

 

 それだけ聞くと非常に強力な印象を受ける。

 

「しかし、覚える為に必要なスキルポイントは本職の倍以上、実際に覚えて使ってみてもやはり本職以下、あまりオススメは出来ないですね。」

 

 申し訳なさそうな表情でそう説明してくれる職員さん……成る程。

 

「なぁ、ク……カトレアの方はどうなんだ?」

 

「え?あぁ、カトレアさんはですね………おぉ!!全体的に高水準、幸運と魔力が少し平均より少ないですが…他はどれも素晴らしいです!!これなら『ソードマスター』や『クルセイダー』のどちらかをオススメしますっ!!」

 

 手を叩き少しはしゃいだ様子の職員さん、しかしハッと気付き俺に向き直りコホンと一息付くと非常に気不味そうな顔になってしまった。

 

 それは職員さんに限らず姉ちゃんもどうしたものかといった様子、クレアも珍しく俺の様子を伺う……似合わねぇな。

 

「おい何憐れんだ目で見てるんだお前達、だったらここはもう一択だろうが。」

 

 そう言って俺は職員さんからカードを受け取ると『冒険者』と書かれた項目を指でタップ。

 

「あっ…ほ、本当に良いのですか?」

 

「ん?まぁ元より俺が強くない何てのは痛感してたからな、寧ろ仲間がこんなに強くてラッキー…早速自分の運の良さが働いてくれたって感じだな。」

 

 いやまぁ別に期待してなかったのは本当だし?実は訓練のお陰で俺が自分でも気付かない内に覚醒してるとかは特に思ってなかったし?

 

 それに元々俺は姉ちゃんと一緒に冒険が出来れば何でも良かったのだ、それが冒険者になるのが手っ取り早かっただけで。

 

「ほら、……カトレアも役割決めちゃえよ。」

 

「あぁ……確かラ……ダクネス殿、いやダクネスは『クルセイダー』だったよな?なら私は無難に被らない『ソードマスター』にでもして置こう。」

 

 クレアも役割を決めると、俺達のカードは少し光を帯びやがて輝きが止まる。

 

 自分のカードをまじまじと見つめる……そうか、俺は遂に正式に冒険者になったんだ。

 

 俺が強い弱いは関係無い、兎に角俺はこの広い世界を見てみたいのだ。

 

「………良し!それじゃあ早速冒険に……!!って、そういや俺何も装備持ってないや。」

 

「あぁ、それでしたら内で貸し出している装備が幾つかあるのでそちらから拝借した頂ければ。」

 

 俺は職員さんに案内されるがままに武器が置いてある箱へと近付き、綺麗に並べられている剣や弓の中から自分の得物を選ぶ。

 

 ハッキリ言って良し悪しなど分かる訳もないのだが、比較的使い慣れている剣にでもしようかとそこそこ長いが重くもない剣を手に取り、気付く。

 

「……あれ?そういや姉ちゃん何時も来てた装備は?」

 

 そう、今の今まで気付かなかったが姉ちゃんは少し動きやすい服である以外は何も身につけていない……当たらない大剣すらもだ。

 

 同じく何時も腰掛けていた剣を持っていないクレア、二人は顔を見合わすと少し悪い顔で俺に見つめ直す。

 

「いや何、コリウスには慣れて貰おうかな…と。」

 

「あぁ、私はある程度の経験はあるが……な?……コリウスはそれこそ訓練するまでは箱入り、しかも訓練は対人形に過ぎない内容しかしてなかったからな。」

 

 歯切れの悪い二人、慣れ?つまりどういう事なんだ。

 

「まぁ、やって見たら分かるさ……そうだな。私達は何時でも助けに入れる様に武器だけ拝借しておこう。」

 

 姉ちゃんが大剣を、クレアが俺と同じくそこそこ刃の長い剣を。

 

 俺は二人に背中を押されるがまま、姉ちゃんの手によってある依頼を受ける事に。

 

 その内容とは___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___まぁ、初めての相手と言えば…だよな。」

 

 私の横でそう呟くクレア。

 

 今目の前で繰り広げられている死闘は、容易に想像出来ていた物であった。

 

 あのカズマが初めからモンスターを討伐出来る筈がない、そう踏んだ私達はカズマの最初の相手を決めあぐねていた。

 

 冒険者になると言う事は、必然的に生き物を殺す事になる……それを根が優しいカズマには暫し酷ではないかとも思っている。

 

 だからこそお父様は止めていた、私もあまりカズマにその様な事はして欲しくなかった。

 

 勿論この世界で生きていく以上そんな事は不可能なのだが……親と姉心という物だ。

 

 そこで、対人訓練はある程度済んでいるカズマに必要な冒険に欠かせない事……それは自分よりも遥かに大きなモンスターに対しての戦い方。

 

「……けて…!!助けてぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 初めて見たモンスターであるジャイアントトード、殺傷能力は低く体格だけは無駄にデカく動きも鈍い……うってつけのモンスターであった。

 

 私は耳に嫌でも聞こえる弟の助け声に耳を貸さない様我慢しながら、その行く末を見守っていた。

 

 チラリとクレアの方へ目を向けると、非常に愉快そうな顔で逃げ回るカズマを見ている……酷い友人を持ったものだ。

 

「カズマっ!!逃げ回らずに思いきって剣で斬りつけてみろ!!」

 

「いや無理無理無理っ!?手が震えてそれ所じゃねぇよぉぉぉぉッ!!」

 

 泣きそうな顔で後ろを振り返らずに全力疾走、やはりまだ冒険者になるのは早かったか……そう思った時。

 

「………あっ。」

 

 そうクレアが漏らし、私もそれに釣られ顔を上げると……そこにはある程度離れた距離を保っていたカズマがその場で止まり、剣をジャイアントトードに構えていた。

 

 先程の泣き顔は何処へやら、未だ残る涙を気にするでもなくジャイアントトードだけを見つめ制止。

 

 ドスン、ドスン、ゆっくりと近付いて行くジャイアントトードが次のジャンプでカズマを踏んでしまう距離……剣を振り下ろす構えを取る。

 

 私のアドバイス通りに思い切って足を踏み出し斬りかかる体勢に……しかし、それでは駄目だ。

 

「あれではアイツの舌で思いっきり……っておぉっ!」

 

 後一歩と言う距離で舌を伸ばしカズマを捕食しようと……そこで捕食されて終わりかとも思っていたが、運良く予測で振り下ろしていた剣で見事舌を切り落とす事に成功。

 

 思っていた通りには事は運ばなかったが、寧ろただ倒すよりも難しい事をやり遂げる。

 

「不幸中の幸い…と言った所か。」

 

「あぁ、カズマッ!!そのまま畳み掛けろッ!!」

 

「………!」

 

 切り落とされて間も無いジャイアントトードの舌がウネウネとカズマの直ぐ側でうねる、何時ものアイツならそれに気持ち悪がって視線を取られていただろうが、今のカズマは舌を切り落としたと言う成功体験によってアドレナリン全開。

 

 私の言葉に耳を貸すまでもなく、真剣な面持ちで……アレはクレアを救出しに行った時、レインがラグクラフトだと分かった瞬間の顔付き。

 

 己の舌を切り落とされてモガモガとその場でうずくまるジャイアントトード、それに向かいカズマは剣を思いっきり振り被り……腹を切り裂く。

 

 返り血が己に掛かるのも気にする訳でもなく、そのまま頭に切り上げ。

 

 見事な所作で討伐をやってのけた。

 

「フッ、随分と男らしい顔付きじゃないか。」

 

「あぁ…まさか初めてで討伐出来るとは微塵も思っていなかったからな。」

 

「………?えっ!うわやべぇ姉ちゃん!!コイツすげぇクセぇっ!?」

 

 口を抑え剣を投げ捨て気分の悪そうな顔で此方にヨロヨロと向かって来るカズマ……ハッキリ、私もあまり嗅ぎたくない臭いの為近づいて来ないで欲しいが。

 

「良くやったカズマ、まさか討伐出来るとは思ってもいなかった。」

 

「相変わらずな信用だな。でもまぁ、これである程度は使える人間って事は分かったろ?」

 

 ドヤ顔で私達を見るカズマ。

 

「あぁ、今日の晩食は私が奢ってやろう……少し、ほんの少しだけなら酒も許すぞ。」

 

「えっ!?まじっ!!よっしゃぁぁぁ姉ちゃん大好き!!さっき心の中で無茶言うなエロボディって思ってごめん!!」

 

「前言撤回。」

 

 やはりカズマはカズマだった、先程のカッコいい弟は幻想であったらしい。

 

「全くお前達姉弟は……ほらカズマ、お前はさっさと風呂に入って来い。返り血で生臭くてかなわん。」

 

 鼻を摘みジト目でカズマを見るクレア、その言葉に自分の身体を匂い苦い顔になるとせっせこ剣を拾いに行く。

 

「いやー確かに困ったな、もし今天才魔法少女が居たから避けられちまうよ……。」

 

「?何だ、その天才魔法少女とやらは?」

 

 初めて聞く名に首を傾げるクレア。

 

「知らねぇのかよクレア?ここアクセルの街には俺と同い歳だってのにソロで活躍する『アークウィザード』が居るんだよ。姉ちゃんは見た事ある?」

 

 確かにここアクセルに居れば嫌と言う程に聞く名ではあるが……。

 

「それが、私は見た事がないな。ましてや名も職員以外知らぬとの噂もある位だ……そもそもお見えになるのも難しいと思うぞ?」

 

「えっ。」

 

 見るからに落ち込みましたと項垂れるカズマ。

 

「……まぁそう落ち込むなカズマ、お前の仲間には『ソードマスター』と『クルセイダー』が居るんだぞ?お前は身内過ぎてあまり実感は沸かないと思うが、かなり優遇されている方だぞ?」

 

「でも姉ちゃんは剣当たんないし、クレアはまだ実力が未知数じゃねーか。」

 

 ジト目で此方に目を向けるカズマ、それを言われちゃどうも言い返せないクレア……クッ!この二人の呆れ目で少し昂る自分が情けない…!!

 

 しかしカズマに趣味がバレる訳にもいかないので我慢、コホンッと仕切り直す。

 

「ほ、ほらカズマさっさと戻ってギルドの大浴場にでも入って来い。家よりかは狭いが良い所だから…な?」

 

 カズマの背中を押しながらギルドへと移動する様に促す、さっさとこの場から離れ話題を避けたかった。

 

 未だジト目で見るカズマとクレアには後で奢り許して貰う事としよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワイワイガヤガヤと人の声が交差するギルド、俺は髪を乾かし終わり姉ちゃん達の居るテーブルへと向かっていた。

 

 姉ちゃんの言う通り家よりは狭くあったが身体を落ち着かせて良い場所であった。

 

 それに、あんなに沢山の人と一緒に入ったのも久しぶりだ……最後に入ったのは何時だったか。

 

 今よりも小さい時にメイドさん達にいれて貰った事があった様な……今もワンちゃん駄々を捏ねたら行けないか…?

 

 また帰ったら試すとして、俺は姉ちゃん達を見つけそちらに向かう。

 

「どうだった?ここの浴場は。」

 

「落ち着けて良い場所だったよ、ク……カトレアもまた入ってみれば?」

 

「機会があればそうさせて貰おう。」

 

 メニュー表の様な物を読み漁るクレア、俺もここでご飯は初めて食べる為少し楽しみだ。

 

 注文を決めたのかクレアからメニュー表を受け取り目を通す………うん、分からん。

 

「なぁ姉ちゃんのオススメってどれ?」

 

「私のオススメか?そうだなぁ……無難にここの名物であるジャイアントトードの唐揚げ等舌が唸るな、クエスト後に食べるとこれがまた美味いんだ。」

 

「ほーん…そんな言うんなら俺それにしようかな。」

 

 そう言うと姉ちゃんが店員を呼び俺達の食べ物を注文、後は来るのを待つだけだ。

 

 周りのテーブルもチラホラと人が集まって来る……何だもうそんな時間か。

 

 今日はランニングしてジャイアントトード倒して風呂入って、中々冒険者らしい生活を送れたのではないだろうか。

 

 しかし俺はこれだけでは満足しない、俺は知っているのだ……アイリスから時折聞いていた冒険者豆知識として、冒険者の殆どはあまり自分の家を持たない。

 

 金が掛かるというのもあるが、基本的に宿に泊まるその日暮らしの生活である……と。

 

 俺は憧れていた。

 

 友達の家に泊まる事など無かった俺は、一応王城に泊まった事はあれど他は自分の家以外には泊まった事がないのだ。

 

「……なぁ姉ちゃん。」

 

「駄目だ。」

 

「まだ何も言ってないだろ!?」

 

「どうせ宿に泊まりたい等と抜かすのだろう、それはお父様に許されていない。」

 

 お前の言いたい事等お見通しだと言わんばかりにジト目で俺を見てくる姉ちゃん、成る程そう来たか……。

 

 しかし晴れて半自由の身になった俺からすればそう言われるのも想定内、ここでへこたれる俺じゃない。

 

「なら姉ちゃんも一緒に泊まれば良いじゃん、姉ちゃんだって偶に朝帰りする癖に!!」

 

「お、おい人聞きの悪い事を大声で言うな!!周りに勘違いされるだろ…!!」

 

「そうだぞカズマ、…ダクネスだって宿に泊まってるとは限らないだろう?もしかしたら通い妻的な……」

 

「良ーしカトレアは少し黙っておけっ…!!」

 

 珍しくギリギリとクレアの口を塞ぐ姉ちゃん……何だ珍しい光景だな。

 

 少し苦しそうにしながら、目指していた普通の友達らしいやり取りに満悦なのか口元はニヤけて……いや結構キツそうだな。

 

「いやぁ随分と楽しそうだね?ダクネス。」

 

 そう後ろから声が聞こえ、カツカツと此方に向かう足音。

 

 初めて聞くその声に俺は振り返る。

 

「あぁクリス!!久しぶりだな!!」

 

「うん久しぶり!大体三ヶ月位?それでそれで……この方達は?」

 

 俺とクレアを見渡し首を傾げる銀髪の少年……男にしては声が高いのを見るに、俺と同じくらいか少し下位であろう。

 

「コイツが偶に話す私の弟だ、やっと冒険者になれてな……コイツは………私の昔ながら友達だ。」

 

「アハハッ!!ダクネス私以外に友達居たんだ!初めて見たよ!!」

 

「ん!?ま、まぁな……ハハッ…。」

 

 少し悲しそうな表情でクリスと呼ばれた少年を見る姉ちゃん、確かに姉ちゃんも俺と同じで友達少ないもんな……。

 

 そんな二人の会話を聞いて一段落した時、クレアが立ち上がりクリス君へと手を向ける。

 

「私の名前はカトレアと言う、宜しく頼む。」

 

「うん宜しく!!」

 

 そう握手を交す二人の目は……何だかバチバチしている、何故なのかは分からない。

 

「キミの名前は知ってるよ、カズマ君?だっけ!宜しくね!!」

 

「ん、宜しく……いやぁ姉ちゃんにも男友達居たんだな。」

 

 もしかしたら姉ちゃんは所謂ショタコンと呼ばれる人物なのかも知れない、そう思いながらも異性の友達が居る事に安堵していると空気が凍る。

 

 握手した手から力が抜けるのを感じると、クリス君が姉ちゃんに凭れ掛かる。

 

「ばっ…!?カズマ!コイツは女だ…!!すまないクリス…!!」

 

「え?」

 

「ううん大丈夫……もう慣れたよ、うん…。」

 

「カズマお前……最低だぞ。」

 

 慌ててクリスさんを宥める姉ちゃんが此方にチラチラと目配せ、どうにかしろと言う事だろうか。

 

 クレアも呆れた目で俺を見て運ばれて来た料理に手を付ける。

 

「……い、いやぁ冗談冗談…!!ほら、今まで見た事ない位に可愛い方だったから…な!?いやぁこんなに可愛い女性は初めて見たなぁうん!!」

 

「……ホント…?」

 

「うん本当本当!!なぁ姉ちゃん!!」

 

「あ、あぁそうだぞクリス…!!もしクリスと私が並べば十人中十人がクリスに二度見三度見するだろう!!」

 

 そう言ってクリスさんの頭を撫で自分の料理を口に運ぶ姉ちゃん、成る程二人の関係性が何となく分かった。

 

 やがて元気を取り戻したのか姉ちゃんの隣に座ると、店員を呼び自分の分の料理も注文し始める。

 

 その間姉ちゃんが俺に耳を貸せとジェスチャー。

 

「良いか?もしクリスに失言をした時は兎に角ヨイショするんだ、ほら別の貴族を相手する時の様に……分かったか?」

 

「了解。」

 

 失言をしない様に、ではなく失敗した時の対処法を説明する辺り俺を信用していないのか、はたまたクリスさんに失言ポイントが多いのか。

 

「それでそれで、カズマ君はどうして冒険者になりたかったの?まさか……お姉ちゃんを守る為だったりして!」

 

「あいえ、寧ろお姉ちゃんに守られ気満々です。何ならカトレアにも守ってもらいます。」

 

「あ、そ、そうなんだ…。」

 

 気不味そうに目線をずらすクリスさん、と呆れた目で見てくる姉ちゃんとクレア……何だよ嘘付くよかマシだろう。

 

「じゃ、じゃあ何で冒険者になりたかったの?」

 

 ……俺が冒険者になりたかった理由は簡単、外の世界を知りたかったからなのが四割、後は姉ちゃんと他二人のハーレムパーティーを組む事………姉ちゃんは自分が貴族である事を隠すべきだと言っていた。

 

 そして姉ちゃんがダクネスと呼ばれていると言う事は、クリスさんは姉ちゃんが貴族だと知らない筈だ。

 

 つまりここで外の世界を知りたかったから等と言ってしまえば、俺と姉弟である姉ちゃんも俺も只の一般人と言うには無理過ぎる。

 

 と言う事を加味して答える俺の回答は……。

 

「……モテたかったらですね。ほら、冒険者ってカッコいいじゃないですか。」

 

「ふーん?まぁ確かにカッコいいよねぇ…私も憧れて冒険者になったからね。その生き甲斐応援しておくよ!!」

 

 グッと親指を立てジョッキをグイグイ飲み進めるクリスさん……てっきり微妙な反応でもされる物かと思っていたが、案外普通の理由らしい。

 

「ぷはぁっ!やっぱりシュワシュワは美味しいね!!ほらほらカトレアさんもカズマ君も飲んじゃなよ!!」

 

 そう言って俺とクレアにシュワシュワと呼ばれた酒を押し付ける、チラリと姉ちゃんの顔色を伺うが……あれは許可が降りている顔だ。

 

 人生初酒と言う事で高揚せずにはいられない、俺は先程のジャイアントトードとの戦いの時の様な気持ちになりつつ一口……。

 

「………何とも言えない。」

 

 口直しに唐揚げを口に頬張りながら、俺は期待していた程の感触は得られなかった。

 

 皆美味い美味いと言って飲んでいるからてっきり美味い物だと思っていたが、やはり人それぞれであった。

 

「まぁ最初何てそんなもんよ、これからまたその味に慣れてきた時にはもう…!!……いやぁ先輩がハマる理由も分かるなぁ…。」

 

 そうポツリポツリと零すクリスさん……未来に期待、と言った所か。

 

 と、先程から無言のクレアに目を向け……後悔。

 

「………ヒック、あんだ…アウア…?わあしの顔にあにかついていふかぁ?」

 

 グイッと此方に顔を近づける……いや近い近い、しかも目茶苦茶酒臭いし……と思っていると、クレアのビールジョッキの八割がなくなっている事に気付く。

 

 コイツどんなペースで飲んでるんだ…。

 

「お、おいカトレア…少し飲むペースをだな……。」

 

「うるさぁぁぁあい!うるはいぞぉぉぉララティむぐぅっ!!」

 

「良ーしカトレア、少し外で頭を冷やそうかっ!?」

 

 危うく姉ちゃんの本名をバラしそうな危険爆弾とかしたクレアの口を塞ぎ、無理矢理外へと引っ張り出して行った。

 

 クリスさんと二人テーブルで残された俺は、あまり味を感じないシュワシュワをチビチビと飲みながら食を進める。

 

「……はれ?ダクネスはぁ…?」

 

「え?あぁ、カトレアが………ゲロ吐きそうだったんで外に連れ出しました。」

 

「あんだそっかぁ!でへへぇカズマ君ってばお姉ちゃんと良く似てるねぇ…。」

 

 こりゃクリスさんも相当酔っているな……拾い子である俺と姉ちゃんは似ても似つかないのだから。

 

「それはどうも、初めて言われましたよ。」

 

「あれほぅなんだぁ…?んフフッ………やっはりカズマ君ってばダクネスに似て……かぁいいねぇ…。」

 

 そう言って俺の頭を撫でようと手を伸ばし……途中で遮られる。

 

「およ…?あへダクネス…!!戻っきたんだぁ!!」

 

「はぁ…おいクリス酔いすぎだぞ全く、あぁそれとカズマ。図らず共お前の願い通りになりそうだぞ。」

 

「ん?どういう事?」

 

 クリスさんの手を掴んだ姉ちゃんが呆れながらギルドの外へチラリと視線を移すと、今度は苦い顔で口を開く。

 

「カトレア何だが、気分が悪過ぎて動けないらしい。」

 

 何してんだアイツ。

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