日本国戦記   作:駆逐艦雪風

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大変遅れました!申し訳ないです…

色々と予定が詰まってしまって、やっと投稿できましたε-(´∀`; )

楽しんでいただけると嬉しいです!


作戦開始

   日本 種子島宇宙センター

 

 

『ロケット発射準備完了、カウントダウンまで30秒』

 

プログラム音声の女性の声が響く。ここは日本最大のロケット発射場であり、宇宙開発の中心であるところだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の種子島に設置し、運用している。謎に国が転移してしまうという科学では説明ができない事件が起きてしまった以来、日本は宇宙圏に飛ばしていた衛星を全て失ってしまう。それらを早急に打破する必要があった日本政府は、人口衛星の発射を指示。H10ロケットに急遽、人工衛星を搭載し打ち上げに急いだ。そして今、たった1ヵ月という期間で打ち上げを見守っている者がいた。

 

「頼む、飛んでいってくれ…」

 

開発チームのリーダー、中原明治であった。彼は過去に依頼された納期期間を半分で完了させ、さらには打ち上げを成功させた実績を持つ。仲間からは信頼されており、周囲には優しく、メリハリがあり、まさに頼れる男である。

 

『10、9、8…』カウントダウンが始まる

 

『3、2、1』

 

ロケットの下部にあるノズルからオレンジ色の炎が吹き出す。ゴゴゴゴッという大変大きな音を出しながらH10ロケットは、異世界の大空に向かって打ち上げられていくのであった。

第一エンジンが切り離される。

 

「目標は現在、上空70キロ。中間圏を抜けます。」

 

H10は司令室の大きな画面に写されながら、順調に飛行していた。

 

「宇宙空間に入ります!3、2、1、宇宙空間入りました!」

第二エンジンを切り離し、ロケット全体の先端部分のみが飛んでいる。外側の部品が分離し中に搭載されていた人工衛星が飛び出す。太陽パネルを広げ、通信の接続を完了させる。

 

「H10との通信接続完了しました!打ち上げ成功です!」

 

司令室内は歓喜に包まれる。まさか1ヶ月で打ち上げが成功するとは思っていなかったであろう。H10は今後、日本がこの新世界で生きていくための重要なもの、この打ち上げの成功は首相官邸にも連絡が入っていた。

 

 

   東京都 首相官邸

 

 

「打ち上げに成功したって!?」待ちに待っていた報告に、思わず席を立つ。

 

「はい、先ほど種子島宇宙センターから電話がありまして、H10に急遽搭載した人工衛星きぼうとの通信の接続に成功したと職員から連絡がありました。」

 

首相はドサッと椅子に座る。実は数時間前から報復攻撃のため作戦を練っていたところであった。ただ、成功させるにはどうしても向こうの陸地の衛星地図が必要なのだった。

 

「これで、全てが揃った。日本が混乱に巻き込まれてもう一ヶ月が経つ。ようやくこの状況を打開することができるだろう…」

 

「ついにですか、やりましたね」

 

自衛機が攻撃を受けてから一週間が経つ。大臣たちの顔はやつれてしまっていた。国民への状況説明、燃料や糧食の調整や、自衛官の安全確認のための偵察を実行に移すため準備など省の者達に休息などなかったのだ。一刻も早く日本の食料危機を打開する必要があり、拉致された自衛官の救出が優先された。

 

「諸君、これから日本の歴史を大きく変えることになるだろう。もちろん今後、大きな壁にぶつかるのは予想できる。それでも私は進み続ける。万が一のこと君たちに責任をおわせるつもりは無い。」首相は続ける

 

「それでもこれがいやなら、遠慮なくここを去ってもいい。」

 

会議室は静かさに包まれる。

 

「総理、私はあなたについて行きますよ!最後まで。」財務大臣が言う

 

「私もですよ。」

 

「最後までお供させて頂きます!」

 

この日、部屋を去ったもは者いなかった。

 

 

   パーパルディア皇国 首都エストシラント

 

 

「それは本当か!」

 

「はい!我が皇国の艦隊が敵のワイバーンを撃ち落とした、これは事実であります!」使いの者が嬉しそうに言う

 

「余は実に嬉しいぞ!我が列強が、領空を無断に侵入した蛮族どもに思い知らすことができたからな!」ルディアスの顔が晴れる

 

周りにいる側近と高官は首が繋がったことにホッとする。

 

「そして陛下、敵の捕虜をとることにも成功しています。これで奴らの正体が暴かれるでしょう!」

 

場は歓喜にに包まれる。

 

「恐れながら陛下、今回の捕虜につきましては我々にお任せください。」デュロ基地司令のストリームが言う。

 

「おおストリームか。いいだろう、捕虜は任せる。ただ蛮族どもも黙ってはいるまい。もうすぐで使節団の奴らが頭を下げに来るだろう、丁寧に扱いたまえ。」ルディアスはニヤリと笑いながら言う

 

「はは、ありがとうございます」

 

これによりパーパルディア皇国と日本との衝突は不可避となってしまった。のちに歴史家は言う、日本の歴史を変えた分岐点であった、と。

 

 

   パーパルディア皇国 デュロ沖

 

 

時はシーホークがパーパルディア皇国に撃墜された時まで遡る。ヘリは操縦不能になり、海へ落ちていった。クルーは海に投げ出され、水中に残骸が散らばる。

 

(暗い…冷たい…)だんだんと海の底に沈んでいく

 

(俺、このまま死ぬのかな…)

 

(母さんに何もしてあげられなかったな…)

 

突然体が引っ張られる。勢いよく海面から顔を出す。

 

「ゲェッホ、ゲホゲホ!」激しく咳き込む

 

「なに死のうとしてんだよ…まだわけぇだろうが…」

 

機長だ。頭を打ったのか、血が少し出ている。

 

「機長…すみません」

 

「怪我がなくてよかった、しかしまぁ派手にやられたな」

 

プロペラ部分が浮いたまま、シーホーク本体は海中に沈んでいっている。後ろから何かが近づいてきているのが見える。帆船だ。

 

「機長!あれはっ?」

 

映画とかでしか見たことがない大きさの巨大な帆船が近づいてくる。人が乗っているようだが、明らかに救助を行おうとする目つきではない。まるでまるで我々を嫌っているような、冷たい目だ。

 

「ざまぁ見やがれ!」

 

「所詮底辺国が、俺ら皇国に手出しできると思ったんかぁ?」

 

「殺せ殺せ!」

 

どう言うことだ?なぜ罵声を浴びせられている?この人達は人という心がないのか?

 

海から引き上げられた私たちは強引に手を後ろに拘束される。木造の船のようだ。無理やり歩かされ、偉そうな人の前に膝をつかされる。

 

「私はこの魔導戦列艦ムーライトの艦長、アレンと言う。皇国のデュロ防衛艦隊へようこそ!早速だが貴様らは我が皇国の捕虜となった!」

 

「捕虜とはどう言うつもりだ!警告なしに攻撃を行うのは国際法違反であろう!」機長が言う

 

「はて、こくさいほういはんとはいったい何のことであろうか!?我が皇国の領空を無断で飛んでいるのがよっぽど違反であろう!」

 

「あれは不慮の事故だ!撃墜するのはおかしいだろう!」

 

「黙れ!蛮族の国のくせに口数が多いぞ!ったくこれだから蛮族には教育が必要なんだ。」

 

水兵達がマスケット銃を機長達に向ける。アレンは自身のパイプタバコに火をつける。少しふかした後にまた喋る。

 

「これより我々はデュロに向けて帰還する!お前たちはこいつらを独房にでも入れておけ。ダルダ司令官からの命令だ。発進準備!」

 

「ああ、言い忘れていたが、お前たちは上陸したらきっちりと取り調べを受けてもらうからな。」アレンはニヤリと笑う

 

「な、どう言うことだそれは!」

 

「それは着いてからのお楽しみさ…」

 

言うと同時にアレンが腕を上げる。部下達が無理やり立ち上がらせ、3人を船底にある独房に押し込んだ。そこはジメジメしていて暗くまさに独房というところだった。奥の方は倉庫になっているらしく、見張り役として鉄製の扉の前に水兵がいつの時代から持ってきたのかわからない骨董品の銃を携えている。

 

「機長、これって…」

 

「ああ、こりゃ国際問題になるぞ。ただ某c国ではなさそうだな。」

 

確かにあの国だったたらこのような木造船な訳がない。船員の顔立ち、言語は日本語だったのだ。

 

「帰れますかね…日本に…」

 

シーホークでは無線機器を担当した木内が問う。本国には家族がいて、子供も二人いるらしい。

 

「マジなんなんだよ、突然国が異世界に転移とかよ…。挙げ句の果てには堕とされて捕虜になるとか意味がわかんねぇ。」

 

「自分も帰りたいです、こんなとこ…」

 

船が動き出したようだ。甲板から足音が慌ただしく、船内はギシギシと歪な音を上げながらゆっくりと進む。

 

「そういえばお前さん、見慣れない服装だな。」機長が見張りの水兵に問う

 

確かに、今の現代という時代では見ることができない、海賊映画に出そうな中世ヨーロッパ風の服装だ。ネイビー色と赤、白がよく目立つ。あとなんか帽子長くね?初めは無視していたようだが、視線が気になったらしい。

 

「ふん、さすが野蛮国家の人だな。皇国の軍服を見たことがないとはな。この服はな、皇国の威厳と強さを象徴する聖なるものだ。に比べてお前らの服装は華やかさもないなぁ!」と3人を嘲笑する

 

言われてみれば、華やかではない服装なのは確かかもしれない。そもそも自衛隊は服装の見た目より機能を重視している。

 

「ていうかさっきから皇国皇国言っているが、そんな国は初めて聞くんだが。」木内が言ってくれた

 

「我が国、パーパルディア皇国はここ第3文明圏で最強、世界の五大列強のうちに含まれる大国なんだよ」自慢げに話してくれた

 

「それなのにお前達は我々列強に外交部を通さずに領海、領空を侵犯し、皇国民を恐怖に陥れた。これはかなりの重罪だ。お前達の国は我々皇国の統治下となるだろうな!」

 

3人は驚いた。自国より弱い国を植民地化するなんて歴史の教科書ぐらいでしか聞いたことがない。かつての大英帝国などが行ったように。

 

 

   日本 神奈川県 厚木市 厚木基地

 

 

広い飛行場に数機の無人機が並んでいる。RQー5ホークアイだ。2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始。多くの人が犠牲になるが、同時に戦い方はドローン戦術に転換していった。ロシアとの関係がうまくいかなくなると、有事の際に対抗するためアメリカから新型ドローンを導入が決定する。10機のうち2機がここ厚木基地に配備されている。見た目はRQ -1グローバルホークそっくりだが、性能が大幅に強化されている。赤外線による誘導ミサイルや夜間に偵察を遂行できるよう改良されたカラー化に成功した赤外線カメラなど、搭載すれば飛行可能だ。

 

「まさか本当に夜間偵察任務が下るとは思いませんでしたよ」

 

「海自のヘリが堕とされ一週間近くが経つ。早く隊員の救出と食料問題を解決せねばな」

 

『整備員は機体の最終確認を開始せよ』

 

ブザー音が鳴った後にアナウンスが入った。整備員達が作業場へ走っていく。

 

「我々の出番はもう少し後のようですね。それまでの間、何か食べませんか先輩?」

 

「えぇ、やだなぁ」

 

輸入に頼っていた日本は、今回の転移の出来事で輸入品は全てストップ。食料統制を行なわざるを得なかった。それはもちろん、政治家や自衛官も満腹になれないかさ増しされた味の薄いものがほとんど。食べるのが嫌になる程、美味しくなかったのだ。

 

「早く、パンが食べたいなぁ」

 

この日、無事に偵察機は離陸、ステルス迷彩のおかげで迎撃されずに偵察は成功した。上陸作戦は確実なものへとなっていった。

 

 

   東京都 首相官邸

 

 

「本当に必要なのか?ビラを撒くのは。」

 

「万が一のことを考えてです。」

 

「だが、そんなことしたらまた落とされてしまうぞ」

 

「心配ありません、ワイバーンの情報は先の事故で収集済みです。爆撃機の速さには追いつけません。」

 

「うーん、仕方がないな。今はやれるものは全てやるべきだ。最終会議を開く、皆を招集しろ!」

 

「はっ!」

 

工業地帯付近の衛生画像と、偵察映像、情報がある程度揃った今、この危機を打開するために石間は動いた。

 

 

   数十分後

 

 

「作戦の詳細を説明します。まずは、ビラの投下を行います。内容は簡単に言えば外交に来た、って感じです。後に工場群を爆撃。最悪の事態を想定して迎撃は護衛の戦闘機に対処してもらいます。対空砲もです。確認次第破壊します。爆撃が完了次第、上陸部隊が制圧を開始します。」

 

皆唾を飲んだ。何せ、戦後初の大規模作戦だからだ。

 

「制圧が完了次第、地域調査を実施。ゲリラ戦に警戒しながら、燃料、食糧といった物質を調達。捕虜の救出を開始。予定では一時的にヘコス防壁で一帯を囲む予定です。」

 

「そうか…」

 

石間は悩んだ。ここで作戦の許可をしてしまえば、もう後戻りはできない。それは他の官僚達も同じことを考えていた。

 

「まぁいいだろうっ!」

 

みんなの顔がえってなる。軽っ。

 

「作戦は許可するが、長期化はなんとしてでも避けたい。短期間で成功してくれ。これは今の日本の運命がかかっているのだ。」

 

「はっ、我々にやらせてください!」

 

各員が席を立つ。作戦準備開始だ。

 

 

   パーパルディア皇国 工業都市デュロ デュロ陸軍基地 地下牢

 

 

「なぁ、あれから何日が経つ?」

 

「さぁ、3日は経ったんじゃないかな…」

 

パーパルディア皇国というこの国のデュロ市にある陸軍基地の地下牢に入れられてからかなり経つはずだ。太陽が見えないからわからないが、日に2回出される美味しくない飯の回数でなんとなくわかる。

 

「国のお偉いさんは何をやっているんだよ!こんなとこ懲り懲りだ!」

 

「おい、うるさいぞ!静かにしろ!」見張り人言う

 

「ちっ。」

 

「まぁまぁ落ち着きたまえ、それでも自衛隊員か?」

 

「だっておかしいじゃないですか!僕達被害者ですよ、なんで独房なんかに入れられてるんですか!?」怒り気味に言う

 

「政府は今頃何かしら手を打っているはずだ。」穏やかに機長が言う

 

廊下の方から足音が聞こえてきた。誰かが来るようだ。他の見張り兵が牢の鍵を開けながら言う

 

「これより取り調べを行う。そこのお前、出ろ。」と機長を指差す

 

静かに独房を出ていった。あの姿が自分の見た最後の先輩だった。

 

 

   地方都市 食糧配給センター

 

 

事件発生数時間後のとある地方都市では食料の配給が始まっていた。

薄曇りの空が広がる午前の郊外、配給センターの前には朝から人々の列が伸びていた。

しかし、その長い列は静かで平和なものとは言い難かった。怒号、苛立ち、そして不安の渦がそこに渦巻いていた。

 

「お願いだ、もう少しだけでいい。今日は絶対に食べさせてくれ!」

中年の男性が声を張り上げた。彼の顔は日焼けし、疲れきっていた。

 

警察官が何度も制止の声をかける。

「落ち着いてください! 配給は公平に行います!」

 

だが、人々の目にはその言葉が届いていないようだった。

 

「公平だって? 何が公平だ!棚は空っぽじゃないか!」

若い女性が、手に持った空の買い物袋を振りかざした。

 

配給センター内の職員たちも疲労の色を隠せず、怒鳴り声に押されながら必死で作業を進めていた。

 

担当の松本は目を赤くしながらも、冷静に配給リストを確認していた。

「本当にこれが精一杯だ。備蓄はもう底を尽きそうだ……」

 

ふと彼の視線は、集まった人々の中でぐったりと座り込む小さな子どもに留まった。

 

「子どもたちに食べさせてやりたいのに……」彼は拳を握りしめた。

 

その時、背後で割れんばかりの怒号が響いた。

「不公平だ! 我々にも配給を増やせ!」

 

一部の人々が配給センターの柵に押し寄せ、警察隊が間に割って入る。緊迫した空気が走る。

 

「これ以上暴動が広がれば、我々の力では制御できない!」

地元市長の佐々木は無線を手に、声を荒げて叫んだ。

 

混乱は避けられず、まさに火種が燃え上がろうとしていた。

 

 

   首都圏・繁華街 路上

 

 

午後の日差しが傾き始めた頃、東京都心の一角では、市民たちの不安と苛立ちが徐々に爆発寸前となっていた。

 

「こんなに待っても食べ物は全然足りない……どうなってるんだ!」

若い母親が幼い子どもを抱えながら、長蛇の列に声を荒げる。

 

「もう一週間もこの状態だ。何か良い情報は出てるのか?」

中年男性が周囲の人々に尋ねるも、返答はおぼつかない。

 

ニュースやSNSが遮断されているため、正確な情報はほぼ皆無に等しく、憶測や噂が飛び交っていた。

 

ある高校生は友人に話しかける。

「ねえ、あのニュース、本当なのかな……自衛隊のヘリ、撃ち落とされたって?抗議運動も起きてるし…」

 

友人は顔を曇らせた。

「わからない。でも、こんな時に変な話が出ると、みんな余計に不安になるよな……」

 

警察官たちも人々の混乱を抑えるために奔走しているが、対応は限界に達していた。

 

「皆さん、落ち着いてください!配給は必ず行いますから!」と声を張り上げるも、声は届きにくい。

 

 

   政府対策室

 

 

「ダメだ、完全に国は混乱状態だ…」

 

「各自治体では住民との衝突が数件報告されています。このままでは国として機能を失ってしまいます!」

 

「なんてことだ!とりあえず…、現状報告と作戦行動について会見を開く。今こそ国民が一つになる時だろう。」

 

「会見の準備を。」

 

側近たちが動き始めた。

 

 

   数十分後

 

 

テレビ各局が通常番組を中断し、字幕が現れる。

 

【速報】総理大臣、国民に向け緊急会見――「軍事行動の可能性」に言及か

官邸の会見室は静まり返っていた。

転移から四日。全国で通信インフラの大半が遮断されたまま、物流と秩序の回復もままならない。

民間では略奪や暴動の発生も報告されていた。

 

壇上に姿を現したのは、内閣総理大臣・赤城健。

テレビ越しに見るその姿は、いつものスーツが妙に重く見えた。

 

「――国民の皆さん。内閣総理大臣の石間です。

今から、私は、たいへん重大な決断について、皆さんにご説明をしなければなりません」

 

記者たちも質問を許されず、固唾をのんで聞き入っていた。

 

「我が国は現在、“未知の世界”に転移しています。

これはもはや、科学や外交の枠では処理できない状況です。

政府は、これを日本国の完全孤立状態と認識しています」

 

次に、石間は自衛隊員の写真を掲げた。

 

「昨日、海上自衛隊のヘリが敵性勢力によって撃墜され、乗員が拉致されました。

相手の名称も、意図も、体制も判然としません。

ですが、彼らは我が国の軍事機に対し、明確な敵意と武力行使をもって応えました。完全なる敵対行為です。」

 

沈黙。わずかにマイクが石間の呼吸音を拾う。

 

「……この状況を、黙って見過ごすわけにはいきません。

この国は、我が国の主権と民の生命を、ただの“異世界の誤解”として扱うわけにはいかないのです」

 

赤城は口元を引き結ぶと、視線を真正面に向けた。

 

「このたび、政府は、敵勢力の拠点と推定される東方都市に対して、限定的な軍事行動を実施することを決定いたしました。

これは復讐でも威嚇でもありません。あくまで、自衛と、捕虜救出、そして外交ルートの確保のための行動です」

 

騒然とする記者たち。しかし一切、質問は認められない。

 

「この行動には、多くの非難とリスクが伴うでしょう。

ですが、日本国が主権国家として、他国に侮られず、対等に接するためには、

“譲れぬ一線”を示すこともまた、外交であると私は信じます」

 

そして、会見室の空気を震わせるように、石間は言った。

 

「――日本国は、武器を持ってなお、対話の道を探ります。

そのために、まず“声が届く距離”まで、進まねばなりません」

 

深く、重々しく一礼。

 

そのまま、演説は終わり、画面が暗転していく。

 

 

売買新聞

 

【爆撃決定】首相、異世界敵対勢力へ初の軍事行動明言

「主権の回復」「捕虜奪還」――政府、極秘裏に自衛隊展開中か

 

旭新聞

 

『対話より先に武力行使? 民主主義国家の選択を問う』

市民団体ら、早くも抗議声明「対話なき一撃は暴挙」

 

日計新聞

 

『食糧逼迫・通信回復せず 極限状況下での軍事判断』

自衛隊の戦力と補給力、未知領域での限界に注目集まる

 

頭胸新聞

 

『拉致事件と撃墜に政府ついに動く “新たな戦争”の始まりか』

 

 

考察はネットでも行われていた。

 

 

#総理演説

 →一時Xでトレンド1位

 

#東部都市爆撃

 →「東部都市って何処?」「異世界の都市を爆撃する日本、マジで始まった」「これ…開戦じゃん」など不安交じりの投稿が多数

 

#朝田大使

 →自衛隊OBや国際部出身者からの書き込み。「あの朝田さんか…彼ならやってくれる!」「あの人が外交行くのか…熱血すぎるが有能」「殺されないことを祈る」

 

#転移後の食糧事情

 →「このままじゃ物流死ぬ」「米が高騰してる」「スーパーの棚マジ空っぽ」「食べ物ください系Vlog爆増」

 

#捕虜救出作戦

 →「生きててくれ…」「たかこの子が乗ってた機体らしい」「家族コメントまだ…?」と憂慮する投稿が続々

 

 

   総理官邸 国家安全保障会議

 

雨が降る永田町。総理官邸の地下に設けられた戦略司令室は、まるで冷たい沈黙に包まれていた。大型モニターには、東部都市の衛星映像が映し出されている。

 

「……自分で言ったことだが、本当に、やるのか。」

 

日本国総理石間は、小さくつぶやいた。周囲には外務大臣、防衛大臣、統合幕僚長、そして外交官・朝田らが居並んでいた。

 

「これは、戦後初の“本格的な爆撃”になります。すでに国際世論の監視下にある中、慎重な判断が必要かと」と朝田が進言する。

 

「だが、我が国の自衛隊員が捕虜として扱われている今、行動が遅れれば、国内世論の信頼も失う」と防衛大臣。

 

統合幕僚長は3Dモニターを起動させ地図を表示し、指を差す。

 

「東部都市の工場群、厳密に言えば工業都市のようですが、ここが主目標です。加えて市内北西に位置する大型の軍事基地も破壊対象。戦列艦隊の補給拠点であり、ワイバーン部隊の出撃するための滑走路もあります。」

 

「うまくいけば、どのくらいで完了する?」

 

「遅くても3日、ゲリラ戦も考慮して5日です」

 

「やはりギリギリだな…」

 

「そういえば居住区には市民がいる。市街地への被害は?」と石間

 

「できる限り限定しますが、完全な無傷は……」

 

室内が一瞬静まり返る。

 

石間は目を閉じた。戦後の平和国家として歩んできた日本。その名に再び“炎と爆音”を重ねることに、自らの心が揺れている。

 

しかし――「人命がかかっているのだ」と心に言い聞かせ、彼は覚悟を決めた。

 

「作戦名は《更地作戦》……発動を許可する。」

 

 

   デュロ沖上空

 

 

東の空に銀の機影が浮かぶ。航空自衛隊のF-2戦闘機とC-2輸送機編隊が、空中給油機からの補給を終えつつ進行していた。その後方から、ステルス性を強化したF-35が護衛する。

 

目標は工業地帯、および陸軍基地。

 

魔力探知網の異常を察知したのか、ワイバーンオーバーロード数機が空へと舞い上がった。

 

その翼は血のように紅く、尾には金の装飾。乗っている竜騎士たちも“誇り高き皇国の精鋭”だ。しかし――

 

「ターゲット、3時方向より高速接近。距離2000!」

 

F-2のパイロットが叫んだ次の瞬間、AAM-5空対空ミサイルが白い尾を引いて飛び出す。ワイバーンは初速においてミサイルを回避したかに見えたが――

 

ズガァン!

 

1機、2機……3機が、軌道を曲げきれずに爆散した。

 

「ワイバーンの反応、消失を確認」

 

「空域確保。突入する」

   

あっという間に皇国のワイバーンを排除した戦闘機は、デュロ市民に恐怖を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 




ついにパーパルディア皇国に本格的な作戦行動が開始しましたね。

少し変な部分があるかもそれませんが、多めに見てほしいです。

なるべく早めに次を投稿したいと考えてます!

ロウリア王国、どうしたい?

  • クワ・トイネに侵攻→日本が報復
  • 原作通り民主化
  • ナレ死
  • パ皇に援軍→日本がボコボコに
  • 難癖つけて植民地化
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