負け犬の逆襲 ―UNDER DOG'S PARADE―   作:家葉 テイク

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序章
Chapter 01


 オブジェクト全盛のこの時代、歩兵なんてモンに単体としての価値は存在しねえ。

 どの部隊にしても、その上に王様のオブジェクトがあって、肥満症の王様がしっかり歩けるように『レッドカーペット』を敷いたり、王様が『無敵の王権』ってのを存分に振るう為の環境を作るのが生身の兵隊の仕事になってる。それが一番生身の兵隊にとっても安全だし、その上にあるお偉方としても都合の良いやり方だからな。

 その結果生まれたのが、『安全国』の外でオブジェクト同士がドンパチやって、その結果がそのまま戦争の勝敗になる『クリーンな戦争』が定説になった今の世の中だ。

 勿論、中には『北欧禁猟区』みてえなオブジェクトの侵入できねえ土地もあって、そこじゃあ未だに戦闘機が飛んで歩兵が血を撒き散らす『泥沼の戦争』が繰り広げられてるらしいが、こいつはマイナージャンルだ。世界の大多数じゃあねえ。それにそこでの主役は歩兵じゃなくて戦闘機乗りの『エースオブエース』様だしな。

 他にオブジェクトが活躍しない、本当の意味で生身の兵隊が活躍できる戦場を挙げるとしたら……思いつくのは『安全国』での市街戦くらいだな。オブジェクトの火力は高すぎるから、『安全国』の市民がたくさんいるところに向けて攻撃することはできねえ。まして戦車や戦闘機だって呼び込めないから、そこじゃ正真正銘生身の兵隊が主役の戦闘が繰り広げられるだろう。

 だが、それは有り得ない仮定でしかねえ。

 そもそも、オブジェクト全盛の『クリーンな戦争』が主流な今の世界で、『安全国』の街中が戦場になるようなことがまず有り得ない。論理的な理由以前に、そんなことになったら各地で『オブジェクトが築き上げてきたクリーンな戦争』に対する信頼が失われて、今の時代の常識はあっという間に崩れ去ってしまうだろう。かつて国連と呼ばれていた組織が崩壊したときのように。

 まあ尤も、たとえ主役になれないからといって、生身の兵隊がそれを不満に思ってるかといえば、間違いなく全員が声をそろえて『NO』と言えるだろうがな。

 戦場におけるヒーローってのは命を懸けて武勲を取った奴のことを言うんだ。誰だって、命の危険は最小限に、むしろゼロに抑えたいに決まってる。危険なことはオブジェクトに任せて、自分は安全な場所でのんびり過ごしたいっていうのが、人間の素直な本音のはずだ。

 ……ただ、何故か俺と俺の相棒に関しては毎回そんな思惑とは裏腹に、オブジェクトが主役な『クリーンな戦場』のど真ん中でメイン張る羽目になってんだがな……。

 

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